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こんにちは、翼祈(たすき)です。
脳動脈瘤は、脳内の血管が局所的に膨張し、血管が破裂すると致死率の高い、くも膜下出血を発症するなど命に関わる場合もあります。くも膜下出血は日本では毎年およそ3万人が発症し、1万人以上が亡くなっています。
日本人の5%に未破裂の脳動脈瘤があると推定されていますが、治療法には血管カテーテルや、開頭手術などの外科的手法しか確立されておらず、有効な治療薬は現在においてもまだないです。
そんな中、脳動脈瘤の発症の原因となる、変異する遺伝子が研究で分かりました。
くも膜下出血を発症する主な原因の1つで、脳内の血管に発生する、脳動脈瘤の発症に関連する遺伝子「PDGFRβ」の変異を発見したと、理化学研究所と山梨大学などの研究チームが明らかにしました。この遺伝子「PDGFRβ」に関与するたんぱく質に的を絞った薬物療法で、くも膜下出血を予防する可能性を秘めているといいます。
この研究データの論文が2023年6月14日、アメリカの科学誌[サイエンス・トランスレーショナル・メディシン]に掲載されました。
脳動脈瘤の治療で、治療薬が開発されるのは初めてのこととなります。この遺伝子「PDGFRβ」は腫瘍形成にも関与しているとされ、特定の抗がん剤の投与で、「PDGFRβ」の遺伝子変異の発生を抑制することも分かりました。薬物治療への道を拓くと期待が持たれる研究データです。
今回は脳動脈瘤における、最新の研究データを紹介します。
脳動脈瘤を起こす、遺伝子「PDGFRβ」の変異とは?
理研脳神経科学研究センターのゲノム医学が専門の中冨浩文チームリーダーらは、抗がん剤の「スニチニブ」で、手術で脳動脈瘤を摘出した患部を分析してキーとなる遺伝子の変異を特定し、この遺伝子に関わり、機能する既存薬から絞り込んでいきました。
脳動脈瘤を摘出する外科手術を受けた患者さん65人から患部の血液や組織を採り、遺伝子情報を調査しました。その結果、複数の患者に変異が発生していた遺伝子の16個を特定できました。
これらの遺伝子の一部はがんの関連遺伝子や炎症の原因として認知されていました。特に大半の難治性の脳動脈瘤の患者さんでは、変異が認められた「PDGFRβ」と呼ばれる遺伝子を解析した結果、遺伝子変異が起こって、血管の弱体化などが確認され、血管の拡張を促進させるたんぱく質が活性化していたことが判明しました。
参考:「脳動脈瘤」関与の遺伝子変異を発見、くも膜下出血予防に可能性…理研などのチーム 読売新聞(2023年)
この「PDGFRβ」の遺伝子変異が発生した患者さんの細胞に既存薬を投与すると、たんぱく質の活性化が抑えられ、薬物療法が有効な手段の可能性があることが証明されました。この既存薬は「分子標的薬」と称され、がん治療などで既に多くが実用化されています。
理研脳神経科学研究センターのゲノム医学が専門の中冨チームリーダーは「これから臨床試験をして、既存薬を使用した治験の準備を加速させ、10年以内に脳動脈瘤で、『分子標的薬』の実用化を目標にしています」と述べています。
そして、
理研脳神経科学研究センターの研究チームは、マウスを使用した実証実験で、「PDGFRβ」の遺伝子変異が脳動脈瘤を発症させることを確認できました。さらに、「PDGFRβ」の遺伝子変異を抑制することが浸透している腎臓がんなどに使用する治療薬を投与した結果、動脈瘤化の抑制が可能なことも判明しました。
大阪大学の助教の男性は、理化学研究所と山梨大学などの研究チームの成果に、「過去にも脳動脈瘤に関与する遺伝子の報告はありましたが、今回の「PDGFRβ」の遺伝子変異の発見は、脳動脈瘤の治療に活かせる点で画期的な研究です。人への効果があるかは慎重に見極める必要もあります」と語りました。
今回は脳動脈瘤でしたが、新たな病気などの治療法を紹介させて頂きました。新しい治療法が開発されることで、助かる可能性が増えて来る。新しい治療法・治療薬、研究などの話は、とても喜ばしい話ですし、書いている私も毎回嬉しく思います。
noteでも書いています。よければ読んでください。
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