知って学ぼう! 熱中症 予防と対策について考えてみた

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1.はじめに

 地球の気温は、この100年間で約0.4℃~0.8℃上昇しています。さらに都市部では、人口排熱の増加(建物や工場、自動車などの排熱)、緑地の減少とアスファルトやコンクリート面などの拡大、密集した建物による風通しの阻害といた要因からくる「ヒートアイランド現象」も重なり、特に1980年以降、気温の上昇傾向が見られます。

 1980年、東京における真夏日(最高気温が30℃以上)の日数は毎年20日前後だったのが、2017年には50日前後にも至りました。

その間、熱中症による死亡者数も増加しました。1970年代には毎年全国で100人にも満たなった熱中症による死亡者数は、1995年あたりから500人前後と増加し、近年では1000人も亡くなることも珍しくありません。

 今回は、そんな熱中症の症状や対策について書いていきたいと思います。

2.熱中症とは

 高温環境やスポーツ活動による温熱作用が体に発生すると、人は、体温調整機能により、皮膚血管を広げたり、汗をかいたりするなどの反応を起こして、体温を一定の範囲内に保とうとします。

 しかし、温熱作用があまりにも強いと、脱水、塩分欠乏、高体温となり、さらには体温調整機能自体が破綻するといった障害が生じます。

 これらの障害の総称が「熱中症」と呼ばれており、その名の通り、「熱に中った(あたった)ことによる疾病」を意味します。20年ほど前までは、「熱中症」よりむしろ、「日射病」という言葉が広く使われていました。

 「日射病」は、屋外での太陽からの日射が原因で生じる障害を示す言葉として使用されていましたが、近年では日射のない屋内での温熱作用による障害も含めた、より幅広い意味を持つ「熱中症」という言葉を使用するようになりました。

3.熱中症の病態と重症度

 熱中症は、いくつかの症状が重なり合って起こります。また、軽い症状から重い症状へ病状が進行する場合もあり、極めて短時間で重症となることもあります。

 医学的には、熱中症は治療方針を立てる上で、3つの病態「①熱けいれん(heat cramps)、②熱疲労(heat exhaustion)、③熱射病(heat stroke)」に分類されます。また、症状の程度から、以下のI度(軽症)、Ⅱ度(中症)、Ⅲ度(重症)に分けられます(度数分類)。

Ⅰ度(軽症)

熱失神

顔面蒼白など顔色が悪くなったり、頻脈や呼吸数の増加が見れらたりします。めまいや数秒間の失神などの障害も生じます。

熱けいれん

 多量発汗、吐き気、のどの渇きなどの症状があり、体温は高めです。腹部、手足などの痛みを伴った局所的なけいれんが特徴で、この段階では全身的なけいれんはみられません。

Ⅱ度(中症) 

熱疲労


 めまい、疲労感、虚脱感、頭痛、失神、吐き気などの症状がいくつか見られます。同時に血圧低下、皮膚蒼白、多量の発汗などのショック症状も見られます。このとき高体温を示しますが40℃以下です。この状態を放置すると、次のⅢ度に移行する危険性があります。

Ⅲ度(重症)

熱射病

 Ⅱ度の症状を維持しながら、おかしな発言や行動などの意識障害や過呼吸などが出現します。体温は40℃以上になっており、細胞や臓器の機能障害を引き起こします。さらに、体温調節機能の破綻が生じ、高体温にも関わらず、汗をかきません。体内血液の凝固、脳・肺・肝臓・腎臓などの全身の臓器障害を生じる多臓器不全となり、死亡に至る危険性が高まります。

4.暑さ指数(WBGT)と熱中症予防対策

 熱中症の危険度を判断する数値として、環境省では2006年から「暑さ指数(WBGT:湿球黒球温度)の情報提供を行っています。WBGTは、Wet Bulb Globe Temperatureの頭文字の略称です。

 WBGT計算式は以下のように表します。

【屋内で日射がないとき】
WBGT=0.7×湿球温度+0.3×黒球温度

【屋外で日射があるとき】
WBGT=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度

※乾球温度は気温、湿球温度は湿度、黒球温度は輻射熱(地面や建物・体から出る熱)をそれぞれ示しています。

 

 

乾球温度が28℃、湿球温度が24℃、黒球温度が27℃の屋外では、

0.7×24(℃)+0.2×27(℃)+0.1×28(℃)=25(℃:WBGT)となります。

 

基準

運動は原則中止

 WBGT31℃以上では、皮膚により感じる温度より気温のほうが高くなり、体から熱を逃すことができない。特別の場合以外は運動は中止する。

厳重警戒

 WBGT28℃以上では、熱中症の危険が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。運動する場合にいは、積極的に休息をとり水分を補給する。体力の低いもの、暑さになれていないものは運動中止。

警戒(積極的に休息)

 WBGT25℃以上では、熱中症の危険が増すので、積極的に休息をとり水分を補給する。激しい運動では、30分おきくらいに休息をとる。

注意(積極的に水分補給)

WBGT21℃以上では、熱中症による死亡事故が発生する可能性がある。熱中症の兆候に注意するとともに、運動の合間に積極的に水を飲むようにする。

ほぼ安全(適宜水分補給)

 WBGM21℃以下では、通常は熱中症の危険は小さいが、適宜水分の補給は必要である。市民マラソンなどではこの条件でも熱中症が発生するので注意。

5.熱中症になったときの対応

熱失神

 直射日光を避けて風通しの良い場所へ移動させ、衣服をゆるめてあおむけに寝かせます。頭は枕などで高くせず、むしろ下半身を高くすることで脳に行く血液を多くします。通常、熱失神は、体温は高くない状態のため、特に冷やす必要はありませんが、体温を測定し、確認しましょう。

熱けいれん

 軽度の熱けいれんは、塩分を含んだ飲料(0.9%の食塩水が望ましい。その他スポーツドリンクなど)や食品を摂取することで治ります。重度の場合は、静脈から直接塩分と水分を補給することが必要なため、医療機関で治療します。

熱疲労

 一次救命処置法に基づき、意識確認、気道確保、呼吸確認、循環確認(脈を取る、など)を行います。これらに問題がなければ、体温を下げるために体を冷却し、体温を測定します。体の冷却法としては、氷嚢やアイスパックなどを使用し、首、わきの下、足の付け根などを冷やすと効果的です。また、体に水を霧状に散布し、うちわなどであおぐことも有効です。

熱射病

 中度の熱疲労障害が過ぎると、最悪の熱射病に移行します。熱疲労時と同様にまず一次救命処置法を実施し、重症の熱射病と判断された場合、すぐに救急車を呼び、同時に強制的に体の冷却を行いましょう。意識がない場合には、気道を確保し、横向けにし、嘔吐物の誤飲に注意します。必要に応じて心肺蘇生を実施します。

6.最後に

 熱中症は、数ある障害の中でも、原因、治療法、予防法がはっきり分かっている障害で、予防医学的には「一次予防」を中心に対策を取るべきと言います。

 熱中症の一次予防は、暑さに負けない体力を付けることです。日ごろから、適度な運動をし、十分な睡眠を取り、そして偏りのない食事をすることにより、熱中症に負けない体づくりがなされるといいます。

  参考

田中英登(2017)『知って防ごう熱中症』少年写真新聞社.

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