診察を予約したら「2年後です」と言われた母 ー児童精神科の実態ー

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こんにちは、金次郎です。

 皆さんは「児童精神科」という診療科を聞いたことがありますでしょうか?

 児童精神医学を実践している診療科を「児童精神科」と言います。
 従来の精神科と区別する為に、その専門医を「児童精神科医」と呼びます。
 2008年2月27日に、厚生労働省の省令改正によって児童精神科を公式な診療科として認めました

 児童精神科医になる為には、トレーニングを経て精神科専門医か小児科専門医となった上で、日本児童青年精神医学会の認定医資格を取得します。
 この学会によりますと、2023年4月1日現在の「児童精神科」認定医の数は、たった501人です

 今回は「児童精神科」の現状について、取り上げていきたいと思います。

お母さんのため息

 あるお母さんは、自分の娘の様子を見ながら疑問に思います

1歳を過ぎたのに指さしや発語を、なかなかしない
・「人見知り」や「場所見知り」も激しい

 それでお母さんは、この子はひょっとして「自閉症」なのかな?と疑い始めました。
 「1歳半健診」の時に相談すると、地域の相談窓口である「発達センター」を紹介され、週1回通う事になりましたが、悩み続けています

 1歳7ヶ月になった子供を見てお母さんは考えた末に、児童精神科で診察を受けようと予約の電話をしました。
 しかし病院からの返事は「初診予約日は、2年後となります」と言う回答でした。
 途方に暮れたお母さんは、とにかく早く診察を受けたいと思い、近くの小児科の発達外来を予約します。
 既に子供は2歳になっていました。

 医師からの答えは、予想どおり「自閉症スペクトラム障害(ASD)」と言われましたが、詳しい説明や困っている事へのアドバイスはなく、「療育へ行ってください」と言われただけでした。
 その医師からは、児童精神科の予約もキャンセルするように指示されるなどして、不信感を抱きます。

 児童精神科の予約は取り消さずに待っていたところ、「受診のキャンセルが出ました」との知らせが来ましたので、待機期間は1年ほど短縮され、2歳9ヶ月の時に受診できました。
 そして「軽度知的障害を伴うASD」と診断され、困り事への対処法も教わる事ができました。
 また、今後どのような道を歩むか、と言う点などについても、医師の見立てを聞くことができました。
 「児童精神科の先生から今後についての見通しをもらえた事で、お母さんも旦那さんも気持ちが軽くなり、光が見えた感じがした」と言います。
 その一方で、「児童精神科を受診するまでは、食欲もガタ落ちで気が狂いそうでした」と、思いを述べます。

参考:(47NEWS)「初診は2年後になります」親が絶句する児童精神科の実態 子どもの発達障害なかなか診ず…実はパンク状態、その深刻な背景 

何故、受診するまで時間がかかるのか?

 国立国際医療研究センター国府台病院の児童精神科で、長年子供たちを診療してきた診療科長の宇佐美政英医師は、児童精神科受診に時間がかかる理由を以下の様に話します。

 ・第一の理由

  発達や心に問題を抱えている子供が昔に比べて増加していることです。
  特に増えているのが、発達障害の子です。
  世界的に見た自閉スペクトラム症の有病率は、1975年には5000人に1人でしたが、CDC(米国
  疾病対策センター)の発表では、
2023年4月時点では36人に1人まで急増しています。

  日本でも発達障害の子が増えています。
  全国児童青年精神科医療施設協議会が、加盟している38の医療施設を対象に「2021年度に児
  童精神科外来を受診した子どもの疾患」を調べたところ、発達障害が全体の半数を占めていた
  そうです。

  更に、子どもが抱える問題は、発達障害だけにとどまりません。
  2021年度の小中学生の不登校は約24万人で9年連続で増加しており、過去最多となっていま
  す。
10年前と比較して小学生は3.6倍中学生は1.7倍(中学生は20人に1人が不登校)に増加
  しています。
  2021年度の児童相談所による児童虐待相談対応件数も、過去最多を更新しました。
  子どもの自殺も増えており、2022年に自殺した小中高の学生は512人にのぼっており、こちら
  も1980年以来、過去最多
です

  このように、不登校・児童虐待・子どもの自殺の全てが過去最多の状態です。

 ・第二の理由

  児童精神科医が圧倒的に不足している事も、初診待ちが長期化する理由の一つです。
  心療内科医や小児科医、精神科医の中には児童精神科医と同様の診療ができる医師もいます
  が、全く足りていません。
  故に、今の児童精神科医師に大きな負担がかかっている状況です。

  先の全国児童青年精神科医療施設協議会が、加盟医療施設に勤務する児童精神科医75人に行っ
  た調査によりますと、児童精神科医1人が担当する外来患者数は平均132人(最大360人)。
  児童精神科医の56%は、通常の勤務における退勤時間が19時を過ぎていました。
  また、80%以上の児童精神科医が「初診に60分以上、再診にも30分から60分の時間を要して
  いる」と回答しています。
  これは、子ども相手の心の診療には時間がかかる事が、良く分かります。

参考:(AERA dot)発達障害の疑いで児童精神科にかかりたくても「予約いっぱい」 1年待ちも 片道2時間に頭抱える親

終わりに 

 私が、現在通院している、普通の精神科クリニックも受診者が多いです。
 9時の開院前に、クリニック入口に置いてある「診察順番 番号札」を取っておかないと、受診者が多い時は平気で2時間ほど待たされる事が有りますし、過去には受付さんから「スイマセンが、1時間ほど外を散歩してもらってても良いですか?」と言われるほど待合室が混んでいました。
 その番号札を確保するべく、早めに家を出るのですが、今でも8時にクリニックに着いても6番とか7番辺りの番号札しか取れない状況です。
 それだけ、現代の日本は心の病に罹っている人が多い証拠ですよね。

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