【社会を学問する!】地域をめぐる社会学 コミュニティとアンダークラス

地域社会学

1.シカゴ学派

 アメリカのシカゴ市の人口は、1850年には3万人足らずでしたが、大陸横断鉄道のターミナル駅となり工業都市として発展することによって、1920年代には300万人をこえる大都市へと急成長しました。

 シカゴ学派と呼ばれるシカゴ大学の社会学者や学生たちは、そのシカゴを「実験室」と見立て、混沌とした風景を学問することにしたのです。歴史も文化も共有しない人々が一挙に集められ、その群れはいまだ一つの社会に束ねられていない状況がシカゴにはありました。

 さて、そのシカゴに「どのように」して社会が発生するのか。社会とは、歴史的に形成され「既にある」ものではなく、人々のさまざまな営みの中で「つくられる」ものと、シカゴ学派の人々は考えたのです。

2.コミュニティ

 地域をめぐる社会学を語るうえで重要ともいえるものは、「コミュニティ」です。コミュニティとは、一定の地理的範囲の中で共同生活を営む人々の集合状態のことを意味します。コミュニティには、①地域性(同じ空間にいる)と②共同性(同じ利害や目的がある)という二つの要件があります。

 また日本の農村落は、水田に流れる水路の共有・管理、田植えや収穫、祭りなど、村落住民に共通する利害や目的を通して、「おらが村」という「われわれ意識」を強く醸し出してきました。コミュニティの要件には、このような③地域社会感情もあります。

 では、都市にはコミュニティは存在するのでしょうか。第一に、都市では親族・近隣・友人などの「第一次関係」が衰退することにより犯罪、貧困、離婚といった社会解体現象が加速すると強調したコミュニティ喪失論が最初に登場しました。

 ところがこの反論として、「都市の中の村」という言葉が用いられたり、「有限責任のコミュニティ」などが提唱されたりと、都市にも根強く第一次関係が存在すると主張したコミュニティ存続論が登場します。

 さらに近年では第三の立場、コミュニティ解放論が提唱されています。この説では、個人個人が必要に応じて自分の周りに第一次関係を配置し、さらにそれらは必ずしも特定の地域内に集約されず、むしろ分散しているのだと主張する立場です。

 この解放論は、喪失論や存続論の主張する一定地域内での第一次関係の有無に固執せず、特定地域空間から解放された第一次関係を個々人が保有することにより、地域を超えた「パーソナルなコミュニティ」が成立していることを主張しています。

 今日、都市コミュニティは、①高齢者や障害者などの社会的弱者が地域社会で共生する地域福祉の点、②防犯や防災といった生活防衛の点から注目を集めています。

3.アンダークラス

 「アンダークラス」という用語も重要なキーワードです。アメリカの大都市では、1970年代から90年代にかけて貧困がインナーシティ(都心と郊外との間の区域)に集中し、人種的マイノリティの居住区で環境の悪化が進みました。

 とくに黒人居住区は、住宅や学校が荒廃し、麻薬密売や暴力犯罪が多発するなど深刻な状態に陥りました。アンダークラス(最下層)とは、こうした居住区の住民のうち、長期的な貧困状態にある失業・非就労者を指します。 

 黒人居住区でアンダークラスが増大した原因として、大きく二つの説を挙げることができます。ひとつは個人責任説、もうひとつは社会構造説です。

 個人責任説は、アンダークラスの原因を文字通りアンダークラスの個々人に求めます。黒人の若者の多くが失業・非就労状態にあるのは、あるいは母子世帯が福祉に依存するのは、本人が仕事を選り好みしたり、働くことを嫌がるせいだというわけです。

 さらに、こうした反道徳的な行為や価値観は黒人に固有の「貧困の文化」を構成しており、とくに母子世帯の福祉依存は警戒を要するといいます。福祉に依存する母親に育てられた子どもは、「社会の本流」をなす労働の倫理や自立心を身につけず、そのため青年になっても雇用のチャンスなどが訪れてもそれを生かすことができず、結局は貧困状態が続いてしまうというのが、その理由です。この「貧困の文化」は、60年代以降のアメリカ政府による「寛大な福祉政策」によって助長されたと、個人責任説はみています。

 しかし、個人責任説は根拠に乏しい説明です。さまざまな調査の積み重ねによって、黒人居住区のほとんどの住民が「社会の本流」的な価値観を持っていること、「寛大な福祉政策」と未婚の母の増加との間には関連がないことが明らかとなっています。

 社会構造説は、アンダークラスの増大は人種差別と産業構造の変化に原因を求めます。黒人は居住差別のためインナーシティに集住し、雇用差別のため、就労を試みてもなかなか採用してもらえません。その結果、若年黒人男性の間に失業状態が広がり、このことがさらに母子世帯の増加につながったというのが、社会構造説です。

     参考

宇都宮京子編(2009)『「よくわかる社会学」(やわらかアカデミズム・<わかる>シリーズ)』ミネルヴァ書房.

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