気になる世界のプログラミング教育の事情をまとめてみた② 2020年から日本の小学校でプログラミング教育が必修化!

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世界のプログラミング教育の事情

 2020年から日本の小学校において、プログラミング教育が必修化されます。日本に限らず、世界各地でプログラミング教育を初等教育から導入しようとする動きがあります。

 2014年、文部科学省は委託事業として「諸外国におけるプログラミング教育に関する調査研究」をまとめています。

 それに基づき、今回は、米国(カリフォルニア州)、カナダ(オンタリオ州)、アルゼンチン、韓国、シンガポール、上海、香港、台湾、インド、イスラエル、オーストラリア(ビクトリア州)、ニュージーランド、南アフリカの取り組みについてまとめてみました。

 

①米国(カリフォルニア州)

 プログラミング教育は、カリフォルニア州教育局(California Department of Education)が定めるカリキュラム科目として規定されていません。このためプログラミング教育を実施するかどうか、実施した場合の指導内容、指導時間数などは学校裁量となっています。

 使用されているプログラミング言語は、初等教育ではScratch、中等教育ではJava、C/C++などです。

 プログラミング教育の指導者になるための資格は州として定められていません。一般的に、学区管理者、学校裁量で採用が決まります。

②カナダ(オンタリオ州)

 カナダでは、教育省の指導に沿った教育制度を各州が制定しています。オンタリオ州においては1~12年生(6~17歳)までの12年間を義務教育期間とし、「The Ontario Curriculum」の中で教科「Computer Studies」を10~12年生に教えるよう定めています。教科「Computer Studies」は選択科目です。

 教科「Computer Studies」の内容として、10年生には「コンピュータ学習入門」として基本的なプログラミングの概念を教え、簡単なコンピュータプログラムを設計し記述できるようにします。11年生及び12年生は、大学準備や、より実学に近い「カレッジ準備にコース」に分かれます。

 大学準備コースでは、「コンピュータサイエンス」を業界の標準的なプログラミングツールを使用して学ばせ、コンピュータサイエンスの知識と技能を深めさせます。

 カレッジ準備コースでは「コンピュータプログラミング」を学ばせます。12年生ではオブジェクト指向を学ばせます。

③アルゼンチン

 アルゼンチンでは、初等教育においてはプログラミング教育は行われていません。中等教育では教育省の国立教育技術研究所が技術・職業訓練の専門教育課程を設け、カリキュラムを作成し、教科「Computing」「Programming」の指導を推奨しています。

 2010年4月、故キルチネル前大統領は中等教育を対象にしたConectar Lgualdadというネットブックプロジェクトを立ち上げ、教育省が公立中学校、特別支援学校、教員養成機関の全生徒、全教員にノートPCを一人1台無料配布することにより、中等教育にICT環境を導入し、プログラム「ICTスキル」の中でプログラミング教育を行っています。

④韓国

 情報教育については、韓国では比較的早くその必要性が主張されており、普通教育課程への導入は1970年代です。小学校・中学校への導入は1987年の「学校コンピュータ教育強化法案」からとされます。情報教育の方向性は現在に至るまで改定のたびに大きく変化してきており、この変遷の中でプログラミング教育の扱いも変わってきました。

1990年代初等は、ICTの利活用に重点が置かれてはいるものの、コンピュータに関する教育やプログラミング教育についても完全には否定されていませんでしたが、1997年改定の第7次教育課程では、実生活で活用するICTリテラシーの習得に目標が置かれ、プログラミングや情報処理の技術的な概念に関する内容は消えることになりました。

 2005年12月に「初・中等学校情報通信技術(ICT)教育運営指針」が改定され、それまでのICTリテラシー偏重への反省から、情報科学、コンピュータサイエンスが再び重要視されうようになりました。これが2007年改定の選択科目教育課程に反映され、プログラミング教育が復活しました。韓国の初等中等教育において「プログラミング教育」が本格的に導入されたのは、この時期です。

