障害年金の基礎知識 学ぼう! 障害年金

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障害年金について

1.はじめに

 公的年金制度の一つである「障害年金」のことをご存知ですか? 年金と言えば、みなさんは高齢になってから受け取る老後の年金のことを真っ先に思い浮かべるかもしれません。また、一家の働き手が亡くなってしまったときに受け取る遺族年金を思い浮かべる人もいるかもしれません。

 しかし、実は公的年金は、このような「老齢」と「遺族」だけでなく、「障害」も含めた、主に三つの保障機能を備えているのです。しかも、「障害」には一定の要件を満たせば、がんや糖尿病、精神疾患を含め、ほとんどの病気や怪我が含まれます。

 障害年金と聞くと、手足の障害や、とても重くて大変な障害だけが対象だと認識されていることが多いのですが、実は意外に身近な社会保障でもあるのです。また、障害年金は、うつ病などの気分障害・てんかん・認知症・発達障害・知的障害などの障害も該当します。

 ですが、障害年金制度の存在を知らない人が多く、本来なら適正に受給できるはずの障害年金が請求されていないことも多いのです。その理由には、国や専門家が国民に対して障害年金のことを周知しきれていないことや、障害年金制度が複雑すぎて把握されていないことなどがあります。

 今回は、この障害年金についてまとめてみました。

2.障害年金の種類

 日本の公的年金制度は2階建ての制度となっています。1階部分が「基礎年金(国民年金)」、2階建て部分が「厚生年金、共済年金」となっています。障害年金も公的年金制度のひとつですので、障害基礎年金・障害厚生年金・障害共済年金の3種類に分かれています。

 初診日(初めて医師の診察を受けた日)の時点で、国民年金にのみ加入していた場合は障害基礎年金だけが支給されることになりますが、厚生年金や共済組合に加入していた場合は、同時に国民年金にも加入していることになりますので、1・2級なら障害基礎年金と合わせて障害厚生年金や障害共済年金も同時に受給できます。

  (1)障害基礎年金

 障害基礎年金は、2階建てになっている年金の1階部分です。日本に住んでいる20歳から60歳までの人は、すべて国民年金に加入する必要がありますので、すべての人が障害基礎年金の対象です。とくに、自営業・専業主婦・学生などであれば国民年金だけの加入ですので、障害基礎年金のみが支給されます。障害等級は1級と2級の2段階に分かれていて、子どもに対する「加給年金」もあります。

  (2)障害厚生年金

 障害厚生年金は、2階建てになっている年金の2階部分です。サラリーマンやOLが加入する厚生年金に加入中であった期間に初診日があれば、障害厚生年金が支給されます。

 障害厚生年金は、1級・2級・3級の3段階に分かれていて、障害等級が1・2級であれば、障害基礎年金も合わせて支給され、さらに配偶者に対する加給年金も支給されます。3級であれば、障害厚生年金だけが支給されます。

 また、障害等級1~3級に該当しなかった場合でも、一時金として障害手当金が支給されるケースもあります。障害手当金は、障害基礎年金にはない制度です。(3)障害共済年金

 

 障害共済年金は、2階建てになっている年金の2階部分です。公務員などが加入する、共済組合の組合員であった期間中に初診日があれば対象となります。障害厚生年金と基本的な仕組みは同じですが、2階部分に職域年金相当部分がさらに追加されるのが大きな特徴です。

 2015年10月より、一元化により、障害厚生年金に組み込まれることになりました。

3.障害の程度

 障害年金の対象となる障害の状態に該当するは、行政のルールである「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準(以下、「障害認定基準」という)によって判断されます。障害認定基準は、日本年金機構のホームページで公開されています。

 基準はあいまいなものが多く、医師や行政機関の窓口担当者でも、何級に該当するのかを事前に確定することはできません。

 最終的に等級を決定するのは、障害基礎年金の場合は、各都道府県におかれている日本年金機構の事務センター、障害厚生年金であれば日本年金機構本部となります。決定通知書が送られてくるまでは、障害年金は支給されるか、支給されるとしたら何級に決定されるのか、予想はできても、事前には誰もわからないのです。

 審査を行うのは、各機関から委託を受けた障害認定医員と呼ばれる医師です。

 それでは、障害認定基準の各等級の障害の程度を見ていきましょう。

〇1級・・・身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものとする。

 これは他人の介助を受けなければほとんど自分の用事を済ませることができない状態です。

 たとえば、身のまわりのことはかろうじてできますが、それ以上の活動はできない、または行ってはいけない状態です。医療機関内の生活でいえば、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られている状態で、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね就床室内に限られている状態です。

〇2級・・・身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。 

 こちらは、必ずしも他人の助けを借りる必要はないけれど、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない状態のことです。

