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こんにちは、翼祈(たすき)です。
海外では映画界のジェンダーギャップの改善の動きが出てきました。アメリカで2017年、性暴力を受けた女性たちが映画プロデューサーを告発した事件を機に「#MeToo」運動が起こりました。男性が中枢を占める業界の構造改革が必要との意識が高まりました。
米アカデミー賞は2024年から、俳優やスタッフに女性や非白人、LGBTQなどを一定程度含めることを作品賞の選考基準にします。韓国も2016年ごろから女性映画人が中心になって声を上げてきたといいます。2019年の興行収入トップ11作品のうち4本は女性監督でした。
その一方で、日本の映画制作現場での、女性の登用が進まず、ジェンダーギャップが放置されています。なぜなのでしょうか?それは日本の映画界の女性の比率が限りなく少ないことにありました。
今回は日本の映画界のジェンダーギャップについて、考えていきます。
日本の映画界の埋まらない、ジェンダーギャップ
日本映画業界のジェンダーギャップが深刻な問題です。調査を実施した「Japanese Film Project(JFP)」は「課題が明らかに鮮明なのに変換させようとしない。女性の人権に向き合っているとは思えない」と苦言を呈しています。
世界的潮流であるジェンダーギャップの解消に後手を回れば、日本映画の海外映画祭での評価に大きな影響を与え、多様な作品の誕生を妨げかねません。
JFPは、2022年7月上旬の記者会見で2021年の調査結果を明らかにしました。2021年公開の日本映画の監督471人での女性の比率を調査した結果、「2021年の興行収入10億円以上の実写の劇場公開作品の16本中、女性監督はなし」「過去4年間で、大手4社の実写の劇場公開作品の女性監督は20人に1人だった」。
ヒット作品と称される興行収入10億円以上の実写邦画に関して、過去21年間に遡り監督のジェンダー比率を調査しました。796本の中で、女性監督の作品は25本と、たったの3.1%に過ぎませんでした。大手4社は、2022年内に制作・配給を予定の42本の映画の中でも、女性監督の作品は4本に留まりました。
JFPは2021年から同様のジェンダー比率の調査をしていて、2019年は映画全体の9%、2020年は映画全体の11%で、ジェンダー比率に大きな変化は見受けられませんでした。照明、録音、編集などのジャンルでも、過去3年間で女性比率に大きな変化はありませんでした。
映画制作配給を担当する東宝、松竹、東映、KADOKAWAの大手4社で、役員、執行役員の女性割合は計102人中のわずか6人のみです。映画の制作現場では、監督以外にも、撮影や照明など日本の映画業界内で地位が高い役職での女性比率においても1割前後と、2019~2021年はほぼ横ばい傾向でした。
ジェンダー比率には過酷な労働条件の影響もあります。スタッフにはフリーランスが大半で、長時間・低賃金の労働を重んじられており、女性が継続して働き続けられる環境が整備されていません。
女性のキャリアアップが阻害される環境を「ガラスの天井」と称されています。映画界では、フィルムの素材になぞらえて「セルロイドの天井」と称されてきました。
JFPの代表理事で兵庫県豊岡市在住の映像作家でもある歌川達人氏は「女性が日本の映画界に少ないと社会的に認知されても、変化を感じません。積極的にメスを入れていかないと改善されることはまずありません。日本の映画業界の調査ではありますが、このジェンダー比率は日本社会全体の構造を反映している」として疑問視します。
北海道出身の歌川氏は京都にある大学で映像を専攻した後、国内外でドキュメンタリー作品を制作してきました。同兵庫県豊岡市を中心に開催される[豊岡演劇祭]で撮影に関わったことをきっかけに2020年秋、同兵庫県豊岡市に移住。自身の作品作りに意欲を燃やし、地域での上映会なども継続しています。
無理な労働で成り立つ日本映画界の撮影現場や、動画配信サービスの拡大で大変化を見せる産業構造に、ずっと問題意識を抱き続けていました。日本映画界のジェンダーギャップや労働環境の改善を訴え続け、日本映画界の実態を可視化して問題点を訴える海外の取り組みを参考にして、実態調査の結果を理解しやすく公表して政策提言する非営利団体JFPを、映画監督の西原孝至さんらと一緒に2021年に発足、2022年2月に法人化しました。
