世界のLGBTをめぐる現状はどうなっているのか調べてみました

LGBT

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1.世界のLGBTをめぐる現状

 世界の多くの国で、同性婚を正式に認めていたり、「同性パートナーシップ」といって同性カップルを結婚に相当する関係と認める書類を発行している国があります。こうした法律のない国は、G7(先進国首脳会議参加7か国)の中で、日本だけです。

 その一方で、同性愛自体に罰則を設けている国もあります。

 LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)をめぐる、世界の現状はどうなっているのでしょうか。

2.同性婚を認める国

 現在、同性婚および同性パートナーシップなど同性カップルの権利を保障する制度を持つ国・地域は世界中の約20%の国・地域に及んでいます。

 同性婚が認められている国・地域は以下の通りです。なお、台湾については、同性カップルが婚姻から排除されていることは違憲であるという司法の判断に基づき、遅くとも2019年までには、同性婚が認められることとなっています。

オランダ ベルギー スペイン カナダ 南アフリカ ノルウェー スウェーデン ポルトガル アイスランド アルゼンチン デンマーク ブラジル フランス ウルグアイ ニュージーランド イギリス(北アイルランドを除く) ルクセンブルク アメリカ アイルランド コロンビア フィンランド ドイツ オーストラリア オーストリア(2019年3年1月までに) 台湾(2019年5月までに)

 以上のほか、メキシコにおいては、一部の州において同性婚が実行され、それらの州で成立した同性婚が全ての州で認められています。

3.同性パートナーシップを認める国

 同性パートナーシップなどを持つ国・地域は以下の通りです。

アンドラ イスラエル イタリア エクアドル オーストリア キプロス ギリシャ イギリス クロアチア コロンビア スイス スロベニア チェコ チリ ハンガリー フランス ベネズエラ メキシコ(一部の州) リヒテンシュタイン ルクセンブルク

 このほか、タイおよびベトナムにおいて、同性婚法案が国会で審議されています。

〇世界のGDPに占める同性婚・同性パートナーシップを持つ国・地域のGDP

同性結婚・・・52.7% 同性パートナーシップ・・・5.4% 制度なし・・・41.9%

〇世界の人口に占める同性婚・同性パートナーシップを持つ国・地域の人口

同性結婚・・・16.9% 同性パートナーシップ・・・2.5% 制度なし・・・80.6%

4.同性愛を差別する国

 72の国と地域では、まだ同性愛行為は合意の上であっても違法です。それらの中の45の国と地域では、女性同士(レズビアン)にも適用されます。裏を返せば、27の国と地域で罰せられるのは、男性同士(ゲイ)の場合のみです。45の国と地域で、実際に法の下での逮捕が確認されているそうです。

 同性愛行為の死刑は、国連に加盟している8か国の国で適用されています。その中のイラン、サウジアラビア、イエメン、スーダンでは国単位で適用されています。また、ソマリアとナイジェリアでは特定の地域のみで、イラクとISIS(イスラム国)が占領している地域では、地方裁などの「非国家」が主体となり適用されています。

 5つの地域(パキスタン、アフガニスタン、アラブ首長国連邦、カタール、モーリタニア)では、シャーリア(イスラム法)によって実質的に死刑が可能となっています。

 22の国と地域で、同性愛とトランスジェンダーの公な表現に対する規制のためのプロモーションとモラルの法律が存在します。

 25の国と地域では、性的指向に対する非営利団体の組織・設立・登録に障壁を課しています。

5.性的指向に基づく差別を禁止している国

 72の国連加盟国と地域では、性的指向に基づく職場での差別禁止に関する法律があります。9の国と地域で、性的指向による差別禁止が憲法に明記されています。3の国と地域では、性的指向に基づくヘイトクライムを規制する法が制定されました。39の国では、性的指向に基づくヘイトの助長を禁止する法が存在します。

