『雪の花 ―ともに在りて―』。江戸時代、天然痘と闘った、実在した町医師の物語。

雪の花 ―ともに在りて―

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こんにちは、翼祈(たすき)です。

天然痘(てんねんとう)は、天然痘ウイルスに感染したことによる感染症で、「痘瘡(とうそう)」とも言われています。とても怖い病気の1つで、感染すると高熱が出て、身体中にブツブツした発疹が出現し、凄く苦しんだ末に死んでしまうこともある病気です。

天然痘ウイルスが原因で天然痘に感染し、強い感染力を持つ天然痘は、一度感染すると、あっという間に周囲の人に広がってしまいます。

天然痘の歴史はとても古く、およそ1万2000年前から存在したと言われ、今までに数え切れないほどの多くの亡くなる人を出してきました。

日本では天然痘は、1956年以降に国内での発生は見られておらず、1976年にワクチン接種が廃止されています。

1980年(昭和55)5月にWHOから天然痘の根絶宣言が発表されました。そのため、現在では研究用に保管されている天然痘ウイルスが存在するのみで、一般の人が感染することは基本的にありません。

この記事のテーマは天然痘ですが、2025年1月に天然痘から市民を救った、実在する町医者を取り扱った時代劇の映画を紹介したいと思います。

作家の吉村昭氏の小説[雪の花]が、『雪の花 ―ともに在りて―』のタイトルで実写映画化され、俳優の松坂桃李さん主演で2025年1月24日(金)より公開されることが決定しました。共演は役所広司さん、芳根京子さんが名を連ねます。

この映画は、自らの利益を顧みずに、天然痘に侵された日本を本気で救い出そうと立ち上がった実在の町医者・笠原良策が、生きる希望とは何か?、を問いかけます。

今回はこの映画についてと、天然痘の基礎知識に関して、多角的にお知らせします。

あらすじ

雪の花 ―ともに在りて―

吉村昭が1988年に発表した「雪の花」は、江戸時代末期を舞台に、数年ごとに大流行して多くの人命を奪う天然痘と闘った一人の町医者の実話を描く物語。天然痘の絶対確実な予防法が異国から伝わったと知った福井藩の町医者・笠原良策。京都の蘭方医・日野鼎哉に教えを請い、また私財をなげうち種痘の苗を福井に持ち込む。良策はかつてない予防法成功のために様々な困難にも諦めず、妻・千穂の支えの中で流行病と闘い続けるが…。

画像・引用:松坂桃李主演、役所広司&芳根京子共演で吉村昭「雪の花」を映画化 来年1月公開 cinemacafe.net(2024年)

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ここからは天然痘の基礎知識について取り上げます。

▽症状

潜伏期間は12日間(7~16日)程度です。

天然痘ウイルスに感染してからおよそ2週間後に、急な39℃以上の高熱、頭痛、倦怠感、悪寒、嘔吐などの全身の症状が出現し、3~4日ほど経過すると一旦熱が下がりますが、咽頭粘膜や口腔に発疹が出現し、顔や四肢を中心に強い痛みや灼熱感(:しゃくねつかん)を伴う斑状の皮疹(:ひしん)が現れます。(水ぼうそう[水痘]では皮疹が腹部や胸に多く見られるのと対照的)。

皮疹は、主に顔、脚、腕に出現します。

皮疹は当初、斑状の丘疹(:きゅうしん、皮膚の盛り上がり)ですが、経過と共に水疱(水ぶくれ)となり、さらに膿疱(:のうほう、水疱の内容物が膿となる状態)を形成した後に痂皮(:かひ、かさぶた)となり、最後は落屑(:らくせつ)となって治癒します。

皮疹が水ぶくれになる頃に一旦下がっていた熱が再び上がるのが大きな特徴で、治癒後に落ちたかさぶたにも強い感染力を持っているので注意が必要になります。

発疹は顔面、頭部に多く出現しますが、全身に見られます。水疱性の発疹は水ぼうそう(水痘)の場合に類似していますが、水ぼうそう(水痘)の様にそれぞれの時期の発疹が同時に出現するのではなく、その時期に出現する発疹は全て同一であることが特徴です。天然痘の水ぶくれは、くぼみがあるのが特徴です。

