人混みで過呼吸、混乱するのはパニック障害かも パニック障害の原因は? 症状は? なりやすい人は?

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人混みなど、ある条件の場面・場所で混乱や過呼吸といった症状が現れるのであれば『パニック障害』の可能性があります。

『パニック障害』とはパニック発作が主な症状の不安障害です。不安障害とは様々な事柄や場面に対して不安や恐怖を感じてしまう障害(恐怖症など)で、その中でもパニック障害は、不安や恐怖を覚える場面・事柄に触れるとパニック発作を起こしてしまうことが特徴の障害です。

1.パニック発作とは

パニック発作が起こると、主として次のような症状が現れます。

・動悸が激しくなる

・呼吸がしづらくなる(過呼吸※に陥る)

・発汗

・体の震え

・漠然とした不安感・恐怖感を覚える

・胸の痛みや吐き気を覚える

・視界が真っ白になる

現れる症状は人によってちがいます。いくつかの症状が同時に現れることも多くあります。

※過呼吸とは
呼吸は脳の中にある「呼吸中枢」によって制御されている。呼吸中枢は、血液中の酸素や二酸化炭素、血液のpH(水素イオン指数)などを基にして、呼吸を増やす或いは減らすことを決定しているが、不安や恐怖、緊張感を覚えるとそのコントロールを失うことがある。これによって、呼吸回数が極端に増加するという「過呼吸」が引き起こされる。

発作が続く時間も人によってそれぞれです。数分と短い人もいれば、数十分間も発作に襲われ続ける人もいます。また、不安・恐怖の対象から離れれば発作が治まる人もいれば、離れてもしばらく発作が続く人もいます。パニック発作に襲われている最中は凄まじい恐怖で、発作が治まってもその恐怖の余韻はしばらく残ります。

2.予期不安と広場恐怖

パニック障害を患ってしまうと、パニック発作とともに「予期不安」「広場恐怖」に悩まされることになります。

①予期不安とは

予期不安とは「再びパニック発作に襲われることへの不安」です。「またくるであろうパニック発作への恐怖感によってパニック発作が起きる」という悪循環が生じることもあります。

②広場恐怖とは

パニック発作に襲われることへの恐怖感から、(広場などの)人が多い場所などへ行くことが苦手になる、あるいは全くできなくなってしまうというものです。電車やバスに乗れなくなる、デパートに買い物に行けなくなるなど程度は人それぞれですが、家から出ること自体が困難になってしまうこともあります。

パニック障害を発症すると、パニック発作そのものの恐怖、パニック発作に襲われることへの恐怖(予期不安)、それらへの恐怖から外出ができなくなること(広場恐怖)によって気分が落ち込み、うつ病を併発してしまうことも多くみられます。

3.パニック障害発症のメカニズム

パニック障害の発症には脳内の2種類の神経伝達物質が関係していると考えられています。

ノルアドレナリン

ノルアドレナリンは、何かの出来事にぶつかったときに神経細胞から放出されて交感神経系に働きかけ、血圧、呼吸、心拍数を上げて体を緊張・興奮状態にします。これは全身を覚醒させて「闘うか、逃げるか」という判断をするための集中力を高める、生物にとってとても大切な作用です。

②セロトニン

正確には『脳内セロトニン』といいます。セロトニンは全体のうち消化管に90%、血小板に8%、そして脳内に2%存在していますが、パニック障害に関わっているのはこのわずか2%の脳内セロトニンです(以下「脳内」を省略します)。セロトニンはノルアドレナリンとはまったく逆の働きをします。緊張、興奮を和らげ、精神に安定をもたらします。

パニック障害発症の原因は、ノルアドレナリンとセロトニンのバランスの乱れにあります。本来はノルアドレナリンがもたらす緊張・興奮状態をセロトニンが緩和してくれることで心のバランスが保たれるのですが、脳内で何らかの事故によってセロトニン不足が起こり、脳内がノルアドレナリンで溢れかえってしまう、そのことによって頭が大混乱してしまう、これが『パニック発作』であり、このパニック発作に頻繫に襲われて日常生活に支障をきたしてしまうようになるのが『パニック障害』という病気です。

4.なぜセロトニン不足が起こるのか

これについては医学の世界でもまだ研究を続けている段階で、「これこれこうだからである」と断言はできないのですが、一説によると、

「ストレスを感じると、脳内にノルアドレナリンやドパミン(快感、やる気を司る神経伝達物質)が放出される。それはごく普通のことだが、長期的なストレス、強烈なストレスを感じ続けると、脳内のノルアドレナリン、ドパミンの濃度が高まり、それに反応してコルチゾールというストレスホルモンが、副腎から血液中に放出される。このコルチゾールが脳内まで到達すると、海馬(記憶や空間学習能力を司る器官)の細胞を傷つけ、海馬が委縮してしまう。これによって脳内の神経伝達物質たちのバランスが乱れることになり、よりにもよって安定をもたらしてくれるセロトニンが不足してしまう結果になる」

といわれています。

5.パニック障害になりやすい人はどんな人?

