2020年から日本の小学校でプログラミング教育が必修化! そこで気になる世界のプログラミング教育の事情をまとめてみた①

世界のプログラミング教育の事情①

1.はじめに

 2020年から日本の小学校において、プログラミング教育が必修化されます。日本に限らず、世界各地でプログラミング教育を初等教育から導入しようとする動きがあります。

 中でも、英国(イングランド)では、2014年から、従来の教科「ICT」を改め、あらたな教科「Computing」を小学校から高等学校までの系統的な教科として位置付け、初等教育段階からプログラミングを教育内容として取り入れました。

 2014年、文部科学省は委託事業として「諸外国におけるプログラミング教育に関する調査研究」をまとめています。

 それでは、その概要を見てみましましょう。

2.世界のプログラミング教育の実施状況

 文部科学省の調査の対象は、①プログラミング教育に関して先進的な取り組みを行っている、②国際的な学習テストにおいて評価が上位になっている、という二つの観点から、英国(イングランド)、エストニアなど23の国と地域が対象となりました。

 調査の結果、ナショナルカリキュラム(国定カリキュラム)のもと、プログラミング教育を普通教科として単独して実施している国はありませんでしたが、情報教育やコンピュータサイエンスに関わる教科の中で取り組みがみられました。

 実施状況としては、初等教育(日本の小学校に相当)では、英国(イングランド)、ハンガリー、ロシアが必修科目として実施。

 中等前期教育段階(日本の中学校に相当)では、英国(イングランド)、ハンガリー、ロシア、香港が必修科目として、韓国、シンガポールが選択科目として実施。

 後期中等教育段階(日本の高等学校に相当)では、ロシア、上海、イスラエルが必修科目として、英国(イングランド)、フランス、イタリア、スウェーデン、ハンガリー、カナダ(オンタリオ州)、アルゼンチン、韓国、シンガポール、香港、台湾、インド、南アフリカが選択科目として実施されているといいます。

 なお、IT国家として有名なエストニアでは、全ての小学校から高等学校において選択科目とすることを目標に、2012年に20の実験校でプログらミング教育の導入に関するプロジェクトが実施されていましたが、現状では、ナショナルカリキュラムとしてではなく、各学校の裁量という形での実施になっています。

3.実施状況まとめ

 それでは、世界のプログラミング教育の詳細な実施状況をまとめてみました。今回は、英国(イングランド)、エストニア、フランス、ドイツ、フィンランド、イタリア、スウェーデン、ハンガリー、ポルトガル、ロシアの取り組みについてみてみます。

①英国(イングランド)

 イングランドでは、2013年の国定カリキュラムにおいて、従来の「ICT」に代わって、教科「Computing」が新設され、2014年9月より実施されています。

 教科「Computing]はKey Stege 1~4(5~15歳)の全学年で必修と定められています。ただし、実際は、key Stage 4(14~15歳)については、GCSE(義務教育終了時に受ける国家試験)で「Computer Science/Computing」を履修する者のみが履修しているケースが多いといいます。

 指導内容は、アルゴリズムの理解、プログラムの作成とデバッグ、論理的推論によるプログラムの挙動予測、情報技術の安全な利用法、コンピュータネットワークの理解です。

②エストニア

 エストニアでは、2012年9月にTiger Leap Foundationによって“Proge Tiiger”というプログラミング教育推進プログラムが開始されました。“Proge Tiiger”は、1~12年生(7~18歳)を対象に全ての公立学校でのプログラム授業を選択できるようにすることが目標とされ、教員の育成や教材の提供が行われるとともに、20のパイロット学校にプログラム教育が導入されました。

 その後、この取り組はプログラムを含むテクノロジー全般の教育推進に方向展開しているといいます。現在、プログラミング教育の導入・実施については学校及び指導者の判断に委ねられています。
プログラミング教育を実施しているベーシックスクール(7~15歳)の一部では、選択教科である「Informatics (Informaatika)」の中でプログラミングが扱われており、ロボットプログラムやゲームプログラムを用いて、プログラミングに興味を持たせる活動に重点を置いている学校が多いといいます。
また、一部のアッパーセカンダリースクール(16~18歳)では、Scratch、Python、Javaなどを用いてプログラミングを学ぶ授業が独立科目(選択科目)として設置されているといいます。

③フランス

 アルゴリズムなどのプログラミング教育が行われていますが、現在のところリセ(後期中等教育、15~17歳)一般コースと技術コースの第2学年(15歳)、第1学年(16歳)、最終学年(17歳)に限られています。

 独立の教科ではなく、教科「数学」の一部として、数学教員が教えています。学校の種類や選択するコースによっては必修となっている場合もあります。

④ドイツ

 イエルン、ニーダーザクセン、メクレンブルク=フォアポンメルン州のみが、後期中等教育のいくつかの学年でコンピュータの授業を義務化していますが、ほとんどのドイツの州において、教科「Informatik」は必修科目ではなく、ワードプロセッシングやインターネットの使用などの技能中心の入門コースや、他の科目の授業でインターネットを利活用できるようにするための広範囲にわたるメディアトレーニングしかありません。

