約5000人の障害者が職を失う-就労継続支援A型事業所の大量閉鎖-

パソコンを使って仕事中の男性

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こんにちは、金次郎です。

 障害者が働きながら、技術や知識を身に付ける就労継続支援事業所。
 私が現在所属しているのは、福岡県久留米市にある「TANOSHIKA」と言う就労継続支援A型事業所です。

就労継続支援A型事業所「TANOSHIKA」の公式ホームページ
TANOSHIKA

 その中のパソコンを使って作業する「CREATIVE部門で働き出してから、もう6年8ヶ月になります。
 「TANOSHIKA」は設立されてから8年になりますが、今年4月の経営方針発表会で「8期連続で増収増益」と報告されました。

 この障害者が働く就労継続支援事業所は、A型・B型合わせて日本全国に4600ヶ所ほどありまして、身体・精神・知的のそれぞれの障害者が約8万人働いています。

 しかし、公費に依存した就労継続支援事業所の経営改善を促すために、国が収支の悪い事業所の「報酬引き下げ」を2月に発表して4月に実施したところ、A型事業所の329ヶ所が廃止届を提出してしまい、利用していた4995人の障害者が解雇もしくは退職してしまいました。
 廃止届を提出し事業所を閉鎖した329ヶ所のA型事業所のうち約4割近くは、最低賃金が適用されないB型事業所に移行しました。

 今回は、私も勤務している「就労継続支援事業所」について書いてみます。

A型とB型の2種類ある就労継続支援事業所

 去年の4月に、支援計画には無い作業をさせたり、食事や送迎サービスを提供していないのに、嘘の支援記録を作成して市や県から、訓練等給付費を不正に受け取っていた事業所が就労継続事業所の指定を取り消された事を書きました。

 その時に、A型とB型の違いを書きましたが、再掲します。

A型事業所

 障がいのある人が、今すぐ一般企業への就職は不安だとか困難な場合に、一定の支援がある職場で雇用契約を結んだ上で働く事が可能な福祉サービスです。
 特徴として、勤務形態は基本的に一般就労と変わりませんが、1日の勤務時間が4時間と一般企業と比べて短いです。
 雇用契約を交わしますので、最低賃金が保障されており、定年制です。

B型事業所

 A型に対してB型は、雇用契約を結ばないで、A型と同じ様に軽作業などの就労訓練を行う事が可能な福祉サービスです。
 A型と同じく、自分の障がいや体調にあわせて自分のペースで働く事ができますので、一般企業への就職や就労継続支援A型事業所への移行に必要なスキルを習得する事ができます。
 ただ、A型と違うのは雇用契約を結ばないので、最低賃金が適用されません

参考:(株式会社LITALICO就労継続支援とは?A型・B型の内容・雇用契約・収入・対象者などをくわしく解説

今回の大量閉鎖の理由

 今回の就労継続支援A型事業所の大量閉鎖は、国の2024年度報酬改定で

経営状況が悪ければ補助を減額する

 と言う仕組みに変更され、収益力の乏しかったA型事業所が運営の継続を断念したからです。

 今回の就労継続支援事業所への報酬改定は、事業所の経営改善や、障害者の一般就労に向けた取り組みを強化する事が狙いです。
 報酬を算定するスコア(評価点)を見直して、生産性を高めたり、一定の労働時間を確保したりすれば配点を増やす一方、3年連続で賃金を作業収益で賄えないなどの時は減点する方式が導入されました。
 つまりは、勤務している障害者への給料支払いが利益だけでは賄えない事業所がたくさん有ったと言う事です。

参考:(山陽新聞)A型事業所 廃止や規模縮小相次ぐ 岡山県内、300人余り解雇へ

私自身もA型事業所解雇の経験者です

 9年前に障害者手帳が交付された時に、自宅に来た相談支援事業所の職員さんから

・障害者が一般就労を目指しながら働く、A型とB型の2つのタイプの就労継続支援事業所が
 有ります

 と言う説明を聞いて、初めて私は就労継続支援事業所と言う施設の存在を知りました。
 それで紹介されたのが、居住地市内に有る1件のA型事業所でした。

 ここでは、主にデパートやスーパーマーケットの紙袋作成やネットオークションに出品する商品の撮影と出品作業でした。
 しかし、働き出して2年目の秋に終礼で「利益率の悪化から事業所を閉鎖します」と言う告知を受けました。
 その告知以降閉鎖の日までは、職員さんによる他の事業所見学会が行われました。
 また、自分でもハローワークに行きアポイントメントを取って見学に行きました。
 それで、現在の事業所に採用されて勤務しています。

終わりに

 この様に閉鎖する就労継続支援事業所が有るかと思えば、新たに出来る事業所も有ります。

 私が知っているだけで、居住市内の通院しているクリニックが入っているビルの上階に1ヵ所、勤務している久留米市の最寄り駅の西口と東口にそれぞれ1ヶ所の計2ヶ所オープン予定の事業所が有るのを知っています。
 就労継続支援事業所は、その名の通り一般企業への就労が最終目的です。

 その一般企業には「法定雇用率」と言う数字が有りまして、従業員の総数に対して一定数の障害者を雇用しなければいけません。
 しかし、この法定雇用率を満たしているのは大企業がほとんどで、中小企業では満たしていない会社の方が多いです。

 それは、障害者の障害程度によっては会社の設備を改修したり新たな備品をそろえなければならず、その為の資金を考えると「障害者を雇うだけのお金が無い」と、障害者を雇う事に二の足を踏んでいる会社が多いからです。

 国も助成金や制度改定など色々と手を打っていますが、中々雇用率の充足は進みません。
 障害が有っても「生きやすく・働きやすい」社会になって欲しいものです。

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パソコンを使って仕事中の男性

4 件のコメント

  • 記事を読ませていただきました。A型事業所ができて8年たったのですね。一時期私も在籍しておりましたが、あるきっかけで一般企業の仕事に就きました。個人の給料を稼ぐがA型事業所なので難しいところもあるでしょう。ちょっと嬉しい記事と懐かしさにほっとしました。これからも記事を楽しみにしています。

    • コメントありがとうございます。
      支援員さんから「事業所閉鎖の経験が有る人が、このニュースで記事を書くのは経験者だからこその情報も書ける」と言われて書きました。
      私は、もう年齢的にも「今の事業所で定年を迎えよう」と考えています。

  • 最後までTANOSHIKAのメンバーとして仕事をされることは、私にもいい励みとなります。どんな仕事に就いても貴方の記事で心が幾分か軽くすることができました。ありがとうございます。これからも記事を楽しみにしています。

  • コメントありがとうございます。
    私自身は「定年まで働きたい」と思っていますが、高齢の両親の健康次第です。
    以前の記事にも書きましたが、住んでいる団地内にも親の介護の為に仕事を辞めて施設に行っている方もいます。
    なので、私も今後の身の振り方に関しては、現状未確定の部分が有ります。

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