この記事は約 26 分で読むことができます。
こんにちは、翼祈(たすき)です。
皆さんは、副鼻腔炎(蓄膿症)はご存知の方が多いかもしれませんが、好酸球性副鼻腔炎(こうさんきゅうせいふくびくうえん)という病気は知っていますか?
私自身も知らなかった病気で、副鼻腔炎(蓄膿症)の記事を先に書いていた時に、一緒に紹介されていて、偶然知った病気でした。
好酸球性副鼻腔炎とは、2015年7月1日から厚生労働省により国の難病指定され、難病医療費助成制度の対象疾患となった、学会などでも治りづらい副鼻腔炎としてしばしば取り上げられている疾患です。
副鼻腔炎の患者数は、日本に推定100万人から200万人いると言われています。その中で鼻茸(鼻ポリープ)が存在する慢性副鼻腔炎の患者数が推定20万人います。
ウイルスや細菌感染によって発症する一般的な副鼻腔炎とは異なり、原因不明で難治性の副鼻腔炎として医師の間でも注目されています。2000年頃からこれまでの副鼻腔炎の治療では効かないタイプのものが増加傾向になったことで、その後全国規模の疫学調査が実施されました。それが好酸球性副鼻腔炎で、大規模な疫学調査などで、日本には好酸球性副鼻腔炎の中等症・重症の患者数は、慢性副鼻腔炎の20万人の中の10分の1に当たるおよそ2万人の患者さんがいると推定されています。
今回は以下の構成でお届けします。
・好酸球性副鼻腔炎の概要
・好酸球性副鼻腔炎の特徴
・好酸球性副鼻腔炎の症状
・好酸球性副鼻腔炎の治療法
・難病医療費助成制度の申請の仕方
好酸球性副鼻腔炎とは?
成人男性より成人女性に特に多く発症し、原因不明で、かつ難治性の副鼻腔炎(蓄膿症)です。都市部で暮らす人に多く見受けられる傾向があって、ここ数年増加傾向にあります。
好酸球性副鼻腔炎の発症年齢は30代半ばから50代半ばに集中して罹患しています。平均年齢は50-55歳です。基本的には成人に発症し、15歳以下の患者さんはほぼいないのも大きな特徴です。
従来から日本人の鼻茸(鼻ポリープ)には好中球という免疫細胞が多く存在したので、この好酸球性副鼻腔炎は従来の副鼻腔炎とは異なる原因で起こるか、違う反応をしているのだろうと推測されました。
顕微鏡で解析すると、副鼻腔、鼻茸(鼻ポリープ)中の好酸球の増加が非常に多く確認できることで、この名称が付けられました。好酸球(こうさんきゅう)という免疫細胞が増えると、細胞に障害をきたします。
鼻茸(はなたけ)は、粘膜が慢性炎症によって腫れて、見た目がキノコの様になったものを指し、鼻ポリープとも言われています。鼻茸(鼻ポリープ)は大きくなると鼻づまりの原因にもなって、鼻腔を塞いで副鼻腔の換気を妨害し、副鼻腔炎を長引かせる原因に陥ります。
鼻茸(鼻ポリープ)自身は良性腫瘍ですが、風邪を引いたり細菌感染が起こったりする度にどんどん膨れ上がります。重症では、鼻の穴から溢れそうに大きくなることもあります。
一般的な慢性副鼻腔炎とは違って、鼻茸(鼻ポリープ)や鼻粘膜に好酸球が浸潤している場合が多く、ステロイドがすぐに効果があるという特徴があります。従来の慢性副鼻腔炎は一度の手術でかなり完治しますが、好酸球性副鼻腔炎は再発しやすいとの特徴を持ちます。
手術で一度軽快した薬物治療で副鼻腔炎をコントロールしていても、細菌感染を起こしたり、風邪を引いたりする度に鼻茸(鼻ポリープ)が少しずつ大きくなります。
