脳性まひでの【産科医療補償制度】の明暗や、新たな治療法・臍帯血などについて。 

脳性まひ 臍帯血

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こんにちは、翼祈(たすき)です。

毎年10月6日は「世界脳性まひの日」です。

この日は建物などが緑色にライトアップされます。

脳性まひとは、お母さんのお腹の中にいる間から、生後4週間までの間に発生した脳への損傷によって引き起こされる運動機能の障害です。脳への損傷の主な原因としては低酸素、脳血管障害、感染、核黄疸などが挙げられます。重症度によって症状は変化しますが、身体の反り返りやてんかん、手足のまひ、視覚障害などが現れます。

1000人あたり2人程度が発症すると推定されています。

根本的な治療法は確立されておらず、リハビリによる対症療法が主流となっています。

脳性まひで産まれてきたお子さんが、満1歳の誕生日から満5歳の誕生日まで受けられる【産科医療補償制度】が2009年1月に創設されましたが、2022年1月に制度の改定で、改定前の基準の時に生まれ、補償を受けられる制度の対象外になるお子さんが出て来たりと、問題になっています。

また脳性まひの新たな治療法として、妊娠中のお母さんと赤ちゃんを結ぶ臍帯と、胎盤の中に含まれる血液で、ご兄弟の『臍帯血(さいたいけつ)』を使う方法が確立されつつあります。

今回は【産科医療補償制度】の明暗、臍帯血のことについて、お話します。

【産科医療補償制度】の明暗

画像・引用:10月6日は「世界脳性まひの日〜Warm Green Day〜」街とSNSをグリーンで染めて、もうひとつの「みどりの日」を広めよう! PR TIMES(2022年)

出産の際に発症した重度の脳性まひのお子さんと、その家族に総額3000万円を補償する【産科医療補償制度】において、個別審査の手続きで補償の対象外に置かれた家族で構成された団体が2022年8月5日、厚生労働省に救済への検討を要求する要請書を提出しました。

【産科医療補償制度】は2009年に創設されました。

出産した際に重い脳性まひを発症したお子さんの介護や住宅の改修には多くの費用が必要となり、この家族の負担を軽減することが目的の1つです。

ですが2022年1月に【産科医療補償制度】の補償の対象範囲が変更されたことで、別の課題が浮上しました。これまで28週から32週未満で生まれた早産などのケースには個別審査が必要となり、出産した時の低酸素状態などの基準を満たさないケースでは補償の対象外でした。

しかし、【産科医療補償制度】を運用する財団法人「日本医療機能評価機構」は2020年12月に報告書内で明らかにしました。個別審査の基準である低酸素状態を示す数値に関して「分娩の際に発症した脳性まひの有無を判断することは不可能だ」と懸念しました。これまでの基準で対象外となったお子さんの99%は、【産科医療補償制度】の補償対象となる出産の際に発症した脳性まひだと分かりました。

これを受けて「日本医療機能評価機構」は個別審査の廃止を決めました。28週以降の出生であったら原則補償対象となり、新しい基準を2022年1月以降に生まれたお子さんから適用することにしました。

このことを受けて、出生時期で補償が受けられる、受けられないが分かれる事態に発展しました。2022年1月より前に生まれ、個別審査で対象外となったお子さんは全国に550人近くいると推定されます。

28週以降なら先天性のケースを除き全員補償対象となりますが、これはあくまで2022年1月以降に生まれたケース。それ以前だと対象外のままです。

「なんで息子は対象外のままなんだろうという思いがずっと晴れない」。兵庫県に住む会社員の女性も【産科医療補償制度】から外れた一人でした。長男には脳性まひがありますが、当時の個別審査で基準を満たしませんでした。新しい基準なら28週以降を満たしており、補償金が支給されたのだろうと吐露します。

女性は「支給されていれば、高額な医療も補助金で受けることができ、車椅子が通れる家もリフォームも可能でした」。家のローンがあるため仕事を続ける予定ですが、先が見通せません。 

兵庫県姫路市に住む女性も小学5年生の長男に脳性まひがあります。当時の個別審査では認められず、息子のリハビリのために仕事はやめなくてはいけませんでした。成長した長男を車に乗せるのも一苦労ですが、福祉車両は高額でとても買えません。「息子のために何でもしてあげたいですが、経済的なストレスを常に抱えています」。

県外の病院への交通費を少なくするために、病院の近くにバリアフリーの中古物件を購入しましたが、通常の新築物件ほどの金額が必要となりました。女性は「補償が認められ、最新の治療を受けられていたら、息子がこれ以上辛い手術を何度もしなくて済むのではと思うと、胸が痛いです」と涙ぐみました。

参考:出産で脳性まひ、補償されない子への救済策を 親たちが厚労省に要請 朝日新聞デジタル(2022年)