 たとえば、家庭内の極めて温和な活動(軽食作り、下着程度の選択など)はできても、それ以上の活動はできない、または行っていけない状態です。医療機関内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね病棟内に限られる状態で、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね家屋内に限られる状態です。

〇3級・・・労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。

  また、「傷病が治らないもの」にあっては、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。

(「傷病が治らないものについては、障害手当金に該当する程度の障害の状態がある場合であっても3級に該当する。)

 傷病が治っていなくて、労働に著しい制限を受けるか、労働に著しい制限を加えることを必要とする状態です。 

〇障害手当金・・・「傷病が治ったもの」であって、労働が制限を受けるかまたは労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。

 症状が固定したもので、3級よりやや軽い障害が残った状態です。

4.障害年金でもらえる金額

 障害基礎年金(国民年金)は年度によっての変動はあるものの、一律に定額が給付されます。

 障害厚生年金(厚生年金)については、加入の月数や給料の金額に比例して、年金額も変動しますので、保険料を多く収めた分は、年金の受給金額に反映されて受け取る金額も多くなります。

 また、3級の障害厚生年金には、最低保障金額(579,700円)があり、被保険者期間が300月に満たない場合は、すべて300月として計算されることになっています。

5.障害年金を受給するためには

 障害年金は、国民年金または厚生年金保険の被保険者(被保険者であった人を含む)が、法令で定める障害の状態に該当し、かつ障害の原因となった病気やケガについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日(これを「初診日」といいます)の前日において一定の保険料納付を満たしている人が受けることができます。

6.障害認定の要件

 障害年金を受けられるかどうかは、障害認定日に一定以上の障害状態にあるかどうかで判断されます。

 障害認定日とは、初診日から1年6か月が経過した日か、1年6か月が経過する前に症状が固定し、それ以上、治療の効果が期待できない状態となった日のことです。

 この障害認定日に一定に障害状態にあると認められると、その翌日から年金が支給されます。これを、障害認定日請求と呼び、もし請求が遅れても最大で5年間遡って支給されます。

 障害認定日には障害等級に該当しなかった場合でも、65歳に誕生日の前々日までに症状が悪化して該当すれば、受給できるようになります。これを、事後重傷請求と呼び、認められると請求した翌月から年金が支給されます。ただし、請求する日までに障害状態に該当していたとしても、遡っては支給されません。

7.障害年金で必要な書類

 障害年金の請求手続きには、初診日を証明するための書類や医師の診断書、住民票などの添付書類が必要になります。添付書類は、初診日のカルテが残っているか、障害の原因となった部位や配偶者の有無などによって異なります。

〇年金請求書

 年金請求書は、障害基礎年金請求用のものと、障害基礎年金・障害厚生年年金請求用のものがあります。初診日に厚生年金・共済年金に加入していなかった場合は障害基礎年金請求用のものを、初診日が厚生年金だった場合は、障害基礎年金・障害厚生年金請求用のものを使います。共済組合については、加入していた共済によって異なります。

〇受診状況等証明書

 「受診状況等証明書」という書類は、初診日を証明するために必要な書類です。初診日を確認できたら、初診日に受診した医療機関で、受診状況等証明書を作成してもらいます。これは、障害年金の請求をするために最初に準備する書類となります。ただし、初診の医療機関と診断書を作成してもらう医療機関が同じ(診療科も同じ)であれば、受診状況等証明書は不要です。

〇診断書

 診断書の様式は、現在8種類あります。障害の部位によって分けられています。

 日常生活を送るのに一番困難な症状がでているところを目安に診断書を記載してもらいます。1つの「年金請求書」で、複数の傷病の請求をすることもできます。その場合は、それぞれの傷病についての診断書が必要です。

〇病歴・就労状況等申立書

 病歴・就労状況申立書は、障害の原因となった病気やケガについて、発症した時から現在までの経過を本人が申し立てる書類です。

 以前は、障害基礎年金と障害厚生年金とでは別の様式が使われていましたが、2014年5月1日から一つの様式「病歴・就労状況等申立書」に統一されました。

 主な内容は、発症したときの状態や、受診の履歴・治療の経過、日常生活の状態を記述するものです。必要な事項を漏れのないようにわかりやすく書きます。

 記述するときの注意点は、医療機関を受診していなかった期間も含めて、経過がよくわかるように書くことと、診断書との整合性のある内容となっているかを確認することです。

 医療機関を受診していなかった期間についても、その理由や自覚症状・日常生活の状況などを具体的に記入します。

  そのほか、住民票や障害者手帳のコピー、扶養している家族がいる場合は戸籍謄本や学生証の写し、病名によってはアンケートなどの書類も必要になってきます。

     参考

 漆原香奈恵(2015)『障害年金の手続きから社会復帰まで』秀和システム

社会問題の興味深い記事10選 by ライターshin

2018.10.25

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