治癒する場合は2~3週間の経過で、瘢痕(:はんこん、傷やできものなどが治った後に皮膚面に残る痕)や色素沈着を残します。かさぶたが完全にはがれるまでは周囲の人への感染の可能性を持ち、隔離が必要です。

▽感染経路

オルソポックスウイルスに分類されるウイルスで、ヒトのみに感染します。天然痘ウイルスに感染することで発症します。

病原体は、天然痘ウイルス(Poxvirus variolae)です。致命率が低い(1%以下)”variola minor”と、致命率が高い(20~50%)”variola major”に分類されます。

感染経路は、感染者のかさぶたや発疹などの排出物に接触することでの接触感染や、くしゃみや咳などのしぶきに含まれる天然痘ウイルスを吸い込むことでの飛沫感染の2つがあります。

感染すると咽頭や口の中に皮疹が出現し、この皮疹から天然痘ウイルスが排出され、唾液飛沫となって身体外へ出ていきます。

感染者の皮膚病変との接触やこの飛沫を周囲の人が吸い込むことで天然痘に感染しますが、天然痘ウイルスが付着したリネン類(寝具)、衣服から舞い上がった天然痘ウイルスを吸い込むことでも感染すると想定されています。

ワクチン接種(種痘)を受けていないヒトでの感受性は極めて高く、不顕性感染はありません。

▽合併症

敗血症や脳炎、肺炎などを合併することがあって、それらの合併症を発症することで、死因となることも少なくありません。

▽診断基準

天然痘の診断には、血液や皮疹、唾液から天然痘ウイルスを検出する必要があります。

診断は、病原体の遺伝子の検出、病源体の検出、抗体検査または抗原検査によります。

血液や唾液などの検査材料を電子顕微鏡で観察したり、PCR法と呼ばれる方法で遺伝子検査を実施したりすることで天然痘ウイルスの存在を認めます。

ですが、日本でPCR法が行える施設は限られているため、どの病院でも受けられる方法ではありません。

▽治療法

天然痘に対する特別な治療法はなく、治療は発熱による疼痛(:とうつう)や脱水補正管理法などの対症療法が主体で実施されます。

ですが、天然痘に感染してから3日以内であれば、ワクチン(種痘)を接種すれば発症を予防したり、天然痘の症状を軽減させ、重症化を防げることが分かっていますが、1980年にWHOが痘瘡根絶宣言を発表してから、世界でも天然痘の患者は発生しておらず、一般的に広く種痘の予防接種を行うことはなくなりました。

また、解熱・鎮痛や輸液などの対症療法や天然痘の二次感染を防ぐのための抗生物質を感染者に投与をすることも重要です。

▽予防策

感染症法では一類感染症に定義されていて、もし天然痘の感染者が確認された場合は、診察をした医師は、以下の3点を行うことが天然痘を広げないためにも重要な行動です。

3つの重要な行動

①速やかに関係機関へ知らせること。

②感染者が接触したと思われる人全員に種痘を打つこと。

③感染者を隔離すること。

天然痘はヒトからヒトへと直接伝染しますので、感染には、感染者または感染者のシーツや衣類との密接な接触が必要になります。ある感染者が天然痘だと確定診断されると、その患者が病気になるおよそ2週間前に他の感染者との密接な接触があったことになります。

▽ワクチン(種痘)

細菌やウイルスから生成し、生きたものを生ワクチン、生物としての活性をなくして作ったものを不活化ワクチンと呼ばれています。生ワクチンは接種が上手くいけば一生効果が持続されるといいます。その反面、不活化ワクチンはある期間で効果が無くなることで、種痘の追加接種が必要となります。

天然痘の場合は、ワクチン(種痘)の有効期間は3~5年といわれています。そこで、種痘を追加接種することで、生涯免疫となると考えられています。

▽ワクチンの副作用

種痘を打った後には10~50万人接種当たり1人の割合で脳炎を発症し、その致死率は40%と高くなっています。それ以外にも全身性種痘疹接触性種痘疹湿疹性種痘疹などの重篤な副反応が起こることも知られています。

