映画『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』レビュー 少しでも世界に目を向けよう!

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1.トランプ大統領と対決!? 最新作『華氏119』公開を前にマイケル・ムーアの過去作を見直してみた

 アメリカの銃社会の問題を取り上げた『ボウリング・フォー・コロンバイン』や、医療問題を扱った『シッコ』などのドキュメンタリー作品を数多く作ってきたマイケル・ムーア監督の新作『華氏119』が注目を集めています。『華氏119』とは、第45代大統領ドナルド・トランプの大統領当選が確定し、勝利宣言をした2016年11月9日に由来します。

 そこで、私はムーア監督の過去作を見直そうと、監督の前作である『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』を見ました。

 第二次大戦後、朝鮮戦争、ベトナム、レバノン、イラク、アフガニスタン、シリアと、アメリカは戦争に勝てていません。ある日、マイケル・ムーアは国防総省に呼ばれ、「どうすべきか」と聞かれました。

 ムーアは戦闘を止め、部隊を撤退させ、その代わりに‟世界侵略”と称して「私を送りこめ」と言い放ちます(これはネタです)。そこで、ムーアは世界各地を訪問(侵略)し、各地の優れた制度を持ち帰ることにしました。

2.8週間の有給休暇がもらえるイタリア

 まずムーアが‟侵略”するのが、イタリアです。イタリアでは8週間の有給休暇がもらえます。有給休暇を全部使えなかったら、翌年に繰り越されます。そして12カ月たつと13カ月目の給料が1ヵ月分もらえるといいます。それはバカンス用の費用だそうです。産休休暇は5カ月、それも有給です。

 しかしならが、イタリアは最も生産性の高い国15か国のうちの国です。

3.フランスでは給食がフルコース

 フランスでは、小学校の給食の場面が映し出されます。給食ではフルコースの料理が出されます。食事のマナーとともに、食事がどれだけ大切を、給食の時間1時間かけて学ぶのです。驚くことに、フルコースといっても、1食あたりの予算はアメリカよりも安いのだそうです。

フランスの給食

アメリカの給食

4.学力世界一のフィンランド

 フィンランドでは、教育制度が取り上げられています。フィンランドでは、国際的な学力テストでしばしば1位を取ることがよくあります。

 フィンランドの授業時間は週に20時間です。フィンランドでは、授業時間数を削減すると学力が上昇する効果がありました。宿題もありません。統一テストもやめるべきとの声も挙がっています。

 フィンランドの学校の学力は、全国、どこも同じレベルに設定されています。授業料も無償です。裕福な子どもも公立学校に行き、様々な境遇の子と一緒に育ちます。そして、裕福な大人になっても、他人の境遇を尊重できる人物になっていくのです。

5.大学の授業料が無償なスロベニア

 スロベニアは大学の学費が無償な国の1つです。アメリカの学費が払えないアメリカ人が学びに来たりもします。スロベニアでは、「教育は公共の利益」という考えが浸透しています。

 外国人から学費を取り始めたら、外国人ではない他の学生からも取ることになるという考えがあるのです。それでもスロベニアで学費を取ろうという動きがありました。それに学生たちは反発、デモまで起きました。

6.週に36時間勤務のドイツ

  ドイツでは週に36時間勤務が法律に定められています。さらに、ドイツでは労働者の権利が強いです。ドイツ皆保険制度では、ストレス過多のドイツ人は処方箋をもらえ、無料でスパに3週間滞在できます。

 ドイツでは休暇中の社員に接触するのは違法です。多くの企業が、終業後の社員メールを送ることができない規則を採用しました。メルセデスは上司が自宅にいる部下にメールできないシステムを採用しました。

7.ドラッグ使用が違法ではないポルトガル

 ポルトガルでは、ヘロイン、大麻、覚醒剤の使用どれでも、この15年間で逮捕はゼロでした。ドラッグは違法ではないから、実刑判決はありません。ドラッグを非犯罪化して逮捕者を減らしたら、ドラッグ使用率が下がったといいます。

 ポルトガルでは医療費を全員無償にして、ドラッグの治療を受けやすくしています。麻薬の非犯罪化だけでなく、治療を増やす工夫が必要だというのです。

8.殺人事件発生率世界最低のノルウェーの刑務所

 一方、ムーアはノルウェーの厳重警備刑務所にも訪れました。そこには、個室もシャワーもベッドもテレビもあります。厳重刑務所というのに、受刑者自身が鍵を持っています。殺人犯だというのにゲーム機を持っている受刑者もいます。

 図書館も音楽録音スタジオも完備されています。洗濯機も食料品室もあります。絵を描ける美術の授業も哲学の授業もあります。もちろん、受刑者も投票できる権利があります。選挙の候補者が、刑務所にわざわざ選挙討論にやってくるのです。

 ノルウェーに死刑制度はありません。しかし、ノルウェーの殺人事件発生率は世界一の低さです。

 

ノルウェーの厳重刑務所

9.女性の地位が高いチュニジア

 チュニジアは北アフリカのイスラムの国です。ここには政府出資の無料の女性クリニックがあり、無償で中絶手術もできます。中絶は1973年から合法です。こうしたサービスにより、女性と男性とが対等になっていくのです。女性に教育と仕事があれば、生活の質も上がり、寿命も長くなります。家族計画は大きな役割を担っています。

 女性が自分の体を管理し始めると、男女ともに少しでも自分の人生を管理したくなっていくのです。その結果、チュニジアの場合、革命が起き、独裁者が国を追われました。革命に重要な役割を果たした女性は多いです。

10.世界初の民選女性大統領を生んだアイスランド

 1975年、アイスランド全土で女性がストライキを起こしました。90%の女性が仕事を放棄したのです。学校も銀行も閉鎖されました。そこで、女性の価値が見直され、男女は対等になったのです。

 5年後の投票で初の女性大統領が誕生しました。7歳の娘を持つシングルマザーが世界初の民選女性大統領に当選したのです。アイスランドでは、企業の役員会の割り当ても40%が女性が占めなければならないと定められています。

世界初の民選女性大統領ヴィグディス・フィンボガドゥティル

 2008年、アイスランドでは3大銀行が破綻しました。唯一の黒字銀行は女性経営者でした。そこで、証券取引の損害は男性ホルモンが原因との説も取り上げられました。男性ホルモン値が高いと自信過剰になり、結果、大損することになるというのでうす。女性は社会全体の利益を考え、男性はより自分の利益を考えるといいます。

11.最後に ーすべてはアメリカを見習ったー

 ムーアは旅の終わりに気づかされるのです。すべてはアメリカがお手本になったんだと。

 フィンランドの教育法はアメリカをモデルに作られました。メーデーはシカゴで1886年にスタートしました。8時間勤務もバカンスも労働組合も男女平等運動もアメリカでまず最初に生まれました。死刑は、英語圏の自治体として始めてアメリカのミシガン州で廃止されたのです。

 翻って、日本はどうなのでしょうか。日本には定められた有給休暇のシステムはなく、フィンランドやスロベニアのように大学の授業料も無償ではありません。ドイツと比べ、長時間労働は当たり前ですし、ポルトガルのようにドラックは脱犯罪化されていません。死刑制度も廃止されていませんし、チュニジアやアイスランドのように女性の地位も高くはありません。

 一国の国には、光と闇があります。単に一国の優れた制度を模倣すれば良いものでもありません。ですが、多くの外国人は日本に訪れる昨今、日本人ももっと海外に目を向けなければならないと思います。少しでも、この日本をよりよい国にするために、です。

参考

監督・主演マイケル・ムーア(2016)『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』ソニー・ピクチャーズエンタテインメント.

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