人の顔を覚えられない! ブラッド・ピットの告白で知られはじめた「人の顔を認識できない症」【相貌失認】

この記事は約 6 分で読むことができます。

 

『失認症』という障害があります。

失認症
視力や聴力などの一次的な知覚機能に問題はないのに対象を把握できない、認知の障害(つまり目は見える、耳は聞こえるのに、見た物を認識できない、聞いたことを認識できないなどの症状をみせる障害)。視覚失認、聴覚失認、触覚失認などがある。

『失認症』のなかに『視覚失認』、さらにそのなかに『相貌失認』という障害があります。2013年、ハリウッド俳優のブラッド・ピットが告白したことで知られはじめた障害です。

1.相貌失認とは

相貌失認(そうぼうしつにん)は人の顔を認識することができなくなる障害で、失認症の一種です。視力に問題はなく、また真剣に覚えようとしているのに、どうしても人の顔を認識することができないのです。

2.相貌失認の人が抱える「困ったこと」

人の顔をしっかり見分けることができる人は、それができない人の感覚を想像することが難しいかもしれません。

相貌失認を持つ人がどんなことに困っているかというと……

①映画やテレビドラマを観ていて話の筋がまったく理解できない

これは演じている役者さんの顔を認識できないためです。

相貌失認の人は、人の声のちがいは認識できます。しかし映画やテレビドラマでは役者さんは台詞を言わず顔だけで演技をするときがあるので、そういったシーンで「これは誰なのか」となり、話の筋がまったく見えなくなってしまうのです。

②人に話しかけられると返事に困ってしまう

人から「先日はありがとうございました」と言われても、その人の顔を覚えていないので、「この人は誰で、このお礼はいつの、どのことに対するものなのか」がわかりません。そのため人付き合いに支障をきたします。

また、他者に対して「知っている人か、知らない人なのか」を顔だけで判断することができないため、自分から挨拶をすることが難しいという問題があります。これが原因で、人からいつの間にか「あの人はまったく挨拶をしてこない。失礼なやつだ」と反感を買ってしまうことになります。

③後ろから話しかけられたり肩を叩かれたりすると、異様なほど驚く

相手からすると「知っている人だから気軽に声をかけた、肩を叩いた」だけなのに、相貌失認の人はそれが誰だかわらないので、まるで不審者にからまれたかのような反応をしてしまうということがあります。

3.人は、他者の顔をどのようにして認識しているのか

深く考えたことがありませんでしたが、そもそも我々は他の人の顔をどうやってみわけているのでしょうか?

①「形」としての認識

輪郭、目、鼻、耳、眉毛など、人の顔を形作っているパーツを、「形」として認識します。「写真を見て人の顔を覚える」ことを想像すると理解しやすいと思います。

この認識には、側頭葉の『紡錘状回(ぼうすいじょうかい)』という部分が関わっています。紡錘状回は「視覚による、物の色や形を認識する」という機能を司っています。

②相手の視線や表情を認識する

これには脳の『上側頭溝』という部分が関わっています。上側頭溝は、相手を見て、視線や表情から「相手はいまどこどこを見ていて、こんなことを考えているのだろう」という判断(推測)をします。これは人と人がコミュニケーションをとることにおいてとても重要な役割となります。

 

相貌失認の人は「相手の表情」は認識できるので、「形」としての認識、つまり「紡錘状回に問題があるのでは」と、多くの研究者の間で考えられています。

4.相貌失認、いつ発症するのか

相貌失認は先天性のものと後天性のものがあります。

①先天性相貌失認

先天性相貌失認は胎児期における脳の成長過程で発症したと考えられており、その割合はおよそ100人に1人といわれています。

また遺伝によるものという可能性もあり、相貌失認を持つ父親と、そうではない母親の間に、先天性相貌失認を持つ二人の娘と、そうではない息子が誕生したという例が報告されています。

②後天性相貌失認

事故や怪我、脳梗塞、脳腫瘍、脳出血、動脈硬化などで脳に傷害が生じることによって発症することがあります。

 

先天性相貌失認を持つ人は「自分は相貌失認だ」という自覚がないことが多いといわれています。これは、他者の認識を顔ではなく、声や仕草、体格や服装などいろいろな要素を総合して行うことが幼少の頃からすっかり身についていて、日常生活にとくに不便を感じてこなかったため、「自分は人を見分けることができない」という意識を持っていないのです。

対して後天性相貌失認は、何かのきっかけによってそれまでできていたことができなくなるのですから、かなりの戸惑いを感じることになります。

5.相貌失認は治るのか

相貌失認の治療法は基本的にはありません。とくに先天性である場合、それが脳(紡錘状回)の機能の問題であることはわかっているものの、そこを「具体的にどうすればいい」ということがわかっていないのです。

後天性の場合は、たとえば脳腫瘍が原因であったときに、その腫瘍を取り除いたことにより結果として治ることがあります。しかしやはり相貌失認そのものを治療するという方法はまだ確立されていません。

 

「相貌失認を治す」ということは困難ですが、人の顔かたちではなく、「表情・話し方・体格などを覚えるようにする」というトレーニングを積むことによって、人の見分け方を身につけることはじゅうぶん可能です。

また、これは相貌失認に限ったことではありませんが、接する人に「自分にはこれこれこういう傾向があります」と素直に打ち明けることが、周りからの理解と協力を得ることにおいてとても重要だと思います。「周囲の人がこちらの事情を知らない」ということこそが、「生きづらさ」に他ならないのですから。

 

参考:「街の顔」と「人の顔」河村満(PDFファイル)

脳科学辞典

 

このエントリーをはてなブックマークに追加

TAMAOの絵本 アマチュア童話作家TAMAOの作品紹介

2018.10.26

【AKARIの新しい取り組み】
あなたの声をAKARIにしよう!

小さい声だと届かない思いを、AKARIを使って社会に発信しませんか?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です