好酸球性副鼻腔炎を発症すると、両側の鼻の中に鼻茸(鼻ポリープ)ができる、鼻をかんでもなかなか出てこない様な黄色い粘度の高い鼻水、鼻づまり、匂いを感じない嗅覚障害などの症状が出現します。また、喘息とアトピー性皮膚炎、難治性の好酸球性中耳炎という難聴、肺炎、胃腸炎といった合併する人も多い傾向です。
ロキソニン®などのNSAIDs系の鎮痛解熱剤に抵抗性を示す場合もあります。
原因や根治まで導ける治療法がまだ分からず、症状が治まっても定期的に耳鼻科を受診して適切な治療を受け続けないと、好酸球性副鼻腔炎を再発しやすいという特徴もあります。
手術した後の再発したケースに関しては、2020年4月から最新の治療である分子標的薬(生物学製剤)のデュピクセント®(一般名「デュピルマブ」)という治療法も保険適用になりました。
今回は好酸球性副鼻腔炎の特徴、症状、治療法、難病医療費助成制度の申請の仕方などについて特集します。
▽症状の特徴
1多発性、易再発性の鼻茸(鼻ポリープ)病変:好酸球が豊富に存在する(非好酸球性副鼻腔炎と比べて、3.175倍再発しやすいという調査結果があります)
2成人に発症する(発症する年齢は平均40歳前後が多い)
3発症早期から嗅覚障害の合併が多い
4副鼻腔の中でも篩骨洞(しこつどう)の中で発症しやすい
5マクロライド系抗生物質に過敏性を持つ例が多い
6鼻の両側に症状が出現しやすい
7ステロイドが有効となるケースが多い。現在は新しい抗体製剤が副作用も少なく有効なケースとなる
8しばしば喘息の合併も認められる。気管支喘息(ぜんそく)やアスピリン喘息(アスピリン不耐症)を合併している人が多い(40〜70%)
91型アレルギーは認めるもの、認めないもの多種多様である
10手術を受けても再発しやすく、完治しない病気
11風邪薬で悪化の意図を辿る
12CT検査では両側篩骨洞に病変が集中して起こる
13難治性の中耳炎を合併し、将来難聴になる
14病理組織学的検査を行うと、鼻茸(鼻ポリープ)中にも好酸球が増加傾向
15両側性
16抗生物質の効果がほとんどなく、その大半が難治性
17頑固な鼻づまりや、極めて粘稠で好酸球を含んでいる好酸球性ムチンを含むネバネバの鼻水
18治療は手術と手術した後も治療の継続が原則
19血液検査をすると好酸球数が高いと出る
好酸球性副鼻腔炎はType2炎症疾患と言われていて、IL-4(インターロイキン4)/IL-13(インターロイキン13)と言われる物質が重要な役目を担当しています。
鼻内には鼻腔ポリープである多発性の鼻茸(鼻ポリープ)が生成し、副鼻腔粘膜への顕著な好酸球浸増加が特徴でもあり、主に副鼻腔の病変は篩骨洞、嗅裂(きゅうれつ)という部位に発生します。
▽症状
最もよく見受けられる症状が鼻水(粘稠、膿性、ニカワ状、粘液性など)と鼻茸(鼻ポリープ)による酷い鼻づまり(鼻閉:びへい)です。粘りがとても強い鼻水でなかなかかみ切れず、鼻づまりを起こします。さらに嗅覚障害に陥ります。嗅覚障害は、好酸球性副鼻腔炎の症状で1番特徴的なのが、初期の段階から匂いを感じづらくなる嗅覚障害が出現することです。
匂いを感知する嗅神経は、顔の中心付近にあります。好酸球性副鼻腔炎では、鼻の中心に鼻茸(鼻ポリープ)が発生することが多いことで、匂いを感じる部分に繋がる空気の通り道を鼻茸(鼻ポリープ)が塞いでしまい、嗅覚障害を引き起こしやすくなります。
やがては鼻閉と嗅上皮(きゅうじょうひ)の障害の発生で、匂いが全く分からなくなり味覚も失うこともあります。嗅覚障害で風味障害を含めた味覚障害をきたします。鼻閉のための口呼吸が気管支喘息発作を誘発し、顕著な呼吸困難など呼吸障害を引き起こします。
