障がい者の❝性❞と向き合う

障がい者の性について

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はじめに

人間には、3大欲求があると言われています。

「睡眠欲」、「食欲」、そして「性欲」です。

それぞれの欲求に対する向き合い方は、人それぞれだと思われます。

私は、ずっと疑問に思っていたことがあります。それは、障がい者の方は、性的欲求にはどう向き合うのだろうか?ということでした。

障がい者の❝性❞に踏み込むには、とても勇気のいることでしたが、勇気をだす価値があったと思います。

障がい者の性の悩みとは?

①体位に限界がある

障がい者にとってセックスは、体位によって苦痛なことがあります。

例えば脚の障害の場合、脚を開くと痛みが出るなどの問題で、実際にできる体位が限られます。

そのため、「相手に我慢させているのでは?」と思い悩んでしまうこともあるようです。

②相手が満足しているか不安

健常者に比べて、受け身も攻め手にも限界があるので、お互いに気持ちはあっても体がついていかない。という場合があります。

そのため、相手がこのセックスに満足しているのかと不安になってしまいがちです。

しかし、大好きな相手とは、抱き合っているだけで気分がよく、気持ちよいものです。

「相手を気持ちよくさせたい。」という気持ちは健常者と一緒で、お互いによく相手にも伝わるようにしましょう。

③ストレスが多い

もし、子どもの性欲が高まった場合、母親などに性器を刺激してもらい、射精をさせてもらう場合があります。自分の子どもの射精を手伝うことは、普通の母親では絶対あり得ないことですが、母親は子どもを思うゆえ、そういった行動をとることがあります。

実際に、そのようなお話もあります。

性欲というのは誰もが持っているものですが、母親という立場で子どもの性処理はしたくないのが本音です。

倫理的に人権もあるので、パートナー以外の家族には本当は触れられたくないものです。それを母親に任せるということは、大きな屈辱やストレスを伴います。

健康的な性の在り方を考えると、射精しても、そこには快感などなく、溜まったものを出すという、トイレのような感覚なのかもしれません。

④性・性行為は孤立している問題

性行為は、排泄や食事のように、しなければ死んでしまう。という訳ではありません。ですが、多くの人は欲求を持っています。

法的な支援がなくとも、パラスポーツなど、楽しみや娯楽といわれるものに対しての支援をする人はいますが、性のケアに関しては法的な支援がなく、孤立している問題となっています。

参考:誰にも聞けない障害者の性事情 | グローアップ女性高収入Navi (growup-work.com)

一般社団法人「輝き製作所」の小西理恵さん

私が、はじめて障がい者の❝性❞を意識するようになったのは、一般社団法人「輝き製作所」の小西理恵さんのお話をインターネットで聞いたことがきっかけでした。

「輝き製作所」とは
小西理恵さんが運営されている一般社団法人「輝き製作所」とは、障がい者の性の問題を課題とし、小西さん自身が障がい者専門の風俗店で働いたことのある経験を生かし、実際に障がい者専門の風俗店を運営しながら、どんな障害があっても、誰もが自然に持っている性的欲求が満たされるような社会を目指すために、奮闘している一般社団法人です。

小西さんは、20代の頃は一般の性風俗店で働いていましたが、幼少期に妹と、祖母に育てられ、その祖母の介護をすることになったのをきっかけに、介護の道を目指します。

介護士の資格を取得するために、勉強していた小西さんですが、ある日友人に連れられて行ったグループホームで、男性利用者さんからこんな声を聞きました。

「何も楽しくない。」

その言葉を聞いた小西さんは、「異性のことや、性的なことも楽しくないのだろうか?」と疑問に思い、障害者の性サービスについて調べました。

すると、驚きの事実があったのです。

「障がい者の性に関するケアが現在の福祉の中にはないこと。」

そのことを知って、大きな衝撃を受けました。

元々、風俗店で働いていた小西さんは、大阪に障がい者専門の風俗店があることを知り、さっそく自身で働いてみることにしました。

しかし、そこで見た現実は、予約をしたり、自らの力で来店したりすることができない障害者は、性的なサービスを受けること自体が難しいという、あまりにも不平等な現実でした。

そして更に衝撃的なことを知るのです

息子に向き合う母親

小西さんが知人から聞いた話では、

「知的障害がある実の息子さんの性の欲求に、お母さんがご自身の体で応えていらっしゃる。」

というお話でした。とても心が痛んだという小西さんですが、当事者のお母さんも

「このままだと、息子が犯罪者になってしまう。私がどうにかしなければと思った。」

と語っていました。

小西さんは、「どこにも相談できなかった。」と語るお母さんの話を聞いて、「もし、一人で悩み、一人で頑張るお母さんが今もどこかにいらっしゃるなら、自分にも何かできないか。」と考えるようになりました。

これからの課題

現在の福祉には、性に対するケアがありません。

小西さんのお話にもありましたが、「予約をしたり、自力で来店したりすることができない障害者は、そもそも性的なサービスを受けること自体が難しい」というのが現実です。

そのような現実の中でも、性のケアを行う団体もあります。

ホワイトハンズ
一般社団法人ホワイトハンズは、筋ジストロフィーや、脳性まひや神経難病(ALS、SCD、SMA等)などによる手足のまひや関節が固まってしまう拘縮によって、ご自身での射精行為を行うことができない男性重度身体障がい者の方に対して、ケアスタッフがご自宅を訪問し、射精の介助を行うケアサービスを行っています。

そして、小西さんの立ち上げた輝き製作所でも、障がい者が利用できる性サービスについてや、性の介助について、マスターベーションの悩みなどを、カウンセリングで相談することができます。

さいごに

実際に、障がい者の風俗店で働いていた小西さんのお話を聞くと、障がい者の方は健常者の方と変わらないと思いました。

ただ、女性と話がしてみたい。ただ抱き合いたい。女性のありのままの裸体を見てみたい。それだけの方もいらっしゃるそうです。それは、健常者の男性にもありえることではないでしょうか?

私は、息子さんの欲求に自身の体で答えていたお母さんが、「どこにも、誰にも相談できなかった。」と語ったときに、なんでそんな悲しいことになってしまうのだろう。と思いました。

日常の介護の中に、すこしでも❝性❞について、考えることができたなら、悲しい親子をまた増やすようなことはないでしょう。

❝性に奔放❞になってくれとはいいません。しかし、もう少し❝性❞に対して素直に、向き合ってみてもいいのではないでしょうか?

 

参考サイト

誰にも聞けない障害者の性事情 | グローアップ女性高収入Navi (growup-work.com)

息子の欲求に母が応える例も…障害者の‟性の課題”解決へ「自分にできることを」

「性介護士」、障害者介護におけるスイスでの論争

射精介助 | 活動紹介 | ホワイトハンズ

輝き製作所

 

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2 件のコメント

  • 前に別の投稿でも意見を差し上げたと思いますが、せめてNHK『クローズアップ現代』が2017年9月25日放送で紹介した NPO ノアールも取り上げてください。ホワイトハンズの設立年は2008年ですが、ノアールは2004年です。

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    ABOUTこの記事をかいた人

    TANOSHIKAライター。うつ病、AC(アダルトチルドレン)、機能不全家族育ち。現代詩を勉強中です。セクシャルマイノリティ当事者。読みやすい、わかりやすいをモットーに様々な記事を書いていきます。