アスリート盗撮で、性的に扱われる女性スポーツ選手。国は撮影罪の審議を急ぐ。 

アスリート盗撮

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こんにちは、翼祈(たすき)です。

スポーツ選手を性的な意図を持ちながら撮影する「アスリート盗撮」。軽装の女子スポーツ選手が競技をしている最中に狙われ、胸やお尻を拡大して撮影された写真はSNSに投稿されるだけでなく、卑わいな言葉を添えて拡散するケースも次々と起こっています。

女性スポーツ選手の性的な画像のSNSなどでの拡散被害は長くスポーツの現場で大きな問題とされてきましたが、ここ数年社会問題化し本格的な対策の導入が始まったのは、選手自身の訴えが契機となりました。

2020年夏、陸上の日本代表経験もある複数の現役女子スポーツ選手が、競技会場で胸や下半身など身体の一部をアップにした写真を無断撮影されたと言い、日本陸上競技連盟アスリート委員会に相談を寄せました。被害が中高生にまで至ることが確認できて、競技関係団体は事態を重く受け止めました。

JOCや日本スポーツ協会など7団体は無断撮影などの行為を「スポーツ選手への動画・写真による性的ハラスメント行為」と定義し、2020年11月、被害防止への対策をするとの共同声明を明らかにしました。特設サイトをオープンさせ、SNSなどでの投稿や競技会場での盗撮行為に関しての情報提供を呼びかけ続けています。

東京五輪では、体操女子のドイツ代表が、レオタードではなく足首までを見えない様にするボディースーツ「ユニタード」を着て競技に臨みました。身体の露出を極力無くして競技をし、深刻化する被害と問題が再度注目されました。

盗撮行為は刑事法に規定がないことで、各都道府県での迷惑防止条例などで強化されています。ですが、衣服で見えない身体や下着を無断撮影する行為が対象ともあり、ユニフォーム姿の撮影自体は罪に問われない恐れが非常に高いとします。

今回はアスリート盗撮を巡る、京都府の「Abelia(アベリア)」と警告動画の公開、下着が透視しにくいユニフォームの製造、撮影罪など、様々な視点からこの問題について考えていきたいと思います。

京都府でアスリート盗撮問題を考える「Abelia」発足

バレーや陸上などの女子選手を性的な目的で撮影する「アスリート盗撮」を防止しようと、京都府警察が取り締まりを強化しています。2022年7月には京都市内の大学生で構成された女性安全対策チームを発足しました。関係機関とも共同で深め、対策強化に乗り出しています。

2022年7月下旬、京都府京都市右京区にある競技場「たけびしスタジアム京都」で開催された高校生の陸上競技大会に際し、京都府警察の警察官およそ10人が私服で近辺を歩き、確認しました。「たけびしスタジアム京都」の場内は一般観客の入場が許可されておらず、周りから望遠カメラなどでスポーツ選手が狙われる恐れがあるためでした。開催期間中のトータル3日間で「たけびしスタジアム京都」内にカメラを向けるなどし、7人が職務質問を受けました。

京都産業大学と京都府警察は2022年7月、学生35人で構成された女性安全対策チーム「Abelia」を立ち上げました。アスリート盗撮の啓発グッズ開発や安全対策のガイダンスにも励みます。「たけびしスタジアム京都」の主催大会にも「Amelia」のメンバーが訪れ、不審者を目撃したら通報する様に発信する啓発カードを選手の親御さんらに配布しました。

啓発カードを受け取った女性には陸上競技をしている中学3年の長女がいて、「娘はユニホームの下に着用する下着の色にも神経を使っていて悲しいと言っています」と述べました。「Abelia」の代表の女子学生は「選手が安全に競技に集中可能となる活動を継続したい」と強調しました。

参考:アスリート盗撮 許すな 読売新聞(2022年)

「Abelia」と京都府警察がアスリート盗撮の警告動画を公開していました

「アスリート盗撮」の被害を防止したいと、京都府警察は、YouTubeなどでユーザーの閲覧履歴などをベースに、いわゆる「ターゲティング広告」の広告が自動的に表示される仕組みを活かし、「アスリート盗撮」に関心が持つ人に盗撮は犯罪だと警告動画の配信を行っていました。

2022年12月13日から警告動画の配信がスタートしたのは、京都産業大学の学生で構成された「Abelia」と京都府警察が共同で制作を行った、15秒と30秒の動画の2本です。YouTubeでは15秒間の広告を1万5000回、Instagramでは30秒間の広告が15万回配信されました。