鼻茸(鼻ポリープ)が多発し、鼻水が喉に流れ、鼻づまりから口呼吸になります。鎮痛薬を内服することによって喘息症状、気管支喘息を合併する人が起こりやすくなる人もいます。難治性の中耳炎(好酸球性中耳炎)も合併し将来難聴になるなどの症状が出現します。
また、後鼻漏(鼻水が喉へ落ちること)、顔面の圧迫感、頭重感や頭痛、頰の痛み、長引く咳、または喉の違和感、耳が詰まるなど耳閉感、たん、耳だれ、いびきや睡眠障害など
好酸球性中耳炎の好発年齢は40~60歳台で、成人男性より成人女性に特に多く見受けられ、1:1.5~1.6と推定されています。これは成人発症型の気管支喘息が女性に多いことに関わっていると推定されています。
成人発症型気管支喘息のおよそ1割程度に発症し、非アトピー性が比較的多いと推定されていて、およそ15%がアスピリン喘息(アスピリン不耐症)や気管支喘息、薬剤アレルギーが合併していることも多く、継続的な病院への通院も必要になる場合があります。
血液や鼻水(鼻漏:びろう)を検査すると、異常にこの好酸球が増加していることが認められます。
また鼻茸(鼻ポリープ)に関しては両側性で、かつ多発的に出現し、一般的な副鼻腔炎が上顎洞に多く発症するのに対して、好酸球性副鼻腔炎は篩骨洞に多く確認できます。
※好酸球とは?
白血球の一種に「好酸球」という、元々は寄生虫と戦う細胞があります。寄生虫は好酸球の数千倍も大きい外来生物となり、この巨大な外来生物と戦うために、好酸球はとても強い傷害性を保有する物質を細胞内顆粒に持っています。
また、寄生虫が身体内で動き回るのを阻止するために神経毒なども含まれています。寄生虫を見つけると自ら自爆する様に壊れ、中の傷害性物質を寄生虫に撒き散らせ、核の中にあるDNA繊維を網状に撒いて寄生虫の動きを封じ込める働きを持っています。
この好酸球が色んな原因で自分の副鼻腔粘膜に強い炎症を引き起こし、鼻茸(鼻ポリープ)粘稠な分泌液(ムチン)を生成することで好酸球性副鼻腔炎を発症します。
好酸球は一旦炎症を引き起こすと身体中から好酸球を集め、副鼻腔を好酸球だらけにします。その好酸球がまた炎症を生成して好酸球を集めるという悪循環を起こすことでとても難治性の副鼻腔炎となります。
▽原因
現在も原因やメカニズムは明らかになっていません。
1900年代には、好酸球性副鼻腔炎の人はほとんど日本にいませんでした。1990年代後半から2000年にかけて好酸球性副鼻腔炎の人が少しずつ日本でも増えてきました。韓国、台湾、中国など東アジアの国々でも最近好酸球性副鼻腔炎を発症する人が増加してきました。現在も増加傾向を辿っています。
好酸球性副鼻腔炎は免疫細胞の1種の白血球の好酸球が過剰に呼び寄せられ発症するタイプで、この好酸球はアレルギー反応を引き起こしている時に増殖する細胞です。ですが、好酸球性炎症はアレルギーによる炎症とは全く違います。
原因やメカニズムは分からなくても、患者さんが持つ好酸球が鼻粘膜で増殖し炎症を引き起こす原因だと分かっています。
発症のメカニズムや原因にまだ不可解な点が多く、局所粘膜や血中の好酸球が増殖している時には、好酸球性炎症だと疑われます。
▽好酸球性副鼻腔炎になりやすい人
気管支喘息の人や、アスピリンなどの解熱剤などでショック反応を起こしていたりといった、喘息を起こしたりするアスピリン喘息(アスピリン不耐症)の人に多く発症します。また薬物アレルギーの人にも発症しやすいです。
