『バリアフルレストラン』で、現代社会が生み出した“障害”を体験し、気付くー。 

バリアフルレストラン

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こんにちは、翼祈(たすき)です。

『バリアフルレストラン』とは、車椅子の利用者が多数派になった逆転した架空世界を体験することで、社会が作り出す“障害”とは?、《当たり前》って何だろう?を問いかける体験プログラムとなります。

レストラン内は、車椅子の利用者に最適化された低い天井やテーブルなどが置かれ、参加者は「二足歩行者」という障害者として接客を受けることになります。

2020年2月に『バリアフルレストラン』のプレイベント版として3日間開催し、官公庁や企業約100団体、約150名の方に参加し、多数のメディアでも報道され、SNSでも大反響でした。

今回は実際に行われた、『バリアフルレストラン』について、事例を挙げます。

『バリアフルレストラン』の根幹

画像引用・参考:‘当たり前’を見直して社会の障害に気づく体験「バリアフルレストラン」川崎市立橘高校にて実施しました PR TIMES(2022年)

もしも、現実の社会で「障害者」と呼ばれている車椅子の利用者が多数派で、健常者と称される人が少数派の世界があったらー。そんな設定の仮想の世界を体験し、世の中でどんな“障害”を何が原因で生み出しているのかを理解する『バリアフルレストラン』というプログラムがあります。

共生社会実現に励み、サービス介助士の育成などを行う、東京都千代田にある公益財団法人日本ケアフィット共育機構が主催する「チーム誰とも(誰もが誰かのために共に生きる委員会)」は、車椅子の利用者と二足歩行者の立場が逆転した架空の世界が体験できるプログラム『バリアフルレストラン』を各都道府県の自治体や企業向けにリリースしました。

そこで感じた気付きは、真の共生社会の実現に大事な「“障害”の『社会モデル』」という考え方を学べます。

『バリアフルレストラン』は「あなたの『ふつう』はみんなの普通?〜いつもと違う視点から、いつもの社会を見てみよう〜」というタイトルで開かれました。

いらっしゃいませ。あ、二足歩行障害の人ですね?」。2023年2月11日、神奈川県川崎市にある宮前区役所で開かれたプログラム。天井高さ1.5mと、ほとんどの大人はかがみ続けなければならない空間に入店すると、車椅子に乗るスタッフから耳慣れない単語で声がけされました。対応に慣れていないスタッフは、奥に声がけして店長を呼びました。

お店に事前予約はしていないんですか?介助者の方はおられますか?二足歩行障害の人だと天井によく頭をぶつけてしまうので、ヘルメットを渡します。助成金で購入して、3つしかヘルメットないんですけどね」。

机は高さ約80cmで、段ボールで組み立てています。居心地の悪い姿勢で戸惑う『バリアフルレストラン』の参加者に対し、店長はさらに畳み掛けます。「この椅子、特注で購入したんですよ、1つだけね。お店側としても二足歩行障害の人に気配りをしているんです」。近くにあるテレビからは、二足歩行者という障害者が腰痛に悩まされる現実と、車椅子の利用者たちのみが受けられる医療費のサポートを話し合うニュースが流れていました。

店までどうやって来たんですか?電車も椅子とか二足歩行障害の人用はないし、1人で乗れなくて、大変だったでしょう?休みは何をされてますか?」。店長の質問に、その空間に慣れてきた参加者が「出かけるのが大変だから家の中にいます…」と返すやりとりもありました。腰がキツくなってきたところで『バリアフルレストラン』は終了しました。

動画・引用:チーム誰とも

参加した女性Aさんは「まずお店の入り口で『この高さを人が通るの?』と驚きました。私は『二足歩行』が当たり前だと思って生きていて、車椅子の利用者の目線では立っていなかったと気付かされました」と述べ、男性Aさんは「少数派にとって困難な社会でした。スタッフの態度が横柄だなと感じていましたが、これまでは自分たちが上から目線だったんじゃないかと思い、反省します」と語りました。 

