女性にAED(自動体外式除細動器)、ためらう声~正しい知識を持とう~

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はじめに

最近、街中やショッピングモールなどでよく見かけるAED(自動体外式除細動器)を皆さんは、ご存知ですか?

AED

AED(自動体外式除細動器)とは?

AED(自動体外式除細動器)とは、心臓がけいれんし血液を流すポンプ機能を失った状態(心室細動)になった心臓に対して、電気ショックを与え、正常なリズムに戻すための医療機器です。

2004年7月より医療従事者ではない一般市民でも使用できるようになり、病院や診療所、救急車はもちろんのこと、空港、駅、スポーツクラブ、学校、公共施設、企業等人が多く集まるところを中心に設置されています。

AEDは、操作方法を音声でガイドしてくれるため、簡単に使用することができます。

また、心臓の動き(心電図)を自動解析し、電気ショックが必要な方にのみ電気ショックを流す仕組みになっています。

引用:AEDって?|AEDの基本情報|AEDライフ by 日本光電

AEDを女性に使用することにためらいの声が…

今やどんな場所にでもあるAEDですが、使用する際に「素肌」に器具を装着する必要があり、女性の場合、上半身の服を脱がせなくてはいけないので、女性にAEDを使用するときにためらいの声がありました。

AEDの使い方

  • 電源を入れ、倒れた人の右鎖骨と左脇腹の素肌に電極パッドを貼ります。
  • AEDが心電図を解析し、電気ショックが必要か判断します。

女性にAEDを使うとセクハラで訴えられるのは本当か?

結論から言うと、女性にAEDを使用してもセクハラで訴えられることはまずありません。

万が一、救助された女性側がセクハラで訴えることがあっても、裁判において罪に問われることはありません。

AEDを使用するために胸をはだけさせたという行為は、性的な目的のものではなく、救助を目的としたために必要な行為だと認められ、犯罪として成立することはないからです。

AEDは、人命救助のための装置です。

AEDを使用しなければならない場合は、人の命が関わる一刻をも争う事態なのです。

女性が倒れた時に、セクハラなどを心配してAEDを使用しないという、誤った認識があります。

もし、救助を求める人が、女性であった場合、その命の救助に大きく影響を与えます。

倒れている人、救助を要する人が女性であっても、男性・女性に関わらずに、その現場に遭遇した人は躊躇することなくAEDを使用することがその人の命を救うことへの一歩となります。

女性にAEDを使う時の配慮

命が大切だとは言え、女性にとっては会社など知っている人たちが多い場所、駅や街中などの多くの人の面前などで、胸をはだけさせられることは、決して喜ばしいことではないと想像することができるでしょう。

そのため、倒れた女性にAEDを使う際には、小さなことでも配慮できることがあります。

人垣を作る

これは女性に限らず、人命救助の鉄則として、倒れている人を発見した時には決して、一人で救助しようとせずに大きな声で周りに助けを呼び、救助に当たる人数を増やすことが救命率を上げることができると言われています。

大声で周りに助けを求めることで、近くにいる人たちに緊急事態を伝えることができます。

もしかしたら、医療関係者やAEDの使用経験がある人、AEDの講習を受講している人が近くにいる可能性もないわけではありません。

また、人が多く集まれば倒れている人の周りに人垣を作り、壁となって倒れている女性の胸をはだけさせても、通行する人の視線から守ることができるのです。

女性にAEDを使用してもらう

例えば大声で助けを呼んだ際、集まってきてくれた人の中に女性がいれば、女性たちにお願いしてAEDを使ってもらうこともできます。

同性であれば、はだけた胸を見られても、異性に見られることに比べればそれほど羞恥心を感じるわけではないと考えられます。

女性たちが中心となって衣服を脱がせたり、AEDの電極パッドを貼り付けたりしている間、男性たちには人垣として、壁を作ってもらいます

もし人垣を作って視界を遮る場合には、倒れている女性に背を向ける形で男性に周りを囲ってもらいます。

男性が女性よりも背が高いことが多いため、壁としてはより他の人からの視線を遮ることができるからです。

テントを利用する

AEDの設置場所によっては、AED装置と一緒に救命活動中に使うテントが一緒に配置されているところもあります。

一般に救命テントや処置テントと呼ばれるもので、ワンタッチですぐに広げることができ、倒れている人に被せる形になっています。

このテントは、AED使用時のプライバシーに配慮した製品で、救命中であることがわかりやすいようにテントにAEDのマークや救命中であることが大きくプリントされています。

