なぜ「働き方改革」は迷走するのか 働き方改革のゆくえ

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1.はじめに

 安倍首相の目玉政策であった「働き方改革」が行き詰まりを見せています。労働時間を実労働時間ではなく一定の時間とみなす「裁量労働制」についての首相の国会答弁で使われた比較データに問題があり、首相は答弁を撤回、結果的に厚生労働省は、働き方改革関連法の施行を1年遅らせる方針を示しました。働き方改革の実現に、何か問題点はないのでしょうか。

 たとえば、「実行計画」では、残業規制として月100時間未満、2~6か月の月平均80時間の時間外労働には、違反企業に罰則と課すとされています。しかし、100時間・平均80時間の場合も、どちらも「おおむね」80時間を超える時間外労働がなされた場合に生じやすい「過労死ライン」に抵触してしまいます。

 個人的に言えば、わざわざ「働き方改革」という真新しい言葉を指し示さなくても、既知の問題・基準で、働き方は変えることができると思うのです。

2.ディーセント・ワーク

 「ディーセント・ワーク」という言葉があります。ディーセント・ワークは「働きがいのある人間らしい仕事」とも訳され、1999年に国際労働機関(ILO)総会において、21世紀の目標として支持されました。ILOはディーセント・ワークには、以下の取り組みが必要だとしています。

①必要な技能を習得して、働いた賃金で暮らしていけるよう、国と企業が仕事の創出を支援する

②社会保障を充実させて、安全に健康的に働ける職場環境をを保障する

③職場で起きた紛争や問題が平和的に解決に導かれるように社会的対話を推進する

④不利な立場で働く人をなくすために労働者の権利を保障し尊重する

 日本でも、このディーセント・ワークを厚生労働省がその普及に努め、また実現のための労働政策を進めていくとしており、2012年7月に閣議決定された「日本再生戦略」でも、その実現へついての取り組みが掲げられています。しかし、その認知度は11.7%に過ぎないとの調査もあります。

3.ILO条約の未整備

 また日本は、183ある国際的な労働条約であるILO条約のうち、4分の1程度の44しか批准していません。これはフランス(115)、イタリア(101)、イギリス(81)、ドイツ(76)に比べれば、低い水準となります。

 とりわけ日本は1号条約(工業部門の1日8時間・週48時間労働)をはじめ、47号(週40時間労働)、132号(年次有給休暇)、140号(有給教育休暇)など、18本ある労働時間・休暇制度に関する条約を一つも批准していません。

 また、1998年のILO新宣言(労働における基本的原則および権利に関するILO新宣言)で、「最優先条約」とされた8条約のうち、105条約(強制労働の廃止)、111号(雇用および職業における差別待遇の是正)、182号(最悪の形態の児童労働禁止)の3条約も批准していません。もちろん、批准するかしないかは国家的な判断として自由ですが、国際的な評価は落ちてもしかたありません。

4.少ない労働監督官

 違法労働を監視する「労働監督官」も少ないのが現状です。ILO条約では、労働者1万人当たりの監督官の数は「1人」を上回ることが望ましいとしています。しかし日本はその半分程度の0.53人程度です。

 いわゆる「グローバル化」が叫ばれて久しいです。グローバル化は負の側面もありますが、世界の貧困を削減してきたことも事実です。しかしながら、グローバル化は、単なる経済に関する視点だけで捉えられてもいけまん。日本においても労働に関する問題を、グローバルな国際的な基準として捉え、それにできるだけ近づけるべきでしょう。それが働き方改革に向けて、まずやるべきことだと思います。

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