よく日本人は「集団主義」で、欧米は「個人主義」だと言われていますが、はたして本当にそうでしょうか

日本人は個人主義的である

1.はじめに

 よく日本人は「集団主義」で、欧米は「個人主義」だと言われていますが、はたして本当にそうでしょうか。タカアンドトシではないですが、「欧米」と言ってもヨーロッパとアメリカでは文化も社会制度も異なりますが、私は、日本人はアメリカと同様に個人主義志向が強い国民だと思います。

2.日本は有数の格差大国

 たとえば今や日本は、アメリカと並ぶ世界有数の“格差大国”となっています。日本では6人に1人が貧困線(統計上、生活に必要な物品を購入できる最低限の収入を指し示す指標)以下の生活を強いられ、貧困者の割合を示す相対的貧困率でも、富の偏在を示すジニ係数でも、日本はアメリカと並び世界で最も貧富の差が大きく、貧困層が放置されている国であることが、データによって裏付けられています。

 それもそのはずで、再分配の前提となる国民負担率(租税負担率+社会保障負担率)でも、日本はアメリカと並び先進国では最低水準にあります。何らかの形で富める人たちから税や社会保障費の形で富を集め、それを貧しい人たちに分配しなかれば、貧富の差は広がり、貧困が放置されるのは当然の結果ですが、日本人は「集団として」貧富の差を埋めようともせず、貧困を「個人の責任」としてみなしている風潮になっていると私は思えています。

 17世紀以降、ヨーロッパの開拓者たちによって国の基礎が作られたアメリカが、伝統的に個人に対する政府の介入を嫌い、「自助」の精神を重んじる国であることは広く知られています。そのアメリカができる限り税負担を軽くし、社会保障も公的負担を避け、自助に任せようとする傾向があることは、ある程度は説明がつきます。

3.少ない日本の国民負担率

 しかし、今や日本の租税負担率(国民所得に対する租税負担額の割合)はアメリカよりも低いのです。日本には義務的な年金と医療保険があるため、租税負担率に社会保障負担率を加えた「国民負担率」ではアメリカを少し上回っていますが、それでも先進国中最低水準の41.6%(2015年度、租税負担率=24.1%、社会保障負担率=17.5%)にとどまります。ちなみにアメリカの国民負担率は先進国中最低の32.5%(租税負担率24.2%)なのに対し、イギリスの国民負担率は46.5%、ドイツは52.6%、フランスは67.6%です。

4.多くの国では大学の授業料は無償

 ヨーロッパや北欧の国々の多くは、大学などの高等教育も無料な国がほとんどで、医療も無償な国が多く、また失業保険や介護保険も日本とは違い、かなり充実しています。そもそも日本は近年まで中・高等教育への「無償教育の漸進的導入」の規定(国際人権A規約13条2項b、c)の導入に対して「留保」していました。この規定の留保を行っていたのは、世界では日本とマダガスカルのみでした。

5.少ない教育への公的支出

 また、GDP(国内総生産)に占める小学校から大学までの教育機関への公的支出の割合も日本は3.2%程度で、これも先進国最低水準です(2014年)。公的支出割合が最も高かったのは、デンマークで6.3%で続いてノルウェー6.1%、アイスランド5.7%、ベルギーとフィンランドが5.6%でした。このように教育に関しても「個人の責任」の捉えている傾向があると、私は見ています。

6.自力で生活できない人を政府は助ける必要はあるか?

 アメリカのシンクタンク「ピューリサーチ」による2007年の国際世論調査で、「自力で生活できない人を政府が助ける必要はあるか?」ととの問いに「No(ノー)」と答えた日本人は38%でした。この数字はアメリカ(28%)よりも高かったのです(イギリス8%、フランス8%、ドイツ7%、中国9%、インド8%)。貧困問題の点から見ても、日本人は「個人主義」志向なのです。

7.なぜ日本人は個人主義なのか?

 だとすれば、なぜここまで日本人は個人主義なのでしょうか。いろいろ要因は考えられます。戦後のアメリカの占領政策によりとくに教育や福祉政策が形作られた結果、あるいは戦後の急速な工業化によって伝統的な農村共同体が崩壊し、一時的にそれに取って代わる機能をはたしてきた企業共同体も崩壊し、もはや現代の日本社会に「共同体」と呼べるものが何も残っていない、などが考えられます。

 本来、個人主義とは、困っている人を放置してそれで良しとする「Selfish(利己的)」ではなく、「individualism」を意味します。individualismとは、集団に所属する一員としての役割や権利を相互に‟尊重”するという意味で、「困っている人を助けない」という意味ではありません。

 2011年の東日本大震災において、「絆」、「助け合い」が強調されました。また安倍首相は、高等教育の無償化を打ち出しています。そんなプラスの材料が、今後の日本の将来になれば、と少しは思っている今日この頃です。

  参考 

 ビデオニュース・ドットコム(2017)『日本人は格差を望んでいる」は本当か

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です