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はじめに
小学生の頃、国語の教科書に掲載されていた「野ばら」というお話を読みました。
石碑の右と左に大きな国の老人と小さな国の若者の兵士が立っていました。二人はあまりにも退屈なため、将棋を指すほど仲良くなってしまいました。
しかし、二つの国が戦争を始め、敵味方に分かれることになります。
これまで毎日まいにち、仲なかむつまじく、暮くらしていた二人ふたりは、敵てき、味方みかたの間柄あいだがらになったのです。それがいかにも、不思議ふしぎなことに思おもわれました。
「さあ、おまえさんと私わたしは今日きょうから敵かたきどうしになったのだ。私わたしはこんなに老おいぼれていても少佐しょうさだから、私わたしの首くびを持もってゆけば、あなたは出世しゅっせができる。だから殺ころしてください。」と、老人ろうじんはいいました。
これを聞きくと、青年せいねんは、あきれた顔かおをして、
「なにをいわれますか。どうして私わたしとあなたとが敵かたきどうしでしょう。私わたしの敵てきは、ほかになければなりません。戦争せんそうはずっと北きたの方ほうで開ひらかれています。私わたしは、そこへいって戦たたかいます。」と、青年せいねんはいい残のこして、去さってしまいました。
まるで、ウクライナとロシアの関係みたいに思えるのは私だけでしょうか?
子どもの頃に読んだ童話の世界が、今、現実に起きているように思います。
私は、ウクライナとロシアの歴史に詳しくないので、正確にこの二つの国の関係を理解していませんが、個人間の関係と国同士の関係は別物なのではないかと感じてしまいます。
そして、老人と若者という構図が、老人たちが始めた戦争に若者が巻き込まれ、最前線で戦わされることは今も昔も変わらないことだなと思いました。
ロシアの国の中でも、インターネットが生まれたときからあったデジタルネイティブ世代と、インターネットを使用しない中高年世代とでは、戦争に対する考え方も違うようで分断が起きていると感じました。
「野ばら」の老人兵士は、若者兵士のために「命」を投げ出そうとします。しかし、若者はそれを拒絶し、北に向かって出征します。
最後に、若者が指揮をとった軍隊が、野ばらが咲く石碑の近くを通り過ぎ、老人に黙礼をしてそっと野ばらの匂いをかぐのです。
それは、老人の夢でした。
私は、子どもの頃にこの場面を読んで、若者は一体どんな気持ちだったのだろうと思いました。
敵味方と分かれ、戦争を始めた国民同士は憎しみ合い、取り返しのつかない感情に支配され、もう2度と元には戻りません。
21世紀の現在において、なぜ、このような戦争が再び起きてしまうのでしょうか?
私たちは何回この絶望感を味あわなければいけないのか。
私たちにできることはないのか?
と、考えてしまいます。
日本政府のウクライナ支援
防弾チョッキやヘルメットなどの自衛隊装備品の供与や、緊急人道支援に2億ドルをウクライナに提供しているので、私たち日本国民が何もやっていないわけではないのですが、なんだか無力感を覚えます。
私たちは次世代に安心、安全な環境で生きる「命」を繋いでいく使命があるように思います。
それがなぜ、できないのか。考え続けなければなりません。
私が思うに、戦争をなくすためには、まず歴史を学ばなければなりません。無知が一番よくないと考えます。
ウクライナとロシアの歴史を学ぶこと。それは、日本人の私たちにとって関係がないことではありません。
ウクライナとロシア
ウクライナの西部は農業が中心で、東部は工業が盛んです。東のほうが稼ぎ頭で、ロシアとの結びつきが強く、言語も東部はロシア語の通用度がかなり高いです。
ロシアにとってウクライナは「ロシア発祥の地」といえる場所です。
今の首都キエフに生まれた「キエフ公国」(キエフ・ルーシ)が10~12世紀に欧州の大国となり、同じ東スラブ民族からなるロシア、ウクライナ、ベラルーシの源流になります。ルーシとはロシアの古い呼び方です。
13世紀のモンゴルによる侵攻などで、キエフ・ルーシは衰退します。その後に栄えたモスクワがロシアを名乗り、キエフ・ルーシを継ぐ国と称しました。ウクライナは東スラブの本家筋ですが、分家筋のモスクワが台頭して大きくなった、ととらえることもできます。
このような歴史的背景により、ウクライナにとっても、ロシアは兄弟のような国であり、心情的には親和的でした。
ウクライナはさまざまな大国に支配され、1922年にソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)ができると、ソ連を構成する共和国の一つとなりました。
ソ連が崩壊した91年に独立を宣言し、その後、国内では親ロシア派と親欧米派が対立を続けてきました。
1994年にウクライナがNATOの「平和のためのパートナーシップ」に加わります。ウクライナが核兵器を放棄する代わりにロシア、米国、英国がウクライナの主権を保障する内容の「ブダペスト覚書」が交わされました。
