災害に強い「地域SNS」の構築を目指して 地域SNSの活用

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災害に強い「地域SNS」の構築

1.地域SNS

 地域SNSとは、地域密着・地域限定のSNSのことです。日本における地域SNSの先駆けとなったのは、2001年頃から各地で増加した「電子掲示板(BBS)」でした。当初、各地方自治体が設置したBBSは、地域の問題を住民同士の協力によって解決に導いたり、住民の知識を行政に活用したりするなど、情報技術を利用して行政への住民参加を促進することを目的としていました。

 2002年には、733の地方自治体がBBSを設けるまでに増加しましたが、住民の参加者が少なかったりといった要因から、2005年頃までには大半が閉鎖されました。

 その後に注目されたのが、熊本県八代市が開始した「地域SNS」の取り組みです。2004年頃から普及しはじめたソーシャル・ネットワーキング・サービスに着目し、同年12月に市の従来かあったコミュニティサイト「ごろっとやっちろ」をSNSとして発展したところ、参加者の増加やアクセス数の上昇が見られ、さらに、子育てなどに関する活発な情報交換や、自主的なイベント開催などの効果が現れはじめました。

 これに着目した総務省は、2005年12月から翌年2月まで、東京都千代田区と新潟県長岡市で地域SNSの実証実験を行いました。すると実験の結果、地域SNSは情報基盤として、情報の交換・共有に活用できるとして報告され、各地方自治体によるSNSの開設が進みました。

 地域SNSは、各地方自治体が自ら運営するもの、NPOや企業などが運営するもの、そして官民が共同で実行委員会などを作って運営するものなど、運営主体はさまざまですが、ピーク時の2010年には519の地域SNSがあったとされています。

 地域SNSでは「顔の見える交流」が活発に行われ、地域の「生活利便向上」「各種イベント」「まちづくり」「観光誘致」などに効果があったとされていますが、しかし、その後はTwitterやFacebookの登場によりブームは下火となってしまったのです。

2.災害対応に貢献

 その間も地域SNSは、とくに災害救援・復興の情報ツールとして、効果を発揮してきました。2007年7月16日に発生した「新潟県中越沖地震」では、その日のうちに、新潟県長岡市の地域SNS「おここなごーか」に、外部からもアクセスできる「中越沖地震情報支援コミュニティ」が設置され、ここでは「ボランティア関連情報」「高齢者支援情報」「義援金情報」などのトピックが立ち上げられ、被災地の復興支援に情報面から貢献しました。

 また、2008年6月14日に岩手県内陸南部を震源として発生した「岩手・宮城内陸地震」においては、岩手県盛岡市の地域SNS「モリオネット」が、盛岡市と運営ボランティアグループが連携して利用者全員が参加する外部公開コミュニティが立ち上げられ、安否・医療情報などが発表されました。

 2009年8月11日、静岡県東部に震度6弱の地震が発生しました。震源に近い静岡県掛川市では正確な災害情報提供を目的の一つとして2007年11月から掛川市の地域SNS「e-じゃん掛川」が運営されていましたが、あらかじめ設置されていた「災害情報コミュニティ」には、地震発生1時間以内にさまざまな災害情報が書き込まれ、当時のアクセス数は4885件に上りました。

 2009年8月9日には、兵庫県作用町が集中豪雨による水害に見舞われました。この時、町が運営する地域SNS「さよっち」から、被災住民らによる映像を含めたさまざまな災害情報発信が行われ、この情報が全国の他の地域SNSに「拡散」されて、26000本を越える古タオルが集まりました。

3.現代の村つぎ

 東日本大震災発生直後の2011年3月12日、兵庫県立大学環境人間学部教授の岡田真美子さんが、

    現代の「村つぎ」を造りませんか? 必要な物資を一気に目的地まで送る

    のは難しくても、役場からとなりの役場まで送り届け、そこで運転手を交

    代したり、物資を足したりしてからまた縁のある役場まで届け、次々にリ

    レーして物資の足りないところに運ぶ。はじめは車をいっぱいにしなくて

    も次第に充実してゆく。

とTwitter上でつぶやきました。「村つぎ」とは、江戸時代、幕府や領主の物品、死者、病人などを村境においた「継ぎ所」まで運んでは、これを隣村が受け取って、また次の村堺まで運び、次々に村から村をリレーして目的地やふるさとに送り届けた仕組みです。岡田教授は、江戸時代の伝統的な「村つぎ」のような移送手段を、大きな災害で道路が寸断された時にも使えるのではないか、と考えたのです。

 このつぶやきを発端に、全国各地の20の地域SNSが連携して被災地を支援する「村つぎリレープロジェクトが誕生しました。まず子どもたちが使う学用品が、2011年4月6日に尾道(広島県)を出発し、姫路(兵庫県)、春日井(愛知県)、掛川(静岡県)、葛飾(東京都)と、それぞれの地域で呼びかけた支援物資を足しながらリレーのように、3日後に盛岡(岩手県)に到着し、三陸沿いの被災地の子ども配られました。

 その後も、ランドセルや扇風機といったものが、村つぎリレープロジェクトにより配られています。

 TwitterやFacebookといったものが登場するとともに、地域SNSが徐々に閉鎖されつつあることも事実です。しかし大きな災害時についてはTwitterやFacebookといった「グローバル」な情報ツールとともに、従来からあった地域SNSの「ローカル」なツールの必要性もあるのではないのでしょうか。

     参考文献

和崎宏(2014)「災害に強い地域ネットワークの構築ー防災情報ネットワーク基盤としての地域SNS」(研究報告情報基礎とアクセス技術114号)p1-6,情報処理学会.

社会問題の興味深い記事10選 by ライターshin

2018.10.25

1 個のコメント

  • 自治体から住民へ、#和光市災害 など地域別のハッシュ・タグを使い、災害情報をツイッターに投稿するよう呼びかける。そんな訓練が実施されています。事例は少ないですが、実際に役立つ情報が投稿されたケースも有り、これが有力な方法ではないか、と考えているところです。下記リンクに、その考察をまとめております。
    https://www.slideshare.net/maod1/41-80091058

    地域SNSの活用と災害時地域別ハッシュ・タグの活用、発想は同じだと思います。

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