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こんにちは、翼祈(たすき)です。
私は2022年からLGBTQのニュースを書いて来ました。記事を書く様になったからか、近年行われている裁判の判決の内容なども、読むことが増えました。
2024年のものだけ抜粋しますと、
性同一性障害と診断を受けた人が生殖機能を無くす手術を受けなくても性別変更を申し立てた家事審判で、岡山家裁津山支部は2月7日、戸籍上の変更を認める決定を言いました。
同性同士の結婚が認められていないのは憲法違反だとして、北海道在住の同性のカップルが国を訴えた裁判で、2審の札幌高等裁判所は、3月14日、憲法では同性同士も異性間と同じ水準に婚姻の自由を保障しているという踏み込んだ判断を示し、今の民法などの規定は憲法違反だと判断しました。同じ様な集団訴訟で2審で憲法違反と判断されたのは初のことでした。
最高裁は3月26日、犯罪被害者給付金を巡る訴訟で初判断を表し、異性カップルと同じ水準の権利を求めてきたLGBTQの支援者などから喜びの声が上がりました。
この記事は5月の下旬に書いていますが、まだ半年も経っていないのに、2024年に入り、かなり重大な裁判の結果が出ているなと感じてます。
この記事でも、同じく重大な判決が出たLGBTQの方関連のニュースになります。
名古屋家裁が2024年3月、同性パートナーと生活する愛知県の男性に対し、「婚姻に準じる関係」として、パートナーと同じ名字への変更を認める決定を示していたことが2024年5月9日、判明しました。
代理人弁護士によりますと、同性カップルを夫婦と同じ様な関係として変更を認めた判断は異例の判決だといいます。「同性婚が実現していない日本で、選択の幅が広がると期待されます」と述べています。
今回はその裁判の判決が出た概要を説明していきます。
名古屋家裁、「婚姻に準じる関係」と判決が出るまでの時系列
弁護団によりますと、名字の変更を申し立てた鷹見彰一さん(仮名)は、2017年パートナーの大野利政さん(仮名)と公正証書を作成し、法律婚に近い形で財産の取り扱いなどに関する契約を締結しました。2018年から同居し2023年からは里子も養育しています。
ですが、法律上同性婚は現行法では認められていないことから、2人の戸籍上の名字は異なるままでした。そのことで、書類上は鷹見さんが里親ですが、名字が異なることから、子の病院受診など緊急の際に、性的指向を周囲に明かしていない大野さんとの関係の説明や、子の保育園の通園手続きなどで名字の確認を要求されたり、マンションのリフォームなどの手続きで2人の関係の確認も要求され、他人に知られたくない性的指向を打ち明けざるを得なくなるリスクがあるなどの支障が発生したとします。
里子の養育に当たり、病院を受診する時に、家族として認められず、治療方針を決めることができなかったり、面会ができなかったりするかもしれないという恐怖感をいつも抱いていたといいます。
そのことで、2023年11月、鷹見さんは日々の暮らしの中で、別の名字であることを理由に、詮索を受け、不必要なカミングアウトの恐れがあるなどとして、家事審判を申し立てました。現行の戸籍法は同性婚を認めていないですが、「やむを得ない事由」があれば家裁の許可を得た後に名字の変更の届け出が可能だと定義しています。
弁護団によりますと、家裁は2024年3月14日付の決定で、名古屋家庭裁判所の鈴木幸男裁判長は、海外で同性婚を認める国があることや、日本でも同性カップルを肯定的に捉えた方向転換し意識が変化していることを踏まえ、「現行法が許せる限り、同性カップルに対し、一定の水準、異性カップルと同質の法的保護を与えることは社会通念上、許容されます」と主張しました。
2人の生活実態を「育児をしている異性の夫婦と実質的に変わらないことです」と認定した上で、2人の名字が異なることで社会生活上の支障が発生しているとし、戸籍法で変更を認めるために必要な「やむを得ない事由」が明らかだとしました。
そして、「この2人に様な、性的指向が少数派に属する者が、日常生活の色んな場面で偏見や差別感情に基いた不利益な取り扱いを受ける可能性があることは容易に伺われ、意に沿わないカミングアウトをしなければならない状況が発生してしまうことは、それ自体、社会生活上の著しい支障が起こります」としています。
カミングアウトなどを危惧した鷹見さんの懸念を認め、名字変更を許可しました。
参考サイト
「夫婦と同様」 同性パートナーへの名字変更認める 名古屋家裁 NHK NEWS WEB(2024年)
同性パートナーと同じ名字へ変更認める「婚姻準じる関係」名古屋家裁 朝日新聞デジタル(2024年)