6.同性愛をめぐる世界の歴史

 欧米では、キリスト教上の宗教的禁忌の影響から同性間の性的関係に対する抵抗が強く犯罪とされてきた歴史があったのに対して、アジアでは同性間の性的関係を伴う性指向への抵抗感が少なかったと言われることもありますが、必ずしもそうとも言えません。

 植民地支配を通じて西欧法の「自然の摂理に反する」性的関係を犯罪とする刑事法が移植され、旧宗主国で同性間のパートナーや同性婚が認められるようになっても、アジア地域では罰則規定を残す国もあります。

 これに対して、半陰陽(第一次性徴における性別の判別が難しい状態のこと)やトランス・ジェンダーが祭祀等の一定の社会的な役割の担い手として認められてきたインドでは、性自認の権利として男性でも女性でもない「第三の性」を欧米に先駆けて公に認めてきました。

 一方で、欧米諸国における同性カップルの家族形成は、段階を追って進んできました。まず、同性カップルの存在を社会が認めることが前提となります。例えば、同性愛行為を処罰する社会において、同性愛者のカップルを承認することは、まず、その前に同性愛行為を脱犯罪化することが必要となってくるのです。

 したがって、ヨーロッパの多くの国では、1970年代になるまで同性愛行為の脱犯罪化が目指される段階であり、同性カップルの法的保護という目標は、将来の課題でした。

 しかし、1989年にはデンマークで「登録パートナーシップ法」が制定され、世界で初めて同性カップルを対象とするパートナーシップ制度が登場しました。そして1990年代を通して、ヨーロッパを中心にパートナーシップ制度の導入が広がっていきます。

 北ヨーロッパでは、デンマークに続いて、1993年にノルウェー、1995年にスウェーデン、1996年にアイスランドで同性パートナーシップが導入されました。これらの国々では、同性婚が導入されるととともに、同性パートナーシップは廃止されます。

 もっとも、同性カップルが婚姻よりも同性パートナーシップを好んでいたから採用されたのでありません。

 同性カップルにも婚姻を認めることを求める動きはありましたが、例えばオランダ最高裁(1990年10月19日決定)、ドイツ連邦裁判所(1993年10月4日決定)のように裁判所は同性婚を認めない判断を下していました。そのため、婚姻に代わる新たな制度が必要となり、パートナーシップが制度が脚光を浴びたのです。

 同性パートナーシップは、同性カップルに婚姻と同等の制度を認めるために導入されたものであり、婚姻との違いは少ないです。具体的な権利・義務は婚姻と同じように規定される、または婚姻の規定が準用されています。つまり、異性カップルの婚姻と同性登録パートナーシップとが並立する構造となり、権利と義務に着目すると異性カップルと同性カップルの違いがなくなります。

 他方、同性婚は、2001年にオランダで一番最初に導入され、2010年ごろから、ヨーロッパとアメリカ大陸を中心に急速に広まっていきました。

 同性パートナーシップ制度は、同性婚導入により廃止されています(イギリス、オーストリアを除く)。これにより、婚姻と婚姻外のカップルという伝統的な構造が、異性カップルから同性カップルに拡大しました。

 現在において、同性カップルの法的承認・保護の主流は、パートナーシップ制度から婚姻へと移り変わっています。同性婚が認められて行く中で、同性パートナーシップは、同性婚への一段落、過渡期の制度と位置づけられます。また、現在において同性パートナーシップを導入することは、同性婚を否定することをも意味しているという指摘もあります。

 

 今回はLGBTを取り巻く世界の現状についてまとめてみました。LGBTが少しでも幸せに生きていけるよう、世界の動きも変わってきているのです。

 

  参考

新・アジア家族法三国会議(2018)『同性婚や同性パートナーシップ制度の可能性と課題』日本加除出版株式会社.

ILGA (2018年10月31日アクセス)

NPO法人EMA日本「世界の同性婚」(2018年10月31日アクセス)

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