従来の疫学調査では、気管支喘息が先の人、好酸球性副鼻腔炎が先の人、気管支喘息と好酸球性副鼻腔炎が同時に発症した人は、ほぼ同じ割合で、それぞれ30%から35%程度となっています。
▽喘息
好酸球性副鼻腔炎の患者さんの大半が喘息を併発しています。慢性化膿性副鼻腔炎の場合は、喘息を併発している割合はおよそ3割であるのに対して、好酸球性副鼻腔炎の場合は、7~8割と想定されています。
副鼻腔炎が悪化した場合、喘息も悪化して呼吸困難に陥り、命に関わる危険性があるので、注意が必要となります。反対に、喘息が改善すると副鼻腔炎も改善して、副鼻腔炎が改善すると喘息も改善することが期待できます。副鼻腔炎と喘息のそれぞれをきちんと治療していくことが大事です。
特にアスピリン喘息(アスピリン不耐症)が多く見受けられ、好酸球性中耳炎が合併している場合もあります。喘息との関わりが強いことで、気道に生じた同様の炎症病態とも想定されています。
※アスピリン喘息(アスピリン不耐症)とは?
アスピリン喘息(アスピリン不耐症)はアスピリン様の薬理作用を有する非ステロイド性解熱鎮痛薬(NSAIDs)で発作が誘発されるという大きな特徴を持ち、アスピリン過敏症、喘息発作、鼻茸(鼻ポリープ)を3つの主徴とする疾患です。小さい子どもには少ないですが、30~50歳に発症することが多く認められ、頻度としては成人喘息の4~30%、中等症以上では10%以上に確認できるとされています。
このアスピリン喘息(アスピリン不耐症)のそれ以外の特徴では、
1:鼻茸(鼻ポリープ)が多発している
2:マクロライド系抗生物質の過剰反応のケースが多い
3:嗅覚障害の合併が多い
4:女性にやや多い傾向
5:ステロイドが有効であるケースが多い
6:1型アレルギーは認めるもの、認めないもの多種多様である(合併率20~30%)
7:手術しても再発するケースが多い
特にアスピリン喘息(アスピリン不耐症)に伴う好酸球性副鼻腔炎では手術してから4年以内に、再発します。
▽確定診断
JESRECスコア合計が11点以上を示し、鼻茸組織中好酸球数(400倍視野)が70個以上存在した場合を確定診断とする。
〈JESRECスコア〉
①病側:両側 3点
②鼻茸あり 2点
③CTにて篩骨洞優位の陰影あり 2点
④末梢血好酸球(%)2< ≦5 4点
5< ≦10 8点
10< 10点
さらに、手術標本の顕微鏡検査または400倍視野で鼻茸(鼻ポリープ)の生検組織を実施し、3視野平均で70個以上の好酸球が確認できれば確定診断となります。
難病に指定される条件は以下のものになります。
1)好酸球性中耳炎を合併しているとき
2)重症度分類で中等症以上のとき
1)または2)の場合、難病指定の対象となります
▽1)の好酸球性中耳炎の診断基準
大項目:中耳貯留液中に好酸球が存在する滲出性中耳炎または慢性中耳炎
小項目:(1)鼓膜切開や抗菌薬など、ステロイド投与以外の治療に抵抗性を持つ(2)にかわ状の中耳貯留液が溜まっている(3)鼻茸(鼻ポリープ)の合併(4)気管支喘息の合併
─の4つの項目の中で、 大項目と小項目の2項目以上を満たした場合を確定診断とします。ですが、好酸球増多症候群、好酸球性肉芽腫性多発血管炎は除外されます。
▽重症度分類
CT所見、末梢血好酸球率及び合併症の有無による指標で分類します。
A項目:①末梢血好酸球が5%以上
②CTにて篩骨洞優位の陰影が存在する。
B項目:①気管支喘息
②アスピリン不耐症
③NSAIDアレルギー
診断基準JESRECスコア11点以上であり、かつ