 教科「Informatik」が導入されている学校では、一般的に高等学校9年生(14歳)から授業を開始し、その教育に2~4年かけています。

⑤フィンランド

 フィンランドでは、プログラミングを2016年から義務教育に含めることが決定しており、この導入計画に関するガイドブックは“Koodi2016”と呼ばれています。“Koodi2016”によると、プログラミングは1~9年生(7~15歳)の算数・数学のカリキュラムの一部として導入される予定です。

 1~2年生では、コンピュータに正確な指示を送ることが重要だということを習得するために、遊びを通して他の学習者たちに明確な指示を与える練習をします。3~6年生では、Scratchなどのビュアルプログラミングを使用します。7~9年生では、プログラミング言語を学び始めます。

⑥イタリア

 初等(小学校)、前期中等教育(中学校)については、2004年からその教育の質を高めるための教育の一環として、小学校のときから教科Informatica」を導入することになりましたが、その具体的教育内容は不明です。

 2014年から初等教育で導入が始まったProgamma il Futroというプロジェクトでは、コンピューテーショナルシンキングと呼ばれる論理的思考方法を身につけつことを目的としています。参加については学校や教員の任意です。

⑦スウェーデン

 スウェーデンでは、義務教育(基礎学校9年間、7~15歳)では教科の学習用ツールとしてICTが教えられていますが、プログラミング教育は導入されていません。スウェーデン国内には、9つの大学進学準備コースと9つの職業訓練専門コースがあり、職業訓練コース「Technology」の中で教科「Proguramming」が指導されています。

⑧ハンガリー

2003年にネット検索やペインティングなどのIT利用授業を小学1~4年生(6~9歳)において開始し、現在では「Informatika」を1~12年生(6~17歳)で連続して教えています。

 「Informatika」は、①ITツールの利用法、②アプリケーションの知識、③問題解決のツールとテクニックとしてのIT、④21世紀におけるインフォメーション、⑤情報社会、⑥図書館情報学、という6つの分野から構成され、それぞれの内容や授業数は学年により異なっています。

 プログラミングに関しては特に③の「問題解決のツールとテクニックとしてのIT」の授業において、論理的思考、アルゴリズム化、基本的な一連の手続き及び制御構造を学び、実際にコンピュータプログラムを作成しテストします。

 また、異なる分野の問題や現象をプログラムを用いて学びシミュレーションし、アルゴリズムを理解してプログラムを作成する、及びアプロー手法の開発において、問題解決を学びます。

 学年別には1~4年生では簡単なアルゴリズムを習得し、5~6年生では簡単なプログラムの実装・検証、7~8年生ではステップバイステップの計画手順、9年生以降では改良の原理まで学びます。

⑨ポルトガル

 ポルトガルはEU30か国の教育省庁のネットワークであるEuropean Schoolnetの協力を得て、100の教育機関組織によるネットワーク「KeyCoNet」が行っている取り組みに参加しています。参加各国がそれぞれの課題解決と強みを活かす取り組みをする中、ポルトガルは「第2言語としてのポルトガル語」と「EduScratch」という2つの取り組みを推進してきました。

 「EduScratch」は2010年に開始され、「Scratch」を用いた教育現場におけるプログラミングを教育として、7~8年生(12~13歳)に導入されました。

 「Scratch」は直感的に画像を用いて動作させるビジュアルプログラミング環境で、生徒にインタラティクブなプレゼンテーション、アニメーション、インターネット上で共有することができるゲーム等を作成させています。取り組みにより、生徒のコンピューテーショナルシンキングやデジタルスキルも伸長させる可能性があることが証明されてきており、「KeyCoNet」プロジェクトは終了しましたが、その後も「EduScratch」は継続中です。

⑩ロシア

 ロシアでは、プログラミング関連の授業を2~11年生(7~16歳)で一貫して教え、必修と定めています。初等教育においては、2009年より(他の関連教科の一部としての)「インフォマルマティカとICT」の中でアルゴリズム教育を実施しています。算術演術を数学と数式にて表現し、問題を解決する能力や簡単なアルゴリズムを構築する力を付けさせています。

 また幾何学的な図形を特定し描き、表、チャート、グラフや図表、順序集合を用いたり、データを集計、分析し解釈する力を付けさせ、プログラミング教育とつなげています。

 

 次回は、米国(カリフォルニア州)、カナダ(オンタリオ州)、アルゼンチン、韓国、シンガポール、上海、香港、台湾、インド、イスラエル、オーストラリア(ビクトリア州)、ニュージーランド、南アフリカの取り組みについてお伝えします。

 

 参考

平成26年度文部科学省委託事業「諸外国におけるプログラミング教育に関する調査研究」(文部科学省平成26年度・情報教育指導力向上支援事業)

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