 その後、2010年代に入ると、コンピューティング情報科学のみならず、あらゆる学問分野の発展に必要な手法であるとして「コンピュテーショナルシンキング」が導入され、プログラミング教育についても、身の回りの問題を題材として、実社会に役立てられるようになりました。

 プログラミング教育に関する指導内容については、中学「情報」では、アルゴリズム、フローチャートの設計・実装、プログラミング言語などの概念理解です。言語・ツールとしては、「Scratch」などが扱われています。高等学校「情報」では、「Python」などが扱われています。

⑤シンガポール

 シンガポールは早くから情報通信産業を国の基幹産業と位置付け、90年代から教育分野にITインフラを導入してきました。2000年代初等にはICTのカリキュラムへの統合や学校現場での利用を進め、効果的に広くICTを教育で使用するようにしました。更に2009年から教育環境を充実させ、知識集約型経済で成功するための能力を児童・生徒に身につけさせるため実践的な計画を推進しています。

 プログラミング教育は、現時点では、初等教育のカリキュラムには含まれていません。しかし、いくつかの学校では、応用クラスや副カリキュラム、クラブなどの形でプログラミング活動の場を与えています。中等教育では、普通高技術系コースの必修教科「Computer Applications」において簡単なプログラミングが指導されています。

⑥上海

 中国中央政府が目指す教育政策の重点は、就学率・進学率等を指標とする教育発展だけでなく、国際化・情報化社会での知的想像力やモラル、生涯学習を可能とする各種の資質・素質を国民が獲得するよう、教育発展の目標が質的に変化しています。ICTを活用した教育の発展について明確な計画を打ち出し、その発展を迅速に推し進めています。

 このような国の動きを受け、上海市教育委員会と上海市小中学校課程教材改革委員会は、教科「情報科学技術」を新設し、1999年11月に「21世紀に向かう上海市小中学校 情報科技教育改革行動綱領(2000~2010年)」を制定し、そのカリキュラムに沿った教育を実施しています。

 上海市教育委員会の「上海市小中学校情報科学技術カリキュラム標準」によると、教科「情報科学技術」は、9年間の義務教育を通して全生徒の情報素養を全面的に引き上げることを主目標とした内容で、プログラミング教育に関する内容は確認されていません。

⑦香港

 香港の教育ICTに関連する取り組みには、教育内容に直接関係する「カリキュラムの開発」と、教育環境を整備する「教育におけるIT(IT in Education=ITE)」という二つの柱が存在します。

 一つ目の柱であるカリキュラム開発に関しては、中学校、高等学校ともに、「Key Learning Area(KLA)」と呼ぶ必修教科群を制定し、その教科群を構成する1教科として「Technology Education(TE)」(TE KLAあるいはTEKLAと表記される)を置いています。中学校、高等学校ともに、TEKLAの枠組み内で、プログラミング教育を含めたICT関連の授業を行っています。

 二つ目の柱としての、ICTに関する教育環境の整備については、政府は1998~99年度以来、ITEとe-Learningに関する戦略(ITE-3)を3期に渡り実施してきました。これは学びと教えの促進にITを活用する世界的な傾向に対応したもので、90億HKドル(約1400億円)以上を投じて、教室へのIT教材・ソフトウェアの導入、指導者の育成等に成果を上げています。

 政府は続けて、ITを活用した学びや教えの強化の実現と生徒の学ぶ力を引き出すことを主眼とする戦略(ITE4)を2014~15年度に開始しました。その中には、自律学習、オンライン協働学習、ITの倫理的利用などとともに、プログラミング教育の強化も含まれています。

 また、「ITE4」では、中学校のTEKLAカリキュラムと高等学校における科目「ICT」の連携を図るため、中学生向けに論理的思考、問題解決及びプログラミング関連技能の向上等を提言しています。