歌川氏は、「(日本の映画界は)映画制作の意思を決定出来る層に女性はいません。女性が少ないことは共通の認識なのに、この2、3年JFPで調査して変化が見受けられないことが今回のメーンテーマです。大手4社の女性の役員の割合はむしろ減少していました。映画会社として、ビジネスと女性の人権の問題にどう対峙していくのか」と提言します。
日本映画界の制作現場の「男性優位」な面は、これまでの歴史が大きく関係しています。映画研究者の鷲谷花さんによりますと、1960年代まで撮影現場に勤務していたのは、映画会社直営の撮影所と雇用契約を交わした賃金労働者でした。労働組合を組織化し、就業規則も厳しく監視を行いました。当時の日本の映画業界の採用が男性のみだったことも、現在まで映画の撮影現場の雰囲気に大いに影響を与えているといいます。
1980年代以降、日本映画の衰退で制作部門は外注化が加速し、現場はほとんどがフリーランスになりました。契約書もない中での低賃金の長時間労働が常態化していきます。トイレや宿泊施設が男女共用のケースも大半で、JFPの調査に対し、ある女性は「山奥での映画の撮影で、使用した生理用ナプキンをポリ袋に入れて持ち帰りました」と回答を寄せました。劣悪な労働環境も女性が日本の映画界で働く上での大きな障壁となります。
衣装スタイリストやメークアップアーティストの女性比率は比較的高い方ですが、JFPが調査のベースとした「映画年鑑」では、衣装の記録が残されたのは2021年の作品全体の3割にしか過ぎません。歌川氏は「衣装、メークなど花形でない役職への配慮に欠けている」と述べます。
興行収入を問わず、2021年に劇場公開された作品を調査した結果、女性監督の割合は12%でした。ほかの役職の女性比率も低く、撮影監督は11%、編集20%、脚本19%に留まりました。歌川氏は「子育てのしにくさや体力的な面で、日本の映画界に関わる女性は多くても、キャリアとして働き続けられる人はまだまだ一握りだ」と懸念します。
参考:ジェンダー平等を掲げても“実体が伴わない”日本の映画祭。「クオリティ優先」と見落とされる女性監督 ハフポスト(2022年)
映画監督の是枝裕和さんから応援コメントも寄せられました。「このままいくと日本映画界は手遅れになる」と日本映画界の現状に警鐘を鳴らし、「若いスタッフの人材不足、女性スタッフが結婚する時や子育てに入る時に、退職せざるを得ない程の拘束された長時間労働。自分の作品の現場でも今、1番の課題」と話し、日本映画界のジェンダーギャップを訴え続けるJFPの活動の重要性を強調しました。是枝さんらは2022年6月、フランスや韓国などの映画専門の支援機関を念頭に置いた日本映画界の労働環境を改善をすべく新団体を設立しました。
フランス映画業界をモデルケースとし、日本映画界に対し、興行収入などの一部を、女性の映画制作や労働環境改善のサポートに振り分ける制度の導入を促しています。
この問題については、
映画にそこそこ詳しい私は薄々気付いていました。確かに女性監督は少ないです。私は何年か前まで映画の舞台挨拶に行くのが趣味でしたが、舞台挨拶で映画の女性監督にお会いしたことはほとんどありませんでした。限りなく0に近い、それ位記憶にもほとんどありません。
日本映画界で主流の少女漫画の実写化、あれもイメージ的には女性監督が作ってそうなイメージがあるかもしれませんが、そうではありません。脚本は女性だったりしますが、撮影はほぼ男性の監督が演出しています。同じ人が違う作品の少女漫画の映画を撮ることだって、決して珍しいことではありません。
日本は本当にジェンダーギャップの差が大きいです。色んな業界がこの問題を孕んでいるので、一気に一掃するのは並大抵のことではないでしょう。映画を愛する者として、この問題も緩和されて欲しいなと思います。
noteでも書いています。よければ読んでください。
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