家族はこれからどうなる?【書評】結婚と家族のこれから

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本の紹介『結婚と家族のこれから』

 本のご紹介です。タイトルは「結婚と家族のこれから 共働き社会の限界」。家族社会学が専門の筒井淳也さんが、その知見に基づきまとめ上げました。執筆の動機はこうだといいます。「家族は素晴らしい、とか逆に家族は重たい存在」といった本は多くありますが、バランスの取れた、家族を広い視野から分析した本は見当たらないから自分で書いてみた、というのです。

 古代社会、実は私たちが考えるよりもずっと、恋愛や結婚における男女間の規範は自由だったといいます。好きになったら体の関係を持ち、そのまま結婚し、子どもを持ちました。そして気づいたら別れていることもありました。男性も女性も、同時に複数の相手と親しい仲になることもあって、「誰かと付き合っているときには他の人と付き合ってはならない」という強い規範もありませんでした。これを「対偶婚」といいます。

 しかし、古代末期から中世にかけてそんな自由な雰囲気は一変します。私たちが、一般的に「伝統的家族」と考える制度、「家」制度の登場です。そこで力を持っているのは、家長です。家長には、基本的に男性しかなれません。このような家父長制のもとでは、女性は多くの場合、財産の所有権を失います。

 現代は、そんな家制度が衰退し、古代と同様に家族関係も自由になってきました。ですが、筒井さんは、現代の家族関係の問題をこう指摘します。「夫は外で働き、妻は家庭で過ごす」という性別役割分業社会から、友働き社会への移行が進むにつれて、家族はさまざまな「リスク」にさらされていると、主張しているのです。

 第一に、所得の高い男性がやはり所得の高い女性と結婚し、他方で所得の低い男女が一緒になることが多いため、世帯所得の格差が広がりつつあります。

 第二に、家族生活がもはや単純に安らぎをもたらすものではなくなりつつあるためです。これは特に女性にとってはそうです。男性にとっては仕事上の挫折は他ではない仕事の領域で生じるのかもしれませんが、女性にとっては家庭生活が仕事の挫折の原因になりえます。家族マネジメントがうまくいかなければ、女性は結婚・出産、あるいは介護を機に仕事上のキャリアを大きく変更しなければならないかもしれません。

 そしてこのまま共働き社会化が本格的に進めば、今度は夫と妻は「共同経営者」として、仕事と家庭の運営を行うことになります。夫にとっての仕事、妻にとっての仕事、夫婦にとっての家庭、この三つの部門がすべてうまくいくように調整する必要があるのです。しかし、どれもうまくいかず、いずれかが犠牲になることも多いかもしれません。

 筒井さんは、家族を気軽に作れる、つまり気軽に結婚し、気軽に子どもを作ることができる社会、そして気軽に家族を作ってしまったばかりに上手くいかなくなってしまったとしても、それほど困らない社会を目指すべきと、語っています。

 「家族で失敗できないぞ」というプレッシャーがある社会では、人々は家族から逃避してしまうからです。さらに、逆説的ですが、家族を気軽に作ることができる社会のほうが、結果的には家族がうまくいくとも筒井さんはいいます。家族以外の支援が得られ、人々が家族(ーそれはもう家族でなくてもよいー)本来の良さを楽しめるようになり、家族が壊れてしまうリスクを軽減するからです。

 「家族がなくても生活できる」ような社会でこそ、人々は家族を積極的につくっていくのではないのでしょうか。

 

 参考

筒井淳也(2016)『結婚と家族のこれから 共働き社会の限界』光文社新書.

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