「人を嫌う」ということ その理由、心の動き

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学校や職場など、人が集まる社会的な場所では、どうしても人間関係のもつれが生じるものですね。

「あの人の言動がどうしても許せない」「あの人とはうまくやっていけない」

他者への嫌悪の感情が芽生えることは誰にでもあることですが、そのとき“自己の嫌悪的言動”、つまり「自分が他者から嫌悪されるような言動をどれくらいしているか」については、人は意識しているのでしょうか。

人が人に好意を抱く要因

まず、人はどのようなとき、どのようなことが理由で他者に好意を抱くのでしょうか。

対人魅力(人が他者に対して抱く肯定的または否定的な思い)を掘り下げる『対人魅力研究』によると、他者へ好意を抱く理由として、

・類似性による親近効果(価値観の近い人に親近感を覚えること)

・他者の行う自己開示(ありのままを見せてくれること)

・まわりの評価(その人の、周囲からの評判)

が重要視されています。「類似性による親近効果」と「他者の行う自己開示」によって他者へ好意を抱くことは「直接的な感情の動き」といえますが、「まわりの評価」については前の二つとは少しだけ性質がちがうところが面白いと思います。

人が人を嫌う要因

それでは、人はどのようなとき、どのようなことが理由で他者を嫌悪するのでしょうか。

研究では「複数の回答者に、自身が実際に所属している社会的集団の中で嫌悪している人を一人思い浮かべてもらい、その人を嫌っている理由を挙げさせる」という調査を行ったところ、多くの人が共感するであろう嫌悪原因が抽出されました。

横暴な言動

人に対して直接、傷つくような悪口や嫌味を、ずけずけと無神経に言う人

人を見下したりバカにするような言動、態度をとる人

皆の前で、本人がいるのに、けなしたりその人が言われたくないようなことを言う人

皆の前で話しているとき、平気で他の人の悪口を言ったりけなしたりする人

自分の要求や考えを強引に押し付ける人

あなたに、人の悪口・批判・噂話など、聞いていて嫌になるようなことをよく話してくる人

機嫌や都合が悪くなると、表情に出したり周囲に八つ当たりする人

好きな人と嫌いな人で態度がちがい、好きな人や仲のよい人以外にはそっけない人

人を、所属や外見、能力などで差別する人

その時々によって気分の波が激しい人

マナーの欠如

自分に任された仕事をきちんとしないで人に迷惑をかけている人

人から何かしてもらってもお礼や感謝の気持ちがない人

自分のせいで人に迷惑をかけても謝らない人

約束や時間、期日を守らない人

集まりを休むときなどに連絡をしない人

目上の人に敬語や尊重の気持ちがないなど、無礼な態度をとる人

尊大な言動

知ったかぶりや優秀ぶっている人

人の意見を聞き入れず、自分の意見を曲げない人

事あるごとにきれいごとや正論を言い、自分は正しい人間であると示そうとする人

自分に都合が悪いと、言い訳や正当化をして責任を逃れようとする人

あなたに対して、自分のほうが上だというような威張った言動・態度をとる人

計算高い自己演出

自分よりも立場が上の人にやたらとよい態度で振舞っている人

自分よりも立場や勢力が上の人を味方につけて自分の立場を有利にする人

男女によって接し方がちがい、異性の前では格好つけたりぶりっこしたり愛想よくする人

いい子ぶるや悪ぶるなど、自己を演出しているように見える人

自意識過剰な人

表ではいい顔をして仲良くしている人の陰口を裏で言っている人

私への否定的態度

あなたのことを嫌っていると感じられるような態度をとる人

他の人とは普通に話すのに、あなたが話しかけたときにはそっけない態度をとる人

あなたに対して拒否や無視など、関係を持とうとしていないような態度をとる人

他者を嫌っているとき、自分は……の研究

心理学には次の二つの定義があります。

1.類似性による親近効果 人が「自分と近い価値観の人に好意をもつ」という心理

2.返報性(へんぽうせい) 人が人に何かをしてもらったときに「お返しをしたい」という気持ちになる心理

返報性には「好意の返報性」だけではなく「非好意の返報性」があることも確認されています。つまり「嫌な態度をとられたら、こちらも嫌な態度を示したくなる」といったものです。

 

類似性による親近効果によって「人が『自分と近い価値観の人に好意をもつ』のであれば、逆に嫌悪するのは『自分と価値観がちがうから』『自分はこのようなときこうするのに、あの人はこうしないから』ということが理由になるのではないか」、そして非好意の返報性によって「他者の嫌悪を感じとったらこちらも相手を嫌悪するようになる」ということを念頭に、立正大学心理学研究所は『他者への嫌悪傾向と自己の嫌悪的言動傾向との関連』という研究を行いました。

はじめ予想された結果は「人は、『それが理由で嫌悪している人の言動を、自分はしていない』と思っている傾向が強いであろう」というものでした(類似性による親近効果のため)。しかし、いくつかの項目で若干その傾向がみられたものの、全体的に、思っていたほどの強い傾向はみられませんでした。

この結果について、研究者は「『社会的望ましさ』が働いたのでは」と考えています。

社会的望ましさとは
性格特性語。ある調査の回答者が、彼らが信じているものに従うのではなく、社会的に最も受け入れられやすいものに従って回答する傾向。自己を社会的に望ましく見せようとする心的圧力により、データが歪む。

「社会的望ましさ」が働く、つまり意識してのことかそれとも無意識のうちにか、どちらにせよ「自分はそんなことはない、こうであるはずだ」という心の動きがあり、「こんな要因で他者を嫌っているが、自分にはその要因はない」という傾向に近寄ってしまったのではないか、ということです。

「人を嫌う」ということ

研究論文は、「自分が嫌悪する言動を自分自身が他者に対してどの程度行っているかどうかについて検討する際には、自己評定だけでなく、第3者からの評定を用いるなどの方法をとることも、今後検討する必要があるであろう」という言葉で締められています。

人は結局のところ「自分が一番」、ただそれだけなのかもしれません。類似性による親近効果で「自分に近い価値観の人に好意をもつ」のは、「その人が自分にとって害のない人」「自分のためになる人」だからかもしれません。その逆に「自分と価値観がちがう人を嫌悪する」のは「自分に害をもたらすかもしれないから」「自分のためにならないから」ということを本能的に感じているということなのでしょう。

また、非好意の返報性によって「他者の嫌悪を感じとったらこちらも相手を嫌悪するようになる」ということについても、人は「自分が他者に嫌悪感を抱くようになったのはその人が自分に嫌悪感を示したからだ」と簡単に思いがちですが、もしかたら「他者が自分に嫌悪感を示すようになったのは、相手が自分の嫌悪を感じたから」かもしれません。たとえ自分にはそんなつもりはなく、まったく身に覚えのないことだとしても、何かの間違いで相手にそう勘違いさせるようなことがあったのかもしれません。

そう考えると、人を嫌うということは……

「私があの人を嫌いなのは相手のせいだ」と断言できるものではないのかもしれません。

 

参考:立正大学心理学研究所紀要『他者への嫌悪傾向と自己の嫌悪的言動傾向との関連』PDFファイル

 

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パニック障害歴9年、うつ病歴5年。いつも元気にパニクったり落ち込んだりしています。 愉快なパニック体験談、うつ病との飽くなき闘いを発信していきたいと思います。