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BSの番組を見ていて、恵まれないアフリカの子供たちに寄付をというCMが流れていました。貧困にあえいでいるのはアフリカだけじゃなく、日本の子供たちにも深刻な影響が及んでいることをご存じでしょうか?
日本の場合は相対的貧困が問題になっています。
相対的貧困とはその国の生活水準と比較して困窮した状態を指します。
厚生省の調査でも、ひとり親の家庭の貧困率が50%前後と高いということが判明しています。
さらに調べてみると、離婚した後で、養育費をもらっていないひとり親が多いことにたどり着きます。
また、日本は先進国の中でも養育費の未払いが多い国のようです。
他の先進国では給料から天引きするなど、様々な政策を打ち出しているところもあるようです。
今回は子どもの相対的貧困について、さらに離婚した際の養育費に焦点をあてて記事を書いていきたいと思います。
子どもの相対的貧困
2018年の子供の相対的貧困率が13.5%であることが、厚生労働省が3年ごとに発表する国民生活基礎調査でわかりました。前回の15年調査から+0.4%とわずかに改善しましたが、依然として子供の約7人に1人が貧困状態にあり、国際的に見ても高い水準です。
ひとり親世帯の貧困率も2.7%改善して48.1%と初めて5割を切ったものの、なお高水準です。
子供の貧困率がわずかながら改善した背景には、景気拡大が調査時点の18年まで続き、給与収入を押し上げたことが要因です。
参考:朝日新聞デジタル「子どもの貧困、7人に1人 依然として高水準 18年、13.5%」 2020.7.18
https://www.asahi.com/articles/DA3S14553310.html?iref=pc_ss_date
しかし2020年、コロナによる先の見えない経済の落ち込みによるひとり親世帯への影響ははかりしれません。
ひとり親の増加
昭和63年(1988年)から平成24年(2011年)までの25年間で、母子世帯は1.5倍、父子世帯は1.3倍に増えているという厚生労働省のデータがあります。
(注) 母子又は父子以外の同居者がいる世帯を含めた全体の母子世帯、父子世帯の数です。
画像引用:厚生労働省「ひとり親家庭等の現状について」
母子世帯数 84.9万世帯 → 123.8万世帯(ひとり親世帯の約85%)1.5倍
父子世帯数 17.3万世帯 → 22.3万世帯(ひとり親世帯の約15%)1.3倍
(1988年) (2011年)
上記の画像の「児童のいる世帯のうち、ひとり親家庭の割合」他の数値を見ると、そもそも児童のいる世帯数が1643万世帯から1209万世帯と約400万世帯も減少しているのですが、その中の1割弱がひとり親世帯ということになります。
また近年、離婚が大幅に増えているようです。日本では、よく夫婦3組に1組の割合で離婚すると言われています。2018年の婚姻件数は59万件で、離婚件数は20万7000件です(平成30年(2018)人口動態統計の年間推計)。こちらの数値は統計の読み取り方でも変わるそうですが、それにしても多いように感じられます。
養育費の未払いが起きる理由
母子家庭が養育費を取り決めていない理由は「相手と関わりたくない」「相手に支払う能力・意志がない」が上位にきており、離婚の際に養育費の取り決めを行っていないことが多く見られています。
面会交流と養育費
(質問)子供と会わせずに養育費をもらいたいのですが?
