「まんが やってみたくなるオープンダイアローグ」を読んで。驚きのケア方法をどんはれなりにまとめてみました

オープンダイアローグ

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はじめに

オープンダイアローグってなんだろう?と素朴な疑問からこの本を手に取りました。

本書は世界でも初めてのまんがによるオープンダイアローグの解説書です。

1984年にフィンランドのケロプダス病院で発祥されたオープンダイアローグ

そこには、従来の薬物療法中心の医療を根幹から覆す「ケア技法」が描かれていました。

本書から私なりに内容を抽出してご説明していこうと思います。

始め方

まず、治療チーム(2~3人)は、患者のチーム(本人、家族、関係者)を部屋に招き入れて、座る場所を選んでもらいます。

そして、治療チームから自己紹介をします。

齋藤環さんのたとえでいうと、「精神科医の齋藤環と言います。環と呼んでください」と呼び方を固定し、「先生」と呼ばせないようにします。

ここで「先生」と呼んでしまうとヒエラルキーが発生するのでそれを避けるためです。スタッフ間では役割で呼ばず、「さん」付けで呼び合います。

その後、患者チームにも1人ずつ自己紹介してもらい、それぞれになんと呼んでほしいのか確認します。

(「○○さんとお呼びしてもかまいませんか?」など)。

ファシリテーターは、全員が質問できるように開かれた質問(「はい」、「いいえ」で答えにくい質問)をします。

・ここにきたいきさつ

・この場にどんなことを期待するのか

・今日、ここに来るのにどんなことを考えたか

・今日はどういった話をしたいのか

・今日はなにについて話したいのか

・どういうふうにはじめるのか

・ここに来ることに誰がいちばん賛成していて、誰がいちばん反対しているのか

を丁寧に聞いていきます。

このように導入し、対話を始めていきます。

オープンダイアローグの5つの柱

対話を続けるだけでいい

オープンダイアローグは、ゴールを治療や解決にしません。対話を続けることそのプロセス自体が目的となります。とにかく、対話を続けることを大切にします。そうすると、一種の偶然の産物「オマケ」として勝手に変化、改善や治癒が起こってしまうのです。これは、逆説的で遠回りな道のりだと思えますが、結局は一番の近道になっていることが多いのです。これは、斎藤環氏の経験からきた言葉です。

計画を立てない

そして、計画を立てません。予測もしてはいけません。治療経過は、元来、予測がつかないのが当たり前です。予測を立てると、その結果に裏切られることが多いです。するとだんだんと悲観的になっていきます。予測を立てない方がうまくいくことが多いですから、楽観的になります。治療には、楽観的な方が圧倒的に有利になります。

個人でなくチームで行う

個人でなく、チームで行います。チームで行うと二者関係になりにくい、共存関係になりにくいです。まず、転移が非常に起こりにくくなります。転移とは、特定の患者さんにべったりと頼りにされてどうにもならない状況になることです。そのため、治療者も余裕を持つことができます。

リフテクティング 患者に治療者を観察してもらう

リフレクティングとは、患者さん本人の前で、治療者同士が輪になって向き合い、今後の治療方針などを話し合ったりする場のことです。慣れていないとこの場が一番奇妙で不自然と思われることでしょう。

患者さんに治療者を観察してもらうことにより、面と向かってアドバイスされるよりも、素直に話が聞けるのです。それが患者さんの主体性を取り戻すのに大いに役に立ちます。自分で判断していいという余裕や余白、スペースを感じることができます。

リフレクティングで大切なのは、「患者さんのいないところで患者の話をしてはいけない」という決まりを守ることです。得てして、治療者は患者のいないところで、今後の治療方針を話しがちですが、むしろ患者本人を加えて話し合うことで、患者の尊厳や、知る権利を尊重することができます。

こうして、患者本人の傷ついた主体性が回復されていきます。

 ハーモニーではなくポリフォニー

自分の考えに相手を「同一化」させようと人は、説得尋問𠮟咤激励アドバイスをついついしてしまいがちです。これは、ダイアローグ(対話)ではありません、ただのモノローグ(独り言)でした。相手と自分は決定的に違うことを認め合い、他者と自分を安易に同一化させないことがポリフォニー(多声性)と言えるでしょう。それぞれの主体性を溶かし合わせて、一つにまとめ上げる事とは反対です。調和を目指すものではありません。自分と他人がいかに違っているかを理解し、受け入れることこそ大切であり、相互性があるものこそが対話であります。

私は、この5つの柱の中で大変興味深いと感じたのは、リフレクティングです。話す人と聞く人を分ける、患者とその家族の間に透明な壁を想定し、患者の目の前で専門家同士だけが話します。そのとき、患者とその家族は聞くことに徹します。そのあとに患者とその家族が感想を話します。その繰り返しがリフティングになります。リフレクティングは、「アドバイスをするための時間」ではありません。対話を広げるために話す時間になります。このように、普通の会話とは一風変わった対話をすることで、患者の主体性が取り戻されていきます。

