中央集権から分散型社会へ! 行政、教育、メディア、電力エネルギー、経済、会社組織 新しい社会のハナシをしよう 

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1.中央集権から分散型社会へ! 

 世の中の流れは刻々と変化しています。ここ数十年の社会の大きな変化といえば、なんといってもインターネットの発達でしょう。

 1961年、アメリカのユタ州でテロ攻撃により3カ所の電話中継基地が破壊され、この事件によりアメリカの軍用回線も一時的に完全停止しました。このことをきっかけに、国防総省は核戦争時に従来の電話網はまったく役に立たなくなると考え、新たな通信システムの研究を始めました。

 その研究が、インターネットの始まりです。インターネットは、大きな一カ所の中心的なシステムに依存することない、分散型のネットワークのシステムです。

 しかし、こんにちではインターネットに限らず、従来の大きな中央集権的なシステムから分散型のシステムへの転換が、この社会のいたるところで起きています。行政、教育、メディア、電力エネルギー、経済、会社組織・・・。今回は、このような話をしてみましょう。

2.中央集権から地方分権へ

 地方分権とは、国が持っている権限や財源を地方に移すことをいいます。1993年以降、地方分権改革の一環として、国や都道府県から地方や市町村への権限移譲、規制緩和が行われてきました。

 とくにインフラ整備などにおいても、中央集権のもとでは認可に時間がかかりスムーズに手続きが進まないこともあります。地方分権によって、各地方ごとに必要とされる事業を行うことが容易になり、税金や権力が一点に集中することもなくなります。

 また、少子高齢化社会が進む現在において、保育所や福祉施設などの整備を行う際、基準の設定が地方ごとに可能であれば、迅速な対応が可能となります。さらに、その地方色を活かした産業を振興することなどもできるようになります。

 近年では、「道州制」を求める声も聞かれます。道州制とは、複数の都道府県を統合した面積の規模を持つ広域行政体をつくり、自立のための権限を与えるための制度です。

 このように、行政にも中央から分散への流れが加速しているといってよいでしょう。

3.ゆとり教育の本質は教育分権

 地方分権の流れは教育の面においても波及しています。たとえば、「ゆとり教育」という言葉があります。ゆとり教育とは、授業時間と学習内容を減らして、ゆとりのある学校の姿を目指す教育内容ですが、その本質は教育分権という側面も持っていたのでした。

 それは、最低限要求される学習水準を下げつつも、地方における教育の権限を拡大させ、その地域独自のニーズに応じた教育行政を主体的に取り組むませる側面がありました。保護者や地域住民の教育に対するニーズが多様化する現在において、その学校の自主性と自立性が求められ、それに迅速かつきめ細かく対応させることが、ゆとり教育の本質でもありました。

 教育の面においても、各地域、各学校が「分散化」しているのです。

4.分散化メディアの登場

 メディアも分散化しています。「分散化メディア」というものが登場しています。従来のWebメディアは、自社のWebサイトを持ち、そこにすべてのコンテンツを集約してきました。ですので、コンテンツにたどり着くためには、Yahoo!やGoogleで検索するか、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアに流れてきた記事のリンクからサイトにたどりつく必要がありました。

 それに対し、分散型メディアは、自社のサイトではなく、主にソーシャルメディアに直接コンテンツを配信します。ユーザーは、リンク先のWebサイトに飛ぶ必要はなく、各ソーシャルメディア上でそのまま記事や動画を見ることができるのです。

 このような分散型メディアは、ニュースサイトのBuzzFeedや、料理動画で有名な「Kurashiru(クラシル)」や「DELISH KITCEN」が一例です

5.電力エネルギーも分散化

 地球環境に対して負荷の少ない自然界のエネルギーを、再生可能エネルギーと呼びます。石油や石炭などの化石燃料は限りあるエネルギーですが、再生可能エネルギーは絶えず資源が補充されて枯渇することのないエネルギーでもあります。