パニック障害になる人にはいくつかの共通の特徴があります。つまり、なりにくい人となりやすい人がいるのです。

パニック障害になりやすい人の特徴は、

①他人からの評価を気にする人

パニック障害患者には「人にどう見られているか」を強く気にする人が多くみられます。これは承認欲求の強さの表れであり、ある意味で自信の無さの表れでもあります。「おかしく見られてはいないか」「間違ったことをしていないか」など、無意識のうちに気にしすぎてしまっているのです。

②責任感の強い人

「自分がやらなければならない」「人に任せるわけにはいかない」、このように頑張ってしまう人も、パニック障害になりやすい性質を持っています。ついつい自分にプレッシャーをかけてしまっているのです。

完璧主義の人

「これはこうしなければならない」「こうでなければ気が済まない」という完璧主義の人は、いちばんパニック障害になりやすい性格であるといえます。これは『2.責任感の強い人』にもつながることで、完璧であることにこだわるあまり、やはり知らず知らずのうちに自分に強いプレッシャーをかけてしまっているのです。

感情を引きずる人

何か失敗をしてしまったときなどに、そのときのマイナス感情を長く引きずってしまうという性格の人も、パニック障害患者の中に多くみられます。「なんであのようにしてしまったんだろう……」「なんであんなことを言ってしまったんだろう……」「あのときに戻ってやり直したい……」、そんなことをズルズルと考え続けてしまう人です。

――と、このようなタイプが挙げられます。総じてストレスを溜め込んでしまうタイプの人です。やはりパニック障害の原因はストレスにあるといえます。

6.僕のパニック障害

僕のパニック障害発症の原因はやはり長期的なストレスだったと思います。

以前、僕は渋谷区のとある会社が経営する居酒屋で店長(といっても雇われ店長ですが)を務めていました。

当時、飲食店、とくに居酒屋を経営する会社は「ブラック企業」と騒がれていました。居酒屋チェーン『和民』の女性従業員が入社わずか2ヶ月で激務による心労で自殺されたのもこの時期です。

僕もものすごい激務の中に立たされ、猛烈な不満、もはや言葉では言い表せないほどのストレスを抱える日々を送っていました。いま思い出しても身がすくみます。もう二度と経験したくない、ツライ日々でした。

その会社を辞めてすぐのことでした、初めてのパニック発作に襲われたのは。2009年のことです。

①初めてのパニック発作。その感想は

新たな就職先(懲りずに飲食店)が決まり、初日の勤務を終え、2日目のことでした。お店の前まで来たとき、突然それは起こりました。

せりあがってきたんです、すごい勢いで。何かが。この文字列をご覧になったことがあるでしょうか?

『くぁwせdrfgtyふじこlp』

パソコンのキーボードの文字のところの上二列(数字の列の下)、「Q た」と「A ち」を同時に押して、そのまま右端まで二列のキーを流し押しすると出るんです。ちなみに「ふじこ」という文字がありますが、某アニメの某お色気キャラのことではなく、ただ偶然出る文字です。

初めてのパニック発作、文字に表すとまさにこんな感じでした。

「くぁwせdrfgtyふじこlp!!!!」

つまりわけがわからないということです。

僕は近くにあったジュースの自販機の脇でうずくまり、このわけのわからない恐ろしい感覚に為す術もなく襲われ続けました。

ようやくどうにか立ち上がれたときには、約40分も時間が経過していました。

②こんなきっかけで「ふじこ! ふじこ!」が!

一度パニック発作が起こってからは、それはもう頻繁に襲われるようになりました。

まず僕は天井の低いところがダメになってしまいました。地下街、デパート、パン屋さんなど、とくに狭い場所というわけではなくても、天井が低いとパニックを起こしました。ふと入ったデパートやお店の天井が低いと、全身の毛穴から汗が吹き出し、視界が真っ白になり、「くぁwせdrfgtyふじこ!」となりました。

次に、パニック障害を起こす例の典型ともいえる「人混み」。渋谷や新宿に買い物に行くともれなく「くぁwせdrfgtyふじこ! ふじこ!」となりました。行きたい方向は決まっているのに、人混みに対してどのように進んでいけばいいのか、頭が混乱するようになったのです。

それから突然の大きな音。これは子供の頃から持っていた『風船恐怖症』のせいだと思いますが、それが一層強化されたようです。すぐ近くでいきなり人がドッと大きな笑い声をあげただけでビクッとし、「ふじこ! ふじこ!」となるようにまでなってしまいました。

