子どもの習い事の経済学 現代の子どもの習い事の実情

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1.はじめに

 子どもの学校外教育には、塾など学校での学習の補完や受験対策と、ピアノ、バレエ、野球、サッカー、水泳などの学業ではなくて趣味を生かす活動の、二種類があります。

 さて、今回は塾以外の、子どもが習う習い事に着目してみました。現代の子どもはどんな習い事をしているのでしょうか。

2.人気No.1はスイミング

 まずはスポーツ活動に注目してみます。もっとも人気の高いのは、スイミングでした。とくに小学生のときに水泳を習っている児童は全体の3分の1くらいともっとも多く、他のスポーツと比較するとはるかに高い数字でした。

 なぜ、スイミングをする児童が多いのでしょうか。これには、いくつかの理由が考えられます。

 第一に、必ずしも学習指導要領には明記されていませんが、小学校から高校まで水泳を体育での義務としている学校が多い点です。体育の授業で子どもが泳げないのは恥であるし、体育の成績も悪くなると考えている親が多いとされます。

 第二、水難事故防止のために泳げるようにしておいていたほうがよいと、親が考えている可能性もあります。

 第三に、スイミング・スクールに通う費用はそう高くはありませんし、用具などもさほど必要はないので、親にとっては魅力に見えるのかもしれません。

3.その他に人気が高いもの

 スイミングに次いで人気の高いのは、サッカー、体操教室、硬式テニス、ダンスなどでした。しかし、これらは男女による差が激しかったです。

 たとえば、サッカーは男子が14.3%(小学生・中学生・高校生)の高い人気度であるのに対して、女子はわずか1.2%にすぎない一方、ダンスは男子が0.9%であるのに対して、女子は7.0%と女子の中で第2位の人気度でした。そして、男女ともそこそこ人気の高いのが体操教室です。

 興味深い点もあります。第一に、硬式テニスの人気度が中学生と高校生に高いことです。これには世界で活躍する錦織圭選手の登場があるのかもしれません。第二に、硬式・軟式の野球とソフトボールの人気度が、それほど高くはない点です。とくに男の子にとっては野球よりもサッカー人気が高いのです。それにはいくつか理由が考えられます。

野球は体格が大きいとか、運動能力が高いといったことが野球選手の実力を示す尺度になっています。サッカーの場合は運動能力の有る無しは無視できませんが、身長とか体重とかいった体格は必ずしも大きくなくてもよいのです。普通の体格しかない子どもでも、自分はできるかもしれないと思う可能性もあるので、サッカーをやろうとする子どもの数も多くなっているとも考えられます。

 さらに野球には用具をはじめ、少年野球チームには指導者への謝礼などもあってお金がかかりますが、サッカーはあまりお金をかけることなくても始めることができます。実際、経済が豊かでない南米諸国では、サッカーボールさえあれば道路でもサッカーができるので、多くの子どもたちがサッカーをしています。

4.芸術活動はどうなっている?

 スポーツに次いで、子どもが習うものは芸術活動ですが、いくつかの特色があります。

 第一に、もっとも人気の高いのは楽器の練習です。ピアノのレッスン、ヴァイオリン、チェロ、ギター、フルートなどのさまざまな楽器のレッスンに通う子どもがいます。音感やリズム感を養うための音楽教室に学ぶ子どももいますし、リトミックを学ぶ子どももいました。リトミックとは、リズムを学んで音楽を体感し、心と体の調和を目指して表現力や想像力の育成を図るものです。

 二番目に人気の高いのは、絵画や造形という美術分野の活動です。次に、バレエ、合唱、茶道、演劇などが続きますが、それらを習い事にしている子どもは少ないのが実情です。

 芸術活動に関しては、男子よりも女子の参加が多かったのが特徴です。とくに各種の芸術活動の習い事のうち、ピアノを習う子どもの数が圧倒的に多いのが女子でそした。ではなぜピアノなのでしょうか。

 第一に、母親の意向が強く働いていると想像できますが、自分が子どものときに、まわりにピアノを弾ける友人がいてうらやましく思ったという記憶があるので、自分の子どもにはそれをさせたいという素朴な思いもある親もいるかもしれません。あるいは、自分も子どもの頃にピアノを習っていて今でも弾けるので、子どもにも同じことをさせたいと思う親もいるかと思います。

 第二に、女の子が大人になったときに、主婦やパートタイム労働者などフルタイムで働かなくなったとしても、ピアノの技能を持って個人や音楽教室などで教えることによって、家計の補助にでもなればよい、と思っているのかもしれません。

5.安くはない芸術活動への支出

 性別で区分すると、芸術活動への費用は、女子の支出額が、男子の支出額よりも高いことが分かっています。さらに、親の年収にも関連しています。ピアノなどの芸術活動にはかなりの費用がかかりますので、高所得者の子どもしか芸術活動をすることができないことを意味しています。

 たとえばピアノのレッスンの場合、音楽教室か個人授業かによってレッスンの費用は異なりますが、1回30分で3000円から5000円、大都市であれば7000円から8000円もかかるとされています。しかも、この数字は初級レベルであって、上級であれば1万円も珍しくはありません。

 どの先生に教えてもらえるかも重要です。コンサートの演奏者紹介の欄に必ずといってよいほど「〇〇〇〇に師事」と書かれてあるように、誰に教わったかが、将来の音楽学校や演奏会の実施に際して役立ちます。有名音楽大学出身で有名な演奏家や教師であれば、かなりの高額なレッスン料になります。

 しかも地方に住んでいる人が東京在住の著名な人に教わると、高いレッスン料だけでなく、交通費もかかることになります。たとえば1か月に数十万、あるいは数十万円の支出にもなることもあり、これはかなりの高所得者の親でないと支払うことはできません。

 さらに楽器の購入にもお金が必要です。ピアノ1台で40万円、高いものは100万円を超えるといいます。

 このように、子どもの習い事の側面から見てみても、「格差社会」の構造が見て取れるのです。 

        参考

 橘木俊詔(2017)『子ども格差の経済学 「塾、習い事」に行ける子・行けない子』東洋経済新報社.

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