しつけに体罰は必要か?〜子どもの人権を考える2〜

しつけ

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はじめに

民法822条、懲戒権の削除要請〜子どもの人権を考える1〜

 

前回は、「民法822条、懲戒権の削除要請〜子どもの人権を考える1〜」で、体罰の過去から現在の流れをご紹介しました。今回はさらに踏み込んで、私なりにしつけと体罰について論じてみたいと思います。

「しつけ」とは、

社会生活に適応するために望ましい生活習慣を身につけさせること。基本的生活習慣のしつけが中心になるが,成長するにつれて,家庭,学校,社会などの場における行動の仕方へと,しつけの内容が拡大していく。しつけの目標は,社会生活の秩序を守り,みずから生活を向上させていくことのできる社会人に育て上げることである。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 

と、このような意味です。

「技術」を教える

私は個人的に「しつけ」とは、自分の利益になり、他者への利益にもなる「技術」を教えることだと思っています。

例えば、玄関先で脱いだ靴の踵をくるっと回して自分の方に向けて揃えておくことを私はかなり厳しく注意されて育っています。それはなぜか。

靴の踵をくるっと回してキレイに揃えておかないと履くときに、一回後ろを向いて靴を履き、そして再び前を向いて歩かなければならないからです。その時に慌てて前を向くと足を捻って転んでしまって危ないからです。

私は目の前でそのように急いで後ろを向いて履いていた同級生と、中に入ろうとした同級生同士がぶつかり、転んで脳震盪を起こしたところを見たことがあります。危ないからちゃんと揃えようと思いました。

このように自分と他者を守る技術が「靴を揃える」という行為だと思います。

挨拶をするなどの礼儀作法も、自分と社会の利益が合致した落とし所が洗練されて「技術」になったと思います。

「技術」を習得するには

私が以前、勤めていた清掃会社の社長さんの口癖で「理屈まで教えないと技術は身につかない」とありました。

理屈とは、なんでそうしなければならないのかまで教えないと結局、自己流になってしまい、洗練された技術にならないという教えでした。

清掃の仕方で、左右に手を持ち替えてほうきではいた方が腰に負担が掛からない、長時間の作業に耐えられる身体の動かし方があると学びました。

そのように「技術」には、先人たちが培った知恵と理論が根っこにあります。

技術」を教えるのに、なんで暴力を振るったり、まして殺してしまったりするのでしょうか?本末転倒もいいところです。誰のためのなんのための「しつけ」なのかわけがわかりません。

体罰って必要?

非行を食い止める最後の砦に「体罰」があると言いますが、非行に走る心理の根底には自分が大切にされていない、自己肯定感の低さがあるはずです。それを聞かずに暴力で押さえつけたら、火にガソリンをかけるようにさらに燃え広がり悪化するでしょう。

子どもを感情のはけ口にしてはいけません。理性を持って叱るべきです。

まっさらな白紙の子どもたちに暴力を用いて物事を教えてしまったら、暴力を肯定し、暴力を使用することになんら抵抗のない子どもに育ってしまうでしょう。

そして、暴力は子どもたちの心身に深刻なダメージを与えてしまいます。

心の傷を癒すことはとても困難です。子どもたちの健やかな成長の妨げになります。

その悪影響は科学的にも明らかにされています。

私は両親に一度も叩かれることなく育ちました。

母が認知症になり、訳のわからない被害妄想を言うたびに何度もカッとなって手が出そうになりました。しかし、母を叩くことはしませんでした。なぜ、手を上げることにブレーキがかかったのか。それは、自分が母に叩かれたことがないからです。

私も子どもの頃はワガママを言ったり、不作法なことをしたり、ヘマなことをして何度も親をカッとさせています。しかし、手が出ることはありませんでした。

もし、私が叩かれて育っていたのなら、暴力を肯定し、母を虐待していたかもしれません。

社会全体でサポート

以上のように述べましたが、子育ては大変です。子育てに「これが正解」なるものがあるわけではありません。完璧な親もいません。ときに衝突し、疲れ果てたり、腹を立てたり、期待を裏切られたりすることもあるでしょう。

思わず、手を上げてしまった親たちも傷つき、不安孤立感を感じています。そのように、追い詰められる親たちをどうサポートしてゆけば良いでしょうか?





画像引用:子育て世代がつながる 東京すくすく「しつけ」でもダメ!4月から体罰は法律で禁止されました 世界で59番目 子どもへの暴力のない社会へ、意義と課題は

親たちを責めても何も問題は解決しません。苦しい立場に追いやられている親たちを社会全体で支える必要があります。

終わりに

前回の記事で書いた通り、日本は59番目の体罰禁止国になりました。

この法改正をきっかけに今一度、しつけについて、体罰について考えてみてはいかがでしょうか?

現在、育児真っ最中の方はもちろん、育児をしていない方たちにも関係ない話ではありません。

日本の将来を担う子どもたちをどのようにサポートするのかは大人全員の責任です。

暴力や脅しや威圧を用いない衝突の解決法を子どもたちに教えることは、民主主義の基盤になります。

皆さんは、どのように思われますか?



参考サイト

厚生労働省 体罰等によらない子育てのために ~ みんなで育児を支える社会に ~

子どものすこやかな成 長 を 願 って 体罰の問題Q&A 子どもすこやかサポートネット

子どもの権利を擁護・推進する 子どもすこやかサポートネット

沖縄タイムス+プラス 社説 政治 社説[民法の懲戒権削除]子育て支援との両輪で

セーブ・ザ・チルドレン 共同声明 日本が世界で59番目の体罰全面禁止国へ 虐待や体罰等の子どもに対する暴力のない社会を実現するために

Wダブリュー 働く女性を応援するメディア 児童福祉法改正2020年(令和2年)4月施行で体罰禁止へ!しつけの定義とは?

子育て世代がつながる 東京すくすく「しつけ」でもダメ!4月から体罰は法律で禁止されました 世界で59番目 子どもへの暴力のない社会へ、意義と課題は



noteでも書いています。よかったら、読んでみてください。

TANOSHIKA どんよりと晴れている | note

 

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