虐待の後遺症「複雑性PTSD」と、社会的養護への「保護もれ問題」を考える・CPTSD協会について

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こんにちは、金次郎です。

 皆さんも、テレビや新聞などの報道で「PTSD」と言う言葉を聞いた事が有ると思います。
 PTSDとは「Post Traumatic Stress Disorder」の頭文字を取った略称で、日本語に翻訳すると「心的外傷後ストレス障害」と言う言葉になります。

参考:(MedicalNote)PTSD(心的外傷後ストレス障害)

 今回は、そのPTSDの中でも虐待による後遺症による複雑性PTSD」と、社会的養護への「保護もれ問題」の啓蒙活動に取り組んでいる羽馬千恵さんという方をご紹介いたします。

「複雑性PTSD」の発症原因や症状とは?

発症原因

家庭内暴力、性的虐待などを長期に渡って反復的に行われた結果、それがトラウマ体験となり、感情などの調整が困難になるPTSD(心的外傷後ストレス障害)です。

症状

感情調整困難、解離、無力感、絶望、自己破壊および衝動行動、持っていた信念の喪失、敵意、引きこもり、常時脅迫されている感、など色々あります。

また近年の研究から、トラウマ体験をすると過覚醒状態となって眠りにくくなり、集中力の低下や、場所や時間の感覚も不確かになる事も分かって来ています。

発達性トラウマ障害

また、上記「複雑性PTSD」の診断基準には採用されていませんが、オランダ出身の精神科医ベッセル・ヴァン・デア・コーク氏が提唱した「発達性トラウマ障害」の概念と比べると「発達性トラウマ障害」は、PTSDの基準を完全には満たさない「不全型の複雑性PTSD」と言えるそうです。

参考:(こころの健康クリニック芝大門)複雑性PTSDと発達性トラウマ障害                

この「発達性トラウマ障害」を引き起こす契機やトラウマは、アメリカ連邦法では次の様に定義されています。

 「(子どもの)死亡や、深刻な身体的あるいは感情的な被害や、性的虐待または搾取をもたらすような、親もしくは養育者による行為もしくは行為の欠如。あるいはただちに深刻な害を生じる危険のある行為もしくは行為の欠如」

引用:クロアトル, 他. 『児童期虐待を生き延びた人々の治療』. 星和書店

児童虐待の定義と現状

児童虐待には、以下の4つがあります。

・身体的虐待:殴る、蹴る、揺さぶる、投げ落とす、火傷させる、拘束する
・性的虐待 :性器を触るor触らせる、性行為を見せる、子供への性行為
・ネグレクト:食事を与えない、お風呂に入らせない、家に閉じ込める
・心理的虐待:言葉の暴力、無視する、兄弟間で差別する

 次に虐待の現状を見てみます(厚生労働省の調査が2014年(平成26年)と少し古いです)。
 虐待が起きた件数は8万8931件で、どんな虐待が誰によって何歳くらいの時に起きたかです。

種類
 1・心理的虐待 43.6%
 2・身体的虐待 29.4%
 3・ネグレクト 25.2%
 4・性的虐待    1.7%

虐待者
 1・実母    52.4%
 2・実父    34.5%
 3・義父      6.3%
 4・義母      0.8%
 5・その他     6.1%

子供の年齢
 1・小学生    34.5%
 2・3歳~6歳     23.8%
 3・0歳~2歳   19.7%
 4・中学生     14.1%
 5・高校生     7.9%                           

参考:(厚生労働省)児童虐待の定義と現状          

          児童虐待の現状(pdfファイル形式 2ページ:164KB

児童虐待防止法は有るけれど・・・

 この国には、児童虐待防止法と言う法律が有り、違反者には刑罰も課せられますが、現状は上記の様に実の親から幼い時に虐待を受けている子供が多くいます。

 こちらは、「社会的養護への「保護もれ問題」を考える・CPTSD協会」が、実際に虐待を受けた35歳以上の方に行った調査の結果です。

1・虐待防止法の恩恵はありましたか?
 ・防止法の恩恵は何もなかった 96.2%
 ・防止法のおかげで救われた    3.8%

2・児相(児童相談所)は助けに来ましたか?また「児相」と言う言葉を子供時代に知っていまし
  たか?
 ・児相は1度も来ないし、言葉も知らなかった  90.9%
 ・児相介入があり、児相を子供時代に知っていた  9.1%

3・30代以上にになって、虐待の後遺症に苦しみ支援がない方はどのくらいいますか?
 ・30代以上だけど、まだ後遺症が酷く、支援が無い 80.9%
 ・30代以上で、社会から支援がある        14.1%
 ・30代以上で、虐待の後遺症がスッキリ治った     5.1% 

参考:(CPTSD協会)「保護もれの実態調査」より

CPTSD協会とは?

