災害避難所の女性トイレは男性の3倍必要 日本の避難所は大丈夫か? 国際基準「スフィア基準」とは

スフィア基準とは

 先週の大雨で、多くの方が亡くなり、そして今も避難を余儀なくされている方もいらっしゃいます。テレビで避難者が体育館で身を寄せる光景が見られますが、そこは十分な環境と言えるでしょうか。実は、「避難所の女性トイレは男性トイレの3倍必要」という国際基準があるのです。それは「スフィア基準」と呼ばれるものです。

 このスフィア基準は、アフリカ・ルワンダの難民キャンプで多くの人が亡くなったことを受けて、国際赤十字などが20年前に策定しました。スフィア基準は、紛争や災害の際の避難所の環境についての「最低限の基準」を定めています。

 たとえば、居住空間は、「1人あたりのスペースは、最低3.5平方メートル確保すること」と定めてあります。3.5平方メートルはおよそたたみ2畳分です。しかし、2016年4月の熊本地震の避難所では1人あたりのスペースが1畳ほどしかない場所もありました。また、トイレについては、「20人に1つの割合で設置、男女別で使えること」という基準もあります。さらに、「世帯ごとに十分に覆いのある生活空間を確保すること」、「最適な快適温度、換気と保護を提供すること」も定めています。

 日本で自然災害の避難生活の場所としては、床に毛布を敷いて大勢がひしめきあう体育館が思い浮かびます。しかし、エアコンや仕切りがないことが多いです。ですが、この光景は海外では当たり前ではありません。

イタリア・ラクイラ地震

 2009年4月のイタリア中部ラクイラ地震では、約63000人が家を失いました。これに対し、イタリア政府は初動48時間以内に6人用テント3000個(18000人分)を設置、最終的に6000個(36000人分)が行き渡りました。このテントは約10畳分の広さで、エアコン付きで、お風呂、トイレのコンテナも設置されました。

 ただし、テントに避難した人は約28000人であり、それより多い約34000人がホテルでの避難を指示されました。もちろん、宿泊費はかかりません。

 さらに、避難者には次のような物品が用意されました(「防災のあり方についての一考察」中村功/松山大学論集第21巻4号)。

通常ベッド・・・44800台

・折り畳みベッド・・・9800台

・シーツ、枕・・・55000個

・毛布・・・107200枚

・発電設備、発電機・・・154基

・お風呂、トイレコンテナ・・・216棟

・野外キッチン・・・107基

 このイタリアの例と比較すると、日本での「体育館での避難生活」には次のような問題点があります。

・そもそも災害避難用や宿泊用の施設ではない

・1人あたりの面積が狭い

・大人数のため、常に騒音や混雑感があり落ち着かない

・1人用のベッドや布団がない

・エアコンや入浴施設がない

・調理施設がなく、温かい料理が提供されない

 熊本地震では、地震の後で体調を崩すなどして死に至った「震災関連死」のうち、45%にあたる95人が避難所生活や車での生活を送っていました。体育館の床の上だけでなく、学校の廊下で寝起きした方もいるそうです。

 スフィア基準では、災害や紛争の避難者には尊厳ある生活を営む権利があり、援助を受ける権利があること、そして避難者への支援については第一にその国の国家に役割と責任がある、ということを定めています。

スフィア=地球

 スフィア(sphere)とは、英語で「球体」を意味します。球体、つまり地球のどこでも適応できるようにという思いで、スフィア基準は作られました。繰り返しますが、災害での避難所生活が体育館では、それはスフィア基準を満たしません。日本でも、テント、ホテル、旅館などへの避難を指示できる制度作りが求められるのです。

 

   参考

大前治(2018)『自然大国の避難が「体育館生活」であることへの大きな違和感 避難者支援の貧困を考える

NHK NEWS WEB (2018)『避難所の女性トイレは男性の3倍必要~命を守る「スフィア基準

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