小3の娘と『バリアフルレストラン』を訪れた女性Bさんは「不便さを体感し、改めてバリアフリーを考える機会になりました」と言いました。

『バリアフルレストラン』の中の現実と逆転した世界の中では、あくまで障害を持たない人への気付きを与える空間にしかすぎません。この日の店長役を任された神奈川県川崎市に住む会社員の男性Bさんは、脳性まひで中学生の時から車椅子生活です。

初めて障害者と扱われ、特別扱いされると違和感が生じると思います。相手に悪気はない言葉でもモヤッとした気持ちが残る、それを実感して頂きたいです。車椅子生活の経験を反映させました。それを知らないことが1番のバリアとなります。これからも楽しく学習できるきっかけを広げていきたいです」と説明しました。

『バリアフルレストラン』は、東京オリンピック・パラリンピックを前に共生社会の実現が叫ばれる様になった2019年夏辺りから「知識がなくても体験で障害者の気持ちが伝わるプログラムを」と、自身も全盲の東京大学大学院教育学研究科附属バリアフリー教育開発研究センターに勤務する星加良司准教授の監修で発案されました。

レストランでの体験や天井などの仕掛けについては、車椅子YouTuberの寺田ユースケ氏らの協力のもと、2020年2月、東京大で初めて行われました。

社会が生み出す“障害”に気付くことは、ここ数年、学校教育でも啓発が加速するSDGsのスローガンである“誰も置き去りにしない社会”の本質を学習出来る機会となります。

『バリアフルレストラン』に賭けた想いは、“障害”は個人に素因すると捉えがちな「個人モデル」ではなく、社会や環境で発生したという「社会モデル」の考え方です。『バリアフルレストラン』で体験したことでは、車椅子で移動する利用者が多数派で、それに適応させた環境が整備されているとすると、歩けないことは障害には該しません。逆に自分の足で歩ける人が少数派で、社会がそれに適していないと、二足歩行者は障害者となります。

同公益財団法人日本ケアフィット共育機構で企画発案から関わっている男性Cさんは「特に福祉に関わっている人たちなどが『社会モデル』の考え方を知らないことで、障害を抱える人を『サポートすべき人』『支えるべき人』だという視線で見がちになります」と懸念します。“障害”を生み出しているのは周りの環境の方だと認知して、障壁を社会から排除することが真のバリアフリーだと言えます。

参考:「車いす」多数派 「二足歩行」少数派になったら? 障害生み出す社会を実感 バリアフルレストラン 東京新聞(2023年)

『バリアフルレストラン』の参加者アンケートでは、「レストラン体験の仕掛けの中で“障害”の気付きが多かったもの」として、1位スタッフの態度、2位おしぼりが2つあること、3位天井の高さ、の順でした。そして、参加者の66%の人が“障害”の「社会モデル」に関して「理解しやすかった」と答えました。

この取り組みは、

以前書きました、DETこと障害者平等研修と似ているなと感じました。あの記事も、「どこに“障害”が隠れているか?」という研修で、意見交換をして、“障害”を出していました。

『バリアフルレストラン』は、話し合いを重ねて炙り出していくのではなく、実際に体験して“障害”を考えるタイプですね。

『バリアフルレストラン』を介して多くの人が、現在の社会がどれだけ多数派や“健常者”の《当然》を前提に作られてきたのかを体験したことで、【どうすれば社会をよくなれるのか】に、思いを馳せるきっかけをなればと思っています。

noteでも書いています。よければ読んでください。

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左耳感音性難聴と特定不能の発達障害(ASD,ADHD,LD全ての要素あり)、糖尿病、甲状腺機能低下症、不眠症、脂漏性皮膚炎などを患っているライターです。映画やドラマなどのエンタメごと、そこそこに詳しいです。ただ、あくまで“障害”や“生きづらさ”がテーマなど、会社の趣旨に合いそうな作品の内容しか記事として書いていません。私のnoteを観て頂ければ分かると思いますが、ハンドメイドにも興味あり、時々作りに行きます。2022年10月24日から、AKARIの公式Twitterの更新担当をしています。2023年10月10日から、AKARIの公式Instagram(インスタ)も2交代制で担当。noteを今2023年10月は、集中的に頑張って書いています。昔から文章書く事好きです、宜しくお願い致します。