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こんにちは、翼祈(たすき)です。
この記事の本題は吃音ですが、まずは吃音の説明からしたいと思います。
吃音とは、話し言葉がスムーズに出てこないことがある言語障害の1つで、吃音を持つ人は100人に1人とされていて、日本には100万人以上いると推定されています。
吃音が始まるのは2~5歳の幼児期が多いと考えられていますが、心的ストレスや脳の病気などが原因となって、青年以降に発症するケースもあります。
吃音には、初めの音が伸びる「伸発」、最初の音が何度も出る「連発」、出だしの音が詰まってしまう「難発」などの症状があります。
周りの人は「落ち着いて」「ゆっくり話して良いよ」などとアドバイスしがちになりますが、吃音の人は焦っている訳ではなく、「その話し方では駄目」と言われた様に思ってしまい、プレッシャーでさらに話しにくくなる可能性があります。大事なのは「ゆっくり話を聞く」ことだといいます。
そんな吃音ですが、先日吃音に関する、ある研究成果を目にしました。
国立障害者リハビリテーションセンター研究所などで構成された研究グループが、2016年から2018年にかけて石川県や神奈川県など5つの県の3歳児約2000人を対象に調査した結果、3歳時点で吃音を持つ子どもは6.5%でした。
また、過去に吃音があってその後3歳までに症状が消えた子どもは2.4%で、3歳までに吃音を経験した子どもは合計で8.9%に上りました。
今回は、この研究成果の話と、吃音の子ども達の不登校が多いというデータや、その対策の講演会などについて、多角的に紹介したいと思います。
過去に吃音を経験する子ども達は8.9%いる、研究成果
吃音は、小さい頃に出現し、その後症状が消えるケースが多いものの、大人になると改善しづらいことから、話す神経回路が発達する幼児期に専門家のサポートを受けることが有効な手段だと言われています。
それ以外にも、今回の調査では、吃音を持つ子どもは、無い子どもと比較しても、家族に吃音を経験した人がいる割合が2倍以上だったという結果も出ました。
国立障害者リハビリテーションセンター研究所の酒井奈緒美室長は、「小さい頃にスムーズに会話する神経回路が発達する時期で、専門家が早い段階でサポートすることで吃音を改善することができますが、相談できる専門施設は限られています。相談体制の充実や専門の言語聴覚士の育成が要求されています」と説明しました。
参考:「きつ音」3歳までに経験8.9% “早期の支援体制充実を” NHK NEWS WEB(2024年)
ここからは2023年のデータとなりますが、吃音の子ども達が不登校が多いという話と、その対策の講演会について取り上げます。
吃音の子ども達の不登校、どれ位いる?
会話をする時に、言葉が円滑に出てこない「吃音」に関して、九州大学病院耳鼻咽喉・頭頸部外科の菊池良和助教などの研究チームは、過去12年間に受診した中学・高校生の中で84人を対象に実態調査しました。
その結果、「吃音」で病院を受診した中高校生の中で、およそ4分の1に当たる22人が不登校や学校を休みがちになっていたことが、明らかとなりました。
中学生以上の年齢の子どもは医療や教育面でのサポートが不十分だとして、支援体制の充実が必要だと危惧しています。
また、不登校の子ども達から詳細に聞き取った結果、極度に緊張したり他人から注目されることに不安や恐怖を感じたりする「社交不安症」の度合いが高い傾向だと判明しました。
菊池助教など研究チームが、吃音の不登校状態の生徒とそうではない生徒に分類して比較しました。「教室で発表する」といった24項目に不安や恐怖を感じるかを4段階で質問すると、不登校の生徒は社交不安の尺度がおよそ1.5倍高く、不登校の一因になっていることが確認できました。
吃音の生徒の発話に関連する10項目も実態調査しました。「社交不安症」でない生徒に比較して「吃音が出た後に、気持ちが落ち込む」「人前で話すと手足の震え」が多い傾向だと判明しました。
菊池助教によれば、小学生までは、通常の学級に通学しながら障害に対応した指導が受けられるなどの態勢が整備されていますが、中高校生になると医療や教育面でのサポートがほとんどないことが現状だといいます。
参考:きつ音の中高校生 約4分の1が不登校 九州大学病院など調査 福岡 NEWS WEB(2023年)
この研究成果は生まれ持った体質が要因とされる吃音は2~4歳の発症が多く、不登校との関係をデータで裏付けました。
