「マイナ保険証」で医療崩壊 -ランサムウェア(身代金要求攻撃)の標的にも-

コンピューターウィルスを仕掛ける謎の人

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こんにちは、金次郎です。 

 今年5月に「マイナンバーカード」について書いた記事です。

 2023年10月に河野太郎デジタル担当大臣が、突然「2024年12月で『紙の保険証』を廃止します。」と言い出しました。
 これは、同年9月に「マイナンバーカードに健康保険証や運転免許証・在留カード・その他の資格証など、全部集約して行きたいと考えています。」と発言して1ヶ月後の事です。
 マイナンバーカードに健康保険証を合体させようと言う人や「マイナ保険証」を使用する病院が少なくて業を煮やしたのでしょう。
 でも、この「マイナ保険証」については、国民はおろか現役の医師ですら未だに反対意見が多い代物です。

 今回は、あと3ヶ月に迫った「マイナ保険証とデジタル化の危なさ」について書いてみます。

「マイナ保険証」を導入出来ず廃院する地方の個人医院

 前回の記事時点では、「マイナ保険証」導入前の2023年に廃院した病院数は1103件で、「マイナ保険証」になる2024年末で廃院予定の病院が1000件ある事を書きました。
 これらは、「マイナ保険証」と言うよりも医師の高齢化により病院を閉じる方が多いのが主な理由でした。

 しかし「マイナ保険証」になると、本人確認は「オンライン資格確認」になりますので各医療機関や調剤薬局はインターネットへ接続してオンライン化しなくてはいけません。
 でも、全ての医師や薬剤師がインターネットやデジタル機器の知識が有るわけではありません。

 ですから、「マイナ保険証」オンリーになって本人確認をオンラインでする事になると

・最大1万件の医療機関が廃止や休業に追い込まれるだろう

という試算も有ります。
 地方の小さな町や村では、無医村の地域も増えるでしょう。

 OECD(経済協力開発機構)が、2023年に発表した資料によると、日本の医師数は人口1000人当たり2.6人です。
 この医師数はOECDに加盟している国は38ヶ国有りますが、日本は36位と先進国とは思えない少なさです。

参考:(現代ビジネス)導入間近「マイナ保険証」で「地方都市の医療」が崩壊してしまう…現役医師が実名で怒りの告発

お年寄りやデジタル機器に弱い方が困っています

 長崎県の保険医協会が、75歳以上の高齢者を対象に

 ・マイナンバーカードを持っていますか?
 ・病院のマイナンバーカードリーダーを操作出来ますか?

 と言う質問をして、マイナンバーカード保有者やカードリーダーを使えるか?の調査を行いました。
 その結果、100人中22人は未だマイナンバーカードを持っていませんでした。

 マイナンバーカードを持っている残りの78人に、カードリーダーを操作してもらうと
  ・一人で操作できた人          20人
  ・操作を教えられながらなら操作できた人 28人
  ・全く操作できなかった人        18人
  ・顔認証時点でエラーになってしまった人   5人
  ・その他(認知症や視覚障害など)        7人
 と言う結果になったそうです。

 この調査では75歳以上の高齢者を対象にしましたが、若い人でも

 ・スマートフォンは持っているけれど、パソコンの使い方は知らない

 と言う人は結構いますから、デジタル機器に関しては年齢に関係なく使えない人は使えないと思っています。

参考:(長崎新聞)75歳以上の6割が困難 マイナ保険証カードリーダー操作 長崎県保険医協調査

ランサムウェアの標的になる可能性も

 現在、世界中で脅威になっているランサムウェア(身代金要求型コンピューターウィルス)
 日本ですと、KADOKAWA(角川書店)が攻撃に遭ったのはご存じだと思います。
 このランサムウェアの攻撃で、約25万人分の個人情報が流出してしまいました。
 攻撃は大企業におさまらず、自治体のシステムや医療機関も被害を受けており顧客データが流出しています。

 岡山県精神科医療センターでは、ランサムウェアにより、患者の名前や病名・治療方針などの個人情報が、最大で4万人分流出した可能性があると言います。
 また、鹿児島県の国分生協病院では「画像管理サーバー」に障害が出て病院の運営が出来なくなっています。
 アメリカでも、大手の医療法人が攻撃を受けて、電子カルテや検査装置などに障害が起きて使えない状態になっている病院があります。

 もしマイナンバーカードのシステムが攻撃されたらどうなるでしょうか?

