過労死の認定基準を見直し - ブラック霞ヶ関の現状と危機 - 

過労死

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こんにちは、金次郎です。

 海外の方が「疲れてるなら、休めば良かったのに」と不思議に思っている、日本人独特の亡くなり方があります。  
 それは「過労死」です。
 確かに「疲れたと感じたら休みなさいよ」と思いますが、休みたくても人事評価を気にしたり、上司が休みをくれなかったり、今日中に片づけないといけない仕事が膨大だったりすると、ついつい無理をして長時間働いてしまいます。
 その「過労死」の認定基準を20年ぶりに見直す事になりました。

「過労死の認定基準」とは?

 現在の「過労死」と認定される残業時間は、1ヵ月辺りおおむね80時間です。
 その認定基準は現状維持しますが、残業が80時間に達しなくても、それに近い残業時間や出勤時間の間隔が短く、かつ勤務時間が不規則な勤務形態なども含めて総合的に考えて新しい判断基準を作成します。
 今までも労働問題を扱う弁護士から「過労死基準の残業時間を65時間に見直そう」と言う提言がありましたが、厚生労働省は「十分なエビデンス(根拠)が無い」と退けていました。
 しかし、「過労死」を考える専門家検討会で厚生労働省は、20年ぶりに認定基準を改定する案を示しました。

20世紀のソフトウェア開発現場 

 私が新卒で入社したソフトウェア開発会社では、バブル景気時代は常に月100時間を越える残業をしていました。
 当時のソフトウェア開発作業は、ソフトウェア規模の大小に関わらず予め納期が示されており、開発計画の各工程はその納期に間に合う様に、受注した後に立てられていました。
 ですから、徹夜しないと終わらない様な工程が組まれたり、完成後の動作確認の時にプログラムのミスが見つかると、それを修正してソフトウェアが正常に動作する事を確認するまでは退社出来ませんでした。
 この様な状態の会社でしたから、せっかく採用した新入社員も「残業が多すぎる」と、入社後数年で半分近くが会社を辞めてしまうのが常態化していました。
 当時のソフトウェア開発を行う会社は、どこの会社も同じ様な感じの開発形態と社員の定着率でした。

労働者の働きづらさ解消へ 

 今、コンビニなどに置いている求人雑誌を家に持ち帰って見てみると、パート・アルバイトなどは「週の勤務日数・勤務時間相談可」と言う求人が多いです。
 正社員求人は、無論8時間勤務ですが「残業無し!」と書いている求人が散見されます。
 私ら世代の転職希望者は、仕事内容や賃金は勿論ですが、勤務時間も重要視している事を、求人を出す会社も分かっているのでしょう。
 また若い世代は、残業自体を嫌がる人が多い事も、会社の人事部門は十分理解している様です。
 せっかく雇って、会社の仕事内容を覚えてもらったのですから、会社としても長く働いてもらいたいはずです

一方、国家公務員の現状は

 この様に、民間企業は社員に働きやすい会社作りをしているところもありますが、各省庁のビルが集まる東京の霞ヶ関地区では、現代においても深夜になってもビルの灯りが消えない「不夜城」のままです。
 それは、通常業務に加えて国会で政権与党が野党から質問された事の答弁案を作成するのも、霞ヶ関の官僚達の仕事だからです。
 作成した答弁案を「これで良いか?」と関係各部所の了承をとり、最終案を答弁する大臣にファックスで送った後に、大臣室へ行き答弁する大臣に直接説明をします。
 仕事は深夜にまで及びますが、帰宅せずに朝刊新聞の到着を待ち、関連記事部分をコピーして幹部職員達に渡します。
 特に去年からは新型肺炎の流行で、新設された新型コロナウイルス感染症対策推進室の職員などは1ヵ月で364時間もの残業をしていたりします

故に省庁の人材流失が止まらない

 この様に、霞が関の官僚は多忙を極めますから、せっかく難関の国家公務員総合職試験に合格して仕事に就いたのに、20代の若手官僚の15%程が「職を辞する準備をしている」と答えています。
 理由を聞くと「もっと魅力的な仕事がしたい」と回答したのは男性は49%女性は44%「長時間労働で仕事と家庭の両立が困難」と回答したのは男性34%女性47%と、こちらは女性官僚の方が多く答えており、20代の若手官僚の退職者は、6年前より4倍以上に増えています。
 この様な状況ですから、国家公務員総合職試験の応募者も5年連続で減っており、今年2021年の応募者は過去最大の14.5%も減っています。
 若手の官僚がいなくなると、国会議員のサポート役だけでなく、その省庁で扱っている本来業務の担い手(後継者)がいなくなり、残った職員の更なる残業の増加と職員の高齢化が進んでしまいます。
 本当なら、国の機関である省庁の職員が率先して定時で仕事を終えて帰宅すべきですが、それも出来なくなってしまいます。
 結果として日本と言う国の国力が低下してしまうでしょう。

終わりに

 中学・高校が一緒だった友人は、自衛隊の入隊試験を受けて現在は幹部自衛官として働いている国家公務員です。
 国家公務員は、全国各地に事務所(自衛隊は駐屯地)が有り、上司と部下の慣れ合いを防ぐ為に、職級によって違いますが数年置きに転勤があり、特に幹部職は転勤が多いです。
 その友人から来る年賀状も、2~3年置きに住所が変わっています。
 多忙な上に全国転勤が有る国家公務員。
 学生の皆さんは知った上で試験を受けていると思いますが、若くして辞職を考えている人たちは、多忙の規模が想像していたのよりも、はるかに大きかったのかも知れません。

参考元

・過労死の認定基準 20年ぶりに見直し (日テレNEWS 24)
 https://www.news24.jp/articles/2021/06/22/07893793.html

・過労死ライン6532人の衝撃――「ブラック霞が関」の実態と、待ったなしの働き方改革
                                (Yahooニュース 特集)  

 https://news.yahoo.co.jp/articles/92e86ce4a238cd9792f4bc2a2d67b59f82f5ec5b?page=1

・国家公務員の残業、「過労死ライン」超え3千人…コロナ対策室職員は月364時間
                             (読売新聞 オンライン)
 https://www.yomiuri.co.jp/politics/20210403-OYT1T50239/

残業は月200時間超も、カップ麺すら待てない…忙殺される厚労省職員(AERA dot)
 https://dot.asahi.com/aera/2018062000051.html?page=1

・20代官僚の退職、6年で4倍超 河野氏「危機に直面」(日本経済新聞)
 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66442380Z11C20A1000000/

・キャリア官僚志願者14.5%減 過去最大、働き方影響 (日本経済新聞)
 https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE1673X0W1A410C2000000/

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2 件のコメント

  • 金次郎さんの文章から、「働きやすい世の中になって欲しい!」という熱意を感じました。
    私も微力ながら世の中に、何かできないかな、と考えさせられました。
    そんな事を教えてくれてありがとうございます。
    これからも応援しています。

    • コメントありがとうございます。
      記事にも書いている様に、私も新卒で入社した会社で長時間の残業をしていました。
      そのせいで身体を壊してしまいましたので、その後は全て残業が無く定時退社できる会社で仕事していました。
      私の想いは、この世から「残業」と言う言葉が無くなって欲しいです。

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