研究チームのメンバーで、自身らも症状があって「吃音ドクター」とも呼ばれている菊池助教は、「中学生以降のサポートはほぼないのが実情です」と問題視し、「小学生の頃から周囲の理解など、不登校や『社交不安症』への予防活動が欠かせません。吃音を持つ子が中高生になって不登校になっている実態は、今まで社会に知られてきませんでした。今後、サポートの拡充に結び付いて頂きたいです」と述べました。
この研究成果は、研究チームが2023年9月8日、学会誌に発表しました。
2024年1月、
会話などで言葉が詰まったり出てこなかったりする「吃音」に悩む中高生を支援しようと自身も吃音を持つ九州大学病院の菊池良和助教による講演会が、2024年1月9日、福岡県福岡市にある九州大学の講堂で開催されました。
オンラインと合わせて吃音を持つ中高生のサポートにあたる言語聴覚士など約100人が参加しました。
この中で菊池助教は、吃音が出る頻度は年齢が上がることで、減る人が多いもののそうした人でも、号令をかける時や音読の時などふとした場面で言葉が詰まったり出なかったりすることがあるなどといった説明しました。
その上で、吃音の悩みを1人で抱え込まず、自己肯定感を高めることや、吃音を持つ人には苦手なシーンがあるので、そうしたシーンでの周りの配慮が必要だとも説明しました。
菊池助教は講演を終えた後、「学校生活で困り事があれば配慮をお願いしても良いんだと本人や親御さんに発信したいです」と語りました。
参考:「きつ音」に悩む中高生を支援しようと専門家が講演会 福岡 福岡 NEWS WE (2024年)
この部分を書く時に、
「何を書こうか」と思った時に、ある女性の記事を読んでいたことを思い出しました。この記事を書く前に、別のライターさんがその同じ女性の記事を書いていたので、私は少しその女性の話とは別の部分を抜き出したいと思います。
実は、吃音を持つ教員は、既に各地の学校で活躍しています。
北海道中標津町にある中学校で音楽の先生になって4年目、吃音を持つ男性にとっては、生徒の名前を読み上げる「出欠確認」は大きな緊張とプレッシャーです。
「…さ、さとう」「…たけだ」
特に男性は、サ行とタ行の発音を苦手としています。
唇が震えたり、音が詰まったりしながらも、1人1人の名前を読み上げていきます。
男性は、最初の授業で、自身に吃音があることを生徒たちに話しています。
「急に黙ってしまったり、唇が震えたりしても笑わないで欲しい」「言い終わるまで待って欲しい」と伝えています。
また、自宅でも練習を繰り返し行います。
苦手なサ行とタ行は、手を動かしながらリズムを取ることで、できるだけ滑らかに名前を呼べる様に工夫を凝らしています。
「やっぱり名前はつっかえずに生徒も呼ばれたいと思っていると感じますし、滑らかに呼んであげたいなって。まぁでも、く、苦しいですね。シンプルに苦しいなと思うことはあります」
学校では出欠確認以外にも、男性には苦戦する業務があります。
例を挙げると、親御さんへの電話をかける時は、
「中標津町立広陵中学校の細野です。お世話になっております」という決まり文句も、長い時間をかけて、言いやすい様に細かい言い回しや順番を模索しました。また、予め原稿を用意しておくなど工夫を凝らしています。
こうした男性の姿は、生徒にとっても大きな学びの機会を与えてくれています。
生徒
「1度つっかえたりしても最後まで生徒たちに伝えたいとする姿が、先生自身の壁を乗り越えようとしているということが直接伝わります」
周りの人の理解も得ながら、自身も工夫を重ね、教員として働く男性は、後ろに続く若者たちに声援を送ると共に、教育現場の環境も変化していくことに期待をしています。
男性は、
「吃音の自分が迷惑にならないかとか、通用するのか、馬鹿に…されないかとか、そういう不安は常に抱きますが、教員になって、なって良かったと思っています。1人で練習とかはとても大変だと思いますが、是非教員になって欲しいなって。同じ仲間が増えて欲しいという意味でも、なってくれたらなと思います。吃音が出て精神的に苦しくなったり、息が苦しくなったりすることもあるので、例えば、点呼は事前に録音した音声を流せる様にするとか、電話の一部は他の人に、そ、それをやって頂くとか、周りの人に合理的な配慮をして頂けると助かるなと思います」
と述べました。
この記事では、多角的に吃音について観てきました。100人に1人が発症することから考えても、誰もが発症し得る病気だと言えます。
冒頭の研究成果と、2023年の研究成果で、吃音の子ども達も心穏やかに暮らせる様な、支援が進みます様にー。
noteでも書いています。よければ読んでください。
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