1.A項目陽性1項目以下+B項目合併なし:軽症
2.A項目ともに陽性+B項目合併なし or
A項目陽性1項目以下+B項目いずれかの合併あり:中等症
3.A項目ともに陽性+B項目いずれかの合併あり:重症
2)好酸球性中耳炎を合併している場合を重症とする。
▽診断基準
血液検査:アレルギー項目の確認や血液像の好酸球率の評価をする検査です。
鼻腔内視鏡検査:ファイバースコープと言われている細長いカメラを使い、鼻水の性状や鼻茸(鼻ポリープ)の存在の有無を確認する検査です。
鼻腔通気度検査:鼻づまりの程度を評価する検査です。
静脈性嗅覚検査:腕の血管内に薬液を注射して、嗅覚障害の有無を評価する検査です。
基準嗅覚検査:実際に5種類の匂いを嗅いで、嗅覚障害の有無を評価する検査です。
生検:病理検査のために鼻茸(鼻ポリープ)を一部切除し、好酸球浸潤の程度を確認する検査です。
それ以外の血液検査、アレルギー検査などを実施する検査です。
副鼻腔CT・MRI:病変の広がりを評価し、副鼻腔炎の程度を評価する検査です。
▽治療法
緑色をした膿性の鼻水が出ている場合には、抗菌薬を内服します。
厚生労働省も治療法は「未確立」としていて、治療についての有効なガイドラインは確立されていないのが現状です。治療で明らかになっていることは薬物療法であればステロイド薬以外は何も効果がないことです。ですが、研究会や学会では色んな議論が交わされています。臨床試験の現場では有効性のある治療法を確立しようとしています。
透明な鼻水になっても匂いが戻らず、急性増悪時においてはステロイドの短い期間内服を行います。軽~中等症例では抗アレルギー薬、抗アレルギー薬、ステロイドの全身投与、点鼻ステロイド噴霧薬。寛解期では補助薬剤による寛解期の延長、鎮咳去痰剤、吸入ステロイド薬などの併用して行なったり、少ない量のステロイド内服による維持療法を実施します。
ステロイド薬を使用しながら炎症や再発を抑え込みます。ですが、ステロイド薬の飲み薬を長い間使い続けると、骨がもろくなることや、免疫の機能が落ちたりするなどの副作用を引き起こす場合があります。それを受け、好酸球性副鼻腔炎の治療では、患部だけに効果を発揮し、長い間使い続けても副作用が出づらい点鼻薬が多く活用されています。
ステロイド薬の点鼻薬を使用した治療は、好酸球性副鼻腔炎の患者さんのおよそ8割に効果があると言われていて、治療を維持することで、症状がほとんど出現しない状態を確保することに期待が持てます。
ですが、ステロイドの内服を中止すると、再び鼻茸(鼻ポリープ)は大きくなって悪化した状態に戻ってしまいます。元々、気管支喘息やアトピー性皮膚炎の治療薬として使用されていましたが、既存治療で効果が認められない患者さんに限定して慢性副鼻腔炎にも使われる様になりました。
◉分子標的薬(生物学製剤)
最近、新しい治療薬として分子標的薬(生物学製剤)のデュピクセント®(一般名「デュピルマブ」)が登場し、2020年4月に保険適用になりました。
この治療薬は、好酸球性副鼻腔炎にも関与する「IL-13」(インターロイキン13)と「IL-4」(インターロイキン4)という物質(サイトカイン)の機能を直接抑制する薬となります。本庶佑氏がノーベル賞を取って有名になったオプシーボに近い分子標的薬の仲間です。
「デュピルマブ」は、炎症の原因となる分子が副鼻腔の粘膜の細胞にある受容体に結合しない様にすることで、副鼻腔に炎症が引き起こされることを予防します。自己注射で使うタイプの注射薬で、好酸球性副鼻腔炎の新しい治療法として期待されています。(「デュピルマブ」は、既にアトピー性皮膚炎と喘息の治療にも活用されています)
