冬はこわい➖転倒に気をつけよう!《パート1》

転倒注意のマーク

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改めまして、M.Jです。

「♫ベイベー オー ベイベー い・け・な・いルージュマジック」

「(中略)人の目を気にして 生きるなんて クダラナイことさ」(歌:忌野清志郎・坂本龍一)

 

「ん、ちょっと待ったあ~」

人の目を気にしないことはいいことなのですが…、せめて「自分の足元周辺」は気にしてほしいものです。

「い・け・な・いルージュマジック」の歌は最高の歌なのですが、歌に集中しすぎると「転倒する危険性」が高くなります。

冬の寒い時期は、どうしても「転倒」が多くなります

主な原因としては、筋肉が過剰に収縮してしまう《=縮こまる》ということがあります。

ですので、段差を越えるときに、脚を上げたつもりでも「脚が上がっていない」ために「転んでしまう」ということが発生してしまうのです。

 

「転んでしまう」と高齢者に限らず、「骨密度の低いかた」「中年以降のかた」でも場合によっては「日常生活動作に支障を来たす」という悲惨な結果となります

冬の時期に特に多い「転倒」について、パート1・2の2回にわたり書いていきます。

今回は、主に転倒すると「どのようになるか」について、以下の項目に沿って書きます。

⚫︎転倒について

●転倒しやすい環境、薬の作用や副作用

●身体的な要因

⚫︎骨折・骨密度

⚫︎大腿頚部骨折

⚫︎冬に転倒が多い理由

⚫︎この冬を明るく乗り越えよう!

転倒について

高齢(65歳以上)になって、家の中や外出中に「転倒」し、大きなケガを負ってしまうと『生き生きとした人生』からは程遠い期間が長く続いてしまうことになります。

「転倒」することによってどのようなことが起こるのでしょうか?

【転倒することによって起こる現象】

《1》骨折や頭部外傷などの大きなケガにつながる

《2》骨折からの回復に時間がかかる→若い頃よりも時間を要する

《3》不安や恐怖によって「意欲が湧かない」「気力がなくなる」

《4》活動性が低下する

上記の《1》〜《4》の悪循環になり、介護の必要な状態になることが多いようです。

「令和4年(=2022年)国民生活基礎調査」によると、高齢者の介護が必要になる原因は以下の順位となっています。

【介護が必要になる原因】

第1位:認知症 第2位:脳血管疾患(=脳卒中) 第3位:骨折・転倒

〇骨折・転倒は「高齢による衰弱」よりも多い

介護が必要となる転倒ですが、どのようなことが原因で起こるのでしょうか?

冬の転倒の主な原因

①環境によるもの 病気や薬の影響

身体機能の低下 運動不足

上記のように「さまざまな原因」があるため注意が必要です。

 

転倒しないようにするには「転倒する原因」を認識して「原因を除去すること」が必要不可欠です!

「転倒」によって、高齢者に限らず「骨密度が低い」場合は「骨折する危険性」があります

特に「運動不足」や「薬の種類が多い」場合は、転倒が起こりやすくなり、骨折しやすくなります

骨折すると「固定の期間」が発生するので、身体の機能が低下してしまいます

骨折した後には「介護が必要(=周りからの手助けが必要)」となります

場合によっては「認知症」や「合併症(生命の危険を伴う病気)」となることもあります

よって、中年以降からは「転倒予防」への必要不可欠なのです!

転倒しやすい環境・薬の作用や副作用

転倒の原因として常に意識すべきことは「転倒しやすい環境を認識すること」と「薬の作用や副作用で起こる症状を認識すること」です。

その理由として、冬は床面が不安定な環境で生活していること感染症(風邪、コロナ感染症など)や薬の服用でボーっとした状態になりやすいことが挙げられます

詳しくは以下の通りです。

【転倒する危険性が高い環境・履き物と薬の作用・副作用】

《1》居間

◎危険な環境➡「床に物があること」

◎危険なもの➡「コード・カーペット・こたつ布団」

《2》ベッド

◎危険➡「壁に接していないベッド・柵のないベッド」

《3》浴室

◎危険な環境➡「滑りやすい浴室(タイル)」

◎危険➡「手すりのない浴室」

《4》玄関

◎危険な環境➡「滑りやすい(大理石など)」「段差が高い」

◎危険➡「壁に手すりのない状態」

《5》履いている靴

◎転倒しやすい履物➡「スリッパやヒールのある靴」

《6》薬の服用

◎危険➡「何種類もの薬を飲んでいる場合」⇒「立ちくらみ・ふらつき」が発生

◆参照:政府広報オンライン:たった一度の転倒で寝たきりになることも。転倒事故の起こりやすい箇所は?《2024年9月10日》

 