基本、傾聴する治療者側の人間は相手の話を聞き取ることに重きをおいているので、自分の話ばかりをしないようにと教育されます。しかし、オープンダイアローグでは積極的に治療者側も自己開示し、1対1の二者関係にならないので転移が起きにくく、対話をつづけることで治療が進んでいきます。薬物や電気ショックを使わないので、患者自身が改善していく過程、メカニズムを納得して治療を受けることができます。

オープンダイアローグはいわゆる急性期のときにも用いられる手法です。

例えば、急性期で暴力が出ている人の対応を齋藤環氏は経験していますが、無理に行動を制限しようとしたり、薬物治療をしようとしたりせずとも、「話を聞かせてもらいに来ました」といって訪れると患者は驚くほど素直にいろいろ話してくれます。

これは、措置入院を促すときにも、有効ではないかと私は考えます。

統合失調症の急性期の人は話が通じないという思い込みが私たちにはあります。

しかし、オープンダイアローグでは重症な患者でも話が通じることを実証しています。

「何か変なことをしたら隔離してやろうという気持ちの人が一人でもいたらうまくいきませんが、複数のメンバーがいて、患者さんに「あなたの話をぜひくわしくいろいろ聞かせてください」という姿勢でていねいにお願いすれば、とても熱心に話をしてくれます。

ひきこもりの人に使える手法

ひきこもり事例の対応にオープンダイアローグは非常に向いた手法といえます。

齋藤環氏が日本で最初にオープンダイアローグを試したケースは約10年ひきこもっていたケースですが、非常にうまくいったそうです。家族を巻き込んでするオープンダイアローグは家族支援に最適ですし、「本人の状態を無理にかえようとしないので、ひきこもっている人は抵抗を感じにくく、自分を変えようとしない対話であることがわかると拒絶しないでいられます。

結論ありきで、働けといって説得や議論をしたりすると当事者の力をかえって奪ってしまうからです。よかれと善意でやっていたことが有害であり、なんの利益ももたらさないといえます。それをきっぱりやめることで、安心して発言できる空間を作り、対話をすることでひきこもり当事者の主体性と自発性を回復させ、家族全体を再生させます。重い会話をするのではなく、日常の芸能人の話題やスポーツ選手がどうしたかという、軽い雑談を延々とするだけでいいのです。そうすることで自然と改善に向かっていくのです。

オープンダイアローグが精神科医療のなかで広がらないのはどうしてでしょうか?

広がらない最大の理由は、まず「誰も信じていないから」だと思います。医学教育は圧倒的に薬物治療主義ですし、「統合失調症は精神療法だけでは治りません」ということが常識になっています。オープンダイアローグはかなり新しい「手法」で、その衝撃に医療者自身が耐えられないことが大きいと思います。

発祥の地のフィンランドでも、全国で広がっていません。トルニオという人口6万の小都市しか広まっていないのです。それだけ精神科というものは保守的だということです。通常の医療は診断があって初めて治療法を選択する段階を踏むので、多くの医者が「正しい診断ありき」から治療を始めているところがあります。病気の特定することすらいらないオープンダイアローグは画期的な手法であります。

オープンダイアローグは日本で保険適用の医療になる可能性はあるのか?

現在、オープンダイアローグは保険診療を適用されていないので自費になります。

医療機関によって異なりますが、1時間で1万円から2万円程度かかります。

認知療法・認知行動療法」が2010年4月から診療報酬の対象となり、保険が効くようになりました。オープンダイアローグも、長期戦にはなるかもしれませんが、保険適用になることを期待したいですねと、齋藤環氏はおっしゃっています。

保険適用になったら、日本の精神医療の分野はかなり前進するのではないかと私は感じます。

今回、ご紹介した本書がロングセラーになっている状況からして、日本の医療関係者はオープンダイアローグに強い関心を示されています。

将来的に日本でオープンダイアローグを定着させるためにも、その手法を確立し、そこに携わる人材の育成などを日々進めている状況です。

さいごに

統合失調症の患者の異常体験を聞くことは、症状が悪化するのでやめておきなさいという指導がなされていました。それが従来の医学心理教育でした。私も統合失調症の患者の一人として話を聞いてもらえないことは辛いことだと感じます。

しかし、オープンダイアローグでは複数人で強い興味と関心を持ちながらできるだけ多角的に掘り下げて聞いてもらううちに改善が起こり始めると齋藤環氏はおっしゃっています。それは幻聴や妄想にも対応可能です。

私も人と対話をしているときに自分の主観と相手の主観を交換することで、共感したり、物の見方が変わってきて癒される経験をしたことがあります。オープンダイアローグとはそういったものだろうと予想しています。

私もオープンダイアローグをしてみたくなりました。この記事を読んで興味がわいた方は、下記のサイトからアクセスするとオープンダイアローグの詳しいやり方がしるされています。ぜひ、やってみてください。

オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン(ODNJP) オープンダイアローグ 対話実践のガイドライン 第 1 版

参考サイト

日本経済新聞 メンタルケア新手法 オープンダイアローグが効くワケ

 

 

noteでも書いています。よかったら、読んでみてください。

 

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