1976年日本では、それまで使われていたリスター株を改良を重ねたLC16m8株が千葉県血清研究所によって開発され、弱毒痘苗として国より許可・採用されましたが、同年日本では定期接種としての種痘を事実上廃止したことで、実用されることには至りませんでした。

さらに、WHOによる天然痘根絶宣言を発令したことで、1980年には法律的にも種痘の定期接種は廃止され、現在に至っています。

▽海外での天然痘の研究について

医師としてだけでなく、博物学者としても名が知られた、エドワード・ジェンナー(1749〜1823年)は、この天然痘に感染しない様にする「種痘(しゅとう)」という方法を考えました。この治療法の開発で世界中の人が天然痘を気にせず生活できる様になりました。

ある日、ジェンナーは牛の乳しぼりをしている人から、「牛痘(:ぎゅうとう、牛が感染する天然痘)に感染した人は、天然痘には感染しない」という話を聞きました。

ジェンナーは、この力を利用した「種痘」という予防法を思いつきました。

それは、天然痘ほど危険ではない「牛痘」に感染した人の膿を、まだ天然痘に感染していない人にわざと注射して、天然痘の抗体を作るという方法です。

身体には、細菌やウイルスが入ってくると、抗体という物質を作り出して追い出そうとする力があります。この仕組みを免疫と言い、一度抗体ができれば同じ病気にかからなくなります。こうして、人々は本物の天然痘に感染せずに済む様になりました。

※豆知識

参考サイト

痘そう(天然痘) 厚生労働省検疫所FORTH

痘そう(天然痘) Smallpox 東京都感染症情報センター(2016年)

天然痘について 町田アンド町田商会

天然痘 メディカルノート(2020年)

くすり偉人伝 ジェンナー

この記事を書く前に、

たまたま両親がいつも観ている大河ドラマで安倍晴明が出て来て、「疫神が通るぞ」と言って、その後平安時代の都に疫病が蔓延し、多くの死者が出ていました。

何の疫病かは、その描写はありませんでしたが、この天然痘の記事を書いて、紀元前からあったとなると、天然痘の可能性もあったのかなと思いました。

天然痘は、特によく大河ドラマで描かれる江戸時代では、よく出て来る疫病です。ほぼ毎回出て来るのは、それだけ大きな疫病だったということでしょう。

種痘は天然痘根絶宣言が出た後、接種は無くなりましたが、現在、天然痘ウイルスはアメリカとロシアのバイオセーフティレベル(BSL-4)の施設のみで厳重に保管されていると公表されていて、バイオテロなどで万が一感染者が発生した場合は、国家備蓄ワクチンを感染者とその接触者に接種します。

紀元前からあった天然痘のことを考えると、それだけ人類と天然痘の長きに渡る闘いを感じます。そのことで、種痘を使わなくて済む様に、世界情勢は不安定ですが、また前の蔓延している世の中には戻って欲しくないと強く思います。

参考サイト

noteでも書いています。よければ読んでください。

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左耳感音性難聴と特定不能の発達障害(ASD,ADHD,LD全ての要素あり)、糖尿病、甲状腺機能低下症、不眠症、脂漏性皮膚炎、右手人差し指に汗疱、軽く両膝の軟骨すり減り、軽度に近いすべり症、坐骨神経痛などを患っているライターです。映画やドラマなどのエンタメごと、そこそこに詳しいです。ただ、あくまで“障害”や“生きづらさ”がテーマなど、会社の趣旨に合いそうな作品の内容しか記事として書いていません。私のnoteを観て頂ければ分かると思いますが、ハンドメイドにも興味あり、時々作りに行きます。2022年10月24日から、AKARIの公式Twitterの更新担当をしています。2023年10月10日から、AKARIの公式Instagram(インスタ)も担当。noteを今2023年10月は、集中的に頑張って書いています。昔から文章書く事好きです、宜しくお願い致します。