上記のことから「生活する時間の多い場所」は「転倒の危険性が高い」と言えますおそらく「自宅など家の中で転倒することが多い」ようです。

また、薬の作用や副作用の中には「強い眠気を起こしてしまうもの」や「ふらつきやすくなってしまうもの」があります。

よって、環境整備《転倒を避けるための環境に整備》をすることや薬のことについて薬剤師に相談すること《場合によっては薬の変更》が必要となってきます。

「家の周辺の環境」「履き物」「薬」について意識していきましょう!

転倒している人

身体的な要因など

「転倒予防」は、若い頃からの意識づけが必要不可欠となってきます。その理由としては、年齢を重ねることによって以下のことが起こるからです。

年齢を重ねることによって起こる現象
  • 筋力低下、バランス能力低下、柔軟性低下などが起こる
  • 視力が低下する、視野が狭くなる
  • 反射的防御動作が素早く出来なくなる
  • 注意力不足になる、自分自身の状態予測が困難になる
  • 日常的な身体活動が減少する《社会参加の減少》
  • 運動機能や感覚機能が低下する

 

転倒する身体的な要因が1つではなく、上記に挙げた「さまざまな要素が重なって起こる」のです。様々な要素によって「転倒の危険性が高くなる」ので、転倒を避けるためには「ウォーキング」といった有酸素運動だけでは不十分なのです。

有酸素運動に加えて「脚の筋力トレーニング」「バランス運動」「社会的な交流による脳の活性化」「目の病気の予防」などが必要不可欠となってくるのです。

若い頃から「年齢を重ねた時の自分」について意識していきましょう!

骨密度・骨粗しょう症

転倒した場合に「ADL(=日常生活動作)の能力」を大きく左右する要素として「骨密度」が大事になってきます

骨密度が低いと、高齢者ではなくても「移動能力」や「ADL能力」は低下していきます

その結果「QOL(=生活の質)が低下して『暗い人生』になってしまうのです

ですので、何とかして「骨粗しょう症が悪化すること」を防いでいくことが欠かせません!

骨粗しょう症、ご存じのない方もいると思います。M.Jと一緒に学んでいきましょう。

今回は、以前M.JがAKARIで書いたことに加えて「整形外科分野の勉強会」で得られたことを中心に書いていきます

【骨粗しょう症について】

定義》骨密度の低下によって骨折の危険性が高い状態

発症の割合

  • 日本人の10人に1人は骨粗しょう症(10%)
  • 圧倒的に女性に多い(50歳以上の4人に1人)

症状

①身長の低下 ②円背 ③腹部の圧迫 ④膝が伸びない

★無症状で、いつの間にか「状態が悪くなっている」ことが多い!

骨粗しょう症になると困ること

骨折 ★転倒 ★要介護

なりやすい人

やせている人(BMI:18.5以下)

喫煙者やCOPDの病気の人 

飲酒量の多い人

カルシウム不足の人

ステロイド薬服用者

糖尿病

関節リウマチ

CKD(=慢性腎臓病)

注意

★骨密度の検査で高く出ても安心してはいけないケースがある!「血管の石灰化」の危険性もあるので「血液検査」などの検査が必要!