 具体的には、太陽光、バイオマス(間伐材、可燃ごみ、生ごみ、廃油などの燃焼から発電するエネルギー)、水力、風力などを指します。それら再生可能エネルギーは従来の電源システムと比べると、小規模で、日本各地に分散している傾向があります。

 しかしその分散した電源を、今度はネットワーク化するとともに、ネットワーク内での電力調整を成り立たせる情報通信技術(ICT)が必要になってくるのです。これが、「分散型電力システム」です。

 今までは、電力会社が保有するすべての電源に関する関する情報を集約し、その稼働・停止を中央から操作することで、電力需給を垂直的な指揮命令系統のもとにコントロールするシステムでした。しかし、分散型電力システムは、電源をつないでネットワーク化し、ICT技術によって分権的・水平的に制御するのです。

 電力システムの分散化が進展すると、地域ごと何が最適なエネルギーの構成なのかは異なるので、中央発電所からの一律管理が困難になるのです。それが、電力エネルギーの分散化です。

6.ビットコイン

 最近、なにかと「ビットコイン」の話題が増えています。ビットコインとは、2008年にサトシ・ナカモトと名乗る人物がインターネット上に掲載した文書をもとに考案され、2009年1月に運用開始された仮想通貨です。サトシ・ナカモトが誰なのか、現在でも不明なままです。

 ビットコインが誕生した背景としては、世界的にIT革命が進んでいるにも関わらず、従来から存在する中央集権型の機関の非効率性への不満や、中央型システムにより大手IT企業に収集される個人情報の取り扱いに関する不信などがあります。そのため、ビットコインは中央に管理者を置かないことが特徴の一つです。ビットコインを使用する各個人のPCがサーバーのような役割を果たします。

 各個人のPCには、ビットコインのすべての取引がダウンロードされて同期するため、一つのPCからデータが消去したり、データが改ざんされたりしても、他の参加者のPCにデータが残っているため、中央管理者にデータが集まる中央主権型よりもリスク分散が図られることになります。

 このような分散的なネットワークのことをP2P(peer to peer)ネットワークと呼びます。ビットコインは、このP2Pネットワークにより運用されています。

7.ブロックチェーン

 ビットコインには実物はなく、BTCという単位で取引されるデータです。1BTCは1億分の1まで分割することが可能です。ビットコインの取引はP2Pネットワークで行われ、送金などの取引の一つひとつは、ある程度の固まり(ブロック)で処理されます。「ブロック」と呼ばれるこの固まりは、直前のブロックのハッシュ値と呼ばれる数値でつながっています。

 つまり、取引情報の固まりがハッシュ値を介して鎖(チェーン)のようにつながっているのです。世界中のビットコインの取引が固まりとつながっていることから、それを「ブロックチェーン」と呼びます。

8.ブロックチェーンがもたらす分散自立型組織

 このブロックチェーンを活用する事業は、経営者がいない事業です。これは、新しい組織形態の「DAO」です。これは、「分散自立型組織」(Decentralized Autonomous Organization)の略です。

 これまでの組織においては、中央に経営者や管理者がおり、彼らがさまざまな判断をすることによって、組織を運営していました。これに対して、DAOは管理者を持ちません。多数のコンピュータが形成するネットワークが、プロトコル(マシンやソフトウェアどうしのやりとりに関する取り決め)に定められてたルールに従って判断し、決定をし、実行しているのです。

 DAOによって動く事業では、技術開発やメンテナンスをする人はいても、仕組み自体を管理する人はいません。したがって、一度できあがった事業の仕組みは、仮に当初のメンバーが全員亡くなってしまっても、動き続けます。これが、未来の会社組織の形になると考えられているのです。

 ビットコインは、DAOの一例です。ビットコインがこれまでの通貨や電子マネーと違うのは、管理者や経営者がおらず、自動的に事業を実行していることです。

 ビットコインとブロックチェーンがもたらす究極の姿は、「経営者も労働者もいない会社」です。これは、ブロックチェーンとAI(人工知能)によって完全に自動化された会社です。

