三間瞳さんインタビュー・中編~コロナ禍の奇跡と映画の反響~

三間瞳さん近影

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障害や疾患、難病などがある人の兄弟や姉妹、「きょうだい」に光を当て、自身の体験を元に映画「ふたり〜あなたという光〜」を制作された三間瞳さんに、前編・中編・後編にわたって、映画を制作されるまでのお話や、自身が経営されているBP&Co.株式会社についてもお話を伺うことができました。

前編では、映画制作をしようと思ったきっかけや、キーマンとなる佐藤陽子監督との出会いについて伺いました。

中編では、映画の撮影から公開までのお話や、公開後の反響、次回作の構想などについてお話を伺いました。

ぜひ最後までお付き合いください!三間さんのお話は全て太字で記載しています。

【前編はこちら】

撮影から公開まで、そして描かれた「きょうだい」の現実

コロナ禍で生まれた奇跡的な展開

―制作が決まるまでの経緯を教えてください。

「私はこれから映画監督を探そう」と切り替えたタイミングで、コロナになったんですよ。

世の中の映画制作とかドラマ制作も全て中止になって、撮影がストップしていたので、私は「世の中の制作陣たちが、映画を作れなくなってるのだから、私が映画を制作するなんて、こんなの5年後か10年後か。何年たったら私に機会が回ってくるんだろう」って思いました。

そのぐらいあのときは社会全体が大パニックになったので、流石にすぐには無理だろうな、私に順番が回ってくるのは結構先なんじゃないかなという覚悟はしましたね。

コロナ禍でそう思っていたら、6月ぐらいー緊急事態宣言が明けて、どこにも行けない状況から、ちょっと緩和されてきたころーに先ほどの陽子監督から連絡が来て、「この3ヶ月の間、コロナの期間に考えた」。

壁に掛けられたマスクを見つめる人物

彼女は自分のテーマのジェンダーギャップに関する作品を撮り切った後だったんです。

女性がどうしても結婚、出産、子育てがあるがゆえにキャリアを断たれて社会で活躍しにくい、自分の夢を諦める女性が多いという現実に対して、物申すような社会派の映画を撮っていたんですけど、それはもう撮り切って、賞も受賞していた後でした。そのあとに私の話を聞いて、コロナになったタイミングで、3ヶ月物凄く考えてくださったそうなんです。

「コロナになる前は、正直、先(次の作品)のことは考えていなかった。自分の撮りたいテーマの映画も撮りきったことだし、次のテーマにも出会えていなかったので、ぼんやりしていた。けれどコロナになって、このまま終わってしまっていいのか。このまま撮らなかったら後悔するテーマってなんだろうと考えたら、三間さんから聞いた話、『きょうだいをテーマにする映画を撮りたい』って思った」とコロナ期間中に考えられたそうなんです。

「あなたの凄く大事なテーマだっていうことは知っているんだけど、大事なテーマをどうか私に撮らせてもらえないか」って逆オファーを受けて、びっくりしましたし、今度は私が涙が出そうなぐらい嬉しくて、もう感動して、願ったり叶ったりすぎる展開すぎて、夢のような展開ってあるんだな、と思いましたね。

―そこからの制作スピードは?

絶対、私にこんな機会は回ってこないと思っていたのに、逆に陽子監督に「自分が撮りたいんだ」っていうことを言って貰えたので、ぜひぜひお願いしますと、前のめりで私からもお願いしました。

すると、私以上に陽子監督の方が火がついて、怒涛の如くインタビューを繰り広げ、私も当事者ですけど、私以外にも、紹介した私の周りにいたきょうだいの人たちにも何人かインタビューされたり、自分のつてを辿って、いろんな障害福祉関係の方々や経営者さんなど、かなり多くの人たちに監督自身がインタビューされていました。

私、実はコロナ禍になったあたりからオンラインでいろんなプロジェクトをやっていて結構忙しくて。7~8月の間にすぐに脚本が上がってくるんですけど、脚本を読む時間がなかったんですね。
脚本に目を通す暇がないうちに、次の脚本が出来上がっていく。そうして、時間がない時間がないとか言ってるうちに全く脚本に目を通さないまま、9月になって、「これで決定したよ」って決定稿が送られてきちゃったんですね。

それでやっと脚本を読んだら、凄くて、もう完璧だったんです。

私は何も言ってなかったんですが、私がコンコンと「なぜ作りたいのか」という話をしていたことや、いろんなインタビューをもとに、私が言いたいドンピシャなテーマで、ドンピシャの脚本に仕上げられてたので、「これでいこう」ってなりましたね。

クラウドファンディングで集まった600万円

―資金調達はどうされたのですか?