2~4週間に一度「デュピルマブ」の注射を行います。慣れてくると自宅での自己注射もできます。自己注射が可能で2ヵ月分(4回分)処方でき2ヵ月に一度の来院で済みます。経口ステロイド抵抗例や好酸球性副鼻腔炎の手術をした後再発したケースなどが適応として定義されています。
ですが、「デュピルマブ」は、高価な薬なこともあって、現在は限定的に重症の患者さん、特に鼻茸(鼻ポリープ)が大きい人などに投与が始められている段階です。
好酸球性副鼻腔炎の難病指定を取って、治療費の自己負担を抑えることが推奨されます。
◉鼻洗浄(鼻うがい)
鼻洗浄(鼻うがい)で鼻腔の除菌、粘調性鼻水の除去、鼻腔粘膜の炎症の軽くして減らすことに努めます。
◉手術療法
・鼻腔容積の拡大や鼻腔通気性の確保を目的とする鼻腔形態の改善手術(粘膜下下鼻甲介骨切除術、鼻中隔強制術など)
・副鼻腔の単洞化、鼻茸(鼻ポリープ)の減量病的粘膜の除去という内視鏡下副鼻腔手術
→鼻中隔矯正術
鼻中隔(びちゅうかく)は左右の鼻を隔てている境で、軟骨や骨が粘膜に挟まれて構成されています。
その軟骨や骨が弯曲していることで鼻づまりや嗅覚障害の原因になることで、弯曲している軟骨や骨を摘出します。内視鏡下鼻副鼻腔手術と同じ様に内視鏡で行うことで、顔を切開することはありません。
→内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS:Endoscopic Sinus Surgery)
画像・引用:好酸球性副鼻腔炎 県立広島病院
内視鏡を鼻の穴から入れて、鼻の中をモニターに映しながら手術を行います。
副鼻腔は篩骨洞(しこつどう)、上顎洞(じょうがくどう)、前頭洞(ぜんとうどう)、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)の4種類が存在します。それぞれの空間がマンション部屋の様にあちこちに壁があって、その大きさには個人差があるので、手術する前に副鼻腔CTを撮影し、その構造の把握が必須です。
好酸球性副鼻腔炎の手術の目的は,①4種類それぞれの副鼻腔を隔てている壁を取っ払って、1つの空間にすることで、鼻の中の換気を良くすること,②鼻茸(鼻ポリープ)化した粘膜を減量・除去し、鼻粘膜を再生させ正常な機能を促進させることです。このため手術の範囲が広く、全身麻酔手術でおよそ5日間の入院が必要となります。
→粘膜下下鼻甲介骨切除術
鼻づまりの改善目的に、鼻中隔矯正術とセットで実施することが多いです。
鼻の穴の入り口に近いひだを下鼻甲介(かびこうかい)といい、ひだの中にある骨を摘出することでひだのボリュームが減ることで、鼻の中の通りが良くなります。手術した後、出血しやすく、入院のもとで手術をする様になっています。
好酸球性副鼻腔炎は再発率がとても高く、手術療法、薬物療法を組み合わせ複合的に治療を継続することが大事です。また難治性であることを患者さんは理解し、症状が出現しない様にする、落ち着いている期間を長くすることを目標にかかりつけ医と向き合うことが大事です。
内視鏡を用いた手術は、一旦鼻茸(鼻ポリープ)を完全に除去します。マイクロデブリッダーと内視鏡を鼻の穴から挿入し、マイクロデブリッダーで鼻茸(鼻ポリープ)を切除して、空気の通り道を確保します。