9.The DAOの失敗

 「The DAO」とはDAOを活用したプロジェクト名です。The DAOのプロジェクトは「非中央集権で自主的な組織」を目指しています。簡単に説明すると、「投資ファンドを非中央集権下で行う」プロジェクトです。

 普通、投資ファンドといえば、広く投資家から資金を集めて、運営者側が投資先を決め、利益が出た場合、その配当を投資家に配分するというものです。しかしThe DAOはその資金集めを運営したり、投資先を決定する運営者がいません。

 The DAOは、スマートコントラクトと呼ばれるブロックチェーンを応用した契約技術により広く資金を集め、独自のトークン(仮想通貨)を保有する投資家たちによる多数決を得ることで投資先を決定していきます。非中央集権の投資ファンドだったThe DAOですが、これは発表当時はかなり革新的でした。最終的にThe DAOは約150億円の資金調達に成功しました。

 しかし結果的にThe DAOは失敗に終わりました。理由はシステムの脆弱性をつかれたためです。2016年、それまで発行された150億円分のうちの50億円分が盗まれるという事件が起きたためです。関係者が事件について調査すると、使用されているプログラムを動作するためのコードの検証さえもされていないなど、プログラム上に欠陥があることがわかりました。

 どう処理するかを関係者が検証した結果、ブロックチェーンの流れを1回止め、巻き戻すこと、つまり50億円盗まれる前の状態に戻すことに決まりました。とはいえ、盗まれたという事実によってThe DAOの信用性は無くなり、価格も下がってしまいました。

 これは仮想通貨全体としても大問題であり、あってはならないことです。どういったプログラムで通貨は発行、管理されているかは、プログラムのコードで明らかになっており、それを審査することで安全性を確認することはできます。しかし、仮想通貨を売買する個人が、すべての通貨をチェックして買うわけにはいきません。

 結局、技術的な面から非中央集権組織の夢は一旦は消えました。しかし、あくまでもThe DAOが失敗しただけで、仮想通貨全体やブロックチェーン、そしてDAO全体が失敗したのではありません。

 The DAOの失敗は悪いことばかりではありません。ブロックチェーンの技術の台頭により、「組織」のあり方を考える機会が私たちに与えられました。確かに、The DAOは失敗に終わりましたが、DAOといった非中央集権的な組織が誕生するのは時間の問題かもしれないのです。

 AIとブロックチェーン、そしてDAOといったものが私たちの働き方を変えることは間違いありません。しかし、それは人間と情報技術の「闘い」なのでしょか。そうとも限りません。私は、人間と情報技術との「付き合い」でもあると思うのです。

 どんなに技術革新が進んでも、人間しかできない仕事は絶えず生み出され、人間は人間らしい仕事に専念することができるかもしれません。それが、「創造」や「革新」でもあるのです。

10.最後に

今回は、さまざまな分野における中央集権型社会から分散型社会への転換について書かせていただきました。どの分野においても共通していえるのは、「創造」と「革新」です。私も、これからの人生において創造と革新を生み出すことができたら、と思っています。

 参考

青木崇(2017)『ブッロクチェーン(分散型台帳)最新事情 第4次産業革命を牽引する革新的な技術への期待と課題

小田玄紀(2017)『仮想通貨が大量に盗まれた「DAO事件」が突き付けた課題

とってもやさしいビットコイン~初心者の為の仮想通貨ガイド~(2016)『The DAOとは何だったのか

野口悠紀雄(2018)『入門 ビットコインとブロックチェーン』PHP研究所.

PARAFT『政府主導から地方主体へ 地方分権のメリット・デメリット紹介

諸富徹(2015)『「エネルギー自治」で地域再生!ー飯田モデルに学ぶ』岩波書店.

文部科学省(2004)『地方分権時代における教育委員会の在り方について(諮問)

ネットあいち産業情報『インターネットの歴史

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