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こんにちは、翼祈(たすき)です。
まずは、この記事の本題である「クローン病」について説明をしたいと思います。
「クローン病」とは、「国の指定難病」の1つで、小腸及び大腸の粘膜に慢性の腫れや潰瘍またはびらん(ただれ)、炎症を引き起こす原因不明の疾患全体の総称を炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)と言われ、IBDは大きく「クローン病」と潰瘍性大腸炎の2つに分類されます。
1932年にニューヨークにあるマウントサイナイ病院の内科医のブリル・バーナード・クローン先生などによって限局性回腸炎として初めて報告されました。初めて報告した人の名前から「クローン病」と命名されました。
主に若い人から確認され、口腔に始まって肛門に至るまでの消化管のどの部位にも潰瘍や腫れ、びらん(ただれ)、炎症などが起こり得ますが、大腸と小腸を主体として特に小腸末端部が好発部位となります。
「クローン病」は、10歳代~20歳代の若い人が発症します。発症年齢は女性で15~19歳、男性で20~24歳が最も多く見受けられます。女性と男性の比は、およそ1:2と男性に多く発症します。
日本の「クローン病」の患者さんの数は、1976年は128人しかいませんでしたが、2013年は39,799人にまで増えました。日本の人口10万人当たり27人程度、アメリカが人口10万人当たり200人程度で、アメリカやヨーロッパのおよそ10分の1でしたが、現在も増加傾向です。
詳しい基礎知識に関しては、本題の後に紹介しておりますので、併せて読んで頂きたく思います。
「クローン病」などIBDは、食べ物など様々な障壁がある難病ですが、先日患者さんを支援したいとある取り組みが行われていることを知りました。
チョコレート、クッキー、ポテトチップス…
IBDが進行して体質に合わないものを食べれば、急に腹痛がし出して、お菓子も自由に食べることが叶わない。そんなIBDに悩みを抱えている人たちがいます。
今回は、「クローン病」を発症してもお菓子が食べられる様になった、患者向けの『お菓子図鑑』などについて、ご紹介させて頂きます。
「クローン病」を発症した女性が叶えられた夢とは?
画像引用・参考:IBDreamお菓子図鑑 武田薬品工業株式会社
吉野こまちさんは中学3年生の時、どんな食べ物を食べても、お腹が痛くなる状態が続き、体重も38kgまで減りました。
食道から腸に対して炎症が発見され、「クローン病」と診断を受けました。吉野さんは、半年間、入院して絶食治療をし、点滴を受けながら入院生活をしました。
その後も、食物繊維や脂質、刺激物などで腸に負担をかけない様に細心の注意を払いながら、症状が落ち着いた「寛解」と呼ばれる状態まで目指しました。
吉野さんは症状が落ち着いた後も、徹底した食事制限を継続しました。
退院してからの3年間、主食としていたのは、ご飯とうどん、鶏肉と魚を少しだけで過ごしました。
吉野さんが高校生の時、食べられたお菓子は、食物繊維や脂質がほぼ含まれていないマシュマロのみだったといいます。
吉野さんは、
「甘いものが食べたい時は全部マシュマロで済ます。ずっと様々な味のマシュマロを食べ続け、友達もマシュマロばかりを買ってきてくれる頃もありました。
私も周囲の健康な人が食べている様な美味しいものを私も食べてみたいという想いはとてもありました。食事は、生きる活力や娯楽になったりすると思います」
と、その当時を振り返りました。
食事への悩みが尽きないIBDの患者さん向けに、新しく完成したのが患者さん向けの『お菓子図鑑』だったといいます。
武田薬品工業が8つの製菓メーカーの製品に関して、患者が食べられる目安を総括し、自社の公式ホームページで無料で公開しました。
図鑑には製菓メーカー各社の商品ごとに、ポテトチップス4分の1袋、チョコレート2枚など、IBDの患者さんが食べることのできる目安の量が詳しく総括されています。
『お菓子図鑑』を監修した東京医科大学病院栄養管理科の宮澤靖科長が、「脂質5g以内」を基準に定義しました。
IBDの患者さんは今まで、お菓子を買う時には、1つ1つパッケージの栄養成分表示を確認する必要がありましたが、『お菓子図鑑』の中に総括していることで選択肢が広がります。