鼻茸(鼻ポリープ)の再発により嗅覚障害や鼻づまりが出現した時には、ステロイドを染み込ませた綿を鼻の中に置いて鼻茸(鼻ポリープ)を縮小させます(※この治療法を鼻腔局所ステロイド治療といいます)。鼻腔局所ステロイド治療は、ステロイドの内服に比較して全身への副作用が少ないというメリットがあります。
手術治療のメリットは、再手術も含めおよそ90%以上の方で治癒状態となることです。残りおよそ10%の方はコントロールが困難で(多くの場合は嗅覚障害)、デュピクセントを使い症状の改善を掲げます。
手術の方法は、慢性化膿性副鼻腔炎と同じ方法です。手術によって、嗅覚障害などの症状を改善することに期待が持てます。慢性化膿性副鼻腔炎では、ほぼ完治できるのに対して、好酸球性副鼻腔炎では、手術を受けてから5~6年の間に、およそ半数の人が再発すると言われています。
現在の治療法では、残念ながら好酸球の機能を抑制することで鼻茸(鼻ポリープ)の発生を阻止する方法はありません。
そのことで、手術を受け、その後はステロイド剤の服用と局所療法を行い経過を観察しながら、鼻茸(鼻ポリープ)が大きくなったら再手術を行うことになります。
好酸球性副鼻腔炎の治療は短い期間では終わらず、ほとんどの人の場合長い目で見る必要があり、日常生活において清潔さを保って過ごしたり、規則正しい生活を送るなど免疫力を維持するためにも副鼻腔内を良好な状態に維持することが大事です。
また手術した後も鼻洗浄などの局所治療、ステロイド剤や抗アレルギー剤の点鼻・内服治療を継続する必要があるのfで、しっかり外来通院で経過観察をすることが大切です。ですが、これらの治療を行っても再発を繰り返す場合や糖尿病などの合併症のためステロイド剤の投与が行えない場合などはアレルギーを根本的に抑制する効果を持つ生物学的製剤、デュピルマブの投与を検討する必要があります。
▽難病医療費助成制度が適用
好酸球性副鼻腔炎は、国の難病医療費助成制度の対象疾患となります。難病指定医による診断が必要で、診断書、被保険者証のコピー、申請書、市町村民税課税状況の確認書類、世帯全員の住人表の写しを都道府県の窓口に提出し、審査を経て難病医療費助成制度の認可が決定されます。
難病医療費助成制度が適用されると、
❶外来・入院の区別なく、世帯所得に応じて医療費の自己負担上限が設けられます。
❷医療費の自己負担をする割合が3割から2割に引き下げられます。
ですが、難病医療費控除制度の認定の条件として、過去に手術を1回以上受けていること(検査を受けただけでは認定されない場合があります)、重症度が高い(中等症もしくは重症)であること、組織中の好酸球の浸潤数が基準値(高倍率視野で平均70個)以上であるなどが重視して認定されています。
参考サイト
副鼻腔炎(蓄膿症) 医療法人かくいわ会 岩野耳鼻咽喉科サージセンター
副鼻腔炎(蓄膿症)の原因・症状・治療法 かわもと耳鼻咽喉科クリニック
好酸球性副鼻腔炎 ひろた耳鼻咽喉科監修 副鼻腔炎・蓄膿症専門サイト
鼻づまりや鼻水だけじゃない慢性副鼻腔炎の症状・診断・治療法を解説 NHK健康ch(2023年)
好酸球性副鼻腔炎 医療法人華風会 ザ・北浜タワー 耳鼻咽喉科皮膚科クリニック
慢性副鼻腔炎(蓄膿症) 鹿児島中央駅耳鼻日帰り手術クリニック
副鼻腔炎の症状——「蓄膿症」は慢性の副鼻腔炎を指す メディアルノート
副鼻腔炎(蓄膿症)の治療・手術 髙橋耳鼻咽喉科眼科クリニック
私、多分蓄膿症
この記事を書いている現在の話ですが、私は1週間前から風邪を引いています。