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ここからは、そんな脳性まひの治療法をめぐる研究についてまとめていきます。

脳性まひの治療法、『臍帯血』

脳性まひのお子さんに対し、きょうだいの臍帯血に含まれる細胞を使用して、脳障害の改善を担う再生医療の臨床研究を高知大学が2020年より開始され、厚生労働省の再生医療等評価部会が2020年9月24日に了承しました。

対象となるお子さんは脳性まひと診断された1歳以上7歳未満の8人で、民間バンクに凍結保存しているきょうだいの臍帯血をその子に輸血します。免疫の型が一部適合することが条件となり、輸血してから2年間、安全性や運動障害の改善効果などを分析します。2020年内に1例目の臨床研究の開始を目標に掲げています。

臨床研究を担当する教授の男性は「夢のある脳性まひの治療法を全国へ届けたい」と意気込みを口にしました。

臍帯血は、血液の元である造血幹細胞を多く含んでおり、白血病の治療などに使用されてきました。それ以外にも色んな細胞に変わる幹細胞が含まれ、再生医療への応用に期待が高まります。幹細胞から発出される物質には損傷したエリアの炎症を抑制したり、血管や神経のネットワークを新たに構造する仕組みがあるとされ、脳障害などの改善を掲げる研究がアメリカで加速しています効果が一定程度確認されているといいます。

高知大でも脳性まひのお子さんに本人の臍帯血を使う臨床研究をしていて、アメリカで臍帯血を使った脳障害の治療法が確立されたことを受け、2009年に医学部付属先端医療学推進センターに臍帯血幹細胞研究班を設置し、研究をスタートしました。

臍帯血幹細胞研究班によりますと、2017年から患者自身の臍帯血を輸血する臨床研究を実施し、「寝たきりの状態だったのが補助器で歩けるまでになった」「コミュニケーション能力が鮮明に向上した」という効果が一定程度確認されました。

基礎研究を担当する教授の男性は「他人の血液を使うことなど、様々なハードルがありましたが、長年研究を継続したことが認可に結び付いた」と説明します。臍帯血が保管されているケースは限られており、もしきょうだい以外にも他人の臍帯血が効果が見込まれると、治療法の幅が拡大するとします。

患者家族らで構成された「さい帯血による再生医療推進全国ネット」代表で、次男が脳性まひの男性は「臍帯血は第一関門を突破し、実現への大きな前進です。待っている人が多くいて、一日も早く実現して貰いたいです」と期待を込めました。

参考:臍帯血を脳性まひの治療に活用 高知大が臨床研究開始 朝日新聞デジタル(2020年)

障害がないことに越したことはないけど、

私も左耳に感音性難聴があっても、めちゃくちゃ喋るので学生時代は障害者って感じには扱われていなかったです。私が障害者と自覚したのは、発達障害だと診断を受けてから。元々健常者ではなかったものの、どちらかと言えば健常者に近い生活を送っていたので、診断を受けて、完全に障害者として、健常者との線引きがされた気がしました。

障害も生まれつきもあれば後天的なものもあります。補償が受けられる位、障害が重くても、生まれた年が該当しないなら、補償は受けられない。それは凄く悲しいです。

そんな中でも兄弟からの『臍帯血』は希望の光だと思いました。私が参考記事に書いたのは2020年ですが、それから2年後の2022年、世界中でこの臨床試験が進められているそうです。

今後もさらなる脳性まひの研究や治療法の確立を進めて欲しいですね。

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2 件のコメント

  • 記事を読ませていただきました。脳性マヒで生れたて子どもたちに明るい光がみえてきたらいいですね。これからも楽しみにしています。

    • ハリネズミ様。
      コメントありがとうございます。

      脳性まひは補償が受けられなかった方も多かったりと、それが問題でしたが、臍帯血という治療法が徐々に確立されつつあることは、本当に喜ばしいことですね。

      これからも頑張って記事を書きますので、読んで下さると嬉しいです。

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    ABOUTこの記事をかいた人

    左耳感音性難聴と特定不能の発達障害(ASD,ADHD,LD全ての要素あり)、糖尿病、甲状腺機能低下症、不眠症、脂漏性皮膚炎などを患っているライターです。映画やドラマなどのエンタメごと、そこそこに詳しいです。ただ、あくまで“障害”や“生きづらさ”がテーマなど、会社の趣旨に合いそうな作品の内容しか記事として書いていません。私のnoteを観て頂ければ分かると思いますが、ハンドメイドにも興味あり、時々作りに行きます。2022年10月24日から、AKARIの公式Twitterの更新担当をしています。2023年10月10日から、AKARIの公式Instagram(インスタ)も2交代制で担当。noteを今2023年10月は、集中的に頑張って書いています。昔から文章書く事好きです、宜しくお願い致します。