2014年のロシアによるクリミア併合までは、決して敵対的ではありませんでした。調査によって変動はありますが、NATO加盟に関して前向きな国民も、2014年以前はせいぜい3割程度でした。
2014年2月、ユーロマイダン革命と呼ばれる政変でヤヌコビッチが政権を追われ、ウクライナは一気にEU寄りに傾きました。そこで危機感を持ったロシアが介入し、同年3月、強引にクリミアを併合したため、ウクライナとの関係は後戻りできないほどに傷ついてしまいました。このときを境に、NATO加盟に前向きな国民も年々少しずつ増えてきました。EUの経済的魅力がもともとあったにしても、まさにロシアの行動やあり方を見て、ウクライナ人は最終的にEU寄りになっていったといえます。
プーチン大統領の主張
「ロシア、そして国民を守るにはほかに方法がなかった」。ロシアのプーチン大統領は2022年2月24日、攻撃開始を宣言する演説でそう述べました。親ロシア派の組織が占拠しているウクライナ東部で、ロシア系の住民をウクライナ軍の攻撃から守り、ロシアに対する欧米の脅威に対抗するという「正当防衛」を主張しています。
ロシアは、東西冷戦の時代からの西側諸国の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)が自分たちを敵とみなしてきた、と主張してきました。
ロシアはウクライナへの侵攻を、NATOの脅威に対する自衛措置だとも説明しています。プーチン氏は2月24日の演説で「NATOはロシアを敵と見なしてウクライナを支援している。いつかロシアを攻撃する」と言い切っています。
NATOとは
NATOとはNorth Atlantic Treaty Organizationの略で、日本語では「北大西洋条約機構」。北大西洋同盟と呼ばれる場合もあります。
第二次世界大戦が終わりを迎えた後、ソビエト連邦との対立(冷戦)が深まっていき、アメリカ・イギリスを中心に1949年に誕生しました。
簡単に言うと、「旧ソ連に対抗するために生まれた軍事同盟」です。
主に集団防衛・危機管理・協調的安全保障の三つを中核的任務としており、加盟国の領土及び国民を防衛することが最大の責務とされている組織(同盟)です。
加盟国が外部からの攻撃に対して相互防衛に合意し、集団防衛のシステムを構成しています。
日本はNATOの「グローバルパートナー国」として名を連ねてます。
ワルシャワ条約機構
かつて、NATOに対抗して、冷戦期の1955年から、ソ連を盟主とした東ヨーロッパの軍事同盟がありましたが、1991年、ソ連崩壊と共に解散しました。
資源大国ロシアとの駆け引き
天然ガス輸出世界1位のロシアは、ウクライナに対して、天然ガスの輸出を制限することにより、圧力をかけてきました。しかし、ウクライナがロシア以外の国からも天然ガスをを手に入れるようになると脅しの効果がなくなってしまい、とうとう、軍事力で押さえつけることになりました。
日本は、欧米諸国と協力して、ロシアに金融制裁や、輸出入を取りやめて経済的に孤立させることで攻撃をやめさせようとしています。
欧米諸国は、ウクライナに武器を渡して、ロシアに負けないよう応戦しています。
終わりに
以上、ウクライナとロシアの歴史を私なりに調査し、まとめてみました。これら以外にも、過去にいろいろな歴史があり、複雑な問題を抱えています。
冷戦が終わり、核兵器を放棄したウクライナ。ブダペスト覚書でロシアはウクライナの主権を守ると約束したはずなのに、それを反故し、戦争を始めました。
世界各国から、ルール違反だと非難の声が上がっています。
エネルギー資源を外交のカードとして使い、ロシアはいろいろな国に圧力をかけていました。それも、効果がなくなると軍事力を用いて世界各国をコントロールしようとしているように見えます。
日本は沖縄以外、地上戦を経験したことがありません。つまり、敵国から侵略された過去がない、先進国の中でも稀有な国です。大国に支配され、翻弄されてきたウクライナの歴史を理解するには少し難しいかもしれません。
高騰するエネルギー問題、核の問題、日本では北方領土問題など、ロシアとの関係は世界各国、頭が痛い問題として複雑に絡み合い、今後の社会情勢に大きく影響するであろうと思います。
私たち日本国民をはじめ、世界各国の人々が正しい情報を知り、より良い判断ができるよう備えておくことが大切だと思います。
そして、一刻も早い戦争の終結を望みます。
参考サイト
nippon.com 日本政府のウクライナ支援とロシア制裁の現状:緊急人道支援は計2億ドルに積み増し
朝日新聞デジタル【そもそも解説】ロシアはなぜ侵攻したのか? ウクライナ危機の背景
Yahooニュースなぜ「ブダペスト覚書」はロシアに反故にされたのか
Gakken キッズネットなぜ? どうして? ロシアのウクライナ侵攻
Create 転職 NATOとは簡単に・わかりやすく解説|加盟国やロシア・ウクライナ問題・情勢について
noteでも書いています。よかったら、読んでみてください。
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