 保険証だけでなく最終的には、運転免許証・各種資格証・母子手帳なども統合する予定ですので、システムへの各種情報を紐付ける接続箇所もどんどん増えて行きますから、必ず接続箇所が脆弱なところが出て来るでしょう。
 コンピューターウイルスは、その様な脆弱な接続部分から侵入してきます。

参考:(時事通信)「ランサムウエア」が猛威 身代金ウイルス、対応迫られる企業

コンピューターウィルス侵入以前の問題も有る

 本格運用前の、今現在でも「マイナ保険証」はトラブル続きです。
  ・他人の保険証情報が入っている
  ・顔認証が出来ない
  ・個人情報が古すぎる
 など、etc・・・・

 これで本当に12月2日から「紙の保険証」を廃止して運用開始しても大丈夫なのでしょうか?

 ある開業医が
  「転職して新しい健康保険証を交付された患者さんが来たので、保険資格をオンラインで照合しようとしたのですが『資格なし』と表示される状態が3ヶ月ほど続きました」と言います。
 続けて
  「こんな事は稀なケースでは無く、オンライン情報が更新されるまでに1~2ヶ月かかってしまう場合がほとんどなんです。」
 と言います。
  「規則上は『事業主による届出から5日以内にデータ登録を行う』とされているんですけどね。」
 と呆れた感じで述べています。

参考:(弁護士JPニュース)マイナ保険証“本格運用”まで4か月切る「いずれ致命的なトラブルが起きるのでは」 現役開業医が不安を吐露

終わりに

 私が現在通院しているのは、精神科と胃腸科そして3ヶ月に1回歯科医院で歯の掃除をしています。
 しかし、現状どのクリニックや調剤薬局でも「マイナ保険証を出して下さい」とは言われません(全てのクリニックや調剤薬局の受付には、一応「読み取り機」は置いています)。

 5月に書いた記事にも書いていますが、私がマイナンバーカードを作ったのは、補聴器を公費負担で作るための役所の申請書にマイナンバーを書く欄が増えたからです。

 マイナンバーカードの作成は任意なのに、強制的に作らせようとする今回の政策。

 歩ける母はともかく、足腰が弱りデイケアにも行き出し、家の近くの病院に行くのにもタクシーを使っている父にどうやって役所までマイナンバーカードを作りに行けと言うのでしょうか?

 12月2日以降、あらゆる科目の病院で混乱が起こりそうな気がしています。

  

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2 件のコメント

  • 記事を読ませていただきました。地域医療では紙の保険証が信頼はあるのです。マイナーカードになると高齢者や病気で覚えられない人を困らせるだけになったかもしれません。
    紙の保険証とマイナーカードの選択があったら紙を選ぶでしょう。これからも記事を楽しみにしています。

  • コメントありがとうございます。
    おっしゃる通り高齢者や病気で動けない人は、マイナンバーカードを役所まで作りに行くのも困難ですし、またデジタル機器に弱い人は病院で機械を操作するのも困難でしょう。
    スーパーやコンビニで「オートレジ」が普及しつつありますが、操作の仕方を店員に聞いている人を良く見かけます。
    私の場合、記事に書いている様に役所の申請書に「マイナンバー」を書く欄が増えたので作りましたが、今後福祉課以外でも広がる可能性が有るかも知れません。
    紙の保険証は、有効期限前1ヶ月前に郵送で自宅に送られてくるので便利なんですが、マイナ保険証となるとわざわざ役所にいって「マイナンバーカード(5年ごと)」と「保険証(1年ごと)」の2つの有効期限延長の処理をしなければいけませんので不便です。

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