2020年から小学校でプログラミング授業必修化! でもプログラマー養成のためではない? 大切なのは「プログラミング的思考力」を伸ばすこと

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1.はじめに

2017年3月に発表された新学習指導要領で、2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されることが決まりました。数年前からプログラミング教育への関心が高まっていたものの、必修化後には小学校では、どのようなプログラミング教育が展開されていくのでしょうか。

 まず、前提として、必修化されたからといって、新しく「プログラミング」という教科が作られるわけではありません。そのため、教科書もなければ、それだけが特別に試験で評価されることもありません。

 プログラミング教育は、算数や理科、総合的な学習の時間など、すでにある教科の中で実践されることになっています。ですから、具体的にどの学年でどの教科・単元で、どれくらいの時間数でプログラミングを扱うかは、各学校が判断するのです。

 小学校段階におけるプログラミング教育の目的は、プログラミング言語の使い方を覚えることではありません。文部科学省は、プログラミング教育を通じて育成すべき資質・能力を「プログラミング的思考」という言葉で表現しています。

 「プログラミング的思考」とは、物事には手順があり、手順を踏むと、物事をうまく解決できるといった、論理的に考えていく力のことです。

 小学校でプログラミング教育として、もちろんパソコンやタブレットなどのIT機器を使った授業も想定されていますが、IT機器を使わなくてもできるプログラミング教育もあります。

 「アンプラグド」と呼ばれ、専用ツールが出ているほか、紙と鉛筆を使ったり、あるいは体を動かして「プログラミング的思考」を学ぶ方法があります。

 2018年4月に日本ファイナンシャル・プランナーズ協会が発表した「男子小学生の『将来なりたい職業』ランキング」で、第6位になったのがユーチューバーでした。

1位サッカー選手・監督など

2位野球選手・監督など

3位医師

4位ゲーム制作関連

5位建築士

6位ユーチューバー

7位バスケットボール選手・コーチ

8位大工/警察官・警察関連

10位科学者・研究者

 小学生にとって、YouTubeは身近なツールであり、ユーチューバーは憧れの職業となっているのです。 

 「ソニー生命保険株式会社」が、全国の「中高生」を対象に実施した「中高生が思い描く将来についての意識調査」では、次のような結果が出ています。

男子中学生

1位ITエンジニア・プログラマー

2位ゲームクリエイター

3位ユーチューバーなどの動画投稿者

4位プロスポーツ選手

5位ものづくりエンジニア(自動車の設計や開発など)

 

男子高校生

1位ITエンジニア・プログラマー

2位モノづくりエンジニア(自動車の設計や開発など)

3位ゲームクリエイター

4位公務員

5位学者・研究者/運転手・パイロット

 このように、中学生でも高校生でも、IT関連の職種が上位を占めています。

 近い将来、すべてのモノがインターネットに接続する時代が到来すると言われています。その時代に不可欠なのが、「プログラミング(コンピューターのプログラムを作成する)スキルです。

 「プログラム」とは何かというと、「計画」「予定」のことです。つまり、プログラミングとは、「コンピューターにさせたい仕事(計画、予定)を順番に書き出す作業」のことです。

 実際にプログラムを書いてみると、自分の思い通りに動かないこともあります。計画通りに動かなかったときに、「なぜ、意図したように動かないのか?」「どのように指示をすれば動くようになるのか?」を検証しなければなりません。
 

 作業過程をひとつずつ振り返り、プログラムを見直し、原因を突き止め、解決策を導きだす。こうした問題解決のプロセスが、子どもの「論理的思考力」を伸ばすことにつながります。また、論理的な思考力は、将来の変化を予測することが難しい時代に不可欠な力でもあるのです。

2.なぜプログラミング教育が必要なのか

 プログラミング教育の必修化が進められる理由は、「IT人材の育成」「プログラミング的思考の育成」の二つの理由があると考えらています。

 経済産業省が2016年6月に発表した「IT人材に関する調査」によると、国内ではIT人材の供給が2019年をピークに減少へと転じ、2020年には「約37万人」、2030年には、「40~80万人」が不足すると予測されています。

 政府は、「ITを戦略的に活用して、国際的な競争優位を確立したい」と考えています。そのためにはプログラミングスキルを持つ人材を増やさなければなりません。プログラマー不足を解消するためにも、義務教育の早い段階からプログラミングを学ばせ、IT人材の間口を広げておく必要があるわけです。

 プログラミング教育の導入は、プログラマー不足に応えるものです。しかし、「プログラマーの育成」は、直接的な目的ではありません。それ自体を狙いとしているわけではなく、もっと重要な目的があります。それは、「プログラミング的思考を育成すること」です。

 これは、コンピューターを動かすためのプログラムを書く能力ではなく、プログラミングを学ぶ過程で得られる「考える力」を伸ばすことが最大の目的としてあるためです。

3.プログラミング的思考とは

 文部科学省の「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について」(議論の取りまとめ)という資料には、

「プログラミング教育とは、子どもたちに、コンピューターに意図した処理を行うよう指示することができるという体験させながら、将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる力としての『プログラミング的思考』などを育むことであり、コーディング(プログラミング言語を用いた記述方法)を覚えることが目的ではない」

(小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議)

と記されていて、プログラミングスキル以上に、「職業・職種を問わず、常に求められる力」(=プログラミング的思考)を育むための教育として位置付けています。

 では、プログラミング教育によって育まれる「プログラミング的思考」とは何かというと、同資料には、

「プログラミング的思考とは、自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組み合わせが必要であり、ひとつひとつの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組み合わせをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力」

(参照:文部科学省「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について」)

 わかりやすく説明すると、「『こうしたい』という結果を実現させるために、『何を、どのような順番で組み合せればいいか」を考える力です。

 文部科学省は、プログラミングに関する学習の事例を集めた「プログラミング教育実践ガイド」を発表しています。このガイドの中には、プログラミング教育が子どもたちにもたらした影響について、次のように述べられています。

・物事を論理的に説明できるようになった

・物事の手順や効率を意識して考えれれるようになった

・大きな課題を小さな課題に分解して理解できるようになった

・ミスを受け入れられるようになった。間違いを恐れなくなっ

・自ら修正を重ねてつくり上げていく姿勢が見られるようになった

・つくる側での立場で考えられるようになった

(参照:文部科学省 平成26年度プログラミング教育実践ガイド「プログラミング教育を通した児童生徒の学びの変容」)

 国全体として、「IT技術者、プログラマーを育てる」といった狙いもありますが、プログラミング教育が注目されるいちばんの理由は、プログラミングを経験することで、「問題発見力」「問題解決力」「論理的思考力」「表現力」といった「考える力」を育むことができるからです。

 今後の国際化社会の中では、「自分の考えや意見を論理的に述べて問題を解決していく力」が求められると言います。「考える力」は、IT関連業界にとどまらず、日常生活や仕事のあらゆる場面で役に立つ力です。

 プログラミングは、物理、数学、医学、金融、映画、音楽など、さまざまな分野に応用できることがわかっています。

 「プログラミングを理解すること=世の中のしくみを理解すること」と言っても過言ではないのです。

  参考

AERAdot.(2017)『「プログラミング教育」必修化の3大勘違い! 誰もが思い込みがちな間違いとは?

石嶋洋平(2018)『子どもの才能を引き出す最高の学び プログラミング教育』あさ出版.

平成26年度文部科学省委託事業 情報教育指導力向上支援事業 プログラミング教育実践ガイド

文部科学省「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について」(議論のとりまとめ)

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