審判書で名古屋家裁は、「お互いに協力しながら、子育てを主体として生活実態にある安定した生活を継続していて、異性同士の夫婦と実質的に変わらないことです。具体的な社会生活上の支障が発生しているという事実関係の下で、同じ名字に変更することを認めるのがそれ相当に該当します」などとしています。
審判を受け、鷹見さんらは、戸籍上の名字を変更しました。
そして、2024年5月15日、2人が報道陣の取材に応じ、鷹見さんは「名古屋家裁が異性の夫婦と何ら変わらないものとして意見を出し、名字の変更を認めてくれて、しっかりと司法が向き合ってくれたことが、何より嬉しかったです。同じ様なマイノリティー(少数者)の人たちにとって『認めて頂けるんだ、隠れて生きなくてもいい』という気持ちに直結する内容でした」とし、
大野さんは、「まだ法的には家族になっていないですが、病院などでの緊急事態に関係性などを疑問に思われ、余計な神経を使うという場面は減ってくると思います。不安は消えませんが、今までの深刻な状態からは脱せたと思います。名字変更も含め、それを選択することすら与えられていなかった中で、新しい選択肢として認められました。他にも同性カップルに名字変更したいと考えている人にとって良い前例を作る機会になったと思います」など説明しました。
まだ、同性婚の法制化はまだ実現していません。2人は同性同士の結婚を認めていない民法などの規定は憲法違反だと主張して、国に賠償を求め、訴えた訴訟の原告でもあり、名古屋高裁での控訴審で同性婚法制化の必要性などを求めています。現在も裁判が続いています。
後日談
性的指向を他の人に明かしていない大野さんは会見で、コロナ禍で鷹見さんが発熱し、病院を受診した時に2人の関係を問われた経験を挙げ、詳細に関係性を問われて打ち明けざるを得なくなる不安に感じたと語りました。「緊急だったので『同居人』で事なきを得ましたが、名字が一緒なら『親族』だろうということで受け入れられやすくなります」と、同じ名字が安心感に至るとしました。
鷹見さんは、裁判を終えた後、行政機関からの書類が郵便で届いた時に名字が一緒になったとの実感が生まれ、自宅の表札プレートの名字も揃えたと語りました。「家族になったという感覚が嬉しく、夢が叶いました。新婚さんみたいな気持ち」と喜びをにじませました。
大野さんは「異性婚との不平等さは解決していません」と危惧しています。「我が家にとってはベストな選択が、現段階で名字の変更であったというだけです。同じ名字のカップルもいれば、違うカップルもいます」と述べ、鷹見さんは、選択的夫婦別姓を望んでいく世論があることなどを踏まえ、「名字や結婚など、時代のニーズに合わせて自由に選択できる世の中になればいいと思います」と願いました。
弁護団の代理人弁護士は、「同性パートナーの名字への変更を認めた決定は数少ないケースと見受けられます」とした上で、「『異性の夫婦と同じ水準の関係』ということなどを理由として名字の変更を許可したのは異例中の異例だと言えます。これまで同様の状況でも認められなかったり、最初から諦めたりしていた人もいると思いますし、勇気をもって申し立てて貰いたいです」と述べています。
「依然として婚姻平等の実現が必要となりますが、今回の判断で、同性カップルの名字変更による不利益の解消という選択肢が示されることを期待したいです」と語りました。
家族法の専門家で、LGBTQの問題が専門の早稲田大学の名誉教授の男性は、同性カップルに関しては各自治体の「パートナーシップ制度」など、一定の保護を受けることが可能な制度の運用が進んでいますが、こうした制度の効果は組織や自治体の中で認められた範囲に限定されており、LGBTQ当事者にとって不利益や不安は消えないと指摘しています。
その上で、今回の判決を「認められている枠組みの中で、運用で保護や理解を拡大していくというやり方を一歩一歩、積み重ねていくことがマイノリティーの人たちの法的地位や権利擁護の確立には必要で、この点を重視した今回の判決は画期的です」と大いに評価をしました。
そして「近年の社会情勢を顧みて、マイノリティーの人たちへの理解を示している司法の大きな流れを示した判決です。こうした形で認められたことがそれ以外の裁判官や裁判所にも影響を与え得ますし、同じ様な申し立てをする人も増加してくると思います」と説明しています。
今回の判決はこれまでとは一線を超えた、非常に踏み込んだ内容だったと思います。このカップルがすぐに名字変更をしに行ったのも、今回の判決が当事者にとって、より良い内容だったからでしょう。
今後も今の一連の流れを受けて、驚く様な判決が続くと思います。そのことも、見続けていかないとと、2022年から記事を書き続けている私は、そう思っています。
noteでも書いています。よければ読んでください。
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