こんな調子で、最もひどいときはパニック発作が出ることを恐れるあまり外出ができなくなりました。典型的な広場恐怖です。

7.パニック発作に襲われたときの対処法

僕の場合、パニック発作に襲われたら、まずしゃがんで両膝の間に頭を埋め、目を閉じ耳をふさいで、落ち着くのを待ちます。教わることなく自然にそうしていたのですが、調べてみると実はこれはとても理に適った態勢だそうです。この態勢をとると、胸でしていた呼吸が自然に腹式呼吸になり、過呼吸を防ぐそうなのです。

これにプラスして、「い~ち、に~い、さ~ん」と数をゆっくり数えたり、「だ~いじょ~ぶ、だ~いじょ~ぶ」と声に出して自分に言い聞かせたりします。これも教わることなく自然にしていたのですが、調べてみるとやはりとても効果的だそうです。友人などと一緒にいるときは、「だ~いじょ~ぶだよ~、だ~いじょ~ぶだよ~」と言いながら背中をゆっくりさすってもらえると、ものすごく助かります。

ちょっと落ち着いてきたなと思ったら、水を飲みます。コーヒーやお茶などカフェインが入っているものではなく、水です。カフェインには興奮作用がありますからね。経験上、やはり水がいちばん落ち着きます。

8.パニック障害は治る?

実は精神医学の世界では、心の病に対して「治る」という言葉を使いません。「寛解(かんかい)」という言葉を使います。

「寛解」とは「病気の症状が一時的、継続的に軽減した状態」のことで、癌や白血病など再発の可能性がある病気の治療に対しての用語です。ちなみに癌の場合、手術で摘出し、その後の検査でも正常な数値を示すようであれば「完全寛解」といわれます。「完治」とは少しちがうのです。

パニック障害も同じです。発作が出ない状態がずっと続くようであれば、「治った」ではなく「寛解した」といいます。

では「パニック障害は完全寛解するのか」というと……これにはっきり「YES」と答えられるお医者さんはいないと思います。パニック障害は「なりやすい人」というのがはっきりしており、そういう人は寛解しても再び強いストレスを感じると再発してしまうからです。こうなるともはや「持病」ですね。腰痛などと同じです。

ですのでパニック障害の治療は、「完治させる」ではなく「寛解の状態を維持させる」ことが目的といえます。

あ、先ほど「精神医学の世界では、心の病に対して『治る』という言葉を使いません」と書きましたが、まれに「パニック障害は完治する」と言い切るお医者さんがいます。そういうお医者さんはほぼ例外なく、本を何冊も出しています。そして自分のサイトを作っては自分の本の宣伝をしています。そのお医者さんが言う通り「パニック障害は完治する」のであれば、何冊も何冊も本を出す必要はないと思うんですけどね。完治する理由と証拠を述べた本を一冊出すだけで充分だと思うんですけどね。

9.パニック障害の治療

「1.パニック障害発症のメカニズム」の項に書いた通り、パニック障害は脳内のセロトニン不足が原因です。そこで脳内のセロトニンを増やすために『SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)』という薬を服用するという方法が第一選択となっています。

SSRIは、「脳内のセロトニンが、受容体にくっついて効果を発揮する前に、その仕事もせずに元の細胞内に帰ってしまう(再取り込み)」という現象を防ぎます。その結果、脳内にセロトニンが増え、ノルアドレナリンの暴走を止めてもらうことができます。
SSRIを継続的に服用し、セロトニンに自分の正しい仕事を思い出してもらうというのが、パニック障害の治療です。

10.最後に。もうパニック障害なんか恐くない!

パニック障害発症から9年が経過したベテランパニック師である僕には、「寛解している状態」といえる期間が丸2年ありました。その2年間は一度もパニック発作が出なかったのです。最近はというと、言ってみれば「共存している」という感じです。「パニック障害を持ってはいるけれど、外に出て仕事もできるようになったし、人並に生活が送れるようになった」のです。

いまでは「くぁwせdrfgtyふじこlp!!」のような大パニックになる前に、それを鎮めることができるようになりました。いまの僕は、「あっ、ヤバそうかも」と感じたら、うずくまって目を閉じ耳をふさぎ、ゆっくり数を数え、大パニックに発展するのを抑えることができます。パニック発作の扱いにすっかり慣れたのです。最近もふとしたことで一度だけ発作が出ましたが、見事、極小パニックに抑えました。

パニックの扱いに慣れてしまえば楽なものです。そんな感じで、いまの僕はパニック障害と共存しています。ここまでになったのは、薬を飲み続け、少し落ち着き始めたことで外にも積極的に出られるようになり、またそのことで色々な刺激に心と身体が慣れてきたという、良い連鎖反応が起こったからだと思っています。

パニック障害は厄介な病気ですが、慣れることができます。共存することもできます。そして、寛解することが可能です。その状態を維持し続けることも可能です。完全寛解だって、きっと……!

もうパニック障害なんか恐くない!

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