完成した『お菓子図鑑』の中身を公式ホームページで観た吉野さんは、今まで食べられないと思っていたお菓子が掲載されていたことに驚きました。
吉野さんは、
「小麦麦芽のクラッカーはパッケージに『食物繊維』って書いてありますし、スナックは揚げているイメージがあって私は脂質で食べられないなと思っていたので、『お菓子図鑑』に書いていなかったら買わないと思います。チョコ系お菓子など『クローン病』を発症してからこれまで食べられないと思って選択しなかったお菓子も、自分のお腹と相談しながら、無理のない範囲でお菓子にチャレンジしてみたいです」
と述べました。
IBDの患者さんの食生活をサポートしようという動きは、食事でも行われています。IBDの患者さんの交流サイトの運営会社は、2023年から患者向けにレシピサイトを公開しました。
IBDの患者さんから提供されたレシピに関して、管理栄養士がコメントを載せたり、栄養価を算出したりしながら、患者さんが安心して食べられる様に工夫しています。
レシピサイトを立ち上げた「グッテ」の社長の男性は、
「IBDの患者さんは症状そのものの悪化が凄く怖いということもあって食事に気を配らないといけません。また食の楽しみが失われることで、発症してからとてもショックを受ける方が多いです。様々な切り口でレシピを探したいという需要に対応可能な様にしています」
と説明しました。
参考:お菓子が自由に食べられなかった私 だけど… NHK NEWS WEB(2024年)
IBD患者団体によると、市販のお菓子を食べられる目安に関して総括したものは、今までありませんでした。
IBD患者団体には「お菓子を食べさせたいけれど、どれを食べさせたらいいか分からない」という相談が届いており、『お菓子図鑑』への期待は高くなっています。
全国およそ30の患者会で作るIBDネットワークの山田貴代加理事は、
「『お菓子図鑑』はこれをこれだけ食べても大丈夫と思う答えになって、食の幅が拡大すると感じています。脂質5gの目安が何個までだよ、何本までだよと書いてあることは凄く良い観点だと思いましたし、すぐに好きなお菓子を何本まで食べていいよと覚えられるところもとても良い取り組みですね」
と、語りました。
ここからは、「クローン病」の基礎知識について説明します。
▽症状
非連続性の病変(病変と病変の間に正常部分が存在すること)が主な症状の特徴です。それらが病変することで下痢や下血、発熱、腹部腫瘤、全身倦怠感、腹痛、貧血、口内炎、体重減少、血便などが起きます。
また、腸管に穴が開く穿孔(せんこう)、腸管が狭まる狭窄(きょうさく)、腸閉塞、腸管に穴が開く瘻孔(ろうこう)、膿の袋ができた膿瘍(のうよう)、腸管同士、腸管と他の臓器がくっつく癒着などの腸管の合併症や、虹彩炎、ぶどう膜炎などの眼の疾患、足首や膝に認められる関節炎、肛門部病変(難治性の裂肛・痔ろうなど)、結節性紅斑(すねや足首にできる痛みを伴った赤い腫れ)などの腸管外の合併症も多く、これらの有無で色んな症状を引き起こします。
なお、「クローン病」には、病変が大腸に限定される「大腸型」、炎症などの病変がある範囲が小腸に限定される「小腸型」、小腸と大腸に病変が確認される「小腸・大腸型」、これらに該当しない場合や稀な部位に病変がある「特殊型」の大きく4つに分類されます。
▽診断基準
貧血やそれ以外の症状などの血液検査異常を確認してから「クローン病」だと疑われ、画像検査にて特徴的な所見が認められた場合に確定診断をします。主な画像検査としては小腸造影や大腸内視鏡検査、上部消化管内視鏡検査などが実施されます。
昔なら困難だった小腸の観察もカプセル内視鏡や小腸内視鏡の開発によりできる様になりました。その上、CT、MRI、腹部超音波検査などの画像検査も「クローン病」の確定診断に活用される様になりました。
手術や内視鏡検査を実施する時には、同時に採取される肛門病変の所見や、検体の病理検査の所見などが確定診断をするのに有用な時もあります。
▽かかりやすい人
衛生環境や食生活が大きく影響し、たんぱく質、動物性脂肪を多く食べ、生活水準が高いほど「クローン病」を発症しやすいと想定されています。煙草を吸う人は吸わない人より「クローン病」を発病しやすいとされています。
▽治療法
「クローン病」の治療法で、内科治療(栄養療法や薬物療法など)と外科治療の2つを受けることができます。
