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1.世界幸福度ランキング
世界幸福度ランキングというのがあります。毎年3月の「国際幸福度デー」に合わせ、国連の「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」が発表するものです。ランキングは、各国のおよそ約3000名を対象に行われた調査のうち、「ウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態)」に関する回答に基づいて、国連が主観的幸福度の統計分析を行ったものです。
国連が世界幸福度を「ウェルビーング」という国民の主観によって評価するのは、GDPなどの客観的な経済指標ではなく、人間の心理的な主観的である幸福度こそが重要と判断しているためです。具体的には、アンケートの質問のなかで、人生に「幸せ」を感じる度合いと「不幸せ」を感じる度合いを、6つの指標によって分析しています。6つの指標は、以下の通りです
・1人当たり実質国内総生産(GDP)
・社会的支援の有無(困ったとき、いつでも助けてくれる親族や友人がいるか?)
・健康寿命(健康を最優先しているか?)
・人生選択の自由度(自分の生き方を自由に選択し、満足しているか?)
・寛容さ(過去1か月に慈善事業に寄付した金額はいくらか?)
・汚職(政府やビジネス界の汚職はないか?)
2.2017年のランキングは?
2017年のランキングで、第1位はノルウェーで、以下、2位デンマーク、3位アイスランド、4位スイス、5位フィンランド、6位オランダ、7位カナダ、8位ニュージーランド、9位オーストラリア、10位スウェーデンと続きます。
日本は全体の51位で、先進7か国(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、日本、カナダ、イタリア)のなかの最下位、OECD(経済協力開発機構)加盟35か国中27位です。ちなみに、アメリカは14位、ドイツは16位、イギリスは19位、シンガポールは26位、フランスは31位、タイは32位、台湾は33位、スペインは34位、イタリアは48位、中国は79位、インドは122位、最下位は中央アフリカでした。
3.幸福度先進国北欧
このうち、いわゆる北欧と呼ばれる国々に注目しましょう。北欧は、このランキングのうち、ノルウェー(1位)、デンマーク(2位)、アイスランド(3位)、フィンランド(5位)、スウェーデン(10位)を占め、北欧の国々は“幸福な国”として続々ランキングしました。
北欧というと、最近ではインテリア家具のブランド「イケア」を思い浮かべる方もいるかもしれまでん。ほかにも、税金は高いが社会保障が充実している国として、「高負担高福祉国家」をイメージされる方もいるかと思います。
4.北欧の実態
そんななか、僕が面白い本として注目したのが、マイケル・ブースという人が書いた『限りなく完璧に近い人々 なぜ北欧の暮らしは世界一幸せなのか?』という本です。デンマーク在住のイギリス人である著者が、北欧の国々の実態を取り上げていますが、それが興味深いのです。
たとえばフィンランドは、学力テストの国際ランキングでしばしば世界1位として紹介される教育制度をほこりますが、しかし、銃の所有率は世界第3位として、負の側面があることが紹介されています。また、自殺率が多いとも。
では、「人生が辛いと感じるか」という質問に「はい」と答えた国民がわずか1%しかいないとされるデンマークはどうでしょうか。デンマークは、労働人口の20%が働いていないというデータもあるそうです。デンマークでは、失業者は就労時の賃金の90%を2年間保障されることなので、働かない人が出るというのも納得のような気がします。
またデンマークでは、多くの世帯で「貯蓄がゼロ」らしいのです。さらにデンマーク人は平均して年収の310%の負債を抱えているというデータも。
5.北欧の社会から見習うべきもの
一方で、著者は北欧の社会から見習うべきことが多いといいます。北欧社会は強い信頼関係や社会の団結力から成り立っており、経済的平等、男女の平等が保たれていて、合理主義的な社会であり、バランスのとれた政治制度や経済制度が存在しているとのことです。
このあたり、日本の社会と似ているところも少なくないと思います。特に、「強い信頼関係」や「社会の団結力」は、東日本大震災の悲劇を乗り越えてきた日本にもあてはまります。また、北欧社会は集団主義的なところもあるらしいので、そのあたりも日本にも似ているような気も。
しかし、このような北欧社会の幸せの源泉どこにあるのでしょうか。著者はそれは、「人生を主体的に生きられるかどうか」であり、「自分の運命を自分で決められる贅沢、自己実現を達成するという贅沢が、できるかどうかだ」(同書)というのです。北欧社会は、“アメリカン・ドリーム”が掲げられるアメリカよりも、社会的流動性(一つの社会のなかで、職業や階級、場所の移動が可能かどうか)が高い国らしいのです。
「子どもの貧困」や、「格差の固定化」が指摘されている日本ですが、やはり、「人生を主体的に生きられるかどうか」というところは、日本も見習うべきところが多いいと思います。なにより、「人生が主体的に生きられるかどうか」が達成された社会は、子どもの貧困も格差の固定化という難題も、解決できるかと思います!
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