「もう決定稿あるし、実はもうキャスティングも終わってて、来月からもう顔合わせして撮影に入るんだけど、お金どうする?とりあえず、私立て替えておくけど」って言われて、あ、もう、こんなに決まっちゃってるんだって思いました。

陽子監督に全部払ってもらうわけにはいかないから、一時的に立て替えてもらうけど、お金は何とかみんなでクラウドファンディングで集めようということになったのですが、クラウドファンディングを立ち上げるのに時間かかるので、コミュニティも立ち上げて、「裏側のこと全部知りたい人いますか?」って言って、そのコミュニティのメンバーとかには先行して映画の情報とかを全部伝えて、「もし良ければ、映画の撮影場所に行きませんか?」「エキストラやりませんか?」って尋ねたら、「行きたい!」って反応してくれる方もいたりして、色んな人を巻き込んで、どんどん熱量が高くなって、クラウドファンディングを実施したときもそういうファンの人たちが凄く応援してくれました。

自主制作映画業界での指標額とされる100万円の6倍以上の額を映画制作費としてクラウドファンディングで集めることに成功しました。

私が思いついたところから、台風がずっと起きているみたいな感じで、竜巻の如くみたいな感じで、映画があれよあれよという間に撮影、公開まで至ったという感じですね。

映画が描いた「きょうだい」の現実

翼祈映画が公開されて、特に大きかった反響や声にはどんなものがありましたか?

反響としては大きく分けて、2パターンあるんですけど、やはり一番大きくて嬉しかったのは、同じようなきょうだいの方々からの声ですね。

「私のことを描かれているような気がしました」とか、「まさに私の人生だ。なんでこんなにわかるんですか?」とか、「この映画に出会うために、生きてきました」とか、きょうだいの方々からの共感があったのはすごい嬉しいかったですね。

あとは、直接、同世代の方から電話が来て、「なんでそんなことができるんですか?」「私もきょうだいですけど、なんでそんな勇気があるんですか?」と、お電話をいただいたり、私の同世代や親世代で、障害のあるお子さまを育てている方々がお電話くれたりしました。

吐き出しきれない想いを抱えている人がこんなにもいたんだ、という事実に出会えたことは、映画を作って良かったと思った瞬間でした。

一方で、これまで障害者に関わったことがない・知らないっていう方たちからも「こうなんですね、こんなこともあるんですね」という声もあったし、「全然知りませんでした」とか、「こんなに苦労があるんですね」とか、「これからは障害がある方が電車に乗っていたり、見たときに、その人を避けるとかじゃなくて、その人の家族もいるんだよねって考えるようになりました」とか、「この人にも兄弟(姉妹)がいるし、この人にも家族がいるんだ、家族の方はどう思われてんだろうとかってことを考えるようになりました」という声もありました。

最初は、知らない人たちに知ってもらいたいという想いだったんですけど、実際に声を頂いて、両方の声があって、どちらも嬉しかったですね。

翼祈映画が公開されてから、当事者やその家族にどんな影響や効果を与えたと思いますか?

公開した後で嬉しかったのは、「私もです」って言ってくれる人がすごく多かったことですね。

障害者の家族って、一見して分からないじゃないですか?本人たちは普通に学校に行ったり、働いたりして、日々暮らしていると思うのですが、実は「自分の弟がダウン症なんです」とか「自閉症なんです」とか「自分の子供が」とか「親戚が」ということが、私がこの映画を作ってから、あらゆる人から言われたんです。

それだけみんな隠してるつもりはないんだろうけど、日常的には言ってないんだなって思いますね。逆に言えない人もいるとか、隠れたい、隠したいという人もいるんだなということも感じていて、隠したいという人たちに、それを変えなさいとは言わないんです。

でも、どうしてもその隠した方が楽、隠したまま生きるのが楽になってしまうことの社会側に問題がまだまだあるなって思います。

だとしたら、やはり、関係者の方々、私みたいなきょうだいだったりとか、親御さんという方が「社会にはまだ不具合があるんだよ」と、そういうのをちゃんと発信していかないと、社会はいつまでたっても気づかないんだなということを、ずっと思っています。

三間瞳さんインタビュー

翼祈映画の出演者を決めるに当たり、必ずしも当事者ではない中で、どこが決め手で、出演者を決めたりするのですか?

キャスティングは主に監督が担当しました。単なるエンタメ作品ではなく繊細なテーマを扱うため、演技力だけでなく、作品に真摯に向き合う人柄も重視したそうです。

演技指導はあまりせず、役者さん自身がよく勉強してくださいました。私がアドバイスしたのは、姉が母に結婚報告するシーンの目の動きなど、リアリティについて監督に聞かれた時くらいです。

翼祈もしまた映画を作る機会があったら、次はどんな題材で作りたいですか?

次回作については二つの方向性を考えています。

まず続編ですね。実はこの映画は三部作で作る予定で監督とも話していたのですが、まだ自分自身がその段階を人生で体験していないので作れずにいます。映画を見た多くの方から「結婚してからが本番なのに」「その後が大変なんだよ」と言われました。

つまり『親亡き後』の話です。のぞみと崇がどうなっていくのか、親がいないときに希栄をどうするのか、そこを本当は描きたいと思っていて、監督も密かに脚本にチャレンジしているそうです。

もう一つは、全く違うテーマでも、ソーシャルグッドの領域で映画にしないと伝わらないような社会課題を扱いたいですね。

課題が難しければ難しいほど、正面から突きつけるより、その課題に直面して苦しんでいる主人公に感情移入してもらう方が味方を増やしやすいと思うんです。人間って正しいことを正しいまま突きつけられても受け入れにくいものなので、そういう社会課題のテーマに出会ったときは映画制作に携わりたいと考えています。

~後編へつづく~7月14日に公開されます。

関連情報

短編映画『ふたり〜あなたという光〜』公式HP

神戸インディペンデント映画祭2021グランプリ受賞他合計14の賞の受賞作 短編映画『ふたり〜あなたという光〜』

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