内科治療が主体となることがほとんどで、栄養状態の改善だけでなく、食事からの刺激を取り除くことと腸管の安静で下痢や腹痛などの症状の改善と、消化管病変の改善が治療をすることで認められます。腸閉塞や狭窄、膿瘍、瘻孔、穿孔などの合併症には外科治療が必要となります。
参考サイト
『お菓子図鑑』のイラストに携わった女性の想い など
『お菓子図鑑』の表紙などのイラストもIBDの患者さんが担当して描きました。ピンク色の腸のキャラクター「チョウ=チャン」を描いたイラストレーターのカメダさんは、2017年に「クローン病」の診断を受け、「回腸」という腸の一部を切除する手術を行いました。
現在も定期的に検診や内服を続けながら、自らの食生活や「クローン病」の経験などに関して、漫画にしてSNSに投稿を続けています。
カメダさんは、
「チョコを食べたくても脂質の制限で食べられなかったですし、母にチョコをみじん切りして貰い、1本1本食べてお腹が痛くなったら食べるのを止めるというチキンレースみたいなことをしていて、漫画で描いたら面白いかなと思って、SNSの投稿を始めました」
とそう回顧します。
フライドポテトとハンバーガーが大好きだったカメダさんは、病気で食事制限が必要で、「もう食べられないんだ…」とファーストフード店の看板を見て号泣した経験もありました。
お菓子は可能な限り手作りをし、スライスしたジャガイモをオーブンで焼いて、ポテトチップスを作ったこともありました。
そんな中でイラストの担当を依頼された『お菓子図鑑』では、表情豊かな腸のキャラクター「チョウ=チャン」とカラフルなお菓子を描いて、楽しく明るい印象になるよう意識しました。
カメダさんは、
「『お菓子図鑑』は『これしか食べられない』ではなく、『この量だったら、私も食べられる』という、とてもポジティブで実用的な企画だと感じました。なかなか自分が好きなものを食べられないと落ち込む人にじっくり読み込んで、『お菓子図鑑』を活用して頂きたいですし、私も楽しんで活用しようと思っています」
と、説明しました。
この最後の『お菓子図鑑』のこととは別に、「クローン病」のある女性の記事を読みました。それも紹介させて下さい。
2024年7月20日に、東京都港区にある「ニューピアホール」で、国際的ミスコンテスト「ミス・グランド・インターナショナル(MISS GRAND INTERNATIONAL)」の2024年度の日本代表を選出する大会「ミス・グランド・ジャパン(MISS GRAND JAPAN)」が開催され、ミス・グランド・ジャパン日本代表に不動産コンサルタントの重光 ルマ ナオミさんが選出されました。
重光さんは、ミス・グランド・ジャパン日本代表として2024年秋開催予定の世界大会に出場し、
「この度の結果は、今まで私を支えて下さった全ての方のお陰だと痛感しております。皆様へ心より御礼を申し上げたいです。私は、16歳の頃から『クローン病』を罹患しております。これからは、ミス・グランド・ジャパン2024日本代表として、難病で苦しんでいる人たちをサポートする活動を世界中でしていきたいと思っています。あくまで難病は1つの個性で、デメリットではない事を証明させてみせます」
と決意と感謝の意を述べました。
運営代表の女性は、
「この度日本代表に選ばれた重光さんは、日本人らしい奥ゆかしい優しさと、海外でも通用する語学力と芯の強さを持ち合わせています。重光さん自身が『クローン病』という国から難病指定されている病と闘いながらも、この大会に臨みました。どんな状況であっても、可能性を閉ざすことなく、彼女の姿が世界中の人たちの“希望”になると私は信じています」
と語りました。
参考:ミス・グランド・ジャパン2024日本代表は重光 ルマ ナオミさん 難病と闘いながらの戴冠 モデルプレス(2024年)
この記事では、「クローン病」という難病の診断を受けても、たくましく生きる女性たちを描きたいと思って書きました。記事を通して、出て来た皆さんから、前向きに生きるパワーを得ることができました。
私は難病ではありませんが、これからも記事を通して、誰かに寄り添える、そんな記事を書いていきたいと思います。
noteでも書いています。よければ読んでください。
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