整形外科のレントゲン

《骨粗しょう症で骨折すると》

杖を使用しないと歩行が難しい場合が多い

日常生活に介護が必要となることが多くなる

精神的に大きな影響を与えることが多い

認知症になることもある

骨折の連鎖が起こりやすくなる次々と骨折

大腿骨の骨折と背骨の骨折は「生命の危機」になることも

以下は、以前私がAKARIで書いた記事です。骨密度・骨粗しょう症について詳しく書きました。ご覧になっていただけると有り難いです。

関連記事:

 

骨粗しょう症、症状が出現しても気づかず「放置して悪化する」ことが多いので厄介です。

治療をせずに「放置し続ける」と、骨折しやすい身体になってしまうのです。

「骨粗しょう症、どうせ高齢者の病気だろう」といって、若い頃から「骨密度の検査をせずに放置」すると中年以降になって「いつの間にか骨折」という状態になってしまいます

ところで「女性で40歳以上、男性で60歳以上は骨密度検査をしましょう」となっていますが、できれば「女性で30歳以上、男性で50歳以上」で「骨密度検査をすること」が望ましいと思います。

「健康寿命(=周りの介助を必要としない期間)を延ばす」という視点では、骨粗しょう症の予防は必要不可欠なのです!

大腿骨頚部骨折

家の中での生活や外出した時に「転倒」することによって起こりやすい骨折として「大腿骨頚部骨折」があります。

この骨折は、「固定の期間が長いこと」に加え「荷重関節(=体重をかける部分)」なので、骨折の中で最も「ADL(=日常生活動作)への支障」を招くものですその結果「QOL(=生活の質)」が低下してしまうのです

「大腿骨頚部骨折」とは、どのような骨折なのでしょうか? 掘り下げてみましょう。

大腿骨頸部骨折について

《概要》

  • 大腿骨は脚の付け根から膝までの太ももの骨
  • 脚の付け根の部分は股関節をつくっている
  • 大腿骨は「骨頭」「頚部」「転子部」「転子下」で構成されている
  • 大腿骨頚部骨折は、文字通り「大腿骨頚部」で起こる骨折
  • 大腿骨頚部が骨折すると骨頭部分に血流障害が起こる

以下は、骨盤と大腿骨を結ぶ「股関節」の部分の図解と解説です。ご覧になっていただけるとわかりやすいと思います。

参考:人工関節ドットコム:股関節の構造

《原因》

転倒

骨粗しょう症比較的軽い外からの力または骨が著しくもろい場合は「おむつ交換」でも発生》

《傾向》

★男女比ー男性:女性=1:4で女性が圧倒的に多い

骨粗しょう症がひどい場合は「骨折した後に転倒」で発生

《症状》

脚の付け根の強い痛み

立ち上がりが困難《歩行も困難》

あお向けでの膝立てや脚の挙上が困難

《合併症》

①肺炎

②褥瘡(=床ずれ)

③下肢静脈血栓症

④認知症→動けないことによる脳の機能低下

★注意➡合併症で亡くなることが多い!

《治療》

◎主に手術です。以下の文献に記載しています

参考:慶應義塾大学病院:骨盤骨折、大腿骨近位部骨折、下肢骨折《2018年1月15日》

リハビリ

①ベッド坐位保持訓練《もたれかからずに「すわる」》

②車椅子への移乗訓練《ベッド⇔車いすに乗り移る》

③立位保持訓練《立ち続ける》

④平行棒内歩行訓練

⑤杖歩行訓練(松葉杖や1本杖)

大腿骨

《予後》

〇手術中に死亡することはまれ

手術後は合併症の危険性が高くなる

➡肺炎や循環器疾患(心臓などの病気)に注意が必要!

骨折する前の状態には戻れない

➡身体機能としては機能訓練がうまくいっても「1本杖歩行」または「歩行器」の状態

《機能訓練ががうまくいかない場合は「車いす」の状態》

 

大腿骨頚部骨折、予後(=骨折後、手術後)の「ADL(=日常生活動作)の能力が低下」してしまうことが多いです「杖なしでの歩行」は、ほとんどの場合で難しくなります

手術後のリハビリがうまくいかない場合は「車いすでの生活」となることが多いようです

これに加えて、固定の期間が長期間になるので「脳の機能が低下してしまう」ことが多くなります。《「認知症」の危険性が高くなる》

肺炎や褥瘡(=床ずれ)などの悪化で「生命の危機」となることもあります

ですので、予後のことを考えると「転倒を避けたほうが良い」と言えます。

皆さんには、大腿骨頚部骨折を避けて『生き生きとした生活』を続けてほしいと思います!