養育費と子供に会うこと(面会交流と呼んでいますが)は別問題です。面会交流を実施しなくても養育費を請求することはできます。しかし子供に会うことは養育費を払う励みになるでしょうし、別れた親と子がいい関係を持とうとすることは子供の成長にとっても大事なことです。会わせることが難しい事情がある場合には、家庭裁判所の調停を利用して話し合うことができます。
引用(ひとり親家庭への支援について 厚労省 令和2年4月 養育費相談支援センターホームページ)
父親が養育費を支払わない理由として、年収の高い父親ほど再婚する率が高く新しい家庭を優先するため養育費を支払わない。または支払う能力がない父親がいることが分かっています。2016年の時点で養育費を父親から受けているのは24.3%、受け取ったことがないのは56%と、とても高いです。
また、離婚前に養育費の支払いについて取り決めをしていなかった場合、ほとんどの場合は受け取れないケースが多いです。
参考:(独立行政法人労働政策研修・研究機構コラム 「なぜ離別父親から養育費を取れないのか」)https://www.jil.go.jp/column/bn/colum0228.html
2020年4月から改正民事執行法が施行され、養育費を支払わない人(債務者)の財産状況をより調査しやすくなりました。
強制執行の申し立てには、債務者の財産を特定する必要がありますが困難でした。改正民事執行法により、養育費を払わない人の預貯金口座や勤務先の特定が容易になり、差し押さえしやすくなりました。
引用(2020年4月から養育費を払わない人の財政状況の調査がしやすくなりました)記事https://news.goo.ne.jp/article/financialfield/life/financialfield-76405.html
また、2020年5月29日、法務省は法律家、研究者、支援関係者を構成員とする、「養育費不払い解消に向けた検討会議」を設置しました。
先進国の例
母子世帯の増加にともなう養育費の確保は、先進国の共通課題です。多くの国には司法による解決のほか、行政による制度があります。タイプは二つ。別れた親からの徴収を強化する国と、立て替え払いをする国です。徴収の典型は米国です 。1960年代半ば以降、公的扶助を受給する母子世帯が増加し、財政負担が問題となったことから、父親からの養育費に関心が高まりました。75年、連邦政府に養育費庁、各州に養育費事務所が設置されました。すべての州で、非同居親の捜索、養育費の給料天引きや税環付金からの相殺などが公的な制度として行われており、応じなければ制裁もあります。かなり強力な制度ですが、それでも徴収されるべき金額のうち、実際に徴収できているのは6割ほどです。
低学歴や技能を持たない父親の不払いが目立つようになり、養育費の政策の一環で、父親向けの就労支援も始まりました。親子の交流がある方が支払いはよい傾向にあり、面会交流の支援も進められています。公的介入によって、「親としての責任」果たさせる点が特徴です。
立て替え払いの代表的な国はスウェーデンです。こちらは「子どもの権利」の保障というとらえ方です。養育費が払われない場合、社会保険事務所に申請すれば、立て替え払いとして手当が支給されます。子供が18歳まで、学生であれば20歳まで延長されます。
参考:朝日新聞デジタル「養育費の不払い対策、各国の仕組みは 子供と貧困」2016.3.7 抜粋 https://www.asahi.com/articles/ASJ32627LJ32PTFC011.html
最後に
日本で母子家庭は仕事に就いている割合は、世界的に比べてみても高いです。しかし、時間の融通の利く非正規で働くことが多く収入が少ないことが貧困に拍車をかけています。また、女性が活躍する場が少ないということも関係してきます。
これは、決してひとり親が悪いわけではなく、受け入れる社会の方の環境が整っていないことが問題なのです。
そんななか、ここ数年、子どもの貧困を支援するためたくさんの人が動いてくれていて、こども食堂、フードバンク、学習支援など様々な人の輪が広がっています。自治体によっても様々な支援があるのでぜひ活用してください。下記は国の子育て支援の概要です。こちらは厚生労働省が今年4月に示したひとり親家庭等の支援についてのリーフレットの一部です。子育て支援の概要の図ですが、かなりきめ細やかな支援が用意されています。
画像引用:厚生労働省「ひとり親家庭等の支援について
厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課」
今回この記事にを書くにつれて改めて知ることがたくさんあり、自分ができることは何だろうと問い直すきっかけになりました。まだ答えは出ませんが、まず関心を持つことが大事なんだろうと思います。そして、ここまで読んでくださった方が関心を持っていただいたのであれば、もしかしたらそれが自分ができることなのかもしれません。
最後まで読んで下さりありがとうございました。
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