過食症、双極性障害などに有効な『対人関係療法』とは

この記事は約 8 分で読むことができます。

 

先日書いた過食症の記事の中で、「過食症(摂食障害)には『対人関係療法』が有効」ということに触れました。

摂食障害の原因として“対人関係の問題”がとても大きな割合を占めているのです。

先日の記事は「過食症とは?」という内容の記事で、対人関係療法についてはあまり書かなかったので、今回書いていこうと思います。

1.対人関係療法とは

対人関係療法は1970年代に確立された心理療法です。当初は成人の、中~重度の非妄想性うつ病患者のための治療法でしたが、修正を加えられ、現在では若年成人から老年期まで、対象となる疾患も双極性障害、過食症、産後うつ、夫婦間カウンセリングに有効な療法となっています。

2.対人関係療法のプロセス

対人関係療法を詳しく説明していきます。

①期間を限定する

対人関係療法は期間限定の治療法です。ふつうの治療、たとえば服薬などでの治療は症状が治まるまで、あるいは病気が治るまで続けるものですが、対人関係療法は治療の期間を限定します。これは「終結があることが明確にされることにより、治療への依存と、退行を防ぐ」ということを目的としています。

退行とは

防衛機制のひとつ。一定の発達段階に達した人が、欲求不満などに直面することで、過去の発達前の段階に戻ってしまうこと。例として、子ども返り(指しゃぶりなどの行動)が挙げられる。

②四つの問題領域の一つに絞る

対人関係の問題領域は次の四つであるとされています。

1.悲哀

「悲哀」は「悲しく哀れ(あわれ)なこと」、つまり感情を表す言葉だが、対人関係療法における悲哀は「重要な人の“死”」に限定する。

2.対人関係上の役割を巡る不和(不一致)

自分の考えとはちがう役割につくことで生じる葛藤のことを指す。たとえば「入社する際に、営業職を希望していたのに経理にまわされた」など。

3.役割の変化

「部署の異動を命じられた」「定年退職によって役割を失った」などが挙げられる。

4.対人関係の欠如

対人関係療法における「対人関係の欠如」とは、読んだ通りに捉える「対人関係が“無い”」ではなく、「一見すると、『友人がおり、自信もあるようであるが、実は本人は自信がなく、本当に親しい関係を築いたり維持することができない」ということになる。こういうタイプの人は「親しさ」こそが「孤独」になる。相手が自分の領域に入ってくることが不快でも、「ノー」と言えないので、親しくなることが怖いと感じる。

対人関係療法は、これら四つの領域のうちもっとも重要な一つに焦点を当てます。どの領域が重要であるかは患者との話し合いで決定します。

③精神内界、認知、パーソナリティなどは取り扱わず、現在の対人関係のみに焦点を当てる

精神内界とは「心の中の世界」、認知とは「外界にある対象を知覚し、それが何であるか判断したり解釈したりする過程のこと」、パーソナリティとは「その人の個性・持ち味・人柄、または個人の素質と環境との相互作用から形成される、人間の行動を規定するもの。人格」のことです。対人関係療法ではこれらのことには触れず、あくまでも「現在の対人関係」のみを見つめます。

④防衛規制の解釈もしない

防衛機制とは「嫌な状況や、潜在的に『危険だ』と感じたときに、そのことによる不安を抑えようとする心理的メカニズム」のことです。本能的、そして誰もが無意識のうちに行っているこの機能について、対人関係療法では一切を無視します。

⑤目標は「認知」を変えることではなく、「対人関係のパターン」を変えること

対人関係療法は「技法」ではなく「戦略」です。「カウンセリングによって物事に対する見方を変え、感じるストレスを軽減させる(技法)」という性質のものではなく、「作戦を立てて、具体的な対人関係の具体的な在り方そのものを変える(戦略)」というものです。

⑥知的な理論は用いず、感情に基づいた意見のやりとりをする

治療者は医学的な用語・意見などは用いずに、患者の話に対して人間的な感情をもって接していきます。その上で、より理解を深めるために具体的なエピソードをできるだけ引き出すようにします。

