【社会を学問する!】ジェンダーをめぐる社会学

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ジェンダーとは

 現代社会の男性と女性のあり方を問い直すうえで、新たに登場した重要な概念が「ジェンダー」という用語です。ジェンダーとは「性別」の意味ですが、これには性別は生物学的に決められたものではなく、「社会的文化的」に決められたものである、ということを意味しています。

 従来、<男らしく><女らしく>という役割分担は、生まれついて自然なもの、すなわち、生物学的に決まっているものだとして正当化されてきました。しかし、ジェンダーは、社会的文化的に男女をみることによって、固定的な性別役割観を乗り越える概念なのです。

 1990年代以降、男女共同参画社会の実現が政策的に唱えられるようになりましたが、その中でも、「ジェンダーに敏感な視点の定着と深化」ということがうたわれています。

 国連の女子差別撤廃条約では、男女同一の教育課程を子どもにも実施するように求めています。これを受け、1989年の学習指導要領改訂で、それまで女子のみの必修だった「家庭科」の授業が、男女共修に改められました。しかし、依然として「男子向き」「女子向き」といった進路選択におけるジェンダー・バイアス(ジェンダーに基づく偏向)が存在しています。

 そして、女性ばかりが、仕事と家庭の両立を求められていることから、多くの問題が生じています。現代の女性は、仕事を通して自分の人生を追求したい、と思うと同時に、家庭での子育てや家族生活も大事にしたい、という希望を強く持っています。男性もまた、仕事一筋というだけでなく、家庭にもより関わりたいという意識が見られるようになりました。しかし、現実には、女性も男性も、仕事と家庭を不満なく両立できるような環境が整備されていません。

 近代社会をジェンダーの視点でみた場合、それぞれ、職場(男)と家庭(女)、外(男)と内(女)、公(男)と私(女)など、性別分業を伴っていることが着目されます。

 イヴ・K・セジウィックは、この二つの分離された領域のうち、公的な領域を「ホモ・ソーシャルな」共同体と呼びました。ホモ・ソーシャルな共同体とは、男性同士の社会的な連帯により社会が成立していることを指します。そこでは、「性的な役割」は、精神的な連帯の絆を脅かすものとしてみなされ、同性愛者と女性を差別し、公的世界より排除しようとします。

 とくに排除された女性は、私的な領域、とくに家族を中心とした領域に隔離され、労働力の再生産や家族成員の「感情管理」に携わることになります。私的領域での女性は性的で「情緒的」な存在とみなされるのに対し、男性は労働者で一家の稼ぎ手や家の主として公的領域で活動する「理性的」な存在とみなされたのです。

 また、哲学者のハンナ・アーレントは、公的領域を言論が支配する政治空間、私的領域を生命体の維持再生産活動を行う自然的な空間と、それぞれ特徴づけました。私的世界は家族領域であり、その家族の代表者が集い、自由に討論をかわしながら共同体の意志決定を行っていく場が公的世界となります。そして女性は、政治的な空間である公的世界から排除され、公的な発言権もなければ、発言する能力もないものとみなされてきました。

 政治の領域が男性中心で女性が参加しづらい傾向も、依然続いています。日本では戦後ようやく女性の参政権が認められましたが、その後、約半世紀の間、女性国会議員の割合は上昇することなく、1~3%と低迷していきました。地方議会では少しずつ上昇し、都道府県議会では2割を超えるまでになりましたが、女性の政治への参画は、まだうまく果たされていません。

 女性が政治・経済活動に参加し、意志決定に参加できる度合いを測定するために、国連ではGEM(ジェンダー・エンパワーメント指数)という指標を用いていますが、日本は先進国の中で最低レベルとなっています。

 男女共同参画社会では、この状況を打破し、男女ともに対等に参画できる社会をめざし、ポジティブ・アクション(※)などの実施が唱えられています。

※ポジティブ・アクション・・・積極的改善措置ともいう。差別を解消するために、ただ機会の平等を保障するだけでは事実上の平等が達成されないとし、具体的な数値目標など積極的に改善措置を行う方法。

 

 参考

宇都宮京子編(2009)『やわらかアカデミズム<わかる>シリーズ よくわかる社会学』ミネルヴァ書房.

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