LGBTの権利を守る取り組み 性の多様性を考える  

性の多様性

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 法律や制度の点では不十分なところをある日本社会ですが、少しずつですが企業やNPO法人(特定非営利活動法人)などの民間団体、そして一部の市町村や省庁では、LGBTの権利を擁護する取り組みが始まっていたりもしています。どのような取り組みが行われているのでしょうか。

・不動産会社

 アパートを借りるとき、大家さんによっては同性カップルやLGBTに物件を貸すことを嫌がる人もいます。しかし最近では、LGBTでも借りられる部屋の情報を集めた不動産会社もあります。

・生命保険会社

 たとえば生命保険会社に加入するときには、加入者が死亡したときの死亡保険金の受取人を決める必要があります。これまでは、配偶者や子ども、親、祖父母、孫などの家族しか受け取ることができませんでしたが、条件つきでこれを同性カップルのパートナーにも受け取ることができるようにする保険会社も増えてきました。

・携帯電話会社の家族割

 家族で同じ携帯電話会社を利用することにした場合、基本料金や通話料などが割引になりますが、同性カップル同士でも「パートナーシップ証明書」があれば、割引サービスを利用できる携帯電話会社があります。条件つきで、証明書類が必要でない会社も存在します。

・クレジットカード

 買い物やサービスの支払いに利用するクレジットカードは、申し込んだ本人以外にも、家族用のカードを発行できるシステムになっています。一部のクレジットカード会社は、条件つきで、同性カップルでも家族用のカードを発行できるようになっています。

・雇用制度や職場環境づくり

  2016年に924の企業の人事担当者に行われた調査によると、38.8%の企業がLGBTに「関する何らかの取り組みをしていると答え、さらに20.5%が今後、取り組みを行っていきたいと回答しています。

 具体的な取り組みとしては、「ハラスメント(嫌がらせ)対策」「社員の意識改革」「結婚や育児休暇などの人事制度」などの答えがありました。

 また、新入社員を採用するとき、いかなるセクシャリティも差別しないとする企業も増えてきています。

・文部科学省

 2015年、文部科学省は全国の小中学校・高校などに、「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かい対応の実施等について」という通知を出しました。その翌年には、通知に関する教職員などからの質問に答える形で、どのように対応すればよいかを記したパンプレットも作っています。

・厚生労働省

 厚生労働省では、職場でのセクシャルハラスメント(性的嫌がらせ)を防ぐために、企業向けの「セクハラ指針」を公開しています。2017年には、指針の中に、LGBTへの差別的な言動もセクシャルハラスメントにあたると明記しました。

・法務省

  法務省では、LGBTへの偏見や差別をなくそうと、パンプレットの配布や動画の配信、シンポジウムの開催や公務員向けの研修会などを開いています。

・LGBT支援

 大阪市淀川区では、NPO法人QWRC(クォーク)などで合同でLGBT支援活動を行っています。具体的には電話相談窓口の設置、交流スペースの提供、区の全職員への研修などを行っています。

 とくに交流スペースは、LGBTの人たちが月に数回集まって、悩みを話し合ったりする場場所です。同様のスペースは、東京都渋谷区や神奈川県横浜市などにもあります。

・LGBTにやさしい町づくり

 2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、一部会場には「男女共用トイレ」を設置するとしています。このトイレは、「ジェンダーフリートイレ」と呼ばれ、性別に関係なく利用することができます。

 また、2016年に、岐阜県関市がLGBTにやさしい町づくりを目指す「LGBTフレンドリー宣言」を行いました。今後もこのような市町村が増えていくはずです。

・男性カップルが里親に

 親がいない子どもや、虐待を受けるなどして家庭にいられない子どもを、別の家庭が代わりに引き取り育てる制度を「里親制度」といいます。経済的に貧しくない、研修を受けるといった条件がありますが、この里親には同性カップルもなることができます。

 2016年、大阪市で男性同士のカップルが初めて認められました。日本で初めてのケースで、今後、他の自治体にも広がっていくだろうと予想されています。

・プライドパレード

 LGBTの権利を訴え、差別のない社会を目指すために開かれるパレードを「プライドパレード」や「レインボーパレード」といいます。1970年にアメリカで始まったとされるこのパレードは、欧米を中心にまず広がり、近年では日本でも開催されるようになりました。

・緊急連絡先カード

 NPO法人QWRCでは、いろいろなセクシャリティの人たちに向けて「緊急連絡先カード」を配布しています。パートナーの連絡先をカードに書いておき、常に携帯しておくことで、同性カップルのどちらかが急な事故や災害、突然の病気などで病院に運ばれたとき、パートナーにも連絡してもらうことができるのです。

 本来、法律的に病院側は、他人であるパートナーに連絡する必要はありませんが、このカードで意思表示しておけば、病院も連絡してくれるかもしれません。

 

           参考

 藤井ひろみ(2017)『よくわかるLGBT 多様な「性」を理解しよう』PHP研究所.

LGBT

世界のLGBTをめぐる現状はどうなっているのか調べてみました

2018年6月28日
社会問題

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