⑧「医学モデル」を用いる

まず「社会モデル(障害者の社会モデル)」という言葉があり、これは「障害者が社会生活に適応しづらいのは、社会の在り方が障害者に適応していないから」という考え方のことです。対して「医学モデル(障害者の医学モデル)」は「障害者が社会の生活に適応しづらいのは障害によるものなので、障害者は治療・リハビリ・訓練を受けて社会に適応できるようになろう」という考え方です。

「医学モデル」は捉えようによっては非常に厳しい考え方ですが、対人関係療法においては「治療に協力し、専念する」という考え方を持つために、あえてこの「医学モデル」を用います。

3.対人関係療法の流れ

対人関係療法は次のような流れで進みます。

①患者に役割を与える

患者に対してひとつの役割を与えることから始まります。その役割とは「病人の役割」。これは「病人は通常の社会的義務やある種の責任を免除される代わりに、治療者に協力し、治療に積極的に取り組む義務が生じる」というものです。患者に、真剣に治療に取り組んでもらうための心構えをつけてもらうためのものです。

②対人関係についての質問

患者に、全ての重要な他者(亡くなった人を含む)との関係を具体的に話してもらいます。

・重要な他者と接する頻度、共にする活動など

・あらゆる対人関係における、相手に対する期待、そして相手から自分への期待の程度

・他者との関係に満足できるか、できないか。また、それをどう変えたいのかなど

これらを患者に思い出せる限り話してもらいます。そして、

③患者、治療者、両者の合意によって重要な領域を決定

「具体的な誰か」との「このような関係の、この部分を解決したい」という、「悲哀」「対人関係上の役割を巡る不和」「役割の変化」「対人関係の欠如」の中でいちばん重要と考えられる領域を決定します。

 

こうして対人関係療法がスタートし、その後、

④前回の面接から今回までの状況を聞く

「前回お会いしてからいかがですか?」と、あくまでも“前回”の面接から今回までのことに限っての状況を聞くということを繰り返していきます。

⑤「気分」と「出来事」を結び付けていく

患者が「出来事」を話したら、それに対して「いまの気分」を話してもらい、「いまの気分」を話したらそれを「出来事のレベル」として具体的に語ってもらいます。そうして、決定した問題領域と結び付けていきます。

⑥ロールプレイを行う

ロールプレイとは役割演技、疑似体験のことです。現実に起こる場面を想定し、複数の人が役割を演じて疑似体験を行い、ある事柄が実際に起こったとき適切に対処できるようにする学習方法をいいます。シミュレーションと考えるとわかりやすいでしょう。

前回の面接から今回の面接までの出来事・気分を語ってもらい、それに合わせてロールプレイをしていく、これが対人関係療法の進め方です。

4.まとめ。対人関係療法とは

対人関係療法において、治療者は患者の代弁者です。「提案はしても、指示はしない」ということが対人関係療法の基本的な考え方になります。指示はしない代わりに質問をし、患者自らに行動の仕方を考えてもらいます。

治療者は患者に共感的、楽観的、希望的に接し、共同作業として進めていきます。治療者が手出しをすることは、患者の意識が対人関係からそれてしまったときに、それを対人関係に戻してあげることです。また患者が昔の出来事にこだわりだしたら、「どんなことをきっかけはにそれを思い出しましたか?」と、現在の問題に話を導いてあげます。

このように、共同作業の中で「患者自身が対人関係の問題への解決策を探していく」というのが、対人関係療法という精神療法です。

参考 日本うつ病学会 7月25日ー26日

 

このエントリーをはてなブックマークに追加

TAMAOの絵本 アマチュア童話作家TAMAOの作品紹介

2018.10.26

【AKARIの新しい取り組み】
あなたの声をAKARIにしよう!

小さい声だと届かない思いを、AKARIを使って社会に発信しませんか?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です