増え続ける【住宅弱者】民間企業が手を差し伸べる「想い」に注目

住宅弱者

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 いま社会はいろいろな問題を抱えています。そのなかの1つの問題「住宅弱者」というのをご存知でしょうか? 私はこの問題を取り上げるまえは、勉強不足のため知りませんでした。

 この住宅弱者とは、高齢者社会、障害者、低取得者の若者、外国人の雇用、ひとり親、LGBTQといったさまざまな問題も同時に関わってきます。住宅弱者とはどういった問題なのか詳しくお伝えします。

1.住宅弱者とは?

 住宅弱者とは賃貸住居で入居を断られてしまう人たちです。これは高齢者、障害者、ひとり親、若者、外国人、※LGBTQというようにいろいろな人に当てはまります。これは貸し手がリスクを取りたがらないという、根本的な問題があります。(※LGBTQがわからない方はこちらのサイトが分かりやすく説明しています。)

 例えばシングルマザーの場合、子どもの病気などで働く日数が減った場合に、給料が減ってしまい家賃の支払いが滞ってしまうのではないか、というようなケースから外国人の場合、日本語も話せる、保証人を用意しているのに大家さんが「コミュニケーションを取れるのか」、「友人を呼んで騒ぐのではないのか」という決めつけや思い込みによって、首を縦に振ってくれないといったケースもあるそうです。

 そういった問題もありながら、身寄りのない高齢者の年金生活から低賃金の若者といった、単純なお金に関することでも同様にあります。こういった自力で家を借りれない人たちが、日に日に増えている状況のなか東京都はある取り組みを発表しています。

東京都が目指す2025年までに3万戸

 東京都は2025年までに、住宅弱者が入居しやすい物件を3万戸登録するということを2018年に打ち出しています。アパートの空き部屋などを高齢者向けの専用住宅として登録すれば、大家に改修費や家賃を補助する制度を創設しました。

登録住宅に高齢者や低所得者を入居させる場合は市区町村を通じて、大家に月最大1万円を補助する制度なので、国や市区町村と合わせることで最大4万円の補助を受けられるということです。家賃の保証会社も市区町村を通じて最大1万5000円の補助を受けられます。

 またアパートを登録後に改修費を補助する制度も創設されます。最大で100万円を上限に耐震化などにかかる改修費の3分の1を補助します。この場合、国や市区町村の補助と合わせて大家の負担は6分の1で済みます。

 高齢者らを入居させる大家を支援するために、入居者の見守りや家賃を債務保証する「居住支援法人」も新たに指定します。日常の見守りなどで入居者の生活を支援してもらい、大家が安心して高齢者に部屋を貸せる環境を整えます。改修費と家賃の補助などに関連経費として、18年度予算案に約2億5000万円計上しました。

 このように東京都は対策していますが、全国にはまだまだ届いておらず地方でもはびこる問題です。そこを救うのは行政ではなく、NPO法人や民間の企業が動いていることが実態としてあります。

2.手を差し伸べる民間企業

 LIFULL HOME’SではFRIENDLY DOORという住宅弱者がさまざまな理由のもと、家を借りられない問題を相談できる不動産会社を探すことができるサービスです。すでに520社が参加していて、都道府県ごとに対象の困っていることを選び、最寄りの不動産会社を調べることができます。

 やはり相談をする度に断られてしまうのは、精神的に落ちるものがありますが、このサービスのおかげで門前払いを受けることがないということが、安心できるポイントではないでしょうか。

地域密着型の不動産会社とNPO法人の連携

 

 この記事を書こうと思ったきっかけは、神奈川県座間市に小さな店舗を構える会社「プライム」の働きに感動したからです。代表の石塚恵さんの取り組みには感銘を受けるので、ぜひYoutubeをご覧ください。

 「困っている人を絶対に見捨てない」という信念のもと、毎月100件を超える相談をこなしています。すぐ隣の「ワンエイド」というNPO法人の代表でもある石塚さんはその半数が単身の高齢者というなか、孤独死や滞納などのリスクが高いので、家を紹介したら終わりではなく、そこから見守りもやって実際に足を運んで、どんな様子かというのまでやっています。

 ワンエイドではフードバンクにも取り組んでいます。近隣の企業や個人から、売れ残ったお菓子や規格外品の食べ物を募って、生活困窮者に無料で配布するというサービスも行っています。家と食をひと繰りにサポートできるシステムです。

 現在、石塚さんに賛同して物件を供給してくれているオーナーは8人で、戸数にすると100戸程度ですが、すでに満室です。そこで自ら区分4戸と1棟8戸の築30年のアパートを銀行の融資を受けて購入したのですが、すぐにそこも満室となってしまいました。石塚さんの所有物件の賃料は周辺の相場に比べて、2万円ほど高いのですが、家賃扶助の上限額に合わせた賃料に設定しているものです。しかしこういったシステムを悪用して、弱者を食い物にしているビジネスもあります。

貧困ビジネスとの違い「オーナー」にも保険を

 生活保護受給者をターゲットとしたものを「貧困ビジネス」といい、路上生活者を集めて低額の簡易宿舎などに住まわせて、そこから生活保護を受給させその大半を「管理費」や「経費」として搾取する行為が問題となっています。

 これに対して石塚さんは「これを貧困ビジネスと捉える人もいるかもしれませんが、あくまでオーナーへの※リスクヘッジだと思います。例えば1カ月の受給費13万円のうち、11万円を管理費などの名目で取っているとなれば問題ですが……」

※リスクヘッジとは起こりうるリスクの程度を予測して、リスクに対応できる体制を取って備えること。(引用・SMBC日本証券

 相場賃料への上乗せ分はこれとは異なり、オーナーにとっての保険のようなもので、リスクを取った分のリターンだと石塚さんは考えています。賃貸経営は事業であり、慈善活動ではないことは十分に理解しているからこそ「物件を提供してほしい」とは言いづらいですが、オーナーにもメリットがあることは理解してもらいたいと話しています。

 「以前、購入した築古のアパートが全空になってしまい、入居が付かないうちに相談にいらした投資家さんがいました。物件をお預かりして生活保護受給者向けに賃貸に出したところ、3ヶ月で満室になりました。今のところトラブルもありません。競争力の低い物件の1つの使い道として、こういう世界もあるんだなということを知ってもらいたいです」

まとめ・明日は我が身として向き合う問題

 このように深刻な問題として浮き彫りになっている「住宅弱者」という、需要と供給が追いついていない問題を国ではなく、いち個人がやっているのが正直驚きました。石塚さんのように確かに表面は事業として成り立っていますが、そこにはビジネスだけではない「想い」のもと動いているというのが伝わってきます。

 高齢者社会という問題もありながら、これからもおそらく増えていく住宅弱者に具体的な策はいまのところまだありませんし、何十年後の私たちも陥ってしまうかもしれません。このような問題は日本のみならず、世界中で起きています。貧困、身寄りがないという原因はなかなか抜け出せませんし、環境によってはどうしようもありません。

 だからこそ自分には関係ないと思わず、向き合うことの大事さを知れました。「明日は我が身」という危機感を持ちながら、この問題をこれから見守っていきたいです。

参考・楽待 HUFF POST 日経経済新聞 株式会社あんど

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