 上で調査を行った「社会的養護への「保護もれ問題」を考える・CPTSD協会」とは、社会の保護からもれた児童虐待当事者たちによる「保護もれ問題」と、「虐待の後遺症(複雑性PTSD)」を啓発するために設立された会です。

保護漏れ

引用:社会的養護への「保護もれ問題」を考える・CPTSD協会

 この会の共同代表の羽馬千恵さんは、自身の児童虐待経験から「わたし、虐待サバイバー」と言う本も出版されており、大学や福祉施設での講演会も精力的に行っておられます

 著書「わたし、虐待サバイバー」は、NHKの「クローズアップ現代」をはじめ新聞や自治体の広報誌等の各種メディアでも取り上げられています。 

虐待サバイバー

引用:Amazon

 上記の様に虐待防止法と言う法律はあっても、発見もしくは保護されなかった「潜在的児童虐待被害者」が多数存在する事から「CPTSD協会」では、この「潜在的児童虐待被害者」を無くすための啓蒙活動にも取り組んでいます。

「潜在的児童虐待被害者とは?」

 子ども時代に虐待がひどくても、社会的養護に保護される被害者は、全体のほんの「ごく一部」です。 
 発見・保護されなかった虐待の被害者は、専門用語で、潜在的児童虐待被害者といいますが、その数を国は実態調査していません。
 社会的養護と等しく、保護からもれた虐待サバイバー(虐待の被害者)にも、支援の光が当たらなければ、虐待の連鎖もなくならず、成人後の虐待の後遺症(複雑性PTSD)に苦しむ被害者もなくならず、児童虐待は、決してなくなりません。

引用:社会的養護への「保護もれ問題」を考える・CPTSD協会

【告知】オンラインイベント「❝生きづらさ❞にAKARIを灯す会」

この度、今回ご紹介した羽馬千恵さんに、AKARIのオンラインイベント「❝生きづらさ❞にAKARIを灯す会」に登壇いただくことになりました!

毎回様々な当事者の方をお招きし、様々な方の抱える❝生きづらさ❞にスポットを当ててインタビューを行い、聞いてくれた方の心に灯りをともすことを目的としたイベントです。

このイベントは、下記のAKARIのTwitterのSpaces上で行われます。12/17(土)の13時からです。

羽馬さんと今回取り上げた問題について当事者の立場から深く議論したり、当事者同士で意見交換する予定です。保護漏れ問題に直面している虐待サバイバーの方も、そうでない方も、ご興味ある方はぜひご一緒いただければと思います!

 

終わりに 

 私の父は厳しい人ですが、虐待まではされませんでした。
 そのかわり、私が新卒で入社した会社での長時間労働から、PTSDでは無いですが、似たような略語でPD(パニック障害「パニック発作」)になった事はあります。
 一番酷い時には、全く乗り物に乗れませんでした。
 PTSDと同じく「乗り物に乗ったら、また発作が起こるんじゃないか?」と言う先入観的恐怖感が有ったからです。

 でも「このままじゃ、働けないし再就職活動もできない」と思い、短い距離で乗り物に乗れると言う自信を着けて、少しづつ乗る距離を伸ばして行き、乗り物への恐怖感を克服していきました。
 でも成長期の子供の頃に受けた虐待などと言うのは、生涯背負って行かなければいけない心のトラウマになるでしょうし、パニック障害とは比べものにならない心の荷物かも知れません。

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2 件のコメント

  • 記事を読ませていただきました。
    今回の内容はどこかにていることがあって、びっくりしています。どんな小さなことでも良くないことを教えてもらいました。これからも記事を楽しみにしています。

  • コメントありがとうございます。
    なんか記事に合わせる様に、保育園の保育士による虐待のニュースが出ています。
    しかも、次から次へと園児への虐待が明るみになる保育園が見つかっており
    政府も実態調査を行う様です。
    本当、生き辛い世の中になってしまったものですね。

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