仮想通貨の未来 暗号が通貨になる 

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1.はじめに

 最近、何かと仮想通貨が話題となっています。たとえば、ビットコインの価格が乱高下を繰り返したり、かと思いきや2018年1月には取引所「コインチェック」からNEM/XEMと呼ばれる仮想通貨の580億円分相当の金額が取引所から流出したりしました。仮想通貨をめぐるトラブルはこれだけではありません。2014年2月にはビットコインの最大の取引所であったマウントゴックスが経営破綻し、約500億円分が損失しました。

2.暗号通貨

 しかし、だからといって、仮想通貨の安全性そのものが問われているかというと、必ずしもそうではありません。仮想通貨は暗号でコピー(偽造)を防ぐことで、電子データを通貨として流通させることが根本でもありますので、「暗号通貨」とも呼ばれますが、マウントゴックスやNEMの流出といった問題は、仮想通貨の「取引所」に問題があったのであって、仮想通貨の誇る強固な「暗号」が破られたのではありません。

 仮想通貨に限らず、コンピュータ・ネットワーク上で扱われる取引は、ほとんどすべて暗号が用いられています。つまり、「暗号が解けないこと」がコンピュータを通してのすべての取引を支えているのです。それではどのような暗号が用いられているのでしょうか。

3.秘密鍵と公開鍵

 かつては、暗号を解くために必要な「秘密鍵」を、必要な相手にのみ知らせ、解読してもらう方法が主流でした。その過程では秘密鍵が他人に漏れる可能性は高く、大きな弱点でもありました。こうした暗号のやり方は、古くはローマ時代から1970年代まで使われていました。その間、国家間では暗号通信の秘密鍵やその手がかりを求め、水面下での争いが続いていました。

 そんな状況を一変させたのが、現在使われている「公開鍵暗号」と呼ばれるしくみです。公開鍵暗号が使われている現在では、暗号化の手法やひとつの秘密鍵が漏れても、暗号は解けません。誰もが、どんな暗号が使われているのかを知っているのに、暗号を解読するのは難しいのです。

4.RSA暗号

 公開鍵暗号の代表的なものは「RSA暗号」と呼ばれるものです。そのRSA暗号を支えているのが、素因数分解の難しさです。素因数分解とは、「ある正の整数を素数の積のかたちで表す」ことです。たとえば、180は2²×3²×5の2、3、7の素数の積のかたちで表されます。

 この素数の数は10までの数は2、3、5、7の4つに過ぎませんが、10桁の数では5084万7534個にもなるほど、膨大な数となります。現在、素因数分解を達成した世界最高記録は232桁にとどまっていますが、その達成のために4年以上の歳月を必要としました。こういった素因数分解といったものの複雑さが、仮想通貨の安全性、さらにはコンピュータ・ネットワークのシステムを支えているのです。

 円、ドルといった従来の国家通貨を支える中央銀行は、国内でもっとも安全なはずの金融資産である自国の国債を大量に購入することで、その対価である現金(紙幣)を発行するという役割を果たしています。

5.中央銀行

 ただし、国家が安全資産として国債を発行できるのは、将来の税収で財政を黒字にして、それまでの借金を返済する(できる)という、“ストーリー”があってこそであって、そのストーリーが破綻すると、中央銀行の信用性も途端に崩れてしまいます。つまり、中央銀行が現金を発行しているからといって、その価値の裏づけがあるわけではありません。

 そもそも、中央銀行には①「発券銀行」として紙幣の供給と回収を行う、②「銀行の銀行」として金融機関から預金を預かり、そして預金の貸し出しなどを行う、③「政府の銀行」として税収の受け取り、国債の発行や外国為替の決済処理などを行うの3つの機能を有しますが、歴史的には「政府の銀行」としての発足しました。当初の中央銀行の目的は、戦争の継続のために資金を国家に提供することでした。その後、中央銀行は「発券銀行」、「銀行の銀行」という順番でその役割を拡大していくことになるのです。

 国が滅んでしまえば紙幣の価値がなくなるので、究極的には中央銀行には外国からの侵略を防ぐ「武力」が必要になります。とくに、「危機時」もしくは「国際決済」での信用が不可欠となります。一方、仮想通貨には中央銀行もなく、武力もないので、暗号が破られないという「知力」だけが基礎になっているとも言えます。「仮想通貨VS国家通貨」という構図は、「ペンVS剣」に近いのです。

 では、仮想通貨と国家通貨のどちらが信用に足るものなのでしょうか。結局のところ、国家が滅びれば国家通貨そのものの終わりを意味しますが、そもそも中央銀行など存在しない仮想通貨は滅ぶことはないという見方もできるかと思います。

6.仮想通貨のゆくえ

 最後に、従来の国家通貨と仮想通貨の未来を考える場合、次の3つのシナリオが考えられます。

①さまざまな国家通貨が通貨が使われている中で、並行して仮想通貨も用いられる

②世界全体での通貨統合が行われる

③仮想通貨は生き残らず、さまざまな国家通貨が用いられる

 これらの中で最も予想されるシナリオが①なのではないでしょうか。ただ、仮想通貨のビットコインだけが流通すると、それだけリスクもありますので、さまざまな仮想通貨が使われるのが一番良いシナリオかと思います。

   参考

吉本佳生・西田宗千佳(2014)『暗号が通貨になる「ビットコイン」のからくり 「良貨」になりうる3つの理由』講談社.

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