警告動画には京都産業大学に通学する学生のスポーツ選手たちが自身が出演し、ハンマー投げや陸上などの競技シーンとと一緒に「アスリートへの盗撮行為は刑事責任を負います」という警告文が表示された後で、「卑劣な行為は絶対に許さない」と警鐘を鳴らしています。

2023年1月13日までの間、京都府内で在住するか滞在する25~64歳の男性で、「盗撮」「アスリート 女子」「アスリート」「アスリート 盗撮」などと繰り返し検索している男性が、 YouTubeかInstagramを利用すると警告動画が表示される仕組みです。

参考:「アスリート盗撮」犯罪だと警告する動画の配信開始 京都府警 NHK NEWS WEB(2023年)

警告動画を制作した「Abelia」のメンバーの学生は「肌の露出が多いユニフォームもありますが、競技のために考えられて制作されたもので、人に肌を見せる目的ではありません。広告を表示することで犯罪行為と知らせ、盗撮をする人が少しでも居なくなって欲しいです」と語りました。

動画に出演した「Abelia」のメンバーの女性は、「少しずつ盗撮をする人がいなくなり、選手たちが競技に集中できる環境になれば」と述べました。

京都府警察本部の人身安全対策課長の男性は「アスリート盗撮での取締まりと啓発を強化し、被害を撲滅させていきたいです」と説明しました。

ミズノが赤外線を通さないユニフォームを開発

アスリートが悩む盗撮被害。特に悪質なのが、赤外線カメラを使ってユニホームを透かし、下着や体まで盗撮する事例だ。そんな被害を防止しようと、スポーツ用品大手のミズノが特殊な生地の開発に取り組んでいる。

一般的なユニホームに使われる裏地を、視力検査などに使われる黒い「C」字模様が書かれた紙にかぶせる。肉眼では模様は透けて見えないが、赤外線カメラで撮影するとはっきり写る。開発中の布をかぶせてみた。こんどは赤外線カメラで撮影しても模様はまったく見えなかった。

赤外線を吸収する特殊な素材を生地に織り込んでいるためだという。

引用:アスリートを盗撮から守れ ミズノ、赤外線透け防止生地を開発 朝日新聞デジタル(2023年)

アスリート盗撮に適用される「撮影罪」の審議、どこまで進んだ?

下着や下半身などを盗撮する悪質行為を全国一律で取り締まる「性的姿態撮影罪」を新しく設立する法案の審議が現在国会に提出されています。

スポーツ選手への盗撮は「ユニフォームの上から撮影されていて、性的な目的での線引きが非常に難しい」として置き去りにされた環境にありますが、その反面スポーツ界がアスリート盗撮の撲滅へ声を高め、続々と逮捕者も出ています。

2023年4月15日に開催されたシンポジウムでは、バレーボール元女子日本代表の大山加奈さんや弁護士などが「残された課題」として法整備の必然性を訴え続けました。

ユニフォームの上からの盗撮だから問題が起こらないとは、到底言えない話です。線引きが困難だからということで法規制を諦めてはいけない問題です」。弁護士の男性は選手の下半身や胸など身体の一部をアップしたネット拡散と盗撮被害、法律で処罰対象となる諸外国のケースもPRした上で決意を表しました。

今まで盗撮行為は迷惑防止条例違反などで摘発されてきましたが、条例は各都道県の自治体で罰則や対象行為が違うことから、国会での今成立を目指す「撮影罪」に関係して、動画・画像の拡散や提供も罰則を与えることが含んだ一方で、競技中のユニフォーム姿などの盗撮行為は法規制には入りませんでした。

参考:アスリート盗撮、置き去り 「撮影罪」新設へ、元選手ら訴え 東京新聞(2023年)

2023年8月のインターハイ

北海道を中心に開催されたインターハイでは、競技会場に沢山の観客が観に来ている中で、大会関係者らが女子の選手たちへの盗撮行為を防ぐのに目を光らせていました。

また、不審者を観客が通報する仕組みも初導入しました。観客席の貼り紙に掲示されたQRコードから入力フォームに状況を進めると、職員が不審者と見られる人のところへ行って、何の景色を撮影したのかどうかを確認する仕組みです。

参考:女子選手への盗撮行為は「アウト」…防止へ職員見回り、不審者通報システムも導入 読売新聞(2023年)