⑧台湾

 小・中学校ともに、情報教育に関する教科「情報」が置かれ、学習領域「自然と生活の科学技術」に含まれていて、独立した教科として定められていますが、必修科目ではなく、各学校の裁量で実施されています。

 小学校3年生から中学校3年生までの一貫カリキュラムでは、各段階で習得すべき基本能力及び基本能力を図る指標が設定されていて、情報モラルに関する教育に重点が置かれています。中等教育(12~17歳)のカリキュラムには、「プログラミング言語の基本概念とその機能の理解」という項目が含まれています。

⑨インド

 現行の2005年改定教育プログラム「NCF 2005」の「数学」に「Computer Science(CS)」が加わり、CSカリキュラムはアプリケーションなどのツールをどのように組み合わせ、効果的に使うかを指導すると定義しています。

 また、「NCF 2005」では、11~12年生(16~17歳)対象のカリキュラムとして、「Computersand and comunication technilogy(CCT)」を推奨しており、「CCT」でのプログラミング教育は「CS」での学習をより深め、プログラミングによる課題解決や思考開発などのスキルを身につけるとの記述があります。

⑩イスラエル

 イスラエルでは1970年代半ばからコンピュータ教育の必要性が認識され、教育省の専門委員会が「Computing」カリキュラムを開発し、高等学校のコンピュータリテラシー教育やBASIC言語などによるプログラミング教育が始まりました。

 中でも、ジュディス・ガル=エゼル教授が著した1995年の共同論文“A High-School Program in Computer Science”の中で、『「Comuter Science(CS)は独立した教科として、高等学校教育レベル(10~12年生、15~17歳)で、生物、物理、化学など、他の科学と同等に教えられるべきである』『プログラミング言語だけでなく、アルゴリズムの原理やプログラミングによる実装を教えるべきである』としました。

 それを受け、教育省は1991年から段階的に「アルゴリズム的思考を開発し、アルゴリズムをプログラミングで実装する」という新カリキュラムうを高等学校に導入しました。

⑪オーストラリア(ビクトリア州)

 ビクトリア州政府で定められたカリキュラムにおいて、プログラミング教育は導入されていません。

 ただし、策定中の統一カリキュラムにおいて、「Technologies」領域の科目「Digital Technologies」において、プログラミング教育が実施される予定です。

⑫ニュージーランド

 ニュージーランドでは、2011年~2013年にかけて11~13年生(15~17歳)を対象に順次「Digital Technologies」教育を開始しました。「Thchnology」学習領域の中に科目「Digital Technologies」が設けられ、この中に“Programming and Coputer Science”が含まれています。“Programming and Coputer Science”は必修ではなく、教えるか否かは指導者の裁量によるところが大きいです。

 学習内容はアルゴリズムの理解、HCI(Human-Computer Interaction)、符号化(圧縮)、暗号化、データ表現、形式言語、人工知能などです。

⑬南アフリカ

 基礎教育省が定めた国定カリキュラムにおいて、義務教育後の教育課程Further Education and Trainig(FET)(16~18歳)での選択科目「Information Technology」でプログラミング教育に関する項目があります。

 科目「Information Technology」では、“Solution Development” “Commnication Technologies” “System Technogies” “Internet Technologies” “Date and Information Management” “Social Implicatons”の6つのトピックがカバーされます。

 プログラミングはトピック、“Solution Development”で取り上げられており、問題解決のためのアルゴリズムの実装を、プログラミング言語で用いて行います。指導するプログラミング言語は規定されていませんが、DelphiやJavaとなどが用いられるといいます。

 

 以上、2回において、世界のプログラミング教育の事情について、お伝えしました。日本では、どのような取り組みが行われるのでしょうか。注目したいところです。

  参考

平成26年度文部科学省委託事業「諸外国におけるプログラミング教育に関する調査研究」(文部科学省平成26年度・情報教育指導力向上支援事業)

気になる世界のプログラミング教育の事情をまとめてみた① 2020年から日本の小学校でプログラミング教育が必修化!

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