救助テント

一つの面は大きく開放されているため、AEDの処置にも影響することはありません。

上着やタオルをかける

テントがない場合であっても、AEDの電極パッドを胸に貼った後に、上着やタオルなどを上からかけることで、露出を防ぐこともできます。

AEDパッドは金属に触れると電気ショックの効果が十分伝わらなかったり、スパークしたりする危険性があります。

そのため、上着をかける際は金属製のボタンなどが電極パッドに触れないように注意をする必要があります。

ブラジャーは外さなくて大丈夫

ブラジャーには胸の形を整えるためのワイヤーや肩紐についているストラップ、ブラジャーを留めるホック部分など複数の箇所に、金属が使われています。

以前は、金属製のものがAEDの電極パッドに触れるのを防ぐため、ブラジャーは外してからAEDパッドを装着するよう指導をされることが多くありましたが、しかし、最近では胸に直接電極パッドを貼ることができれば、ブラジャーを外す必要はないという見解が示されるようになってきました。

ブラジャーを付けたままAEDを使用できれば、ブラジャーを外す手間に時間をかける必要がなく、よりスピーディーに心肺蘇生を行うことができるのです。

また、ブラジャーを外さなければ胸全体を露出することもないため、多くの人に胸をさらす必要もなくなります。

ただし、ブラジャーをつけた状態でAEDパッドを使用する際には、ブラジャーとAEDパッドが重ならないよう、ブラジャーの部分を避けて直接AEDパッド全体が肌に貼り付けられるように気を付けることが大切です。

このような戸惑いの声を受けて、東京都福祉保健局はこのようなチラシを作成しました。

AED

妊婦にAEDは使用していいの?という疑問の声もありました。

答えは、使ってください。

母親が心停止すると、胎児に酸素が供給されずに命の危機にさらされます。

オンライン講習もあります。

もし、道端や家の中、様々な場面で倒れている人がいた場合、その人に反応なく、普段通りの呼吸をしていない場合は、すぐに胸骨圧迫(心臓マッサージ)をする必要があります。

圧迫によって、止まった心臓の代わりに全身に血液を送ることができるのです。

AEDの電気ショックと胸骨圧迫の両方を施すことが、救命のために重要です。

いざという時に、前もってAEDの使い方を講習で習うこともできます。

AEDや救急処置の現実

現在、日本には、約62万台のAEDが設置されていると推定されています。

日本は世界でも有数のAED保有国と言われています。

しかし、実際にAEDが使用されているのは2019年1年間では1,311件です。

病院の外で倒れた際に、たまたま周りの人に目撃された心肺停止傷病者のうち、AEDで電気ショックまで受けた人の割合はわずか5.1%(1,311/25,560件)と低い数字となっています。

胸骨圧迫は、その場に居合わせた人が特別な機器を用いずに実施できます。

また、119番通報した際、心肺停止の疑いがあれば、電話を受けた通信指令員の方が、丁寧に胸骨圧迫やAEDの使用方法を教えてくれます。

しかしながら、前述のとおり心肺蘇生を試みる人が59%いるにも関わらず、AEDのショック実施率は5.1%にとどまっているというのが現実です。

 

年間死亡者数

1,340,433件

院外心肺停止

126,271件

心原性

78,884件

目撃あり

25,560件

心肺蘇生

14,789件

AED使用

1,311件

総務省消防庁:令和2年版救急・救助の現況

厚生労働省:令和2年(2020)人口動態統計の年間推計について

参考:AED使用率わずか5%の現実。AEDの使用に立ちはだかる課題とは | フィリップス ヘルスケア (philips.co.jp)

最後に

心臓が止まってしまうと、電気ショックが1分遅れるごとに、助かる確率が10%づつ下がってしまいます。

救命処置とは、ためらってはいけません。

たとえ、完璧にできなくても、「誰かが倒れていたら自分が目の前の命を救う」という心構えで、できるだけのことをしてください。

そのためには、日頃からイメージトレーニングなどしておくといいかもしれません。

参考サイト

女性に配慮したAEDの使用方法について

女性にAEDためらうかも・・・

女性へのAED使用の配慮と注意事項 ブラジャーはどうする?

日本AED財団

AED・救命講習会について (criteria-select.net)

AED救命テント|AED定期交換部品・関連品

 

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ABOUTこの記事をかいた人

TANOSHIKAライター。うつ病、AC(アダルトチルドレン)、機能不全家族育ち。現代詩を勉強中です。セクシャルマイノリティ当事者。読みやすい、わかりやすいをモットーに様々な記事を書いていきます。