2023年、夏の甲子園

アルプススタンドで球児たちを応援するチアリーディングの部員たちが猛暑対策以外にも盗撮対策の両立で苦労を重ねています。阪神甲子園球場で開催している夏の甲子園は、学校が行っている対策では、チアリーディングの部員たちが長袖を着用して肌の露出を抑えるといった、近年問題化しているアスリート盗撮の防止をしようとしています。

暑すぎて汗でベタベタします。長袖は腕に服が張り付いてパフォーマンスしづらく、本当は着たくありませんが、長袖を着用しているのと着用していないのとでは、アスリート盗撮対策で安心感がかなり違います。盗撮行為に対して気を配りつつ、選手を応援しなくちゃいけないのは本当にやりづらいです」と、茨城県にある土浦日大のチアリーディング部の3年生の部長の女子生徒は複雑なその胸の内を吐露しました。

土浦日大のチアリーディング部の部員たちは、赤色をベースとしたユニフォームの下に、白の長袖のアンダーシャツを身に着けていました。長袖のアンダーシャツを身に着けたきっかけとなった出来事は、2023年の夏の茨城大会でした。2階席がある球場で応援した時、上から観客がチアリーディングの部員たちを盗撮するケースが2、3回程度確認できました。

持参していたバッグの中にカメラを仕込んで撮影するなど、悪質なケースもありました。監視役の教員が観客に注意をし、席を移動して貰うなどの対応を図り、その場はアスリート盗撮は収まりましたが、危機感が募った出来事になりました。

甲子園ではアスリート盗撮を予防すべく、長袖のアンダーシャツを着用することが決定されました。従来長袖は冬用のみ着用でしたが、酷暑の中で応援することは身体と体力が持たないと判断し、UVカット効果を持った薄手の素材の長袖のアンダーシャツを新規で発注をしました。

チアリーディング部の顧問の女性は「酷暑でも長袖を身に着けることは仕方ありません。どこでどんな部分を撮影されているか分からないこともあって、アスリート盗撮の対策は手探り状態で、厳しいです」と頭を抱えてしまう事案です。

ですが、屋根がない甲子園のアルプススタンドは半袖のユニフォームでも息苦しくなる程身体が熱くなります。酷暑対策として、イニング間の水分補給を発信し、手持ちの小型扇風機を使うことを呼びかけたり、定期的に水をまくといった、できる限りのことを行いました。

2023年夏、ユニフォーム以外のアスリート盗撮の対策に励む学校も他にもあって、土浦日大はチアリーディングの部員たちの立つ位置を地方大会から変更しました。土浦日大に通学する生徒や日頃から面識を持つ父母会の間にチアリーディングの部員を配置することで壁ができて、写真を盗撮されることが多く見られた内野席などから遠ざける様に工夫を凝らしました。土浦日大、愛媛県の川之江の2校はどちらも10人程度の監視役の教員をアルプススタンドに配置し、怪しい行動をした人には声がけする様にしました。

盗撮は犯罪行為に繋がる社会問題とされているにも関わらず、アスリート盗撮の被害は後を絶ちません。土浦日大と川之江の2校とは別のあった試合では、1人の男性がアルプススタンドと内野席を隔てているフェンスを這う様に歩きながら、内野席側から応援するチアリーディングの部員にカメラを向けていました。監視役の教員がその男性に声をかけましたが、男性は少しその位置から移動して撮影を続けました。そのことで、球場の警備員と一緒に注意をすると、その男性は自分の席へと戻っていきました。

本来守られなくてはならない生徒が自分たちで身を守るしかないのでしょうかー?グラウンドで熱戦を繰り広げる同級生たちを安全、安心に応援が可能な様に、観戦マナーが今問われている段階です。

参考:「本当は長袖なんて…」 盗撮防止に悩むチアリーダー 夏の甲子園 毎日新聞(2023年)

アスリート盗撮の取り締まりの盲点

2023年1月15日に京都府京都市内で開催された全国都道府県対抗女子駅伝で、京都府警察が初となる捜査員を配置して警備を強化し、沿道で私服警察官が不審な撮影を行う人に目を光らせました。

開催当日は、スポーツ選手の下半身や胸を執拗に撮影する人がいると捜査員が声をかけ、条例違反が疑われるケースは任意同行で撮影データの確認を求め、削除をお願いしました。アマチュア写真家や沿道で応援する市民らでの一般的な撮影はこれまで通り自由に撮影できました。

集客での事業収入が避けられないプロに対して、学生スポーツ団体などアマチュアは事情が違います。大阪府大阪市東住吉区にある大阪陸上競技協会は主催大会で、学校や選手の親御さん、部活関係者を対象に撮影許可証を発行し、撮影許可証のない人の撮影を禁止しました。それと同時に、電光掲示板や看板などで不審な人物を目撃した時は、大阪陸上競技協会へ通報するよう注意喚起を促しています。

