トラウマ(心的外傷)を克服できずとも……【心的外傷後成長(PTG)】

この記事は約 7 分で読むことができます。

 

トラウマを持っている人は少なからずいます。自分のすぐとなりにいる人が自分の想像も及ばないような過去を抱え、想像も及ばないようなトラウマを持っていても、なんら不思議ではありません。

トラウマ(Trauma)とは

恐怖、ショック、異常体験などによる精神的な傷。心的外傷。それ以後の行動に強い制限や影響を及ぼす。

限度を超えたストレス、ショックを受け、心に傷を負う。トラウマとはその傷のことです。心の傷は目には見えませんが、人を確実に、長期間苦しめ続けます。

そのトラウマが、普段の生活を送っている中で突然、それも鮮明によみがえることをフラッシュバックといい、これが原因で日常生活に著しい支障をきたす状態をPTSD(Post Traumatic Stress Disorder=心的外傷後ストレス障害)と呼びます。

1.「トラウマ 克服」と検索すると……

ネットで「トラウマ 克服」と検索してみると、「トラウマを克服する5つの方法!」「心的外傷の7つの克服方法!」といった記事がたくさん出てきますが、どれも自己啓発本的な内容です。

「自己啓発」とは「個人が自発的な意思で行う学習、能力開発」のことで、自己啓発本はそのきっかけやヒントにはなりますが、自己啓発本というものが、多くの人が求める「生き方の指標」に必ずなるかというと……はたしてどうでしょうか。その本に書いてあることを全て実行し、心をそのように持っていき、そして完遂することができれば自己啓発成功となりますが、誰もが絶対にその本に書いてある通りになれるというわけではありません。結局はその本を読んだ人次第です。

トラウマを克服する方法について書かれているネット記事も同様です。「こう考えるようにしましょう」と言われてそのように考えることができればいいのですが、全ての人が必ずその通りにいくわけではありません。また、ネット記事には「トラウマの克服法! 嫌な記憶をどうでもいい記憶に変える3ステップ!」などというタイトルで軽々しく書かれたものが多くありますが、トラウマとははたしてそんなものでしょうか? ここのところ立て続けに痛々しい自動車事故があり、連日ニュースやワイドショーで報道されていますが、あのような事故の被害者のご遺族は深いトラウマを抱えることになったはずです。そのご遺族の辛い記憶も「どうでもいい記憶」にすることができるのでしょうか? トラウマとは「嫌な記憶」程度のものでは絶対にないのです。

2.人はトラウマを克服することはできるのか

トラウマの克服に向けた精神医学的なアプローチとして、認知行動療法の中の「暴露療法」「暴露反応妨害法」があります。

暴露療法

患者を不安や恐怖を感じる状況にあえて直面させ、段階的に慣れさせていく方法。

 

暴露反応妨害法

暴露療法と同じく患者を不安や恐怖を感じる状況にあえて直面させ、そのときに生じる回避などの拒絶(暴露反応)をさせない(妨害する)練習をするという方法。

一見荒療治のようにも思えますが、「暴露療法」「暴露反応妨害法」は不安障害に対しては薬物療法と同等の効果があるといわれています。

ただトラウマに対しては、トラウマとなった状況の再現が不可能な場合もあるので、この療法を用いるのは難しいこともあるかもしれません。

3.トラウマを克服する一番の近道は

自己啓発……暴露療法……。トラウマの克服に向けてはいろいろな道があると思います。どれも一朝一夕でいくものではなく、その途中でフラッシュバックが起こったり、さまざまな苦しみがあることでしょう。そして、それでも拭いきれない場合もあるでしょう。いや、そのほうが多いのかもしれません。トラウマという深い深い心の傷はそれほどまでに癒えにくいものなのです。

トラウマの克服に向けてどの方法よりも確実、必要なのは、「心の平安」ではないでしょうか。そしてそれに必要なのは「信頼できる人」の存在ではないでしょうか。

僕は「虐待されてきた犬が、再び人に心を開くまで」の動画をいくつも見ました。

人間による虐待は、犬にとってこの世で最も過酷で、計り知れないトラウマを植え付けられる体験だと思います。そのような目にあってきた犬たちは人に対して完全に心を閉ざしており、人を見ただけでおしっこを漏らしてしまったり、牙を剥き出して人を遠ざけようとします。しかし、心からの愛情をもって、急がず焦らず接していくうちに、いつしか犬は再び人に心を開いてくれます。これは「トラウマを克服した」というよりも、「信頼できる人に出会い、心の平穏を手に入れたことで、トラウマが溶けて無くなった」といえるのではないでしょうか。

人間にとっても、トラウマの克服に向けてはこれが一番の近道なのではないでしょうか。

 

しかし。お世話になっている方のお知り合いに、25年間もトラウマと闘い続けている方がいるそうです。やはりトラウマとは「あまりにも深い、心の傷」なのです。

もちろん「トラウマを克服できた」という方はいます。しかしそれができない方も大勢います。ただその中にも、「トラウマを克服できずとも心の持ちようを変えることができた」という方がいるのです。

4.心的外傷後成長

心的外傷後成長(PTG=Post-traumatic growth)という言葉があります。

「危機的な出来事や困難な経験との精神的なもがき・闘いによって生ずる、ポジティブな心理的変容」

これが心的外傷後成長です。つまり「辛い出来事によって精神的な成長を遂げる」というものです。

PTGの研究の第一人者である米・ノースカロライナ大学シャーロット校心理学部教授のリチャード・テデスキ博士は、PTGを経験した人には次のような変化が起こると述べています。

・より深い、意味のある人間関係を体験する

・物や他者の存在への意識が高まる

・生に対する感謝の意識が増える

・人生や仕事に対する優先順位が変わる

・自己の強さの認識が変わる

これはあらゆる意味での人間的成長ではないでしょうか。人間はトラウマによって成長することができるのです。そしてこれは「トラウマを克服することによって得た」とは限らないのです。「トラウマを持ち続けているからこそ、トラウマと共に生きることによって成長した」という人が大勢いるのです。

5.辛い体験を人に理解してもらうこと

研究によると、心的外傷後成長(PTG)へと進むためには「トラウマとなった辛い体験を人に話し、理解してもらう」ということがとても大きな意味を持っているといわれています。辛い体験を信頼できる人に打ち明け、そのことについて話し合うということは、悲観的に捉えるばかりだった自分の体験を、冷静に客観的に考えることの助けになるのです。

6.おわりに

日本一(かどうかわかりませんが)有名な「先生」である金八先生もこう歌っていましたね(正確には「金八先生」が歌っていたのではなく武田鉄矢氏が歌っていたのですが)。

人は悲しみが 多いほど

人には優しく できるのだから

戦争や震災、過酷な虐待や辛い暴行の経験を、勇気に変えている方がたくさんいらっしゃいます。そのような方々に対しては尊敬の念に堪えません。

 

参考

精神医学のフロンティア 東日本大震災後の子どもの心的外傷後成長と、法事参加・メディア視聴への態度との関連(PDFファイル)

ポジティブサイコロジースクール PTG(トラウマ後の成長)とは?

 

このエントリーをはてなブックマークに追加

TAMAOの絵本 アマチュア童話作家TAMAOの作品紹介

2018.10.26

【AKARIの新しい取り組み】
あなたの声をAKARIにしよう!

小さい声だと届かない思いを、AKARIを使って社会に発信しませんか?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です