私は既往歴と飲んでいる薬が多いことで、かかりつけ病院以外で受診すると、「出す薬がない」と言われて、いつも地元の病院では診てくれた先生からはPL顆粒や葛根湯しか出して貰えません。
本当はかかりつけの病院の薬でしか治らないので、行きたかったのですが、凄く遠い病院で、両親にお願いしなくてはならず行くのを嫌がられて、予約外だと何時間も待たされますし、「風邪くらいで来ないで」と以前言われていたので、地元のまだ行ったことなかった病院を受診することになりました。
ここの先生も薬の多さに飲み合わせの関係から処方するのに苦労したと思いますが、処方して頂き、「もしいつもの病院と違う薬でも治るなら、そっちが距離的にも助かるな」と思って、いつもと違う風邪の薬で不安でも、飲み始めました。
その日の夕食後飲んでみると、「あれ、効いてる?やったー‼︎」と思っていましたが、そこからが悪夢で、次の日を迎える度に風邪がどんどん悪化。
最初は喉の痛みだけだったのが、緑色のたんが出たり、口の中に乾燥を感じると、吐きそうになるほど、酷い咳が出続けて体力がさらに落ちて。咳のし過ぎで頭も耳の中も痛くて。考えがまとまらない程、体力の消耗。
「薬が全然効いてない。日に日に悪化するなんて」
と思って、いつもの病院に行こうとしました。しかし遠いことで私の足だけではそこの病院に行くことができず、とりあえず電話すると、「この薬は一般的な薬ですよ」と言われて、この間行った病院に聞くと、「その薬ならありますよ」と言われたので、風邪薬を最初に頂いてから、3日後にまた病院に行きました。
「咳の症状が酷い」と伝えると、「今まで咳が出た時、どんな対応していましたか?」と聞かれて、記憶にない。今までは鼻が出る、喉の痛みなどで、咳も軽いものでここまでなかったなと思いました。
咳に効く様に人生で初めて吸入器が処方されました。1回も使ったことがなくて、最初は使い方を間違えたりしましたが、少しずつ咳が落ち着いてきています。
いつもの薬も頂きましたが、普段は風邪の引き始めにすぐ病院に行って飲んでいたのが、今回は完全にこじらせて、かなり悪化した状態で飲み始めたので、いつもより即効性がありません。
風邪は母にも移り、母は慢性副鼻腔炎を過去に患ったことで、余計鼻が止まらず、咳もゴホゴホ言ってきつそうにしています。
そして2日経って、吸入器のお陰で、少しずつ咳も減って左胸の痛みは無くなりましたが、一方で鼻水や緑色のたんが止まりません。それ以外にも目の際の痛みがあります。
いつもの薬を飲んでいるのに抜本的には治っていない、抗菌剤だって飲んでいるのに。先に蓄膿症の記事を書いていたので、「私、風邪がさらに悪化して、蓄膿症になってない?マスクのし過ぎか、鼻のかみ過ぎかで、耳の中がさらに痛いし」と思って。
蓄膿症は慢性化すると厄介なので、今までは内科でいつもの薬を頂いていましたが、いよいよ地元の耳鼻科にまたお世話になる日が来そうだと考えるだけでも嫌です。
子どもの頃風邪位しか引かなかった私が、今既往歴沢山で、子どもの頃からよく行っていたことを考えると、顔見知りも多いことから、ずっと地元の耳鼻科に行くのが恥ずかしくて。
ですが、本当に蓄膿症になっていればそんなことは言ってられません。行くしかありません。
3歳の頃の蓄膿症の鼻洗浄のための通院で治るまで半年かかったらしいので、覚悟を決めて今度行きます。
関連記事として、最後に副鼻腔炎(蓄膿症)の記事のリンクを貼っておきます。
関連記事
noteでも書いています。よければ読んでください。
コメントを残す