それ程対策をしていても、うその身分や偽名で撮影許可証が申請された事例があったとし、同大阪陸上競技協会の担当者は「悲しくなる話ですが、これからは身分証明書の提示なども求める必然性が生じます」とさらに撮影許可でのルールの厳格化も考慮しています。

また、新型コロナウイルスの感染拡大してからは「プロ、アマを関係なく、観客の入場制限などでアスリート盗撮の被害は一時的に緩やかになっていました」とも指摘し、コロナ明けで入場制限も廃止されると、「再度アスリート盗撮の被害が拡大する恐れがあります」として関係者は危惧しています。

アスリート盗撮対策で、2023年のセンバツで、甲子園で応援に立つチアリーダーが、スカートタイプではなく、半ズボンタイプに変更していた高校もありました。

アスリート盗撮で2022年に逮捕者が出ましたが、怪しい動きをする人に声がけしても、「保護者です」と押し通され、検挙が難しいのが大きな問題となっています。社会問題であっても、なかなか解決へと繋がらない対策。問題解決に向けて、多方面での協力が求められていますー。

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WEB特集 ただ、走りたかっただけなのに…アスリート盗撮被害の実態 NHK NEWS    WEB(2021年)

制限か、緩和か アスリートの性的画像、絶えぬ被害 選手保護とファン獲得の間で苦心 神戸新聞NEXT(2022年)

noteでも書いています。よければ読んでください。

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5 件のコメント

  • 先日のテレビドラマ『ラストマン』でも、その問題を取り上げていましたが、こうした動きが実際に進んでいるのですね。

    • 堀田哲一郎様。
      コメントありがとうございます。

      そのドラマは観ていないのですが、そうなんですね。今の現代社会の問題に切り込んでいるドラマ、だという情報は知っていました。

      • そうなんです。複雑な関係なのですが、福山雅治氏演じる全盲の FBI 捜査官を側面で支援している、今田美桜氏演じる女性警察官は、高校生時代に陸上の選手だったのが、撮影された写真をネットでさらされてショックを受けてスランプに陥っていたところ、全盲の捜査官が活躍していることを知って、点字を習って手紙を送っていて、今回初めてその捜査官が女性警察官にその話をしてあげていました。物語の展開は、痴漢冤罪者の会をしていた代表の女性が、自分の婚約者が冤罪をかけられて自殺してしまったために、痴漢に制裁を加えようとして、痴漢グループのメンバーを突き止め、蜂の毒と変わらない成分の毒薬を仕込んだ痴漢防犯スタンプに仕込ませて、次々に殺人を続け、捜査官たちが次の標的を突き止めて、超人的な聴力で電話の振動の発信源を特定し、側にいた痴漢冤罪者の会をしていた代表の女性を名指しし、次の停車駅で逮捕に到りました。その女性がこうした犯行を計画した動機に、迷惑防止条例違反では、痴漢加害者を重罪にできないということがあり、痴漢グループの情報を漏らした生き残りが性懲りも無く津殺を続けていた現場に、若い刑事が踏み込み、法律での撮影罪が検討中だ、と言い放っていたのでした。法律監修付です。

        • 堀田哲一郎様。
          詳細ありがとうございます。

          観ていないので詳しく内容までは知らなかったのですが、ドラマは日曜劇場の持つ強みというか、カラーが鮮明に出ているドラマだなと、お話を聞いて思いました。

          • 21日まで無料配信中ですので、よろしかったらどうぞ。https://tver.jp/episodes/ep10b384cm

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    左耳感音性難聴と特定不能の発達障害(ASD,ADHD,LD全ての要素あり)、糖尿病、甲状腺機能低下症、不眠症、脂漏性皮膚炎などを患っているライターです。映画やドラマなどのエンタメごと、そこそこに詳しいです。ただ、あくまで“障害”や“生きづらさ”がテーマなど、会社の趣旨に合いそうな作品の内容しか記事として書いていません。私のnoteを観て頂ければ分かると思いますが、ハンドメイドにも興味あり、時々作りに行きます。2022年10月24日から、AKARIの公式Twitterの更新担当をしています。2023年10月10日から、AKARIの公式Instagram(インスタ)も2交代制で担当。noteを今2023年10月は、集中的に頑張って書いています。昔から文章書く事好きです、宜しくお願い致します。