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こんにちは、金次郎です。
日本では、それまで呼んでいた「疾患名(病名)」を変える動きが10年ほど前から出ています。
これは、アメリカ精神医学会の「精神疾患の診断基準DSM(精神障害の診断と統計マニュアル)」の第5版「DSM-5」の、日本語訳が出版される事を見据えての事からと考えられています。
例えば
・「パニック障害」 ⇒ 「パニック症」
・「注意欠如・多動性障害」⇒ 「注意欠如・多動症」
と言うふうに、言い換えの提案をしています。
これは、「障害」という言葉の印象が悪く、患者やクライアント側から変更の要望があったからと言われています。
「障害」の「障」は訓読みで「差し障(さわ)る」という使われ方がされますし、「害」も「害(がい)する」と使われます。
「差し障(さわ)り」・「害(がい)する」と言う漢字で構成された熟語はその病気を知らない人には、ひどい印象を与えてしまいます。
今回は、疾患名(病名)変更の動きについて書いてみます。
疾患名変更は何故?
同じ精神疾患でも、既に「障害」と言わず「症」を使う疾患がたくさんあります。
・統合失調症
・自閉症
・拒食症
・過食症
※拒食症と過食症は診断名では無く、通名です。
日本精神神経学会では「疾患名が障害表記だと『不可逆的な状態にある』との誤解を生じる」という指摘がなされています。
この『不可逆的な状態にある』と言うのは
・「精神疾患を障害表記にすると、二度と元の身体には治らないのじゃ無いか?」
と言う印象を与えてしまう可能性があるから、と言う事です。
例えば、「注意欠如・多動症(ADHD)」は、小児の有病率は5%程度ですが、成人の有病率は3%と少なくなります。
成人の有病率が減少する主な要因は「加齢(年を取る)」です。
大人になることによって、症状が診断閾値以下に下がる人が多くいます。
つまり、
・「精神疾患に罹ってしまったら、二度と治らない」
こう言う不理解が「障害」と言う表記によって起こされるのであれば、「症」表記にする事にも意味があります。
参考:(SYNODOS)「障害」から「症」へ―精神疾患の診断名の変更
精神疾患以外の病名も変更
2022年に、WHO(世界保健機関)の国際疾病分類の第11版(ICD-11)が発効されました。
これにより、性同一性障害が「精神障害」の分類から除外されて、「性の健康に関連する状態」という分類の中の「Gender Incongruence(性別不合)」に変更されることになりました。
出生時に割り当てられた性別への違和が「病気」や「障害」では無いと宣言される事になります。
この、国際疾病分類に合わせる様に、日本でも精神疾患以外の病気の名前も変える動きが進んでいます。
例えば
・糖尿病 ⇒ ダイアベティス(案)
(偏見や誤解に繋がるとして、日本糖尿病学会が病名変更を提案)
・プール熱 ⇒ 咽頭結膜熱・アデノウィルス感染症
(プールだけで罹る病気では無いので、日本水泳連盟が病名変更を要望)
・発達障害 ⇒ 神経発達症
(現在は、一般的に「発達障害」が、広く使われているので、当面は併用)
一方、病名変更で既に定着しているものも有ります。
・成人病 ⇒ 生活習慣病
・痴呆 ⇒ 認知症
参考:(PRIDE JAPAN)1月1日、「国際疾病分類」が改定され、トランスジェンダーの非病理化が達成されました
参考:(朝日新聞)病名変更、検討の動き着々 ――国際疾病分類の改訂受け
病名変更に反対する医師もいる
しかし、病気によっては名称変更に反対する医師がいます。
それは、各論②で(案)と書いている「糖尿病」です。
ケアネットが会員医師1,028人に対して、行ったアンケートによりますと
・『糖尿病』の名称変更について、賛成ですか?反対ですか?
と言う質問には
・賛成 37%
・反対 63%
でした。
賛成・反対のそれぞれの意見です。
・名称変更に賛成
・「糖尿病」と言う病名自体が、病態を的確に示した言葉ではない(20代、臨床研修医)
・若年発症の1型糖尿病患者、とくに女性患者で自分の病名についてコンプレックスを抱いて
いる患者が多いので(30代、糖尿病・内分泌内科)
・心血管イベントを想起させる様な名前にしたほうが良いと思う(40代、リハビリテーション科)
・名称変更に反対
・尿という言葉が持つ負のイメージへの懸念が、名称変更のメリットを上回ると思えない(30代、小児科)
・名称変更理由の1つに挙げられた「住宅ローンや生命保険に入れない」というのは名称変更で
解決できる問題ではない(40代、循環器内科/心臓血管外科)
・患者に振り回されるのもどうかと思います。そんなことを言いだしたらキリがないですよ。
新しい病名にもよりますけど(50代、眼科)
・既に「糖尿病」は広く認知されていますので、名称を変えることで、有病者の受診行動が
変わるとは思えない(60代、腎臓内科)
それぞれの意見の傾向を見てみますと、
・賛成意見は「患者が望むなら」という患者視点でのコメントが多いのに対して
・反対意見は「名称変更が、病気への偏見払拭にならないのでは」という指摘が多い
という感じです。
参考:(ケアネット)「糖尿病」の名称変更、医師の6割が反対/医師1,000人アンケート
終わりに
私の「パニック障害」も、名称変更に従うと総論に書いた様に「パニック症」に変わります。
今は、日常生活で食事や睡眠時間に気を付けており、乗り物に乗っても「パニック発作」は、ほとんど出なくなっています。
以前勤務していた居住地市内に有った障害者事業所が閉鎖になり、就職活動の結果、今の事業所に勤務しています。
受診している精神科の先生に「隣の市に有る事業所に決めました」と言うと、先生は
「隣と言っても、急行電車でも20分近くかかるところに通勤って大丈夫ね?」
と心配されましたが、今年で6年目になりますが通勤できています。
有名人で「パニック障害」に苦しんだのは、元プロ野球選手の長嶋一茂さんです。
彼は、地方の試合に行くための乗り物に乗る時は、必ずビニール袋を持ってから乗り、気分が悪くなったり、過呼吸になったらビニール袋を口元に持って行き深呼吸しながら耐えていたそうです。
個人的な意見としては「パニック障害は、病気の一つだから『症』でも良いのかな?」と思っています。
ただ、私のもう一つの障害である「難聴」は「聴覚障害」の一つですが、「聴覚症」となってしまうと何の障害だか分からなくなってしまいそうですけどね。
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