冬に転倒が多い理由

「冬になったら風邪をひかないように気をつけていきましょう!」という言葉は聞くとことが多いのですが、なぜか「冬になったら転倒しないように気をつけていきましょう!」という言葉は聞かれないので不思議です

おそらく「転倒なんてしないから!」という自信過剰な人が多いのかもしれません。

ただし、この記事をご覧になっている方は、転倒や骨折の「怖さ」や「生活への影響」をしっかり認識されていると思います。

今回の記事に挙げた「転倒」ですが、最も多いのは「冬」です。なぜ、冬には「転倒」が多いのでしょうか?

【冬の転倒が多い理由】

保温のために敷いたこたつやカーペットに引っ掛かるため

動くことが少なくなり、散らかった場所のものに引っ掛かるため

日照時間の関係で見えずらくなったコードに引っ掛かるため

保温のために履いたスリッパでつまづくため

着脱が難しいブーツや長靴を履く場合があるため

気温が低下すると筋肉が縮み動きが悪くなるため

ストレッチが不十分になりやすく脚が上がらないため

◆参照:メディプラス:冬は骨折が急増する季節!骨折を予防するには《2022年2月16日》

 

冬の転倒が多い理由には上記の①~⑤の「環境的要因」と⑥~⑦の「身体的要因」があります。

特に、冬の生活環境は「転倒する危険性を高めてしまう」ので、注意が必要なのです!

転倒を予防するためには「マット(またはカーペット)・スリッパ・コード」と唱えるとともに「家の中の通路の確保」を意識することが大事になってきます。

ついつい「私は大丈夫!」と思ってしまうのですが、そんな方こそ「転倒の危険と隣り合わせ」なのです!

前述したように「自分の足元付近の環境」を意識して「用心深い動き」をしてほしいものです!

また、転倒が怖いからといって「運動をしないこと」は最悪の方法です!

家の中などの「周辺の環境に注意して」積極的に動いていきましょう!

この冬を明るく乗り越えよう!

家族

この記事をご覧の皆さん、冬を明るく乗り越えるためには「転倒しないこと」はものすごく大事なことです。

どうしても冬は「転倒しやすい環境(身体的な要因も含む)」となってくるので、環境を意識して「注意して行動するぞ!」という決意が必要となってきます。

 

「転倒なんて高齢者だけの問題だ!」と言っているかたには今から考え方を改めていただきたいです!

年齢を重ねたときに『明るい人生』にしていくためには「若い頃から転倒を避ける意識づけ」が必要となってきます。

今回の記事で挙げたように40歳以上になったら骨密度の検査を受ける」「転倒しやすい環境に注意して動く」「動きやすい靴を履くといったことを意識していきましょう!

記事をご覧いただき、どうもありがとうございました!

 

《パート1》では、転倒についての基本的な知識や冬に転倒が多い理由など「認識しておくべきこと」について書きました。

次回《パート2》では「転倒を予防する方法」について掘り下げていきます。『冬はこわい➖転倒に気をつけよう!』《パート2》をお楽しみに!

今回の記事は、以下の文献を参考にしました。

参考:聖隷淡路病院:転倒予防のススメ

   日本理学療法士協会:転倒を予防していつまでも元気に(PDF)《2023年3月22日》

   骨粗鬆症財団:骨粗鬆症財団

   骨検:年代別でできる骨粗鬆症予防

   日本整形外科学会:大腿骨近位部骨折(PDF)《2011年6月9日》

   ドクターズファイル:大腿骨頚部骨折(原因・症状・治療など)《2021年12月27日》    

   日本骨折治療学会:大腿骨頚部骨折と大腿骨転子部骨折 ~高齢者の脚の付け根の骨折~《2014年3月》

   清友会 笠松病院:骨粗鬆症~骨折をしない強い骨をつくる~《2000年》

 

これまでに私が書いた記事です。ご覧になっていただけると有り難いです。

Noteのほうにも記事を書いています。ご覧になっていただけると有り難いです。


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