21世紀の電力エネルギー革命【書評】スマホでサンマが焼ける日

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1.アナログからデジタルへ

 過去数十年、時代はアナログからデジタルの時代へと移り変わっていました。カメラはフィルム式からデジタルカメラへ、音楽はレコードからCD、そしてダウンロードからストリーミングへ。本も紙の本から電子書籍へと、さまざまなデジタル化への流れが進んでいます。

 そして、電力エネルギーについての領域も、デジタル化が進もうとしています。電気のデジタル化です。電気のデジタル化とは、電気の流れ方や流れる量、つまり「電気利用情報」がデータ化・数値化されるということを意味しています。電気利用情報のデータ化・数値化とは、たとえばあなたが今日、その時間帯にどれだけの電気を使用したかが、リアルタイムで分かるようになることです。

2.スマートメーター

 データ化・数値化をするために必要なのは、「スマートメーター」と呼ばれるものです。これまでのアナログ式の電気メーターに代わる、新しいデジタル式の電気メーターです。スマートメーターは2016年4月の電力自由化にともない新たに導入・普及し始めており、だいたい2022年~2024年くらいまでにはすべての家庭に設置される予定となっています。

 スマートメーターの大きな特徴として、検針員による検針作業が不要で、自動検針が可能となることが挙げられます。ほかにも、スマートメーターによって、これまで電気利用データが1ヵ月の清算データしか取れなったのが、30分ごとに取得できるようになります。これにより、たとえば「電気料金が安い夜間の時間にだけ特定の電力会社の電気を買う」といった、ユーザーのライフスタイルやニーズに対応したメニューを選ぶことができるようになります。

3.集中から分散へ

 「アナログからデジタル」に次ぐ、もう一つの世界的トレンドは、「集中から分散」への流れです。たとえばメディアと情報発信。かつてニュースやその他の様々な世の中の情報は、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなどいわゆるマスメディアが集め、各メディアから世の中の人に一斉に大量発信していました。こうした仕組み(システム)は、情報発信機能、メディア機能が一部の企業(媒体)に「集中」していた状態と言えます。

 ところが今や、インターネットと通信機能の進化発展により、既存の大手メディアだけでなく誰もが情報発信者(メディア)として世界中に情報を発信できる時代になりました。

 ネット上には様々なニュースメディアが乱立し、果てはSNSやYouTubeなどで個人が簡単に世界中に情報発信できる時代になっています。また、自分で面白い動画をYouTubeにアップするYouTuberと呼ばれる人々も増えてきて、その人たちにもきちんとお金が入るような仕組みができています。このように、メディアの力が、集中から分散してきているのです。

 電力も、同様に集中から分散への時代に移行しつつあります。これまでは、火力発電所も水力発電所もだいたい20年~30年くらいかけて、山奥や海の近くなど限定された場所に巨大な発電施設を作ってきました。そこで電力会社が常に何百万人の電力を作って提供してきたのです。それがここにきて、太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーを中心とした小型、中型の発電所が全国各地に分散して広がっています。それが、「分散型発電」です。

 こうした分散型発電が普及すると、いろいろなメリットが生まれます。一つは、電気を送るときに生じるロス(無駄)がなくなるということです。

 電気は電線を通って送られるときに、電線との抵抗によってロスが発生します。山の中の発電所で発電した電気を、電線を使って何百キロも離れた場所に電気を送ると、その途中で水漏れのように少しずつ電気の量が減っていってしまうのです。しかし分散型発電によって使う場所のすぐ近くでで発電すれば、当然、電気の移動距離も縮まるため、これまでのようなロスが大幅に減ります。電力の輸送(送電)がより効率的になるのです。

 分散型発電のもう一つのメリットは、急に電気が必要になったときに柔軟に電気の調達ができる、ということです。

 日本で最も電力需要が高まるのは、夏の甲子園が開催される約2週間だそうです。今までは、1年のうち、このたった2週間に備えて各地域の大型発電所の設備を準備し、その時期に必要となる電力に間に合うように発電してきました。しかし、分散型発電が普及すれば、各地域または各自で使いたいだけ発電できるので、そうした対応も必要なくなります。

 しかも、普段の生活で使わずに余っていた電気を蓄電池に貯めておくことができれば、その時期の電気を近所の人同士で融通し合ったりすることも可能となるのです。

4.今後、電力がますます必要になってくる

 今後、世界の電力需要はさらに増加していくと予想されます。理由のひとつは、電力の発電コストが下がるためです。電気自動車の普及し、電気の使用量、消費量が増え、それにともなって発電システムも発達して発電量も伸びていきます。

 発電量が増えれば、さらに発電コストが下がるので使用量が増える、という好循環が生まれてくるためです。今はまだ、発電コストが下がらないので使用量も増やせないのですが、今後、太陽光発電など再生可能エネルギーが普及し、さらに分散型発電によって「電力消費量が増えても地球環境が悪くなるわけでなはい」という社会になれば、ますます電力需要は増えていくはずです。

 もうひとつは、これからのIoTを中心としたテクノロジーの発達、AI(人工知能)やスーパーコンピュータの進化、電気エネルギーを必要とするマシン、デバイスが無限に増えていくと予測されるからです。とくにIoT化が進むことによって、現在の3000倍のモノがインターネットに繋がるだろうと予測されています。ということは、電気を必要とするモノも3000倍に増えるということです。また、ロボットやAI搭載型の新しい機器、ウェアラブル端末など、今まで存在しなった新しい電子機器も増えていくでしょう。

 最後に、電気エネルギーの消費が拡大するだろう、もう一つの要素として、私たち人間の「エネルギー消費に対する心理」の変化が挙げられます。これまでは、電力やエネルギーを使うことはすなわち浪費=地球や環境にとってもよくないことであり、また私たちの生活にとっても無駄なことだという心理が働いていたと思うのです。

 とくに最近は、世の中全体的にエコ志向が高まり、地球温暖化への危機感、地球規模の環境保全への意識の高まりとともに、電気やエネルギーの消費、石油やガソリンなどの資源消費はできるだけ控えるべき、と考える人が増えています。

 しかしこれからは、電気エネルギーは、発電・送電システムの変化や改革によって、今まで無駄にしていたものをうまく利用して発電していく時代に入ります。また、石油など化石燃料といった資源も使わずに発電できるシステムも構築されていきます。

 そうなると、電気は使ってはいけないものから、使っていいものになるのかもしれません。電気エネルギーは、使いたくないものから、「使いたいもの」へと変わっていくということです。

   参考

江田健二(2017)『スマホでサンマが焼ける日 電気とエネルギーをシェアする未来の「新発想論」』good.book.

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